吸血鬼きゅうけつきの魅力みりょくは、1人ひとりでは生いきられないところ

──「サーヴァンプ」連載れんさい10周年しゅうねんおめでとうございます！ まずは10周年しゅうねんを迎むかえての率直そっちょくなお気持きもちから聞きかせていただけますか。

ありがとうございます！ こんなにも長ながく作品さくひんを応援おうえんしていただけて、感謝かんしゃの気持きもちでいっぱいです。正直しょうじきなところ、ここまで連載れんさいを続つづけられるとは思おもっていませんでした。出版しゅっぱん社しゃの皆みなさまやメディアミックスに関かかわってくださったすべての方々かたがた、そして何なにより、ここまで読よみ続つづけて応援おうえんしてくれた読者どくしゃの皆みなさまのおかげです。

──今回こんかいのインタビューは、「サーヴァンプ」のこれまでを振ふり返かえる形かたちでお話はなしを伺うかがわせていただければと思おもいます。最初さいしょに「サーヴァンプ」が誕生たんじょうした背景はいけい、作品さくひんの着想ちゃくそうのきっかけについて教おしえてください。

「新あたらしく雑誌ざっしを作つくるから、その創刊そうかん号ごうの連載れんさいコンペに参加さんかしないか」と声こえをかけていただいたのがきっかけでした。まだコミックジーンという雑誌ざっし名めいも決きまっていなかった頃ころです。最初さいしょは探偵たんていモノ、いわゆるホームズとワトソン的てきな、探偵たんていと助手じょしゅを中心ちゅうしんとした依頼いらい形式けいしきのお話はなしを描えがきたいと思おもっていました。このとき編集へんしゅう部ぶから、読者どくしゃ層そうの中心ちゅうしんとして「バトルマンガやファンタジーマンガが好すきな10代の女おんなの子こ」をイメージしてほしいと言いわれていたので、吸血鬼きゅうけつきのバトルマンガもいいかなあと思おもい、“探偵たんてい”と一緒いっしょに“吸血鬼きゅうけつき”の企画きかくも提出ていしゅつしたんです。そうしたら、探偵たんていモノはすでに連載れんさいが決きまっている別べつの作品さくひんとジャンルが被こうむってしまうという話はなしになって。編集へんしゅうさんと相談そうだんして、ジャンルが被こうむっていない企画きかくのほうが通とおりやすいだろうと、吸血鬼きゅうけつきモノを進すすめていくことにしました。

──そこで探偵たんていモノに進すすんでいたら、「サーヴァンプ」が生うまれなかった可能かのう性せいもあったんですね。“主従しゅうじゅうモノ”というアイデアも最初さいしょからあったのでしょうか？

主従しゅうじゅうというより、2人組にんぐみのバディものがやりたくて、それっぽいものをいろいろと考かんがえていたような気きがします。アイデアとして一番いちばん最初さいしょからあったのは、たぶん「黒くろ猫ねこに変身へんしんする吸血鬼きゅうけつき」じゃないかなと思おもいます。猫ねこは絶対ぜったい、かわいいですから（笑）。そういえば、初期しょきのタイトル候補こうほは「SERVAMP（サーヴァンプ）」か「VAMPET（ヴァンペット）」でした。もし「ヴァンペット」だったら、もっとペットコメディっぽくなってたのかもしれません（笑）。

──同おなじ吸血鬼きゅうけつきモノでも、かなり雰囲気ふんいきが変かわりそうです。

吸血鬼きゅうけつきを描えがくと決きめてから、そこに楽たのしんでもらえそうな要素ようそをどんどん詰つめ込こんで……。今いま振ふり返かえれば、なんでもかんでもコテコテに盛もりすぎでコンセプトもよくわからなくなってるので、スッキリさせろと自分じぶんに言いいたいですが（笑）、当時とうじはまずやれること全部ぜんぶやってみようみたいな感かんじだったんだと思おもいます。とにかくまずは連載れんさい枠わくを獲得かくとくできるように、自分じぶんの描えがきたいものというよりは新しん創刊そうかんのジーンという雑誌ざっしに編集へんしゅう部ぶが求もとめているものを作つくろうと、一生懸命いっしょうけんめいだったように思おもいます。

──そうして見事みごと、連載れんさいを勝かち取とったと。田中たなかストライクさんは吸血鬼きゅうけつきの魅力みりょくはどんなところだと思おもいますか。

吸血鬼きゅうけつきの魅力みりょく……個人こじん的てきには、誰だれか他者たしゃを必要ひつようとする、1人ひとりでは生いきられない生いき物ものであるところかなと思おもって描えがいています。人ひとの血ちを飲のむことが生いきるのに必要ひつようだけれど、それを得えるには人ひとを傷きずつけて血ちを流ながさせるしかないという、そういう宿命しゅくめいというか矛盾むじゅんのようなものが魅力みりょくなのかなあと思おもいます。あと、地味じみに弱点じゃくてんが多おおいところとか（笑）。

──確たしかに弱点じゃくてんは多おおいですよね（笑）。反対はんたいに、吸血鬼きゅうけつきを描えがく難むずかしさはどんなところ？

昼間ひるまの屋外おくがいを舞台ぶたいにしにくいところ……とかでしょうか。灰はいに、というか「サーヴァンプ」の場合ばあいは動物どうぶつになっちゃうので。たまにカラーイラストなどで普通ふつうに青空あおぞらを描えがいてしまって、「あっ……」と後あとで思おもうときがあります（笑）。あれは屋内おくないのセットということで……。

価値かち観かんのぶつかり合あいこそが“2人組にんぐみ”の面白おもしろさ

──主人公しゅじんこうペアの真昼まひるとクロは、どんな部分ぶぶんからイメージを膨ふくらませ、キャラクターを組くみ立たてていったんでしょうか。

編集へんしゅう部ぶから「主人公しゅじんこうの動機どうきや葛藤かっとうの中心ちゅうしんにあるものは恋愛れんあい以外いがいにしてほしい」ということを言いわれていたので、主人公しゅじんこうを考かんがえるうえでここは意識いしきしました。あっ、でもこれはあくまで10年ねん前まえの雑誌ざっし創刊そうかん当時とうじのことなので、今いまのコミックジーンにおいては全然ぜんぜん関係かんけいない話はなしです、念ねんのため。真昼まひるはいわゆる“主人公しゅじんこうらしさ”のあるキャラクターを描えがこうと意識いしきしていたと思おもいます。まっすぐで、人ひとを信しんじる心しんがあり、完璧かんぺきな人間にんげんでは全然ぜんぜんないけど、少すこしだけ勇気ゆうきがある。読よんだときに「自分じぶんと同おなじなんだけど、ちょっと憧あこがれる」と思おもってもらえるキャラになっていたらいいなあと思おもっています。真昼まひるは読者どくしゃの視点してんに近ちかくなれるように、ある意味いみで没ぼつ個性こせい的てきというか、ツッコミ役やく程度ていどの邪魔じゃまにならないキャラクターを最初さいしょは想定そうていしていました。でも、今いまでは全然ぜんぜん変かわったと思おもいます。「サーヴァンプ」は少年しょうねんの成長せいちょうの物語ものがたりだと思おもっているので、真昼まひるの変化へんかも感かんじていってもらえたらうれしいです。

──クロは……この初期しょき案あんを拝見はいけんすると、だいぶ印象いんしょうが違ちがいますね。

最初さいしょはもっとイケメンらしいイケメンを目指めざしていたんですよね……。でも描えがきにくいのでやめてよかったです（笑）。猫ねこと見みせかけて実じつはライオンという設定せっていは決きめてあったので、ビジュアルはそのあたりの動物どうぶつをモチーフにデザインしました。フードについた猫ねこ耳みみのようなファーはタテガミで、猫ねこクロの尻尾しっぽの先さきがちょっと変かわった形かたちなのもライオンを意識いしきしてます。クロは真昼まひると一緒いっしょに主人公しゅじんこうとなるキャラクターなので、いわゆる吸血鬼きゅうけつきの“王道おうどう”のイメージから外はずれすぎないように気きを付つけなければと思おもってます。気きを抜ぬくと吸血鬼きゅうけつきマンガというより猫ねこマンガになってるので（笑）。

──「サーヴァンプ」は“七ななつの大罪だいざい”もテーマの1つですが、主人公しゅじんこうをどの“罪つみ”にするかは悩なやまれましたか？

「黒くろ猫ねこに変身へんしんする吸血鬼きゅうけつき」のアイデアが先さきにあったので、猫ねこという動物どうぶつのイメージに近ちかいもの……と考かんがえて、すぐ怠惰たいだに決きまったように思おもいます。七ななつの大罪だいざいは、ファンタジー作品さくひんでは割わりとメジャーなモチーフだと思おもうので、その罪つみ“らしさ”と“意外いがいさ”のバランスは意識いしきしました。らしく作つくりすぎるとよくある感かんじになってしまうし、逆ぎゃくに奇きをてらいすぎてどの罪つみなのかわからなくなってしまうのもよくないと思おもうので。

──先さきほど、クロが怠惰たいだなので真昼まひるはそれを引ひっ張ぱれる人ひとに……というお話はなしがありましたが、やはりサーヴァンプとイヴはセットで考かんがえることが多おおいのでしょうか。

そうですね、サーヴァンプとイヴは基本きほん的てきにセットで考かんがえてます。イヴは、基本きほん的てきにはその“罪つみ”の反対はんたいの存在そんざいのように見みえる人ひと、そのサーヴァンプとぶつかり合あいそうなキャラクター。各かくペアが持もっているテーマに対たいして、サーヴァンプとイヴが真ま逆ぎゃくの価値かち観かんを持もっていることを意識いしきしています。クロが何事なにごとにも「向むき合あえねー」奴やつなので、真昼まひるはその逆ぎゃくで「向むき合あおう」とする人ひとであるとか。何なにかの事件じけんや困難こんなんに直面ちょくめんしたとき、2人ふたりがそれぞれ真ま逆ぎゃくの行動こうどうを取とろうとするような、そういうバランスになるといいなと思おもっています。価値かち観かんのまったく違ちがう2人ふたりが一緒いっしょに何なにかを成なし遂とげなければならない、その価値かち観かんのぶつかり合ごういが“2人組にんぐみ”の面白おもしろさだと思おもうので。ビジュアル的てきには、各組かくくみごとにモチーフとなるものをいくつか決きめていて、そこから連想れんそうする形かたちで膨ふくらませています。ペアの2人ふたりが並ならんだときのシルエットの感かんじは特とくに大切たいせつにしていて、2人ふたりのシルエットに共通きょうつう点てんや対称たいしょう性せいがあることを意識いしきしています。