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秀吉対利休、真の勝者は? 『天下人の茶』 (伊東潤 著)|インタビュー・対談|「オール讀物」編集部|本の話WEB
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インタビュー・対談たいだん
『天下人の茶』 (伊東潤 著)

秀吉ひでよしたい利休りきゅうしん勝者しょうしゃは?

天下てんかじんちゃ』 (伊東いとうじゅん ちょ

きて「オール讀物よみもの編集へんしゅう 

 旺盛おうせい執筆しっぴつ活動かつどうしつたか歴史れきし時代じだい小説しょうせつ量産りょうさんしている著者ちょしゃだが、最近さいきんは『いけ田屋たやらん』『んでたまるか』『武士ぶしいしぶみ』『くじら分限ぶげん』と幕末ばくまつから明治めいじ題材だいざいにした作品さくひんつづいてきた。ほんさく天下てんかじんちゃ』は、ひさしぶりに〈主戦しゅせんじょう〉ともいえる戦国せんごく時代じだい舞台ぶたいである。

 絢爛けんらん豪華ごうかたる安土あづち桃山ももやま文化ぶんかしゅをしめていたちゃ。その文化ぶんか創出そうしゅつしたおとこ千利休せんのりきゅう現世げんせい支配しはいしゃとなった豊臣とよとみ秀吉ひでよしとの相克そうこくは、利休りきゅう秀吉ひでよし切腹せっぷくめいじられたことによってわりをげた。たしてこのあらそいのうらにはなにかくされていたのか――。

戦国せんごく時代じだいえがくために様々さまざま文献ぶんけん史料しりょうんできてかったのは、このテーマがけてとおれないということです。壮絶そうぜつ時代じだいなか武将ぶしょうたちはしん静謐せいひつるためにちゃもとめた。〈政治せいじ〉や〈軍事ぐんじ〉だけではなく、ちゃとおした〈文化ぶんか〉や〈精神せいしん〉の部分ぶぶんかたらずして戦国せんごく時代じだいえがけないなと。だから先達せんだつ作品さくひん数多かずおおくあるわけです。なかでも山本やまもと兼一けんいちさんの『利休りきゅうにたずねよ』には影響えいきょうけました。以来いらい自分じぶんなりの利休りきゅうをいつかいてみたいとおもってきました」

 6しょうからなる物語ものがたり大半たいはんは、利休りきゅう高弟こうていだった、牧村まきむら兵部ひょうぶ瀬田せた掃部、古田ふるた織部おりべ細川ほそかわさんとき忠興ただおき)らが、視点してん人物じんぶつとしてかれている。

織田おだ信長のぶなが千利休せんのりきゅう西郷さいごう隆盛たかもりの3にんは、そのとらえどころのなさから、本人ほんにん視点してんでは、とてもえがききれない人物じんぶつです。むしろ周囲しゅうい人物じんぶつとおしてることにより、存在そんざいかんかびがってきますし、そのほうがミステリアスな部分ぶぶんのこせるので、読者どくしゃ個々ここっているイメージもまもれるがします」

 短編たんぺんとして雑誌ざっし掲載けいさいしたものを大幅おおはば改稿かいこうしてつながりをたせ、登場とうじょう順番じゅんばんりにった。大陸たいりくへの進出しんしゅつ失敗しっぱいし、みずからの功績こうせきのう謡曲ようきょくにして、それをえんじることにのめりんでいく秀吉ひでよし姿すがたにはじまり、弟子でしたち個々ここ人生じんせい利休りきゅうとのかかわりをえがくことで、徐々じょじょ利休りきゅう真相しんそうせまっていく仕掛しかけはじつにスリリングだ。

 伊東いとうさんは、秀吉ひでよしを「野心やしん自己じこ顕示けんじよくきわめて旺盛おうせい人物じんぶつ」と看破かんぱしつつ、「そのやろうとしたことは信長のぶなが模倣もほうにすぎない」と分析ぶんせきする。一方いっぽう黄金おうごん茶室ちゃしつみずかつくった芸術げいじゅつセンスを「秀吉ひでよし独自どくじびを発見はっけんした」ともひょうし、そこから利休りきゅうとの対立たいりつ発生はっせいし、さらに関係かんけい悪化あっかしていく過程かていにも、あらたな解釈かいしゃくんでいく。

ちゃというのは静寂せいじゃくなか淡々たんたんすすんでいくようにえます。でもしんなかは、くるっていることもあります。そうしたダイナミズムは、合戦かっせんえがくこととなんわりません」

伊東いとうじゅん(いとうじゅん)

1960ねん神奈川かながわけんまれ。早稲田大学わせだだいがく卒業そつぎょう。『くにったおとこ』で吉川よしかわ英治えいじ文学ぶんがく新人しんじんしょう、『きょくじらうみ』で山田やまだかぜ太郎たろうしょう高校生こうこうせい直木賞なおきしょうとうげえ』で中山なかやま義秀よしひで文学ぶんがくしょうほか。

掲載けいさいオール讀物よみもの 2016ねん1がつごう

天下てんかじんちゃ
伊東いとうじゅんちょ

定価ていか本体ほんたい1,500えんぜい発売はつばい:2015ねん12月05にち

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オール讀物よみもの 2016ねん1がつごう

定価ていか:980えん税込ぜいこみ) 発売はつばい:2015ねん12月22にち

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