「ピンクスライム」は問題にならないのか 食品業界の裏側に迫る

相場そうば英雄えいゆう時事じじそう

 ここすう週間しゅうかん米国べいこくのファストフード業界ぎょうかいれているのをごぞんじだろうか。ファストフードのビジネスモデルの根幹こんかんす「てい価格かかく」をささえたある加工かこう食品しょくひんがやりだまがっているのだ。

 べい当局とうきょく専門せんもんはこの加工かこう食品しょくひん安全あんぜんせい問題もんだいはないと指摘してきしているが、同国どうこく消費しょうひしゃからは猛烈もうれつ反発はんぱつまねいている。これは同国どうこくだけの問題もんだいなのか。筆者ひっしゃつよいや、と主張しゅちょうする。

●ピンクスライムの衝撃しょうげき

 冒頭ぼうとうれた加工かこう食品しょくひんとは、「ピンクスライム」のことだ。これは、うしくずにくをアンモニアすい洗浄せんじょうし、食品しょくひん添加てんかぶつ化学かがく調味ちょうみりょうぜてできがるピンク色ぴんくいろをした「にく由来ゆらい製品せいひん」のことだ。

 米国べいこくでは大手おおてファストフードチェーンが主力しゅりょくのハンバーガーのパテのつなぎとして多用たようしてきた経緯けいいがある。ところが、さき著名ちょめい英国えいこく料理りょうりがこの加工かこう食品しょくひんのいかがわしいめん焦点しょうてんて、動画どうが公開こうかいしたことから、米国べいこく消費しょうひしゃから猛烈もうれつ批判ひはんこえがったのだ。

 料理りょうりジェイミー・オリバーがピンクスライムを説明せつめいした動画どうががネットじょう話題わだいとなり、読者どくしゃなかにもにしたきがすくなくないはず。日本にっぽんのファストフード業界ぎょうかいはどうなっているのか、との議論ぎろん活発かっぱつした経緯けいいがある。

 筆者ひっしゃ拙著せっちょふるえるうし』(小学館しょうがくかん)のなかで、日本にっぽん加工かこう食品しょくひん業界ぎょうかい内幕うちまくれた。執筆しっぴつたっては、『食品しょくひん裏側うらがわ―みんな大好だいすきな食品しょくひん添加てんかぶつ』(ちょ安部あべつかさ東洋経済新報社とうようけいざいしんぽうしゃ)をはじめ、おおくの関連かんれん書籍しょせきとおした。

 このほか、実際じっさい食品しょくひん加工かこう現場げんば人物じんぶつにも取材しゅざいした。こうして知識ちしき情報じょうほう勘案かんあんすると、日本にっぽんでもファストフードだけでなく、さまざまな食品しょくひんかかわる業界ぎょうかいで、米国べいこくの「ピンクスライム」と同様どうようの“加工かこうひん”がひろ使用しようされている事実じじつり、愕然がくぜん(がくぜん)とした。

 たとえば、ラーメン。

 おおくの有名ゆうめいてん人気にんきてん店舗てんぽ展開てんかい強化きょうかしているが、「スープやタレのあじ系列けいれつてん均一きんいつさせるため、食品しょくひん添加てんかぶつ化学かがく調味ちょうみりょうあじつくっている」(ぼうチェーンてん幹部かんぶ)といった事柄ことがらたりまえとなっている。

 ラーメンのスープは、素材そざいとなるにわとりガラや煮干にぼししなどの品質ひんしつにムラがあるうえ出汁だしみちびくためのみずしつによってもがらりとあじわってしまう。

 「ラーメンてん全国ぜんこく展開てんかいには、みせ独自どくじのスープのもと添加てんかぶつ調合ちょうごうする必要ひつようがある。店舗てんぽ配送はいそうして“みせあじ”としてきゃく提供ていきょうする」(どう)といった具合ぐあいだ。

 もちろん、添加てんかぶつくに基準きじゅんたし、安全あんぜんせい確認かくにんされたものだ。だが、「食後しょくごのどかわいたり、したざつあじのこるなどの作用さようはある」(どう)という。

てい価格かかく弁当べんとう中身なかみ

 デフレ経済けいざい長期ちょうきとともに、大手おおて流通りゅうつう各社かくしゃはこぞって「げきやす弁当べんとう」をし、メディアもこれをおおきな話題わだいとしてげた。300えん、250えん弁当べんとうがニュース素材そざいとしてテレビや新聞しんぶんげられたことをご記憶きおくきもおおいはず。

 ただ、さきのラーメンてん全国ぜんこく展開てんかい、ひいては米国べいこくのピンクスライム問題もんだい同様どうように、「徹底的てっていてきやす食材しょくざい大量たいりょう購入こうにゅうし、添加てんかぶつまみれにしなければげきやす価格かかく実現じつげんできない」(食品しょくひん加工かこう会社かいしゃ関係かんけいしゃ)という側面そくめんはあまり注目ちゅうもくされてこなかった。

 たとえば、弁当べんとうはい機会きかいおおいソーセージはどうか。『ふるえるうし』の取材しゅざい段階だんかいでは、「原料げんりょうくずにくが5トンで、最終さいしゅうてき工場こうじょうから出荷しゅっかされるさいは11トンから12トンになっている」(どう)というこえせっした。

 原料げんりょうくずにくだというのはある程度ていど覚悟かくごしていたが、水増みずましされた添加てんかぶつりょうおおさ、そして実際じっさいに「みず」を添加てんかして分量ぶんりょうやすとらされ、筆者ひっしゃ仰天ぎょうてんした。

 取材しゅざいてからは、自宅じたくはもちろんのこと、外食がいしょくしたさいてい価格かかくのソーセージをいち切口きりくちにしなくなった。