10月30日付 編集手帳
<ゴルフでパットの構えに入ったら、急に風が吹いてきて球が動いた>。この場合、「風だから仕方ない」とやり過ごすのは誤り。規則上はプレーヤーが動かしたと見なされ、1打罰が科される◆プロの選手の間では「ゴルフで最も理不尽な規則」と言われてきた。今年5月にも米国男子ツアーで、優勝目前の選手がこの1打で2位選手に並ばれ、プレーオフの末敗れた。「バッド・ルール!」とコメントしたそうだ◆その声が届いたか、ゴルフ規則を決める英国のR&Aと米国ゴルフ協会は先週、この1打罰を来年から撤廃すると発表した。かの選手の手に優勝杯は戻らないが、ゴルフ界にとっては長年の懸案解決の出来事らしい◆「球聖」と呼ばれた米国の名選手ボビー・ジョーンズが言う。<ゴルフという不思議なゲームの中で、最も不思議なゲームはパッティングである>(摂津茂和著『不滅のゴルフ名言集』)。最後の1打まで、何が起こるかわからない。パットは奥の深い世界なのだろう◆都合の悪い規則には知らんぷり、グリーン上では「オッケー?」のおねだり。下手の横好きを恥じるばかりである。
(2011年10月30日01時21分 読売新聞)