〈勇なるかな 勇なるかな 勇にあらずして何をもって行わんや〉
藩政改革を断行して有名な米沢藩主、上杉治憲(鷹山)が初めてお国入りする時、師から贈られた言葉である。師は儒学者、細井平洲(へいしゅう)。改革への反対派が牛耳る国許(くにもと)に帰る鷹山を励ますために書いたものだ。
この言葉を書いた掛け軸が今、愛知県東海市の市長執務室に掛けられている。就任10年目を迎えた鈴木淳雄市長が、市政を行う心得として毎日、目にするためのものである。
同市は全国住みよさランキング11位(平成22年)。10年前は418位だった。実績を挙げている鈴木市政の要諦は、平洲の教えの実践にあると言っても過言ではない。
契機は初めての市長選だった。選挙運動で身近に接した市民からは、市政に期待する声が驚くほど少なかった。鉄鋼の街、東海市は当時、鉄冷えで経済状況が悪いうえ、降下煤塵(ばいじん)にも悩んでいた。
「ショックでした。住民の声を吸い上げて市政に生かす仕組みをどうやってつくるか、考え始めた」
勇気もくれた郷土の偉人「民の心に従う政治を」