女 の気持 ち
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されどつえ
北九州 市 八幡西 区 ・寺本 チエ子 (87歳 )9/28 06:22 566文字 幸 せにも友人 や知人 の方 たちに元気印 が多 い。「つえを突 いて歩 くなんてまだ早 いよ」「まだ若 いつもりよ」とつえ拒否 反応 の人 が多 い。私 も同感 である。昨今 コロナ禍 で巣 ごもりが多 くなり、運動 不足 で足腰 が弱 ってきた。普段 は「姿勢 がいいね」「歩 くのが速 いね」と言 われていたのが、ちょっぴり鼻 高 でもあった。 ところ -
困難 乗 り越 えて大阪 府 熊取 町 ・西川 正子 (主婦 ・79歳 )9/28 06:19 562文字 朝夕 は涼風 を感 じ、街路 樹 のイチョウの葉 も日増 しに色 を濃 くしている。秋 本番 が近 いこの時期 に私 たち夫婦 は結婚 し、昨日 27日 に60周年 を迎 えることができた。 60年 の結婚 生活 は決 して順風 満 帆 とはいえず、さまざまな困難 に直面 した。結婚 当時 19歳 だった私 は、子供 から急 に大人 になったような、妙 な感覚 だったこと -
靴 磨 き山形 県 寒河江 市 ・岡崎 敏子 (主婦 ・55歳 )9/28 02:01 557文字 帰省 していた娘 が自宅 に戻 る前日 、革靴 を磨 いてやることにした。ボロ布 に汚 れ落 としを付 け、全体 をふく。無色 の靴 クリームを薄 く塗 る。布 でふき上 げてから仕上 げにブラシをかける。シュッシュ、シュッシュ……というリズミカルな音 を聞 くうち、不意 に結婚 前 のことを思 い出 した。実家 で暮 らしていたころ、私 はしょっちゅ -
へこまない
理由 奈良 県 斑鳩 町 ・小滝 かつ子 (音訳 、点訳 奉仕 員 ・88歳 )9/27 06:06 526文字 久 しぶりにおなか回 りを採寸 すると(とてもウエストとは書 けません)、腹囲 90センチ、腰 の回 り91センチ。どうりでパンツやスカートの着脱 がスムーズにいかないわけです。東日本 大震災 の1年 後 、奈良 県 に移住 した直後 は環境 が変化 したせいか、パンツ類 がぶかぶかになりました。自分 で仕立 てたものなので、直 すのは簡 -
頑張 れている私 札幌 市 白石 区 ・宮岡 愛 (主婦 ・43歳 )9/27 02:03 540文字 40
歳 を過 ぎたあたりから、うっかりミスが増 えてきたように思 う。料理 中 、ほかのことに気 を取 られ鍋 を焦 がしてしまったり、外出 するときに家 の鍵 をかけ忘 れたり……。子 どもたちにおっちょこちょいのレッテルを貼 られてしまっている。先日 もまた、信 じられないミスをしてしまった。通販 で購入 した商品 を返品 するために -
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大正琴 北九州 市 小倉南 区 ・桜井 恵子 (主婦 ・74歳 )9/26 02:01 573文字 我 が家 は転勤 族 で都会 暮 らしが多 かったので、子供 たちの小 さい頃 の楽 しみは、野鳥 がさえずり自然 がいっぱいの夫 の古里 へ帰 ることでした。 お盆 に帰省 した時 、1人 暮 らしの義母 は仏壇 の前 に正座 し、お経 を上 げた後 、大正琴 を弾 いていました。今 まで見 たことのない和楽 器 でした。鍵盤 を左手 で押 さえ、2本 の金属 弦 を右手 -
私 のランドセル宮崎 県 都城 市 ・塚野 安枝 (小学校 職員 ・48歳 )9/25 06:10 560文字 小学校 の卒業 を間近 にめいのランドセルが壊 れたため、買 い替 えた代替 品 があるけれど、どうかと姉 から持 ちかけられて娘 に譲 り受 けた。娘 は来年 の春 、小学校 入学 を控 えている。代替 品 のランドセルは今 、デパートやホームセンターなどで展示 されている色 鮮 やかで、凝 った刺 しゅうが入 ったかわいい物 とは違 い、オーソドック -
へその
緒 愛知 県 清須 市 ・三宅 節子 (無職 ・80歳 )9/25 02:00 555文字 先 の戦時 下 、家族 は最小限 の家財 を持 って疎開 したが、私 のへその緒 も持 ち続 けていた。乾物 のように見 えるが、子 が母胎 に存在 した事実 を語 る貴重 品 だ。 1965(昭和 40)年 、国立 病院 で長女 を産 んだとき、へその緒 は木 の箱 に入 れて返 された。2年 半 後 、次女 のへその緒 は薬 の紙袋 に入 れて戻 された。その7年 後 、同 じ病 -
絵手紙 から奈良 県 香芝 市 ・吉尾 喜代子 (主婦 ・63歳 )9/24 05:34 547文字 お
盆 にお供 えしたカボチャをしばらく台所 に置 いていた。大 きくて、ごつい皮 なので扱 うのが面倒 になっていたが、切 って割 ることにした。 ユニークな切 り口 と大 きな種 を見 て、絵手紙 を描 きたい気持 ちにかき立 てられた。早速 、包丁 を筆 に持 ち替 えて取 りかかった。退職 後 に始 めた絵手紙 は、「下手 でいい、下手 がいい」のキ -
和服 と私 さいたま市 南 区 ・木谷 文代 (主婦 ・69歳 )9/24 02:01 546文字 昨年 の秋 に何気 なく、外出 自粛 を楽 しむなら家 で和服 を着 て過 ごそう、と思 い立 った。そして、いろいろなことを思 い出 した。娘 のころ、母方 の大伯母 の家 に5年 ほど寄宿 していた。それは愛情 に満 ちた日々 だった。私 は彼女 を「茅ケ崎 のおばあちゃん」と呼 んでいた。彼女 は真夏 を除 いて和服 で過 ごし、小柄 で美 しい人 だった。 -
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最後 の奇跡 大阪 府 富田林 市 ・吉岡 暁子 (無職 ・75歳 )9/23 06:32 537文字 突然 、施設 から「酸素 飽和 度 が下 がってきました。すぐ来 てください」と連絡 がきた。慌 てて駆 けつけ、窓 から時々 見 かけるしかなかった夫 の腕 を、ただただ、なでさすった。「このままでは逝 かせたくない、逝 かせたくない」と、無言 の夫 の腕 をなでさすった。翌日 、朝 一番 の飛行機 でやってきた2人 の子 どもに前夜 の様子 を伝 -
アルバム
帳 大分 県 別府 市 ・土屋 多喜子 (80歳 )9/23 06:31 553文字 友人 が電話 で「アルバムは1冊 にまとめ、本 は本 好 きの人 がほとんど持 ち出 してくれたので部屋 はすっきりしたよ」と話 す。終 活 が言 われ、背後 から「何 もせんでいいの」の声 にせかされているような日々 にプレッシャーがかかる。書棚 にあふれている本 、広 い場所 を占 めているアルバム帳 の前 で、まずは写真 整理 を始 める。 捨 -
30
年 後 に東京 都 多摩 市 ・古賀 直子 (主婦 ・84歳 )9/23 02:00 552文字 夕暮 れどき、夫 の知 り合 いだという若 い男性 の訪問 があった。お会 いした記憶 がないなあ、誰 だっけと戸惑 っていると「今夜 一緒 に飲 む約束 があり、伺 いました」とのこと。大 きなお土産 も持参 されて、しかもハンサム。あわてて夫 を捜 したが、どこにいったのか見 つからない。電話 で連絡 しなくては、と携帯 を開 いた。ところが -
青 カビのカバン岡山 県 玉野 市 ・有 友 紗 哉香 (アルバイト・38歳 )9/22 06:06 538文字 カバンに
青 カビが生 えた。10年 以上 クローゼットにしまっていたものを、フリマアプリに出品 するため取 り出 した。その時 は何 ともなかったのに、物置 き代 わりにしている部屋 に置 いていたわずか2週間 の間 にカビだらけに。珍 しく長雨 が続 いたのが原因 か。社会 人 になって2年 目 に買 ったイタリアの老舗 のカバンだ。クラシカ -
僕 の傘 をどうぞ北九州 市 戸畑 区 ・山下 真由美 (71歳 )9/22 06:06 578文字 雨 の中 、食料 品 の買 い出 しに出 かけた帰 りにバスを降 りた途端 、強 い風 が吹 いた。ビニール傘 の骨 が風 にあおられて反 り返 ったが、片手 に重 い買 い物 袋 を持 っていたので骨 をもとに直 すことができずに急 いで歩 いていると、後 ろの方 から「すみませーん、すみませーん」という声 がする。段々 と声 が近 づいてくるので、やっと私 に -
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愛 するめいっ子 和歌山 県 新宮 市 ・匿名 希望 (自営業 手伝 い・38歳 )9/21 05:59 536文字 私 には愛 する二人 のめいっ子 がいる。上 のめいは、しっかり者 の小学 4年生 。忙 しい母親 の片腕 となり、進 んで家事 を手伝 っている。一方 、下 のめいは天真 らんまん。今年 、小学校 に入学 したのだが、入学 式 のさなか、隣 の子 に早速 「友達 になろうよ」と声 を掛 けたらしい。めいらしいエピソードに家族 は心 和 んだが、勉強 の面 で -
三面 鏡 山口 県 美祢 市 ・吉野 ミツヱ(74歳 )9/21 05:59 549文字 昨春 、金婚式 を迎 えた。振 り返 ると50年 はあっという間 だった。山 あり谷 ありだったが、夫婦 そろって元気 で過 ごしてこられた。そこで節目 として何 かをしておきたいと考 えた。 とりあえず、いつか始 めなければならない断 捨離をすることにした。気 になっていたのが木製 のゲタ箱 。外 板 が次第 に剥 がれていく。戸 の立 て付 けも -
ついのすみか
東京 都 世田谷 区 ・小田 和子 (主婦 ・71歳 )9/21 02:00 549文字 孫 育 てにかり出 され、娘 の家 に住 み込 んで3年 。半年 で戻 る予定 が、機 を逃 してしまった。ここにきて別居 の話 が急 浮上 。孫 の通 う保育園 の近 くに転居 することになった。1人 用 の家電 、家具 類 を新調 して、落 ち着 くのに2カ月 かかった。猛暑 の中 体調 を崩 し、70歳 という年齢 を思 い知 らされた。賃貸 住宅 は35年 ぶり。あちこ -
スイカの
思 い出 大阪 府 八尾 市 ・辻 尾 澄江 (主婦 ・69歳 )9/20 05:21 550文字 新型 コロナウイルスのワクチンを接種 し、副 反応 の発熱 で横 になっていると、娘 が小 さく切 ったスイカを持 ってきてくれた。よく冷 えて甘 く、火照 った体 に染 み渡 って気分 が良 くなった。 その娘 が9歳 の誕生 日 を前 にしたときのこと。「バースデーケーキは要 らないから、半分 に切 ったスイカにろうそくを立 ててケーキの代 わりに -
書 く喜 び福岡 市 西 区 ・伊原 千津子 (83歳 )9/20 05:21 559文字 思 い起 こせば、小学 4年 か5年 の頃 だった。私 が書 いた自由 詩 を担任 の先生 がある雑誌 の文化 欄 に投稿 された。 それが掲載 され副賞 に原稿 用紙 をもらった。その先生 が卒業 式 にこっそり、赤 いボディーの万年筆 をくださった。私 が趣味 としてエッセーなどを書 く原点 、きっかけはあの原稿 用紙 と万年筆 だと思 う。中学生 になって -