仙台せんだい藩はん（せんだいはん）[宮城みやぎ県けん] - 刀剣とうけんワールド

若松わかまつ城じょう（鶴づるヶ城じょう）

保科ほしな正之まさゆきが会津あいづに入はいると、「山本やまもと勘助かんすけ」（やまもとかんすけ）を先祖せんぞに持もつと言いわれ、幕末ばくまつに活躍かつやくした、大河たいがドラマの題材だいざいにもなった「山本やまもと八重やえ」（やまもとやえ）の一族いちぞくも高遠こうえんから正之まさゆきに従したがっています。

保科ほしな正之まさゆきは晩年ばんねん、十じゅう五ご条じょうからなる家訓かくんを残のこしていますが、その第だい一いち条じょうにはこう記しるされています。

「大君おおきみの儀ぎ、一心いっしん大切たいせつに忠勤ちゅうきんに励はげみ、他国たこくの例れいをもって自みずから処しょるべからず。若もし二心ふたごころを懐いだかば、すなわち、我わが子孫しそんにあらず　面々めんめん決けっして従したがうべからず」

「大君おおきみ」とは、将軍しょうぐんを意味いみし、将軍家しょうぐんけに逆さからう者ものは、藩主はんしゅであっても私わたしの子孫しそんではないから、家臣かしん達たちは従したがってはいけないと言いう意味いみ。将軍家しょうぐんけへの忠節ちゅうせつを第だい一いちに考かんがえる家訓かくんの存在そんざいが、幕末ばくまつにおける佐幕さばく派は（幕府ばくふを補佐ほさするグループ）の代表だいひょうとして会津あいづ藩はんの悲劇ひげきの伏線ふくせんとなったことは想像そうぞうに難むずかしくありません。
　
「戊辰戦争ぼしんせんそう」で敗やぶれたあと、明治めいじに入はいっても会津あいづ藩はんの苦難くなんは続つづきました。松平まつだいら家かは会津あいづの地ちを没収ぼっしゅうされたのち、青森あおもり県けんの下北半島しもきたはんとうにあった斗と南みなみ藩はん三さん万まん石せきで再興さいこうを許ゆるされます。斗と南みなみの地ちは、実質じっしつの石高こくだかは7,000石せきほどで、酷寒こっかんの地ち。食くうに困こまった藩士はんし達たちは、娘むすめを売うるなどの辛苦しんくを舐なめ続つづけました。

そうした状況じょうきょうにもかかわらず、不屈ふくつの意志いしで荒地あれちの開墾かいこんなどを進すすめたことにより、農業のうぎょうも軌道きどうにのりはじめた矢先やさき、1871年ねん（明治めいじ4年ねん）に「廃藩置県はいはんちけん」が行おこなわれ、斗と南みなみ藩はんは消滅しょうめつ。移住いじゅうした元もと会津あいづ藩士はんし達たちの多おおくは斗と南みなみの地ちを去さったのでした。

上山うえやま城しろ

そんな中なか、1616年ねん（元和がんわ2年ねん）、家康いえやすから疎うとまれた忠ただし輝てるに、改易かいえきの処分しょぶんが科かされてしまいました。

ところが、重勝しげかつはそれまでの貢献こうけんによって連座れんざされず、2万まん6,000石せきで遠江とおとうみ「横須賀よこすか藩はん」（よこすかはん：現在げんざいの静岡しずおか県けん掛川かけがわ市し）を再さい立だて藩はんします。そして、重勝しげかつの没後ぼつごの1621年ねん（元和がんわ7年ねん）、重忠しげただの時代じだいに、4万まん石せきにまで加増かぞうされて上山かみのやま藩はんに移うつり封ふうされることになり、重忠しげただが上山うえやま藩はんの初代しょだい藩主はんしゅとなったのです。
　
そののち、上山かみのやま藩はんは譜代ふだいと外様とざまが何なん度どか入いれ替かわっています。1697年ねん（元禄げんろく10年ねん）に、譜代ふだいであった松平まつだいら[藤井ふじい]家かの「松平まつだいら信通のぶみち」（まつだいらのぶみち）が3万まん石せきで入にゅう封ふう。それ以降いこうは明治維新めいじいしんまで、松平まつだいら氏しによる統治とうちが10代続つづきましたが、藩はんの財政ざいせい状況じょうきょうは厳きびしいものでした。凶作きょうさくが続つづいていたにもかかわらず、藩はんの御用ごよう商人しょうにん達たちは、私腹しふくを肥こやし続つづけるばかり。

これに対たいし、1747年ねん（延のべ享とおる4年ねん）には農民のうみん達たちの怒いかりが爆発ばくはつし、惣そう百姓ひゃくしょう一揆いっきが発生はっせいしたのです。日本にっぽん最大さいだい規模きぼとも言いわれる3,000人にんの農民のうみん達たちが庄屋しょうやを襲おそい、米べい蔵ぞうを打ぶち毀こわすなどの大だい騒動そうどうとなりました。

このときの一揆いっきでは、首謀しゅぼう者しゃの5人にんが打うち首くびとなっています。村人むらびと達たちは、自分じぶん達たちのために命いのちを投なげ打うったこの5人にんを、義民ぎみんとして祀まつりました。それが、今いまも住民じゅうみん達たちから敬意けいいを払はらわれている「五ご巴ともえ神社じんじゃ」（いつつともえじんじゃ）です。

一揆いっきが起おきるほど農村のうそんが荒廃こうはいした背景はいけいには、4代だい藩主はんしゅ・信しんじ亨とおる（のぶつら）、5代だい藩主はんしゅ・信しん古いにしえ（のぶふる）、6代だい藩主はんしゅ・信愛しんあい（のぶざね）と3代だいにわたって、藩政はんせいを顧かえりみない暗愚あんぐな藩主はんしゅが続つづいたことにも原因げんいんがありました。その悪あしき流ながれは、信行のぶゆき（のぶゆき）が7代だい藩主はんしゅとなってからは途絶とだえ、改善かいぜんが見みられるようになっています。

信行のぶゆきは学問がくもんを奨励しょうれいし、藩校はんこう「天てん輔館」（てんゆうかん）を設立せつりつするなど、改革かいかくを進すすめたのです。この改革かいかくは、幕府ばくふの目めにするところとなり、幕末ばくまつの動乱どうらん期きには、大坂おおさかや江戸えどの警備けいびを任まかされ、江戸えど薩摩さつま藩邸はんてい焼やき討うちにもかかわったほどでした。

さらには、時流じりゅうも敏感びんかんに感かんじ取とり、洋式ようしき兵学へいがくも取とり入いれた上山うえやま藩はん。「戊辰戦争ぼしんせんそう」（ぼしんせんそう）では、「庄内しょうない藩はん」（しょうないはん：現在げんざいの山形やまがた県けん鶴岡つるおか市し）と共ともに秋田あきたへ侵攻しんこうしただけでなく、戊辰戦争ぼしんせんそうにおける「長岡ながおか藩はん」（ながおかはん：現在げんざいの新潟にいがた県けん長岡ながおか市し）や白河しらかわ口こう（しらかわぐち：現在げんざいの福島ふくしま県けん白河しらかわ市し）での戦たたかいにも、部隊ぶたいを派遣はけんしたのです。

幕末ばくまつに結成けっせいされた軍楽隊ぐんがくたいは「上山うえやま藩はん鼓笛こてき楽隊がくたい」（かみのやまはんこてきがくたい）として保存ほぞんされ、今日きょうまで続つづいています。

久保田くぼた城しろ御ご隅すみ櫓ろ

秋田あきたの地ちで、佐竹さたけ氏しは半分はんぶん以下いかに所領しょりょうが削けずられたことだけでなく、旧きゅう支配しはい者しゃの遺臣いしんによる一揆いっきが頻発ひんぱつし、統治とうちに難儀なんぎしました。苦労くろうの末すえに一揆いっきを鎮圧ちんあつすると、積極せっきょく的てきに新規しんきの人材じんざいを活用かつようするなどして活路かつろを開ひらこうとします。その主おもだった者ものは元もと宇都宮うつのみや氏し家臣かしんの「梅津うめづ政景まさかげ」（うめつまさかげ）や元もと小山こやま氏し家臣かしん「渋江しぶえ政光まさみつ」（しぶえまさみつ）といった関東かんとう出身しゅっしんの浪人ろうにん達たち。

当然とうぜんながら、そうした抜擢ばってき（ばってき）は旧来きゅうらいの家臣かしんから反発はんぱつを買かうことになり、家老がろう達たちによって義宣よしのぶ暗殺あんさつが企くわだてられたと言いわれています。浪人ろうにんの採用さいようについては、国替くにがえによって石高こくだかが半分はんぶん以下いかに減少げんしょうしたこともあり、旧来きゅうらいの家臣かしんの知行ちぎょう地ちを減へらし、彼かれらの影響えいきょう力りょくを削そぐ意味合いみあいもありました。それでも石高こくだかの7割わりは家臣かしんの知行ちぎょう地ちであり、直轄ちょっかつ領りょうは6万まん石せきほど。逼迫ひっぱく（ひっぱく）した藩はん財政ざいせいを好転こうてんさせるため、義宣よしのぶが目めを付つけたのは豊富ほうふな秋田あきた杉すぎと鉱山こうざん開発かいはつでした。

1606年ねん（慶長けいちょう11年ねん）に発見はっけんされた院内銀山いんないぎんざんは、財政ざいせいに大おおきく貢献こうけん。銀山ぎんざんには江戸えどを追おわれた隠かくれキリシタンなども流ながれ込こみ、周辺しゅうへんは大おおきな賑にぎわいをみせたのです。

ただ、3代だい藩主はんしゅ・義ぎ処しょ以降いこうになると、鉱山こうざんの採掘さいくつ量りょうが減へっていき、度重たびかさなる飢饉ききんにも見舞みまわれ、藩はんの財政ざいせいは危機きき的てきな状況じょうきょうになります。そこで、藩札はんさつの発行はっこうなどで、危機ききを乗のり切きろうとしましたが、それも功こうを奏そうさず、常つねに財政ざいせいは火ひの車くるまでした。

財政ざいせい的てきには厳きびしい久保田くぼた藩はんでしたが、藩はんの特色とくしょくとして挙あげられるのは、教育きょういくに力ちからを注そそいだことにあります。社会しゃかい思想家しそうかの「安藤あんどう昌益しょうえき」（あんどうしょうえき）、国学こくがく者しゃの「平田ひらた篤胤あつたね」（ひらたあつたね）、農政のうせい家かの「佐藤さとう信淵のぶひろ」（さとうのぶひろ）ら江戸えど時代じだいを代表だいひょうする名なだたる学者がくしゃを輩出はいしゅつ。

江戸えどから離はなれてはいたが、常つねに学問がくもんに対たいしては先取せんしゅの姿勢しせいを保たもっていたこともあり、幕末ばくまつにおいては、いち早はやく藩はん論ろんを勤王きんのうに転換てんかんし、新しん政府せいふ軍ぐんに合流ごうりゅうしました。そう舵かじを切きらせたのは、武士ぶしばかりでなく庶民しょみんにも影響えいきょうを与あたえた平田ひらた篤胤あつたねの存在そんざいが大おおきかったと言いえます。