故こ・井上いのうえひさしさんの幻まぼろしの戯曲ぎきょく原稿げんこう発掘はっくつ！

2010年ねん4月がつ9日にちに逝去せいきょ、まもなく七なな回忌かいきを迎むかえる井上いのうえひさしさんが学生がくせい時代じだいに翻訳ほんやくした、未み発表はっぴょうの戯曲ぎきょく原稿げんこうが発見はっけんされた。約やく90枚まいの草稿そうこう全文ぜんぶんが誌面しめんに掲載けいさいされるまで――。

オール讀物よみもの　2016年ねん4月がつ号ごう

「亡なくなられた井上いのうえひさしさんの学生がくせい時代じだいの未み発表はっぴょう原稿げんこうが発見はっけんされたんだよ」

「それはいったいどういう経緯けいいで？　どんな作品さくひんなんですか？」

「作家さっかの出だし久根くね達郎たつおさんが古書こしょ市場いちばに出でていたのをSさん（元もと編集へんしゅう者しゃ）に知しらせ、そこからご家族かぞくの手元てもとに戻もどってきたんだけど、どうやらフランスの戯曲ぎきょくらしいんだ」

未み発表はっぴょう原稿げんこう「讃さん血ち亞あ護まもる（サンチアゴ）騎士きし団長だんちょう」

きちんと製本せいほんをされた本書ほんしょの表紙ひょうし

　そんな編集へんしゅう部ぶでの会話かいわを経へて、現物げんぶつを見みせていただくために鎌倉かまくらのご自宅じたくへ伺うかがったのは2月がつ末まつ。冷つめたい雨あめが降ふりしきる中なかでしたが、井上いのうえさんの代表だいひょう作さくにちなんだ『吉里吉里きりきり忌き』（4月がつ9日にち～10日にち／山形やまがた県けん川西かわにし町まちフレンドリープラザにて開催かいさい）の準備じゅんびもあり、旧知きゅうちの編集へんしゅう者しゃが十じゅう数すう名めい集あつまりました。

井上いのうえひさしさん。『手鎖てじょう心中しんちゅうの』で直木賞なおきしょう受賞じゅしょうの頃ころ。昭和しょうわ47年ねん撮影さつえい

　遅筆ちひつで知しられた井上いのうえさんの原稿げんこうを直じかに受うけ取とっていた面々めんめんは、口々くちぐちに感想かんそうを漏もらします。

「僕ぼくの知しっているひさしさんの文字もじとは、少すこし違ちがうような気きがするんだけど？」

「いやいや、この書かき込こみのやり方かたなんかはひさしさんにそっくりだよ」

　きちんと製本せいほんされた『讃さん血ち亞あ護まもる騎士きし団長だんちょう』というこの一いち冊さつは、いつ頃ごろ、何なんの目的もくてきで、何なにより若わかき日ひの井上いのうえひさしさんによって訳やくされた本物ほんものなのだろうか……。

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