応援投資と応援消費、2つの共通点
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震災から1か月になろうとしています。福島の原発の問題を中心にまだまだ安定には程遠い状況ですが、被災した方々も、それを支援する周りの人々も、将来に向けて様々な動きを始めているようです。
「一人ひとりが覚悟を決めて」
1月27日付「卯年、日本が巻き返す年にしよう」で今年は「辛卯(しんぼう、かのとう)」の年で、「行動開始の年」である、と書きました。
実はこれには補足が必要です。辛卯は、「五行説」をもとにした考え方です。五行説では「世の中は『木・火・土・金・水』という5つの要素で成り立つ」としています。「金性」の「辛」と「木性」の「卯」の組み合わせは、決して安穏な時期を意味するものではない。辛卯には、物事が本格的に動きを見せ始めることを意味し、国民各自が相応の覚悟をもって事に当たらなければならない、という意味合いが含まれています(決して震災の後付ではなく、年初にそのようなお話を伺っていました)。
日本が様々な問題を抱えていることは国民全員が意識の濃淡はあるにせよ気付いていたと思いますが、平常時に自らが進んで解決に向けて動き出す機運は残念ながらなかったと思います。
そういう意味では、前回「未曾有の災害、私たちに何ができるのか」にも述べたように、今回の震災は大変悲しい結果となりましたが、国民が全員で日本が新しい姿に再生するために動き始めるきっかけとなる出来事だ、と捉えることができると思います。
後で振り返ってみたら(何年かかるかはわかりませんが)実際にそうだった、経済だけではなく、文化や日々の暮らし方も含めて日本が再び活き活きとした国に生まれ変わった、という結果に繋がるようにしなければならないと強く思います。
復興助ける「応援消費」
そんなことを日々考えていると、ネットや新聞、本で「応援消費」という言葉を見かける機会が増えている事に気付きました。当社では数年前から「応援投資」という考え方を提唱していたこともあり、大変気になって調べてみました。するとこの「応援消費」、現在のところ2通りの使い方があるようです。
まず1つは、今回の震災で大きな被害を受けた東北地方の復興を応援しようという意味の使われ方です。Tシャツ、お菓子、音楽などなど、様々な商品やサービスの売上を全額義援金に充てるという取り組み。今週から目にする機会が急速に増えていますが、日本酒「南部美人」を製造している蔵元(岩手県二戸市)の2代目である久慈浩介さんが 動画共有サイトYouTubeで「東北の酒や名産を消費して、応援してほしい!」と呼びかけ、それに賛同して購入する人が増えているという話に代表されるように、被災した東北地方の産物を積極的に購入することで復興を応援するという動きです。
もう1つの「応援消費」の使われ方は、震災とは離れた、もう少し広い意味を持っています。「モノを購入する」、「サービスを利用する」という外見部分は通常の消費と変わらないものの、その動機が「機能を求める」だけではなく、その作り手や送り手のポリシー、考え方に共感したから購入するというもので、「モノを介在して人と繋がる」ための消費です。
先の例で言えば、日本酒「南部美人」を購入するのはまずは第1の「応援消費」でしょうが、これをきっかけに「南部美人」の味に魅力を感じ、作り手である久慈浩介さんの酒造りに対する考え方や人柄に共感して継続的な愛飲者になれば、第2の「応援消費」に進んでいくことになります。
こうした「応援消費」による消費者は真のファンであり、ちょっとやそっとでは購入、利用をやめることはないでしょう。
応援投資と2つの共通点
このような「応援消費」という考え方は、当社が提唱している「応援投資」と大変共通しています。
まず、「株式」や「購入したときの株価」自体の意味だけでなく、それを介在して企業と繋がることに意味を見出すのが「応援投資」とい換えられます。応援投資による株主は、「株価」のファンではなく、企業や経営者のファンですから、短期的な株価の上下には関心がなく、中長期でその企業が成長し、成長の過程で明るく豊かな未来造りに貢献することを願っているわけです。
もう1つ共通することがあると考えます。それは、供給者と消費者、企業と投資家それぞれが自律的な存在であり、かつ真剣にマーケットに向かっているという前提条件が絶対不可欠であるということです。お互いが馴れ合いではなく、適度な緊張関係の下に繋がることが「応援」を永続的なものにすることは明らかです。
応援投資家」でありかつ「応援消費者」である人たちがもっともっと増えていくことが、日本復活の大きなキーポイントとなるのではないでしょうか。
(2011年04月07日 読売新聞)