ステージ風発ふうはつ

 柔道じゅうどうはもちろんスポーツであり、武道ぶどうです。

　自己じこを鍛練たんれんし、他者たしゃとの共栄きょうえいを図はかるという基本きほんにはとくに政治せいじや外交がいこうの要素ようそはからんでいません。しかし結果けっかとして国際こくさい的てきな場ばで国くにと国くに、国民こくみんと国民こくみんの交流こうりゅうや友好ゆうこうの手段しゅだんとなり、その延長えんちょうとして国際こくさい関係かんけいの補強ほきょうになる、という場合ばあいもあるでしょう。

　日本にっぽんとアメリカとの柔道じゅうどう交流こうりゅうのそんな成果せいかについて書かきました。

 (海軍かいぐん士官しかん学校がっこうの卒業そつぎょう式しき。ブッシュ前ぜん大統領だいとうりょうも出席しゅっせきした）

【朝刊ちょうかん　1面めん】

■【あめりかノート】ワシントン駐在ちゅうざい編集へんしゅう特別とくべつ委員いいん・古こ森もり義久よしひさ

　■根付ねつく柔道じゅうどう　同盟どうめいに寄与きよ

　今年ことしは首都しゅとワシントンに日本にっぽんからの桜さくらの木きが贈おくられてちょうど１００年ねんとなる。だから３月がつ下旬げじゅんからの恒例こうれいの桜さくら祭まつりは一いち世紀せいきの日米にちべい友好ゆうこうを記念きねんして、とくに多彩たさいな行事ぎょうじを予定よていしている。だが同おなじ日米にちべい友好ゆうこうでも柔道じゅうどうの交流こうりゅうが桜さくら以前いぜんに公式こうしきに始はじまっていた歴史れきしはあまり知しられていない。

　１０８年ねん前まえの１９０４年ねん、講道館こうどうかんの山下やました義よし韶師範しはんは時じのセオドア・ルーズベルト大統領だいとうりょうに招まねかれてホワイトハウスで大統領だいとうりょう一家いっかに柔道じゅうどうを教おしえるようになった。 身長しんちょう１６２センチの山下やました氏しは１９０センチの巨漢きょかんの米人べいじんレスラーと試合しあいして破やぶり、大統領だいとうりょうの推薦すいせんで米べい海軍かいぐん士官しかん学校がっこうの柔道じゅうどう教師きょうしをも１９０５年ねんはじめから２年間ねんかんも 務つとめた。

　だからワシントン近郊きんこうのアナポリスにある海軍かいぐん士官しかん学校がっこうと日本にっぽんの柔道じゅうどうとの絆きずなは古ふるい歴史れきしを刻きざんでいたのだが、山下やました氏し以後いご、交流こうりゅうが途絶とだえた。その復活ふっかつがこのコ ラムでも伝つたえたように２０１０年ねん１１月がつの五輪ごりん金きんメダリストの井上いのうえ康生やすお氏しの訪問ほうもんだった。井上いのうえ氏しの指導しどうを機きに同校どうこうはそれまでの柔道じゅうどうクラブの同好どうこう会かいふうの地位ちいを 正式せいしきに部ぶに昇格しょうかくさせ、同氏どうしの母校ぼこうの東海大学とうかいだいがく柔道じゅうどう部ぶから定期ていき的てきにコーチを招請しょうせいするようになった。

　井上いのうえ氏しの次つぎには昨年さくねん９月がつに東海大学とうかいだいがく助じょ教きょうの大川おおかわ康隆やすたか氏しが３週間しゅうかん近ちかく来訪らいほうして、指導しどうした。そして今年ことしは１月がつから同大どうだいＯＢの片かた渕ふち一真かずまさ氏しが３カ月かげつ近ちかくの予定よていでコーチを務つとめている。片かた渕ふち氏しは東海大とうかいだいが３年ねん前まえに全国ぜんこく優勝ゆうしょうした際さいのメンバーで米べい欧おうでの柔道じゅうどう体験たいけんも豊富ほうふである。

　２月がつの終おわり、その片かた渕ふち氏しに同行どうこうして、私わたしも海軍かいぐん士官しかん学校がっこうでの稽古けいこに参加さんかした。３０人にんほどの屈強くっきょうな学生がくせいが整列せいれつして、４年生ねんせいのマット・ステルマク主将しゅしょうが「先さき 生せいに礼れい！」と日本語にほんごで号令ごうれいをかけ、練習れんしゅうを始はじめる。この日ひはワシントンに短期たんき留学りゅうがくしている桐きり蔭かげ横浜よこはま大学だいがくの黒瀬くろせ遼りょう選手せんしゅも片かた渕ふち氏しの助手じょしゅ役やくで加くわわった。黒瀬くろせ選手せんしゅは ６０キロ級きゅうの全国ぜんこく級きゅう選手せんしゅで、この４月しがつから警視庁けいしちょう勤務きんむが決きまっている。

　片かた渕ふちコーチが基本きほんの投なげ技わざを反復はんぷくして説明せつめいし、学生がくせいたちに繰くり返かえさせる。黒瀬くろせ選手せんしゅが得意とくい技わざの背負しょい投なげを解説かいせつする。そして自由じゆうに攻撃こうげきしあう乱取らんどりとなる。 熱ねつのこもった練習れんしゅうが一時いちじ間あいだ半はん、続つづいた。学生がくせいたちは明あきらかに強つよくなっていた。同校どうこうにもう２年ねんほど海上かいじょう自衛隊じえいたいからの交換こうかん士官しかんとして勤務きんむする筒井つつい大介だいすけ３等とう海うみ佐さも 「日本人にっぽんじんコーチの指導しどうが始はじまって以来いらい、学生がくせいたちの柔道じゅうどうが目めにみえて積極せっきょく果敢かかんになりました」と語かたる。

　週しゅう５日にち、練習れんしゅうする部員ぶいんたちのいまの目標もくひょうは３月がつ中旬ちゅうじゅんの全米ぜんべい大学だいがく選手権せんしゅけん大会たいかいで優勝ゆうしょうすることだという。カリフォルニアでの同どう大会たいかいには片かた渕ふちコーチが同行どうこうし、密着みっちゃく指導しどうをするというから東海大学とうかいだいがくとの柔道じゅうどう交流こうりゅうもすっかり軌道きどうに乗のったといえる。

　米べい海軍かいぐん士官しかん学校がっこうといえば学生がくせい数すう４６００人にんの大学だいがくで卒業生そつぎょうせいの大だい多数たすうはもちろん海軍かいぐんや海兵かいへい隊たいの将校しょうこうとなるが、その後ごに政界せいかいや財界ざいかいで活躍かつやくする人ひとも多おおい。アナポ リス出身しゅっしんの大統領だいとうりょうや上院じょういん議員ぎいんも珍めずらしくない。そうした役割やくわりの大おおきい教育きょういく機関きかんとの柔道じゅうどう交流こうりゅうは日米にちべい友好ゆうこうの模範もはんだろう。まして他たの多おおくの交流こうりゅう分野ぶんやと異ことなり、日本にっぽんが 完全かんぜんに導みちびき、与あたえる側がわなのだ。

　この交流こうりゅうを最初さいしょに主導しゅどうした東海大とうかいだい柔道じゅうどう部ぶの山下やました泰裕やすひろ師範しはんが「東日本ひがしにっぽん大震災だいしんさいの際さいのトモダチ作戦さくせんへのお礼れいをもこめて」と述のべている ように、日米にちべい同盟どうめいへの寄与きよといっても、誇張こちょうとはならないだろう。桜さくら祭まつりの派手はでな行事ぎょうじの陰かげでこんな地道じみちな日米にちべい交流こうりゅうが進すすんでいることもぜひ伝つたえたかった。

　　(山下やました義よし韶師範しはん）

北朝鮮きたちょうせんの核かく武装ぶそうへの驀進ばくしんをめぐる米べい朝ちょう合意ごういの分析ぶんせきを続つづけます。

日本にっぽんビジネスプレスからの転載てんさいです。

これで今回こんかい分ぶんは終おわりです。

原文げんぶんへのリンクは以下いかです。

 http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/34694

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 ムスダンというのは最小限さいしょうげん、グアム島とうまで射程しゃてい内ないに収おさめる中なか・長距離ちょうきょりのミサイルである。ニクシュ氏しは北朝鮮きたちょうせんが核弾頭かくだんとうをミサイルに装備そうびすることにいまや全力ぜんりょくを挙あげてきたとして、次つぎのような警告けいこくをも発はっしている。

　「北朝鮮きたちょうせんを巡めぐる環境かんきょうがこれまでのままだと、核弾頭かくだんとうのミサイル装備そうびはこれからの1～2年ねんの間あいだに必かならず実現じつげんされてしまう。今回こんかいの米べい朝ちょう合意ごういはその展望てんぼうを変かえるとは思おもえない」

食糧しょくりょう獲得かくとくだけが合意ごういの目的もくてきだとは思おもえない

　米べい朝ちょう合意ごういの内容ないようを発表はっぴょう通どおり受うけ止とめると、北朝鮮きたちょうせんは米国べいこく側がわから栄養えいよう補助ほじょ食品しょくひん24万まんトン提供ていきょう以外いがいの譲歩じょうほをほとんど引ひき出ださないままに、核かくやミサイルの 実験じっけん停止ていしに応おうじたこととなる。では、北朝鮮きたちょうせんがそれほどこの食糧しょくりょう、つまり栄養えいよう補助ほじょ食品しょくひんが欲ほしかったのか。ニクシュ氏しはこの点てんについても興味きょうみある論評ろんぴょうをした。

　「北朝鮮きたちょうせん側がわの今回こんかいの譲歩じょうほには食糧しょくりょう獲得かくとく以外いがいの複雑ふくざつな政治せいじ的てき動機どうきがあると思おもう。なぜなら北朝鮮きたちょうせんは昨年さくねんの最後さいごの3カ月かげつに中国ちゅうごくから合計ごうけい50万まんトンもの食糧しょくりょう 援助えんじょを得えているからだ。今いまは食糧しょくりょう危機ききはないため、今回こんかいの譲歩じょうほは今後こんごの対たい米べい交渉こうしょうでより大おおきな目標もくひょうを目指めざすための切きり札ふだとするのではないか」

　こう見みてくると今回こんかいの米べい朝ちょう合意ごういは欠陥けっかんだらけの構図こうずが浮うかび上あがってくる。そしてタイミングも北朝鮮きたちょうせんの動機どうきも、なにか奇妙きみょうで、説明せつめいがつかないままなのだ。

　特とくに日本にっぽんにとって切迫せっぱくした北朝鮮きたちょうせんの核弾頭かくだんとうの小型こがた化か、軽量けいりょう化かの成功せいこうによるミサイルへの核弾頭かくだんとう装備そうびという危機ききは少すこしも遠とおのいていないことが明白めいはくとなるのである。

（終おわり）

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　　　　　(パレードに登場とうじょうしたムスダン・ミサイル）

最近さいきんの米べい朝ちょう合意ごういについての分析ぶんせきの続つづきです。

北朝鮮きたちょうせんの核かくの脅威きょういはすぐ目前もくぜんにあるということです。

日本にっぽんビジネスプレスのコラムから。

原文げんぶんへのリンクは以下いかです。　　　　　　　　　　　

  http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/34694

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　北朝鮮きたちょうせんはそもそも米国べいこくや韓国かんこくなどとの6カ国かこく協議きょうぎで、当初とうしょはプルトニウムによる核かく爆ばく弾だん製造せいぞうについてだけ取とり上あげ、その停止ていしの求もとめに応おうじる構かまえを見みせ ながら、実じつは秘密裏ひみつりに「もう1つの核かく爆ばく弾だん製造せいぞうへの道みち」であるウラン濃縮のうしゅくを着々ちゃくちゃくと続つづけていたのである。米国べいこく側がわは北朝鮮きたちょうせんにうまくだまされていたのだ。

　だから今こん 回かいの合意ごういでも北朝鮮きたちょうせんが公式こうしきに誓約せいやくする言葉ことばは、そう容易よういには信用しんようできない。

　そして何なによりも、北朝鮮きたちょうせんはIAEAが国内こくないの任意にんいの施設しせつを査察ささつできることには同意どういしていないのである。

北朝鮮きたちょうせんの核かくミサイル配備はいびはもう間近まぢか

　ニクシュ氏しは、北朝鮮きたちょうせんの核かく爆発ばくはつ実験じっけんや長距離ちょうきょりミサイル発射はっしゃ実験じっけんの一時いちじ停止ていし合意ごういについても、重要じゅうような点てんを強調きょうちょうした。

　「北朝鮮きたちょうせんの核かく実験じっけんの停止ていし自体じたいは米国べいこくを利りするが、北朝鮮きたちょうせん側がわがいま最大さいだい目標もくひょうとする核弾頭かくだんとうの小型こがた化か、軽量けいりょう化かは、もう核かく実験じっけんを必要ひつようとしない段階だんかいまできた恐おそれがある。ノドン・ミサイルへの核弾頭かくだんとう装備そうびによる韓国かんこくや日本にっぽんへの脅威きょういは去さっていない」

　ニクシュ氏しは、北朝鮮きたちょうせんがすでに核弾頭かくだんとうのミサイルへの装着そうちゃくのための技術ぎじゅつや設計せっけい図ずを取得しゅとくしたため、あえてその目的もくてきに必要ひつような実験じっけんは断行だんこうする必要ひつようがなく なった、と言いうのである。だからノドン・ミサイルに核かく爆ばく弾だんが装備そうびされた時とき、まずその射程しゃていに入はいる日本にっぽんや韓国かんこくへの「核かくの脅威きょうい」は消きえていないというのだ。

　ニクシュ氏しは以下いかのようにも語かたった。

　「北朝鮮きたちょうせんが開発かいはつを進すすめる長距離ちょうきょりミサイルの『ムスダン』は、これから発射はっしゃ実験じっけんをしなくても、北きたが緊密きんみつな絆きずなを保たもつイランやパキスタンの同種どうしゅのミサイルの開発かいはつと実験じっけんの資料しりょう入手にゅうしゅで補おぎなえる可能かのう性せいが高たかくなった」

（つづく）

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（北朝鮮きたちょうせんのミサイルと似にたパキスタンのミサイル）

 北朝鮮きたちょうせんの核かく武装ぶそうを防ふせぐためのアメリカや韓国かんこくの努力どりょくがまた新あたらしい展開てんかいをみせました。

北朝鮮きたちょうせんが核兵器かくへいき開発かいはつや長距離ちょうきょりミサイル発射はっしゃ実験じっけんを一時いちじ停止ていしすると

言明げんめいしたからです。もちろんこの「一時いちじ停止ていし」には食糧しょくりょう援助えんじょなどの条件じょうけんがついています。

しかしこの米べい朝ちょう合意ごういは奇妙きみょうであり、驚おどろきです。

なぜそうなのか。

日本にっぽんビジネスプレスの私わたしの連載れんさい「国際こくさい激流げきりゅうと日本にっぽん」に以下いかの報告ほうこくを書かきました。

原文げんぶんへのリンクは以下いかです。

http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/34694

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　米国べいこくと北朝鮮きたちょうせんとの奇妙きみょうな合意ごういが発表はっぴょうされた。2月29日にちのことである。北朝鮮きたちょうせんの核兵器かくへいき開発かいはつを停止ていしさせることを巡めぐる合意ごういだった。

　「奇妙きみょう」とあえて書かいたのは、その欠陥けっかんもあらわな内容ないよう、そしてこの発表はっぴょうの予想よそう外がいのタイミングなどのためである。

　この合意ごういでは、北朝鮮きたちょうせんが寧辺にょんびょんでのウランの濃縮のうしゅく活動かつどうを一時いちじ停止ていしするという。さらには核兵器かくへいきに関かんする活動かつどうや長距離ちょうきょりミサイル発射はっしゃ実験じっけんをも一時いちじ停止ていしする代かわりに、米国べいこくから24万まんトンの栄養えいよう補助ほじょ食品しょくひんの提供ていきょうを得えるというのだ。

　合意ごういには、ウラン濃縮のうしゅく活動かつどうの停止ていしを監視かんしするための国際こくさい原子力げんしりょく機関きかん（IAEA）要員よういんの復帰ふっきを北朝鮮きたちょうせんが受うけ入いれる内容ないようも盛もり込こまれた。

　こうした骨子こっしを表面ひょうめんで見みる限かぎり、北朝鮮きたちょうせんがかなりの譲歩じょうほを示しめしたように見みえる。米国べいこく側がわの大おおきな譲歩じょうほは見当みあたらない。

　米国べいこく側がわは今回こんかいの北朝鮮きたちょうせんの合意ごういを驚おどろきをもって受うけ止とめたと言いえる。金きむ正日じょんいる総そう書記しょきの死しからまだ2カ月かげつほど、若わかくて未み経験けいけんの金きむ正ただし恩おん氏しの後継こうけい体制たいせいがまだ基もと 盤ばん固かためができていない時点じてんで、このような重要じゅうような対外たいがい政策せいさくの修正しゅうせいを公表こうひょうしたことは、米国べいこくをはじめとする諸しょ外国がいこくの北朝鮮きたちょうせんウォッチャーを驚おどろかせたわけだ。なぜこ れほど早急そうきゅうに、という点てんも不可解ふかかいである。

秘密ひみつ施設しせつで続つづけられているウラン濃縮のうしゅく

　この米べい朝ちょう合意ごういについて、米国べいこく議会ぎかい調査ちょうさ局きょくで長年ながねん、朝鮮半島ちょうせんはんとう情勢じょうせいを専せん門もんに研究けんきゅうしてきたラリー・ニクシュ氏しは、この合意ごういを歓迎かんげいしながらも、北側きたがわが国際こくさい査察ささつを認みとめるという寧辺にょんびょん地区ちく以外いがいの秘密ひみつ施設しせつでのウラン濃縮のうしゅく核弾頭かくだんとう開発かいはつの危険きけん性せいなどを指摘してきした。

　現在げんざいは大手おおてシンクタンクの戦略せんりゃく国際こくさい問題もんだい研究所けんきゅうじょ（CSIS）の研究けんきゅう員いんを務つとめるニクシュ氏しは、まず今回こんかいの米べい朝ちょう合意ごういを「北朝鮮きたちょうせんの核兵器かくへいきやミサイルの開発かいはつ を一部いちぶ的てきに制限せいげんする点てんで歓迎かんげいできる」と評価ひょうかする。

　その一方いっぽう、米国べいこくが最もっとも懸念けねんするウラン濃縮のうしゅくによる核弾頭かくだんとう開発かいはつについて、「IAEAによる査察ささつの受うけ入いれが周しゅう 知ともの寧辺にょんびょん地区ちくだけに限かぎられており、北朝鮮きたちょうせんの他ほかの地域ちいきに明あきらかに存在そんざいする複数ふくすうの秘密ひみつ施設しせつでのウラン濃縮のうしゅくの動うごきは自由じゆうとなる危険きけんが残のこる」と指摘してきしたのだった。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（つづく）

 福井ふくい県けん立大りつだい学がく教授きょうじゅの島田しまだ洋一よういち氏しが私わたしの書しょを取とり上あげてくれました。

　古こ森もり義久よしひさ氏しの新刊しんかん『「中国ちゅうごくの正体しょうたい」を暴あばく』は、中国ちゅうごくの軍備ぐんび、戦略せんりゃくに関かんする米べい側がわ専門せんもん家かの分析ぶんせきが多角たかく的てきに紹介しょうかいされていて、大変たいへん勉強べんきょうになる。

　その内うちの一ひとつ、中国ちゅうごくがその海域かいいきをすべてコントロールすることを戦略せんりゃく目標もくひょうとする「第だい１列島れっとう線せん」（台湾たいわん、フィリピン、沖縄おきなわ、九州きゅうしゅうなどを結むすぶ線せん）とその海域かいいきのコントロールを他国たこくと競きそい合あえる能力のうりょくの確保かくほを戦略せんりゃく目標もくひょうとする「第だい２列島れっとう線せん」（グアム、小笠原諸島おがさわらしょとうなどを結むすぶ線せん）に関かんするピーター・ダットン海軍かいぐん大だい学校がっこう中国ちゅうごく海洋かいよう研究所けんきゅうじょ長ちょうの見解けんかいは非常ひじょうに興味深きょうみぶかい。

　すなわち、二ふたつの線せんは「文字もじどおりに島しまと島しまを結むすぶ地理ちり的てきな概念がいねんというより」、上記じょうき戦略せんりゃく目標もくひょうに即そくした目安めやすを示しめしたものであり、「中国ちゅうごくはさらに第だい２列島れっとう線せんを越こえてインド洋いんどようや地中海ちちゅうかいへの進出しんしゅつまでも、明あきらかに意図いとしています。……第だい1とか第だい2とかいう表現ひょうげんを、単たんに地理ちり的てきな区分くぶんだと考かんがえるのはまちがいです。中国ちゅうごく軍ぐんが戦力せんりょく構成こうせいや能力のうりょく構成こうせいを進すすめる上うえでの区分くぶんなのです」という。

つまり、そこを狙ねらい通どおり確保かくほすれば中国ちゅうごく側がわは満足まんぞくするといった固定こてい的てきな地理ちり的てき観念かんねんではない（それすら関係かんけい諸国しょこくにとって受うけ入いれがたい脅威きょういだが）。

むしろ、能力のうりょくの増強ぞうきょうに応おうじて「第だい1」の外延がいえんは膨ふくらんでいき、究極きゅうきょく的てきには世界中せかいじゅうの海うみが中国ちゅうごくにとっての「第だい1列島れっとう線せん」内ないになる、い換いかえれば、相手あいてとの境界きょうかいを意味いみする「列島れっとう線せん」なる概念がいねんが自然しぜん消滅しょうめつする、あるいはアウフヘーベン（止揚しよう）される状態じょうたいを目指めざしているということになろう。

専門せんもん家からしい知見ちけんと言いえる。本書ほんしょにはこうした示唆しさに富とんだ指摘してきが多おおい。

 イスラエルがイランの核かく武装ぶそうを阻はばむために、軍事ぐんじ攻撃こうげきをも辞じさない、という姿勢しせいを強つよめています。

　イスラエルは過去かこにイラクとシリアの両国りょうこくの核兵器かくへいき製造せいぞうをその途中とちゅうでみごとに破壊はかいしてしまった実績じっせきがあります。

　イランやシリアなどが核兵器かくへいきを保有ほゆうすれば、かねてイスラエルの存在そんざい自体じたいを否定ひていしてきた経緯けいいから、イスラエルにとって、文字通もじどおり、国家こっかの興亡こうぼうを問とわれる危機ききとなるわけです。

　しかしこの種たねの軍事ぐんじ行動こうどうの計画けいかくでは超ちょう大国たいこくのアメリカがどう出でるのかが、カギとなります。とくに年来ねんらい、アメリカに支援しえんされてきたイスラエルにとって、アメリカの動向どうこうは決定的けっていてきな意味いみを持もちます。

　そのへんの現状げんじょうを記事きじにしました。

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［ワシントン＝古こ森もり義久よしひさ］イスラエルによるイラクの核兵器かくへいき開発かいはつへの軍事ぐんじ攻撃こうげき作戦さくせん案あんにどう対応たいおうすべきかが米国べいこくにとっての切迫せっぱくした重大じゅうだい課題かだいとして浮上ふじょうしてきた。イスラエルはオバマ政権せいけんが米国べいこくによる軍事ぐんじ作戦さくせんを排除はいじょする場合ばあい、独自どくじに破壊はかい作戦さくせんを断行だんこうする構かまえをみせており、５日にちの米国べいこく・イスラエル両国りょうこく首脳しゅのうの協議きょうぎが注視ちゅうしされている。

　イランのウラン濃縮のうしゅくによる核兵器かくへいき開発かいはつを自国じこくへの根本こんぽんからの脅威きょういとみなすイスラエルがイランの核かく施設しせつを軍事ぐんじ的てき手段しゅだんで破壊はかいするという意図いとを強つよめていることは米国べいこく側がわにも反復はんぷくして伝つたえられた。最近さいきんイスラエルを訪問ほうもんしたデンプシー米まい統合とうごう参謀さんぼう本部ほんぶ議長ぎちょうも２月がつ２９日にちの下院かいん公聴こうちょう会かいでイスラエル政府せいふがイラン攻撃こうげきの計画けいかくを真剣しんけんに進すすめていることを証言しょうげんした。同様どうようにイスラエルを訪おとずれたロジャーズ下院かいん情報じょうほう委員いいん長ちょうもイスラエルが軍事ぐんじ作戦さくせんを準備じゅんびしながらオバマ政権せいけんの動向どうこうに最大さいだいの注意ちゅういを向むけていると述のべた。

　そうしたイスラエル当局とうきょくの意向いこうを反映はんえいする形かたちでイスラエル軍ぐん情報じょうほう部門ぶもんの責任せきにん者しゃだったヤドリン氏しが１日にち付づけの米国べいこく大手おおて紙しに「イラン攻撃こうげきのイスラエルの最後さいごの機会きかい」と題だいする論文ろんぶんを寄稿きこうし、イランの核かく施設しせつを近々ちかぢかに攻撃こうげきしないと、その破壊はかいが非常ひじょうに難むずかしくなるとして、オバマ政権せいけんの態度たいど表明ひょうめいを迫せまった。

イスラエル側がわは米国べいこくがイランの核兵器かくへいき開発かいはつを経済けいざい制裁せいさいや外交がいこう圧力あつりょくで阻止そしできない場合ばあいには軍事ぐんじ手段しゅだんを取とるという基本きほん方針ほうしんを明示めいじすれば、単独たんどくの軍事ぐんじ攻撃こうげきは控ひかえるが、米国べいこくの態度たいどが曖昧あいまいなままだと、米べい側がわに事前じぜん通告つうこくをせずに実力じつりょくを行使こうしするという構かまえをみせている。ヤドリン論文ろんぶんはその意向いこうの表明ひょうめいと警告けいこくだったわけだ。

米べい側がわでも民間みんかんの大手おおて研究けんきゅう機関きかんＡＥＩが１日にち、「イランのナタンズ、フォルドウ両りょう地区ちくでのウラン濃縮のうしゅく作業さぎょうは最近さいきん、速度そくどが高たかまり、このままだと国際こくさい原子力げんしりょく機関きかん（ＩＡＥＡ）の推定すいていより１カ月かげつ早はやい今年ことし７月がつには核かく爆ばく弾だん一いち個こ分ぶんの濃縮のうしゅくウランを産出さんしゅつできる」という新あたらしい研究けんきゅう結果けっかを発表はっぴょうした。議会ぎかいでも共和党きょうわとう側がわを主体しゅたいにオバマ政権せいけんに対たいし軍事ぐんじ攻撃こうげきをも現実げんじつの選択肢せんたくしの一ひとつとして明示めいじすることを求もとめる声こえも強つよい。しかし現げん段階だんかいではオバマ政権せいけんはなお経済けいざい制裁せいさい優先ゆうせんの立場たちばを崩くずしていない。

イスラエルのネタニヤフ首相しゅしょうとバラク国防こくぼう相しょうは５日にちにワシントンを訪おとずれ、オバマ大統領だいとうりょうはじめ米国べいこく政府せいふ首脳しゅのうと会談かいだんし、イラン核かく開発かいはつへの対策たいさくを協議きょうぎするが、軍事ぐんじ攻撃こうげき案あんへの両国りょうこくの姿勢しせいの違ちがいをどう調整ちょうせいするかが注目ちゅうもくされている。

 こんな記事きじを書かきました。

【朝刊ちょうかん　国際こくさい】

■【外信がいしんコラム】ポトマック通信つうしん　ある留学生りゅうがくせいの帰国きこく

　私わたしの通かよう「ジョじょージタウン大学じたうんだいがく・ワシントン柔道じゅうどうクラブ」でここ６年ねん近ちかくコーチ役やくを務つとめてきた阿知波あちわ秀和ひでかず氏しが帰国きこくしていった。

　同氏どうしは拓殖大学たくしょくだいがく柔道じゅうどう部ぶの選手せんしゅとして活躍かつやくし、ワシントンには大学院だいがくいんへの留学りゅうがくを目的もくてきに滞在たいざいしていた。だが大学だいがく時代じだいは練習れんしゅうに明あけ暮くれ、英語えいごの習得しゅうとくに時間じかんを回まわせ なかったためか、「コロンビア特別とくべつ区く大学だいがく」（ＵＤＣ）の経営けいえい大学院だいがくいんに入はいるまで３年ねんほども英語えいごの学習がくしゅうに専念せんねんせざるを得えなかった。阿知波あちわ氏しはその間あいだ、同どう柔道じゅうどうク ラブの週しゅう３回かいの練習れんしゅうに通かよい続つづけ、近年きんねん、このクラブに指導しどうにきた日本にっぽんの学生がくせい柔道じゅうどう選手せんしゅたちのなかでも最もっとも長ながいかかわりとなった。

　その彼かれがこのほど同どう大学院だいがくいんの修士しゅうし課程かていを無事ぶじに終おえ、日本にっぽんの大だい企業きぎょうへの就職しゅうしょくも決きまって帰国きこくとなった。

　なにしろ長ながい滞在たいざいだから同どう柔道じゅうどうクラブの米人べいじんメンバーたちも別わかれを惜おしむ声こえが強つよく、帰国きこく直前ちょくぜんの送別そうべつパーティーには５０人にん以上いじょうが集あつまり、「ヒデから習ならった柔道じゅうどうの実技じつぎや精神せいしんは貴重きちょうだった」という感謝かんしゃの表明ひょうめいにあふれた。

　阿知波あちわ氏し自身じしんも２２歳さいから２８歳さいまでを過すごしたワシントンとその柔道じゅうどうクラブに去さりがたい思おもいを示しめし、「もし柔道じゅうどうのない留学りゅうがくだけだったら、アメリカ人ひとたちの知己ちきも増ふえず、英語えいごの難関なんかんも越こえられず、挫折ざせつしていたでしょう」と語かたっていた。（古こ森もり義久よしひさ）

アメリカが北朝鮮きたちょうせんとの間あいだで、北きたの核かく武装ぶそうに関かんする新あらたな合意ごういを成立せいりつさせたことが発表はっぴょうされました。

北朝鮮きたちょうせんはウラン濃縮のうしゅく、核かく実験じっけん、ミサイル実験じっけんなどを一時いちじ停止ていしするというのです。アメリカはその見返みかえりに食糧しょくりょうを北朝鮮きたちょうせんに提供ていきょうします。

さて、これで北朝鮮きたちょうせんが核かく武装ぶそうをやめるのか。

いやいや、そうではない。

ワシントンの専門せんもん家かに尋たずねてみたところの答こたえは上記じょうきのようでした。

北朝鮮きたちょうせん、ウラン濃縮のうしゅく一時いちじ停止ていしなど米べいと合意ごうい

ラリー・ニクシュ氏し

　□ＣＳＩＳ研究けんきゅう員いん　ラリー・ニクシュ氏し

　

■「秘密ひみつ施設しせつで濃縮のうしゅくが自由じゆうになる危険きけん」

 

　【ワシントン＝古こ森もり義久よしひさ】北朝鮮きたちょうせんの核兵器かくへいき開発かいはつに関かんする今回こんかいの米べい朝ちょう合意ごういについて米国べいこく議会ぎかい調査ちょうさ局きょくで長年ながねん、朝鮮半島ちょうせんはんとう情勢じょうせいを専せん門もんに研究けんきゅうしてきたラリー・ニ クシュ 氏しは２月がつ２９日にち、産経新聞さんけいしんぶんとの会見かいけんで、「北朝鮮きたちょうせんの核兵器かくへいきやミサイルの開発かいはつを部分ぶぶん的てきに制限せいげんする点てんで歓迎かんげいできる」と評価ひょうかする一方いっぽう、北朝鮮きたちょうせん側がわが国際こくさい査察ささつを認みとめる という寧辺にょんびょん地区ちく以外いがいの「複数ふくすうの秘密ひみつ施設しせつでウラン濃縮のうしゅくの動うごきが自由じゆうとなる危険きけんが残のこる」との見方みかたを示しめした。

 

　ニクシュ氏しは現在げんざい、大手おおてシンクタンクの戦略せんりゃく国際こくさい問題もんだい研究所けんきゅうじょ（ＣＳＩＳ）研究けんきゅう員いんを務つとめる。

 

　同氏どうしは、今回こんかいの合意ごういについて、核かく実験じっけんの停止ていし自体じたいは米国べいこくを利りするが、北朝鮮きたちょうせんがいま最大さいだい目標もくひょうとする核弾頭かくだんとうの小型こがた化か、軽量けいりょう化かはもう核かく実験じっけんを必要ひつようとしない段階だんかいまできた恐おそれがあり、ノドン・ミサイルへの核弾頭かくだんとう装備そうびによる韓国かんこくや日本にっぽんへの脅威きょういは去さらないと警告けいこくした。

 

　同氏どうしはまた、長距離ちょうきょりミサイルのムスダン開発かいはつについて、北朝鮮きたちょうせんが緊密きんみつな絆きずなを保たもつイランやパキスタンの同種どうしゅのミサイルの開発かいはつと実験じっけんの資料しりょう入手にゅうしゅで補おぎなえる 可能かのう性せい が高たかい、と指摘してきした。同氏どうしは北朝鮮きたちょうせんが米国べいこく側がわから栄養えいよう補助ほじょ食品しょくひん提供ていきょう以外いがいの譲歩じょうほをほとんど引ひき出ださないままに、核かくやミサイルの実験じっけん停止ていしに応おうじたことには驚おどろきを 表明ひょうめいした。

 

　「北朝鮮きたちょうせんは昨年さくねんの最後さいごの３カ月かげつに中国ちゅうごくから合計ごうけい５０万まんトンの食糧しょくりょう援助えんじょを得えており、食糧しょくりょう不足ふそくへの危機きき感かんは薄うすい。今回こんかいの譲歩じょうほは今後こんごの対たい米べい交渉こうしょうでより大おおき な目標もくひょう を目指めざすための切きり札ふだとするのではないか」と述のべ、譲歩じょうほの背景はいけいには食糧しょくりょう獲得かくとく以外いがいの複雑ふくざつな政治せいじ的てき動機どうきがあるとの見解けんかいを明あきらかにした。

 

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 最近さいきんの日本にっぽんの出版しゅっぱん界かいでは珍めずらしいノンフィクション大作たいさくの紹介しょうかいです。

　『「安やす南みなみ王国おうこく」の夢ゆめ』著者ちょしゃはすでにこれまで２冊さつの迫真はくしんのノンフィクションをあいついで世よに出だした牧まき久ひさ氏しです。牧まき氏しは日本経済新聞社にほんけいざいしんぶんしゃの専務せんむから副ふく社長しゃちょうまで務つとめた人物じんぶつですが、もともとは敏腕びんわん記者きしゃで社会しゃかい部ぶで活躍かつやくした後のち、ベトナム戦争せんそうの最終さいしゅう時期じきに南みなみベトナムのサイゴン特派とくは員いんを務つとめました。

牧まき氏しがここ数すう年ねんに刊行かんこうしたのは『サイゴンの火焔かえん樹じゅ』、そして『特務とくむ機関きかん長ちょう　許斐このみ氏し利り』という２冊さつの大著たいちょです。その２冊さつに続つづく今回こんかいの書しょを含ふくめて３冊さつを貫つらぬくテーマはベトナムです。