紀州きしゅう藩はん（きしゅうはん）[和歌山わかやま県けん] - 刀剣とうけんワールド

明石あかし城じょうの櫓ろ

そののち、信濃しなの「松本まつもと藩はん」（まつもとはん：現在げんざいの長野ながの県けん）より「小笠原おがさわら忠真ただざね」（おがさわらただざね）が10万まん石せきで明石あかし藩はんに入にゅう封ふうされ立たて藩はんしたことに始はじまります。

居城きょじょうである「明石あかし城しろ」は、忠真ただざね自身じしんがこれまでの地方ちほうの拠点きょてんであった「船上せんじょう城じょう」（ふなげじょう）を廃はいし、海上かいじょう交通こうつうの監視かんし、西国さいごく大名だいみょうに睨にらみをきかせるために明石あかし城じょうを建設けんせつ。明石あかし城じょうの城下町じょうかまちの町まち割わりに関かんしては、忠真ただざねの客分きゃくぶんとして在ざい藩はんしていた「宮本みやもと武蔵むさし」（みやもとむさし）が指導しどうしたと史書ししょにも残のこされています。

1632年ねん（寛永かんえい9年ねん）、忠真ただざねが豊前ぶぜん国こく「小倉こくら藩はん」（こくらはん：現在げんざいの福岡ふくおか県けん）に転てん封ふうとなり、そののち、戸田とだ松平まつへい家か、「大久保おおくぼ忠隣ただちか」（おおくぼただちか）を祖そとする大久保おおくぼ家か、藤井ふじい松平まつへい家か、「本多ほんだ忠勝ただかつ」（ほんだただかつ）を祖そとする本多ほんだ家かと言いう、譜代ふだいや御ご家門かもん大名だいみょう家かが藩主はんしゅの座ざを務つとめ、越前えちぜん松平まつへい家かが藩主はんしゅの頃ころに明治維新めいじいしんを迎むかえることとなりました。

幕末ばくまつ・維新いしん期きには、藩主はんしゅ「松平まつだいら忠ただし致」（まつだいらただむね）が自宅じたくを開放かいほうする形かたちで、藩校はんこう「敬義たかよし館かん」（けいぎかん）を創立そうりつ。そこでは儒学じゅがく者しゃ「橋本はしもと海かい関せき」（はしもとかいかん）が1872年ねん（明治めいじ5年ねん）に、国語こくご教師きょうしに就任しゅうにんした記録きろくが残のこっています。

維新いしんのあと越前えちぜん松平まつへい家かは華族かぞく令れいにより、子爵ししゃく（ししゃく）に任にんじられました。　

赤穂あこう城じょう・本丸ほんまる表門おもてもん

「忠臣蔵ちゅうしんぐら」の底本ていほんとなっているのが、人形浄瑠璃にんぎょうじょうるり「仮名かめい手本てほん忠臣蔵ちゅうしんぐら」（1748年ねん[寛延かんえい元年がんねん]初演しょえん）ですが、実じつはそれより古ふるい1711年ねん（宝永ほうえい8年ねん）に刊行かんこうされた浮世草子うきよぞうし「忠義ちゅうぎ武道ぶどう播磨はりま石せき」では、上野うえの介かいが内匠たくみ頭あたまの美貌びぼうの小姓こしょうに恋慕れんぼしての恋こいの鞘当さやあて（恋敵こいがたき同士どうしの争あらそい）が、いじめの原因げんいんであるとしています。上野うえの介かいがその小姓こしょうを所望しょもうしたのを、内匠たくみ頭あたまが断ことわったことを根ねに持もってと言いうことらしいです。

この6年ねん後ごの1717年ねん（享とおる保ほ2年ねん）に書かかれた「忠義ちゅうぎ太平たいへい記き大全たいぜん」も同様どうようの小姓こしょう横恋慕よこれんぼ説せつに立たっていました。小姓こしょう横恋慕よこれんぼが、内匠たくみ頭あたまいじめの真相しんそうかどうかは別べつとして、赤穂あこう藩はんが「薩摩さつま藩はん」（さつまはん：現在げんざいの鹿児島かごしま県けん）と並ならぶ美童びどうの産地さんちであったのは事実じじつのようです。

まず、当とうの内匠たくみ頭あたま自身じしん、色白いろじろの美び青年せいねんだったと言いわれ、芝居しばいや映画えいがの世界せかいでも、ときの美男びなん俳優はいゆうが、彼かれを演えんじるのが倣ならいになっています。

もちろん、47士しにもいずれ劣おとらぬ美童びどうがちらほら。ぱっと思おもいつくのは、「愛宕山あたごやま教学きょうがく院いん」（あたごやまきょうがくいん）の稚児ちごから浅野あさの家か小姓こしょうに召めされることになった「磯貝いそがい十郎左衛門じゅうろうざえもん」（いそがいじゅうろうざえもん）でしょう。

切腹せっぷく後ごの内匠たくみ頭あたまの遺体いたいをまっ先さきに引ひき取とり「泉岳寺せんがくじ」に葬ほうむったのが、この十郎左衛門じゅうろうざえもんです。十郎左衛門じゅうろうざえもんは、その美貌びぼうを利用りようして吉良きら家かの女中じょちゅうや、出入でいり大工だいくの娘むすめをたらし込こんでの情報じょうほう収集しゅうしゅうの役割やくわりを担になっていました。ただ、この女子じょしたらし込こみの諜報ちょうほう活動かつどうは、やはり美男びなんの誉ほまれ高たかい「岡野おかの金右衛門きんえもん」（おかのきんえもん）のエピソードとして紹介しょうかいされることも多おおく、現在げんざいではこちらの方ほうが定着ていちゃくしています。十郎左衛門じゅうろうざえもんと親友しんゆうでもあった小姓こしょう頭あたまの「片岡かたおか源五げんご右門うもん」（かたおかげんごえもん）とは共ともに内匠たくみ頭あたまの寵ちょうを争あらそった仲なかでした。

また、「忠臣蔵ちゅうしんぐら外伝がいでん」のひとつに「中山なかやま（堀部ほりべ）安兵衛やすべえ」（なかやま[ほりべ]やすべえ）の高田馬場たかだのばばの決闘けっとう話ばなしがありますが、安兵衛やすべえと、彼かれが助太刀すけだちした「菅野かんの六郎ろくろう左衛門さえもん」（すがのろくろうざえもん）の義理ぎりの叔父おじ・甥おいの関係かんけいも男おとこ同士どうしの契ちぎりを意味いみするのだと言いうことです。

幕末ばくまつ、森もり家か統治とうちの1857年ねん（安政あんせい4年ねん）、藩政はんせい改革かいかくをめぐり藩はん内ないに対立たいりつが起おこり、革新かくしんを目指めざした一部いちぶは脱藩だっぱんし「長州ちょうしゅう藩はん」（ちょうしゅうはん：現在げんざいの山口やまぐち県けん）へ。1862年ねん（文久ぶんきゅう2年ねん）には、攘夷じょうい派はが家老がろうを暗殺あんさつする事件じけんが起おこり、藩はん論ろんを統一とういつできないまま明治維新めいじいしんを迎むかえることとなります。

維新いしん後ご、森もり家かは1884年ねん（明治めいじ17年ねん）に、子爵ししゃくとなりました。

岸和田きしわだ城じょう

しかし、これについては、岸和田きしわだ城じょうの縄張なわばりが大坂おおさか方面ほうめんに厚あつい防御ぼうぎょ線せんを設もうけていることなどから、城しろの構造こうぞう上じょう、大だい坂城さかき警護けいごの役割やくわりが強つよいとされており、晩年ばんねんの徳川とくがわ家康いえやすに寵愛ちょうあいされた紀州きしゅう徳川とくがわ初代はつよ藩主はんしゅ・徳川とくがわ頼宣よりのぶへの世間せけんの評価ひょうかが誇張こちょうされた物ものだと考かんがえられます。実際じっさい、1837年ねん（天保てんぽう8年ねん）の「大塩おおしお平八郎へいはちろうの乱らん」の際さい、「岸和田きしわだ藩はん」は大だい坂城さかき警護けいごの任にんに当あたりました。

また、幕府ばくふが紀州きしゅう藩はんを恐おそれていたという噂うわさのもととなるような事件じけんとして、1651年ねん（慶安けいあん4年ねん）の、「由井ゆい正雪しょうせつ」（ゆいしょうせつ）による「慶安けいあんの変へん」の際さい、正雪しょうせつが頼宣よりのぶの印章いんしょう文書ぶんしょを偽造ぎぞうしていたことも、紀州きしゅう藩はん監視かんし陰謀いんぼう論ろんと言いう尾おひれがつく原因げんいんとなっているようです。

そののち、ロシアの「プチャーチン」の軍艦ぐんかん「ディアナ号ごう」の来航らいこうの際さいにも活躍かつやくした11代だい藩主はんしゅ・長ちょう発はつ（ながゆき）は、1852年ねん（嘉よしみ永なが5年ねん）に、藩校はんこう「講習こうしゅう館かん」を開ひらきましたが、22歳さいの若わかさで早世そうせい。継ついだ12代だい藩主はんしゅ・長ちょう寛ひろし（ながひろ）は、1866年ねん（慶応けいおう2年ねん）に講習こうしゅう館かんを増築ぞうちくして「修おさむ武たけ館かん」と改称かいしょうし、藩はん内ないの教育きょういくを奨励しょうれいし、財政ざいせい改革かいかくにも努つとめましたが、藩はん財政ざいせいの窮乏きゅうぼうから脱却だっきゃくすることはできず、「戊辰戦争ぼしんせんそう」（ぼしんせんそう）を迎むかえることになったのです。

戊辰戦争ぼしんせんそうのときには、藩はん内ないの意見いけんが佐幕さばく派は（さばくは）と勤皇きんのう派は（きんのうは：倒幕とうばく派は）に別わかれ、当初とうしょは佐幕さばく派はとして動うごいていましたが、のちに新しん政府せいふ軍ぐん側がわに付つくことになりました。

現在げんざいでも、岡部おかべ家か伝来でんらいとされる「牡丹ぼたん獅子じし容よう彫金ちょうきん目貫めぬき」（ぼたんししかたちぼりきんめぬき）の目貫めぬきで有名ゆうめいな「短刀たんとう 附ふ 銀ぎん沃懸地ち合口あいくち拵こしらえ[銘めい 来らい国こく俊しゅん]」（たんとう つけたり ぎんいかけじあいくちこしらえ[めい らいくにとし]）などを岸和田きしわだ城じょうで観みることができます。

また「岸和田きしわだ」と言いえば、全国ぜんこく的てきに知しられている「だんじり祭まつり」で有名ゆうめいですが、この「岸和田きしわだのだんじり祭まつり」は、岸和田きしわだ藩はん3代だい藩主はんしゅ「岡部おかべ長ちょう泰やすし」（おかべながやす）が1703年ねん（元禄げんろく16年ねん）に、京都きょうとの「伏見ふしみ稲荷いなり」を城内きうち三さんの丸まるに勧請かんじょう（かんじょう：神仏しんぶつの分霊ぶんれいを他たの場所ばしょに移うつして祀まつること）し、五穀豊穣ごこくほうじょうを祈願きがんして行おこなった稲荷いなり祭さいがもとになっていると言いわれています。

ただし当時とうじの祭まつりは、現在げんざいのようなだんじりは存在そんざいせず、寄席よせのもとともなった「俄狂言にわかきょうげん」（にわかきょうげん）などが演えんじられ、そのあと、三さんの丸まる神社じんじゃ、岸城きしき神社じんじゃ（きしきじんじゃ）に参拝さんぱいすると言いう物ものでした。

ちなみに、岸和田きしわだ藩はんの名前なまえの由来ゆらいとなったのは、建たて武たけしの新政しんせい（1333年ねん～）の頃ころ、和泉いずみ国こく守護しゅごであった「楠木くすのき正成まさしげ」（くすのきまさしげ）が一族いちぞくの「和田わだ高だか家か」（にぎたたかいえ）を当時とうじ「岸きし」と呼よばれていた岸和田きしわだに派遣はけんし、城しろを築きずいたこと。これにより、「岸きし」の「和田わだ氏し」が治おさめる土地とちと言いうことで、岸和田きしわだの名前なまえになった伝説でんせつが存在そんざいしています。