愛知万博で「サツキとメイの家」 宮崎吾朗・ジブリ美術館長に聞く
宮崎 吾朗(みやざき ごろう)さん
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宮崎 吾朗(みやざき ごろう)
信州大学農学部森林工学科卒業後、 公園緑地や 都市緑化などの 計画・ 設計に 従事。 財団法人徳間記念アニメーション 文化財団常務理事、 三鷹の 森ジブリ 美術館館長
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宮崎駿監督の「となりのトトロ」に
登場する
草壁姉妹が
引っ
越してきた
郊外の
日本家屋を
覚えているだろうか。
昭和30
年代を
想定したあの
懐かしの
民家「サツキとメイの
家」が、
来年3
月に
開幕する「
愛・
地球博」(
愛知万博)
会場で、
物語に
忠実に
再現される。
既に
具体的な
建設計画がスタートしており、
万博の
目玉事業の
一つとして
注目を
集めそうだ。
民家は、木造一部2階建て約100平方メートル。愛知万博長久手会場南東部の「森林体感ゾーン」の一角で再現される。
家具や生活用品、井戸、風呂なども映画の世界の通り忠実に再現。サツキとメイ姉妹が初めてこの家を訪れた時のように、自由に家の中を歩き回り、押し入れやタンスの中をのぞいたり、触ったりできる。まきを使って風呂を沸かしたり、煮炊きを体験したりもできるようにする。今春から基礎工事が始まる予定だ。
「サツキとメイの家」には、どんな「仕掛け」が待っているのか。宮崎監督の長男で、再現計画を統括する宮崎吾朗・三鷹の森ジブリ美術館長に思いを聞いた。
――再現計画をどのように進めていくのですか。
宮崎 映画の
時の
図面を
基に、
専門家に
入ってもらって
設計をしています。アニメーションですから、
都合よく
描いたところも
結構あるんです。
半年間じっくりかけて
建設し、
年内には
完成したいと
考えています。
――「サツキとメイの家」再現にはどんな狙いがありますか。
宮崎 限界を見せ始めた未来を提示するのではなく、自然に囲まれた50年前の暮らしぶりを示すことで、生きるヒントが隠されているのではないか、と考えたわけです。
――民家のモチーフは。
宮崎 極論すれば「宮崎駿が幼少時代に育った家」でしょう。大正の終わりから昭和の初期のころ、中産階級の需要に合わせた建売住宅が、結構売られていました。
――課題は何ですか。
宮崎 どう建てるかという技術の方が問題です。便器などの生活用品を集めるのも大変でしょう。今のタイルは薄くて均質な形で作れますが、当時のものは厚くて軟らかいんです。忠実に一から作り込まないといけないかも知れません。
――どんな世代に見てもらいたいですか。
宮崎 やはり、子供たちです。当時はかまどでご飯を炊いて、夏だったら蚊帳の中で布団を敷いて寝る。自分で体を動かさないと、生活そのものが成立しなかったということを若い世代に実感してもらいたい。「こんな便利になっていいのか」という現代社会への一種のアンチテーゼみたいなものです。
(2004年3月2日 読売新聞)