金正日の死で不安定化する北朝鮮。その行方を左右する3つの勢力。韓国では自由統一論が広がり始めた。(月刊正論3月号)
注目される米韓の2009年ビジョン
昨年12月に金正日が死んだ。その後の日本の報道は見るに堪えないものが多かった。特に、テレビは北朝鮮のテレビの画面を無批判で流し、あたかも外国の偉人が亡くなったかのような、おかしな報道を続けた。善悪を区分する価値観がない。自由、民主主義、人権、法治という人類の普遍的価値観を拡大するためにわが国が何をなすべきかという問題意識がない。ただ天気予報のような解説ばかりがあふれていた。
金正恩政権はいまだ権力基盤が弱い。いつ、北朝鮮で政変が起きるか、あるいは混乱が起きるかわからない。すでに米韓首脳は2009年6月、「自由民主主義と市場経済に則った平和統一を志向する」と共通ビジョン(米韓同盟未来ビジョン)を明らかにしている。米韓軍は北朝鮮混乱時に備えた北進作戦も準備している。
韓国が米韓同盟、日韓基本条約を維持している限り、統一韓国は日本の国益に最もかなう。最悪のシナリオは普遍的価値観に逆行する中国共産党が北朝鮮を属国化し、韓国に強い影響力を行使するという半島全体の全体主義化だ。
韓国の保守勢力の中でいま急速に、2009年米韓ビジョンに沿う自由統一論が拡散している。これまで、統一コストが膨大だから即時統一ではなくある期間北朝鮮を中国に任せて経済復興させてから統一すべきという、いわゆる2段階統一論が強かった。しかし、統一ドイツが経済大国と成った実態を目のあたりにして、自由統一こそが韓国の経済成長のフロンティアとなりコストより利益が大きいという認識がひろがりつつある。