横綱白鵬らとともにモンゴルからやって来た一人の力士が、ようやく関取の座をつかんだ。式秀部屋の千昇=本名エルフバートル・バヤルバト=(28)。来日して丸11年。次々と番付で自分を追い越していく同胞たちに歯がみしたことは一度や二度ではない。支えとなったのは師匠とおかみさん、白鵬との絆、何より彼自身の勤勉さだった。外国人最スロー記録で十両に昇進した「遅れてきたモンゴル人力士」。彼の見てきた孤独、そしてこれから見る夢-。(宝田将志)
佐久間山の連勝止めた!
「自分の中でやることはやったんで結果を待つだけだった。本当にうれしいです」
東京・両国国技館内の記者クラブで行われた新十両会見。師匠の式秀親方(元小結大潮)と並んだ千昇は、報道陣に囲まれ少し緊張しながら喜びの言葉を口にした。
西幕下14枚目で迎えた昨年の九州場所で6勝1敗。優勝決定戦を制して初めて幕下優勝を勝ち取った。
「あれが一番大きな自信になった」
初場所は西幕下3枚目まで番付を上げ、九州場所の余勢を駆って5勝2敗と勝ち越し。佐久間山の連勝記録を27で止めるなど地力を示して悲願の十両昇進を決めた。
「長いようで短かった。長くは感じなかったです」
夢中だった。来日からはすでに11年がたっていた。