世界で勝てる卓球へ
ロンドン五輪女子団体銀メダル、全日本選手権5回優勝など日本卓球界を牽引し、2016年4月に引退した平野早矢香さん(32)が、現役生活を振り返って「卓球の鬼と呼ばれて。」を出版した。若手が台頭し、東京五輪での打倒中国へ期待が膨らむ日本女子卓球界。その足場を築いた平野さんに、著書に込めた思いなどを聞いた。
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5歳でラケットを握った。両親は卓球経験者だが、ともに戦った福原愛(ANA)と石川佳純(全農)、今注目を集める平野美宇(エリートアカデミー)、伊藤美誠(スターツ)のように自宅に卓球場があるような環境で育ったわけではない。本当に普通の家庭に生まれて、町の卓球クラブに通って練習をするスタイルだった。
ミキハウスへ入社して本格的に世界の舞台を目指し、18歳で全日本選手権初優勝を果たしても、「特徴のない卓球」「世界で勝てない卓球」といわれた。用具の種類も多い卓球は「戦型」が大きな意味を持つ。「今のスタイルでは世界と対等に戦うのは難しいのではないかと思ったので、変えるしかないと」、それまでの「安定志向」から「攻め」の卓球へ改造に挑んだ。
卓球は技術、戦術の全てが緻密につながり、改造には大きなリスクを伴う。それまでの良さを失っても意味がない。1年を通して試合があり、改造中に負けが込めば世界ランクが下がり、主要大会の代表にもなれず、元も子もなくなる。「変える過程では今まで勝っていた選手に負けることもあったし、今までよりもうまくいかないこともあったので、時間をかけて、いろんなことを少しずつ変えていきました。目指すところがはっきりしていたので、迷っても持ちこたえられたんじゃないかなと思います」