「ピクサー展」の秘密 リッキー・ニールヴァさんらに聞く
リッキー・ニールヴァさん
ミッシェル・スペインさん
宮崎 吾朗(みやざき ごろう)さん
![](https://web.archive.org/web/20111026184104im_/http://www.yomiuri.co.jp/entertainment/ghibli/img/z_zspace.gif) |
![](https://web.archive.org/web/20111026184104im_/http://www.yomiuri.co.jp/entertainment/ghibli/img/photo_inv_pixar_00.jpg)
リッキー・ニールヴァ=左
アート・ディレクター。ディズニーの 芸術学校「カル・アーツ」を 卒業後、1997 年にビジュアル 開発担当としてピクサーに 参加。ピクサー 展では 描き 下ろしも
ミッシェル・スペイン=中
2000 年にピクサー 入社。マーケティング 部門で、 出版、 企画、グッズ 商品化などの 責任者を 務めている。ピクサー 展では、 展示のコーディネートを 担当
宮崎 吾朗(みやざき ごろう)=右
信州大学農学部森林工学科卒業後、 公園緑地や 都市緑化などの 計画・ 設計に 従事。 財団法人徳間記念アニメーション 文化財団常務理事、 三鷹の 森ジブリ 美術館館長
![](https://web.archive.org/web/20111026184104im_/http://www.yomiuri.co.jp/entertainment/ghibli/img/z_zspace.gif) |
東京の「
三鷹の
森ジブリ
美術館」で、「ピクサー
展」が
開催されている。ピクサーは、「モンスターズ・インク」や「ファインディング・ニモ」など、3DCG(3
次元コンピューター・グラフィックス)による
優れた
作品で
知られ、スタジオジブリとも
親交がある
米アニメーション
制作会社。
展覧会では、
制作の
準備段階における「
手仕事」に
注目し、これまで
知られることのなかった
創作の
秘密を
紹介している。
日米アニメーションスタジオの雄による“競演”が実現した経緯を、同社のアート・ディレクターで展覧会のために絵を描き下ろしたリッキー・ニールヴァさん、展覧会をコーディネートしたマーケティング部門のミッシェル・スペインさん、ジブリ美術館の宮崎吾朗館長に聞いた。(依田謙一)
――ジブリとピクサーの縁は。
スペイン 宮崎駿監督と、「トイ・ストーリー」の監督を務めたピクサーのジョン・ラセター(現・エグゼクティブ・バイス・プレジデント)には、20年来の親交があります。ラセターをはじめ、ピクサーの仲間はジブリ作品をとても尊敬していて、多大な影響を受けています。悩んだり行き詰ったりすると、皆で観るんですよ。
宮崎 ラセター氏の尽力で「千と千尋の神隠し」(英題「Sprited Away」)が米国公開された際、宮崎監督がピクサーに招かれました。そこで監督が、「是非、展覧会をやらせてほしい」の申し出たのがきっかけです。後先考えずにそういうこと言っちゃうんですね、あの人は(笑)。
――あえて「手仕事」に注目した理由は。
宮崎 3DCGで
知られるピクサーも、
作品作りはすべて
手作業から
始まる。そこが
面白いと
思ったんです。それに、ピクサーが
成功しているのは、3DCGの
作品であることが
最大の
理由ではなくて、
物語やキャラクターなど、
映画の
基本を
重視しているからなんですね。「
手仕事」から
始まる
創作の
過程と、
彼らが
優れた
作品を
生み
出す
仕事場を
再現することで、
魅力の
源泉に
迫ることができるのではないかと
思いました。
ニールヴァ 準備段階では、アイデアを紙に描き、粘土模型を作るといった手仕事がとても大切なんだ。僕らは、これらの資料をもとに、何度も議論を重ねる。ラセターも言っているけど、優れた長編アニメーションを作るには、3つの大切なことがある。魅力的で心を動かす物語、忘れがたい登場人物、観客を信じさせる世界観。それぞれを十分に検討しなければならない。コンピューターは道具の一つに過ぎないんだ。
スペイン 最初にこの提案を聞いた時は驚きました。今まで、作品が完成した記念に社内で資料を展示したことはありましたが、一般向けに公開したことはありませんでしたから。でも、その驚きはすぐに楽しみに変わりました。
ニールヴァ こんなに
豊かなインスピレーションを
与えてくれる
場所でピクサーの
展覧会ができるのは
素晴らしいこと。
僕は
世界中のいろいろな
場所を
巡ってきたけど、ジブリ
美術館はもっとも
好きな
場所の
一つさ。
スペイン 展覧会のために、こちらからも提案しました。例えば「ラブ・ラウンジ」と呼ばれる小部屋を再現して欲しいということ。スタッフがスタジオ内の空調用スペースに作った秘密の部屋で、宮崎監督も案内されサインを残している場所です。こうした遊び心も、ピクサーの大切な「創作の秘密」なんです。ほかにも、スタジオ内のバーも再現されていて、私たちが普段どういう環境で仕事をしているか知ってもらえると思います。
宮崎 展示物の「量」も大切にしました。一つのキャラクターが決まるまでに、どれだけ苦労があるのかを知ることで、ピクサーの仕事に対する熱心さを感じもらえればと。
――宮崎監督とラセター氏は、展覧会をご覧になりましたか。
宮崎 宮崎監督は秋に公開の「ハウルの動く城」、ラセター氏は冬に公開の「Mr.インクレディブル」の制作が佳境を迎えていて、まだ訪れていません。でも、誰よりこの企画を楽しみにしていた2人ですから、映画が一段落したらすぐに飛んで来ると思いますよ。(次ページへ続く)
ピクサー・アニメーション・スタジオ
アップルコンピュータの創始者スティーブ・ジョブズが、1986年にルーカスフィルム社からコンピューター部門を買収し設立。
「トイ・ストーリー」「モンスターズ・インク」など、3DCGによる優れた作品を発表する一方、ソフトウェアの開発にも力を入れている。
今年12月には、日本で新作長編「Mr.インクレディブル」を公開予定。
|
![](https://web.archive.org/web/20111026184104im_/http://www.yomiuri.co.jp/entertainment/ghibli/img/photo_inv_pixar_00z.jpg) 発売中の「ファインディング・ニモ」DVD
|
|
(2004年6月29日 読売新聞)