民主TPP結論 首相は参加へ強い決意を示せ(11月10日付・読売社説)
深夜に及んだ激しい論議を経て、民主党は環太平洋経済連携協定(TPP)交渉への参加問題について結論を出した。
党の経済連携プロジェクトチームがまとめた提言は、野田首相が、週末にハワイで開かれるアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議で、交渉への参加を表明することについて、「時期尚早」などの発言が多かったと指摘した。
その上で、政府に対し、「慎重に判断することを提言する」と明記している。
首相に最終判断を委ねた。首相は、慎重派の意向を尊重しつつも、やはり、ここは不退転の決意で参加を表明すべきだ。
提言はまず、「高いレベルでの経済連携」を戦略的、多角的に進めるとし、日本が世界の貿易・投資の促進に主導的な役割を果たすべきだと記している。日米関係の重要性にも言及した。
党内のTPP推進派の主張を踏まえたもので、極めて妥当である。アジアの新興国などの成長を取り込むことが、日本の成長戦略に欠かせない。
一方で、提言はTPP参加での「懸念事項」に触れた。「国民への十分な情報提供を行い、同時に幅広い国民的議論を行うことが必要」と盛り込んでいる。
最も懸念されているのが農業である。「例外なき関税撤廃」を掲げるTPPに参加すれば、大きな打撃が予想されると農業関係者は反発している。医療や金融分野などで規制緩和が進むことに伴う様々な不安も広がっている。
政府はこうした懸念の払拭に努め、日本の主張が実現するよう各国と交渉すべきだ。
党内の慎重派に目立つのは「情報が不十分で、参加決断は拙速だ」という主張だった。しかし、交渉に参加しなければ、詳細な内容は分からないではないか。
慎重派も、提言で明確な反対を打ち出せなかった以上、首相の判断に従うべきだ。首相が参加を表明した場合、与党の一員として支えていかなければならない。
今回は、民主党政権の政策調整の問題も浮き彫りになった。
党幹部や閣僚らは、TPPに参加して、日本のどういう国益のために何をするのかという戦略を十分には示さず、党内説得の前面に立つこともなかった。
選挙を意識したためか、個別業界の擁護を求める情緒的な声もあり、大局的観点からの発言は少なかった。政権党として視野の広い政策論議をしてもらいたい。
(2011年11月10日01時20分 読売新聞)