［国際こくさい］【正論せいろん】拓殖大学たくしょくだいがく大学院だいがくいん教授きょうじゅ・森本もりもと敏さとし　先行せんこう移転いてんで南西なんせい方面ほうめんに隙すき作つくるな＋（1/4ページ）（2012.2.16 03:08）

　２００３年ねんに緒いとぐちに就ついた米べい軍ぐん再編さいへんのプロセスとよく似にた再編さいへん協議きょうぎがまた、始はじまった。今回こんかいの米べい軍ぐん再編さいへんの動うごきをアジア太平洋たいへいよう地域ちいきに限かぎってみると、その主しゅたる理由りゆうは「中国ちゅうごく」と「カネ」である。

　「中国ちゅうごく」とは、東シナ海ひがししなかい、南シナ海みなみしなかいに勢力せいりょくを広ひろげている中国ちゅうごくの海洋かいよう進出しんしゅつのことである。米国べいこくはこれに対たいし、アジア太平洋たいへいようを重視じゅうしする国防こくぼう戦略せんりゃくを採用さいようして域内いきないの同盟どうめい国こくや友好国ゆうこうこくの協力きょうりょくを取とり付つけ、緩ゆるやかな対たい中ちゅう包囲ほういを進すすめている。

　日にち、韓かん両国りょうこくだけでなく、オーストラリアやＡＳＥＡＮあせあん（東南とうなんアジア諸国しょこく連合れんごう）のフィリピン、シンガポールなどにも米べい軍ぐんを分散ぶんさん配備はいびして地域ちいき全体ぜんたいに抑止よくし力りょくと対応たいおう力りょくを構築こうちくする構想こうそうである。ハワイの米べい太平洋軍たいへいようぐん司令しれい部ぶを中心ちゅうしんに、前方ぜんぽうにあるグアム基地きちを戦略せんりゃく的てきハブ（拠点きょてん）にして、東シナ海ひがししなかいや南シナ海みなみしなかいに出でてくる中国ちゅうごくに対応たいおうする。

　もう一ひとつの「カネ」とは、国防こくぼう費ひの逼迫ひっぱく（ひっぱく）である。米国べいこくは今後こんご、５年間ねんかんに２５９０億おくドル（約やく２０兆ちょう円えん）の国防こくぼう費ひ削減さくげんを迫せまられている。米べい議会ぎかいはグアム基地きちの建設けんせつ予算よさんを、経費けいひ削減さくげんと普天間ふてんま飛行場ひこうじょうの移設いせつ問題もんだいの遅おくれを理由りゆうに許可きょかせず、１２年度ねんど予算よさんもゼロ査定さていであった。

　≪鍵かぎ握にぎる分散ぶんさん配備はいびと経費けいひ負担ふたん≫

　だが、グアム基地きちを２０年ねん頃ごろまでに戦略せんりゃく的てきハブにしなければ、東シナ海ひがししなかい、南シナ海みなみしなかいへの中国ちゅうごくの進出しんしゅつに対応たいおうできない。そのためには普天ふてん間あいだ移設いせつ問題もんだいの解決かいけつをこれ以上いじょう、待まってはいられない。他方たほう、海兵かいへい隊たいのグアム移転いてんは沖縄おきなわの米べい軍ぐん基地きちの安定あんてい的てき使用しように不可欠ふかけつである。