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印刷2009/09/03 18:21

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[CEDEC 2009]「ドラクエは国民こくみんてきゲームでもなんでもなかった」堀井ほりい雄二ゆうじ基調きちょう講演こうえん完全かんぜんレポート!

画像集#002のサムネイル/[CEDEC 2009]「ドラクエは国民的ゲームでもなんでもなかった」堀井雄二氏の基調講演を完全レポート!

 過去かこ最大さいだいきゅう規模きぼとなったCEDEC 2009だが,3にちめの基調きちょう講演こうえんかざったのは,ごぞんじ「ドラゴンクエスト」のみのおやである堀井ほりい雄二ゆうじだ。国民こくみんてきゲームとはなにか? 〜ドラゴンクエストの場合ばあい〜」だいされたこの基調きちょう講演こうえん登壇とうだんしたのは,堀井ほりいをはじめ,「ドラゴンクエストIX 星空ほしぞらまもじん」の開発かいはつたずさわったスクウェア・エニックスの市村いちむら龍太郎りゅうたろう藤澤ふじさわひとしけい3めい
 講演こうえんは,その3にんによるパネルディスカッション形式けいしきおこなわれ,最新さいしんさくであるドラゴンクエストIXでの具体ぐたいれいげながら,どういった意図いとでドラゴンクエストIXのかくシステムが導入どうにゅうされていったのか。そして,その根底こんていにあるゲームデザインの思想しそう……「国民こくみんてきなゲームとはなんなのか?」などがかたられていった。

 「デジタルにはファジーさが必要ひつようだとおもう」「やってみたら面白おもしろいゲームは沢山たくさんある。けれど,そうじゃなくて“やってみたら面白おもしろそうにおもえるなにか”が大事だいじ」など,堀井ほりい雄二ゆうじらしい独特どくとく感性かんせいかんれる発言はつげんおおく,会場かいじょうをぎっしりくした来場らいじょうしゃたちなにかをのこしたようだ。ドラゴンクエストシリーズにつうじる「心地ここちよさ」の秘訣ひけつとはいったいなんだろうか? 堀井ほりい雄二ゆうじ発言はつげんをほぼそのままおおくりする,「完全かんぜんレポート」をおとどけしたい。

ちゅう意味いみかりやすいように,多少たしょう加筆かひつ修正しゅうせいおこなっております。また一部いちぶ割愛かつあいしております。

画像集#003のサムネイル/[CEDEC 2009]「ドラクエは国民的ゲームでもなんでもなかった」堀井雄二氏の基調講演を完全レポート! 画像集#004のサムネイル/[CEDEC 2009]「ドラクエは国民的ゲームでもなんでもなかった」堀井雄二氏の基調講演を完全レポート!


ドラゴンクエストがしめすゲーム制作せいさく原理げんり原則げんそく


 講演こうえんは,ドラゴンクエストIXのプロデューサーをつとめた市村いちむら司会しかい進行しんこうおこなかたちおこなわれ,られた話題わだいについて堀井ほりい藤澤ふじさわこたえるというながれ。市村いちむらは,講演こうえんのテーマを

 なぜドラゴンクエストは人気にんき維持いじできるのか
 ドラゴンクエストIXのゲームデザイン
 これからのゲームはどうなっていくのか


スクウェア・エニックスの市村いちむら龍太郎りゅうたろう
画像集#006のサムネイル/[CEDEC 2009]「ドラクエは国民的ゲームでもなんでもなかった」堀井雄二氏の基調講演を完全レポート!
みっつとさだめ,順番じゅんばんはなしすすめていった。
 市村いちむら最初さいしょに,「まずはおさらいをしましょう」といながら,ドラゴンクエストの歴史れきしかえる。社会しゃかい現象げんしょうにまでなった「ドラゴンクエストIII」以降いこうもセールスはコンスタントに300まんほん前後ぜんこう推移すいいし,近年きんねんでは,さらにその売上うりあげばしつつあるドラゴンクエストだが,初代しょだいドラゴンクエストを開発かいはつはじめた当時とうじは,ロールプレイングゲーム(以下いか,RPG)というジャンルがまだ日本にっぽんではほとんどられない時代じだいだった。そうした状況じょうきょうなか,どういう経緯けいい,どういう意図いとでドラゴンクエストという作品さくひんんでいったのか? 市村いちむら質問しつもんたいして,堀井ほりいかたる。

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画像集#010のサムネイル/[CEDEC 2009]「ドラクエは国民的ゲームでもなんでもなかった」堀井雄二氏の基調講演を完全レポート!
 「そうですね。ちょうど当時とうじ,ファミコンが流行はやった時代じだいがありました。その当時とうじのファミコンのゲームというと,アクションゲームが主流しゅりゅうだったんですよ。昨日きのういした遠藤えんどうさんの『ゼビウス』とかがすご人気にんきになったりしていて。ぼくはその当時とうじ海外かいがいの「ウルティマ」とか「ウィザードリィ」というゲームをあそんでいて,どうにかしてこれをファミコンで出来できないかなってかんがえていました。
 (その時代じだいのゲームは)ゲームセンターの作品さくひん主流しゅりゅうで,ゲームセンターのゲームというのは,100えんだまあつめなきゃいけない。つまり比較的ひかくてき短時間たんじかんでゲームオーバーにしなくちゃいけない。そういう宿命しゅくめいだった。
 だけど,家庭かていようゲームのゲームなら100えんだまあつめなくていいから,ずっとだらだらあそつづけるゲームをつくることができる,だから,これならRPGができるんじゃないかっておもったんですよ」

 「でも,当時とうじはとにかくハードウェアのスペックがひくかったんですよ。ドラゴンクエストI当時とうじで,容量ようりょうが64KB。もうね,いま携帯けいたい画像がぞうよりしょうっちゃいくらいの容量ようりょうで,プログラムからグラフィックスから音楽おんがくまで,全部ぜんぶはいっていたんです。
 それをやりくりするために,さまざまな工夫くふうをしました。文字もじデータだけでも当時とうじ結構けっこう容量ようりょうだったので,一文字いちもんじ単位たんい,カタカナで20文字もじまでの表現ひょうげんにするとか,とにかくめてめて,ビット単位たんい計算けいさんしてなんとか出来できた。
 そんななかでも一番いちばんをつけたのが,“かりやすさ”です。RPG自体じたいは,やれば面白おもしろいだろうものだったけど,当時とうじすご敷居しきいたかかった。なにをどうすればいいのかがからないというかんじのものがおおかった。それを如何いかかりやすいかたちにするか」

 「はなしさかのぼりますが,そうかんがえていって最初さいしょおもったのは,『いきなりロールプレイングはむずかしいんじゃないか』ということでした。文字もじこたえたり,自由じゆうにマップをうごけるだとかっていうのはね。
 そこで,最初さいしょはアドベンチャーゲームのほうがいいんじゃないか。やれることがすくないぶん,よりダイレクトだろうと。移動いどうもない。戦闘せんとうもない。だから「ポートピア連続れんぞく殺人さつじん事件じけん」を最初さいしょにファミコンに移植いしょくして,まずは『文字もじあそぶゲーム』というものにれてもらおうとおもいました。
 そうした下地したじつくったうえで,いよいよドラゴンクエストの開発かいはつりかかったんです」


 業界ぎょうかいじんならっているひとおおいだろうが,堀井ほりい雄二ゆうじが,アドベンチャーやRPGなど,当時とうじ日本にっぽんにないタイプのゲームの伝道でんどうとして,ゲームの開発かいはつやそのほかの啓蒙けいもう活動かつどう雑誌ざっし記事きじいたりなど)にんでいたのは有名ゆうめいはなしだ。
 ドラゴンクエストをつくるにあたっては,このように日本にっぽんのプレイヤーのゲームの習熟しゅうじゅく知識ちしきまでを考慮こうりょしたゲームデザインをほどこしており,上記じょうきはなし延長えんちょうとして,いまではたりまえとなっている「パーティシステム」を,初代しょだいドラゴンクエストでは「まだむずかしいから」と見送みおくり,「ドラゴンクエストII」ではつ実装じっそう。そのの「ドラゴンクエストIII」で,職業しょくぎょう自由じゆうなパーティのえなど,むずかしいシステムを徐々じょじょ実装じっそうしていった。

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 「IIIまではそんなにかんがえなかったんです。というのも,とにかくRPGを理解りかいしてもらうためにも,ドラゴンクエストIでは,いろんな要素ようそをそぎとしました。アイテムやコマンドもすくなかったし,パーティせいもありませんでした。シンプルにまとめていったんです。容量ようりょうすくなかったし。
 IIになってROMの容量ようりょうえて,じゃあパーティせいをやってみようというはなしになったんですが,ただ,やっぱり『いきなりパーティプレイはむずかしいだろう』ってことで,シナリオてき徐々じょじょ仲間なかまえていくようなながれにしたり,自然しぜんかたち理解りかいされるようにつとめました。
 当時とうじのRPGというと,シナリオがちゃんとしているものはほとんどなかったんですが,シナリオをける意味いみというのは,つぎなにをすればいかがかりやすくなること。そうやってシステムとシナリオをわせながら,ドラゴンクエストのI〜IIIをつくっていったましたが,これは上手うまくいったなとおもいます(笑)」


 堀井ほりい雄二ゆうじすごいところは,ひろめたいとおもっていた「ウィザードリィ」などの流儀りゅうぎをかみくだいて,それをすうねんがかりで,「日本にっぽんのプレイヤーにかりやすいかたちで」提示ていじしていったところであり,その結果けっかとして,RPGというジャンルの基礎きそ構築こうちく,その市場いちば土台どだいつくげたところにある。
 堀井ほりいはなしつづく。


 「ドラゴンクエストでは,言葉ことばえらびも慎重しんちょうおこないました。代表だいひょうてきなのは『どうぐや』でしょうか。いまのゲームでは,わりたりまえに『道具どうぐ』ってあるんですけれど,道具どうぐなんて実際じっさいなかにはないんです。武器ぶき防具ぼうぐかんがえていって,いろいろな雑貨ざっかっているものってなんだ? ってかんがえたときに,なんとなく語呂ごろくて,みじかかりやすい『どうぐや』だったという」


 これも,ってるひとには有名ゆうめい逸話いつわかもしれない。そもそもきずついたからだいや施設しせつが「宿屋やどや」であるてん普通ふつうかんがえたら病院びょういんでは? とか)や,「ひのきのぼう」ってどんな武器ぶき? という,なんともえないハズなのにみょう説得せっとくりょくのある,まったく違和感いわかんかんじない堀井ほりい雄二ゆうじらしいはなしである。
 はなしすすみ,「おおくのひとあそぶからこそ大切たいせつにしていること」についての話題わだいうつる。


 「ぼくは,ゲームをあそぶときってマニュアルってまないんです。ぼくむかしやってたパソコンとかのマニュアルもすご分厚ぶあつかったりしたんだけど,やっぱりまない。とりあえず適当てきとうさわってみて,なんかからないところがあったらむくらいで。
 だから,むかしからRPGにしろアドベンチャーにしろ,マニュアルはまないものだとおもってゲームはつくっていました。アクションゲームとかなら,ゲームがはじまるとてきおそってきますから,マニュアルをんでいなくても,プレイヤーは,それをなんとかしてけたりしようとするんだけど,RPGとかはそうじゃない。
 ドラゴンクエストIなどでは,最初さいしょ王様おうさま部屋へやという7×7の空間くうかんにプレイヤーをめて,まずはそこから脱出だっしゅつするというつくかたをした。そこで「はなす」とか「かいだん」とかのコマンドをれていけば,ゲームがうごいていくんだってことを理解りかいしてもらいたかった」


 どんなジャンルでもそうだが,何気なにげなく使つかっている製品せいひんたりまえのものとして認識にんしきされている各種かくしゅインタフェースなどは,すべからく“だれかが発明はつめいしたもの”である。Webの世界せかいでいえば,ハイパーリンクシステムなどがその代表だいひょうだろうか。堀井ほりいはなしには,そうした「たりまえ」をつくすための創意そうい工夫くふうめられている。


シリーズゲームならではの注意ちゅういてんとは?


 ドラゴンクエストの設計せっけい思想しそうについてのはなし一段落いちだんらくしたあと,市村いちむらは,「シリーズならではの注意ちゅういてん」について,堀井ほりい質問しつもんをする。

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 「シリーズぶつむずかしい,とにかく難題なんだいなのは,初代しょだい面白おもしろいと,そのつぎはより面白おもしろくってところ。これは映画えいがとかでもそうなんだけど,1が面白おもしろかったら2,2が面白おもしろかったら3というように,期待きたいがどんどんふくれあがっていく。でも,映画えいが場合ばあいだと2あいだというわくのなかでは,そんなにわったこともできないから,だんだんきられていく。続編ぞくへんが1とおなじくらいの面白おもしろさだと,期待きたいふくれあがってるぶん『つまらない』とわれてしまう。
 それはゲームもまったくおなじことはえるんだけど,ドラゴンクエスト(ゲーム)の場合ばあいは,幸運こううんにも『ハードウェアの進化しんか』という要素ようそがありました。初代しょだいでは64KBだった容量ようりょうが,128KBになり,256KBなり,そのつぎには512KBになり,やれることがどんどんえていったんです。ハードの進化しんかあわせて,グラフィックスがくなったし,サウンドもくなったし,複雑ふくざつなシステムも実装じっそうできるようになって。そうやってずっとやってれた。そのながれが『ドラゴンクエストVIII』までなんです」

 「VIIIは,ある意味いみぼくにとってのまさにゆめのゲームでした。というのも,ぼくがドラゴンクエストIをつくったとき,ああいう映像えいぞうあたまなかえがきながら仕様しようかんがえていました。あの当時とうじのゲームデザイナーは,みんなそうだとおもうんです。
 VIIIになって,それがコンピュータグラフィックスじょう表現ひょうげんされるのをて,素直すなおに「ああ,すげーな! これは面白おもしろいな!」とおもったんです。コンピュータゲームでもここまでできるようになったんだと。ドラゴンクエストは,ハードウェアの進化しんかたすけられて,技術ぎじゅつれながら面白おもしろさをつないで側面そくめんがある。それがVIIIまでなんです。
 ドラゴンクエストIXでは,はじめてハードウェアのスペックをとしました。プレイヤーの期待きたいふくれあっているなかで,スペックをとしてどうやってプレイヤーさんに面白おもしろいとおもってもらえるのか。ここは……かなりの難問なんもんだったよね?(笑)」


“マルチプレイ”にドラクエのつぎかたちもとめた。しかし……


スクウェア・エニックスの藤澤ふじさわひとし
画像集#012のサムネイル/[CEDEC 2009]「ドラクエは国民的ゲームでもなんでもなかった」堀井雄二氏の基調講演を完全レポート!
 堀井ほりいられるかたちで,ドラゴンクエストIXの仕様しようがどのような経緯けいいめられていったのか。その思考しこうながれや経緯けいいについて,どうさくのディレクターをつとめた藤澤ふじさわ説明せつめいおこなった。

 要約ようやくすると,ドラゴンクエストのあらたな挑戦ちょうせんとして「マルチプレイができるドラクエ」というコンセプトが最初さいしょ大前提だいぜんていとしてかかげられたのだという。はなし発端ほったんは,この講演こうえん参加さんかした3にんと,レベルファイブの代表だいひょう取締役とりしまりやくである日野ひのあきらひろしによる会食かいしょくせきで,いわく「ゆめかたるようなノリで」とのことだったが,たしかに「みんなであそべるドラクエ」とけば,まぎれもない“ゆめのゲーム”のひとつだという感覚かんかくはあったことだろう。

 ただ,当初とうしょ「マルチプレイ主体しゅたい」とうたわれたドラゴンクエストIXが,開発かいはつ途中とちゅう路線ろせん変更へんこうしたけんなどは有名ゆうめいはなしだろうが,その事実じじつからもかるように,「みんなであそべるドラクエ」の実現じつげんみちのりは平坦へいたんなものではなかったようだ。というのも,従来じゅうらいのドラクエ・プレイヤーの期待きたいするドラゴンクエストぞうと,「みんなであそべるドラクエ」というものが,あまりにかけはなれているのではないか? とおもわれたためだ。

 しかし,ドラゴンクエストの「これから」「つぎのありかた」をかんがえたときに,一人ひとりで,50あいだ程度ていどあそんでおしまい,というかたちにはしたくなかったのだという。ずっとあそつづけられる,あるいはまたのちあそんでみたくなる……ドラゴンクエストIXには,そうしたモチベーションを喚起かんきするための“仕掛しかけ”がまれている。クエスト配信はいしんやすれちが通信つうしんなど,ドラゴンクエストIXにんだ“仕掛しかけ”の数々かずかずを,藤澤ふじさわひとひと説明せつめいしていった。
 ちなみにドラゴンクエストIXでは,シナリオのプロットやゲームシステムなど,おおくの部分ぶぶんがスクウェア・エニックスやレベルファイブなど,開発かいはつスタッフたちまかされていたこともかされた。もちろん,堀井ほりい雄二ゆうじささやかな監修かんしゅう/チェックはおこなったとのことだが,藤澤ふじさわは「こうしたつくかたはじめての経験けいけん」とのことで,ここもおおきな苦労くろうがあった部分ぶぶんだったようだ。

 ともあれ,藤澤ふじさわいわく,ドラゴンクエストIXは「スタートダッシュがたのゲーム」から「ロングランがたのゲーム」への質的しつてき変換へんかん目指めざしたタイトルであるらしく,スクウェア・エニックスがわ感触かんしょくとしては,このあたりのみは「かなりうまくいった」という手応てごたえがあるようだ。集計しゅうけいされるデータや中古ちゅうこへの流入りゅうにゅうりつかぎり,従来じゅうらいひとつのかべだった50あいだはるかにえるあそかたをしているプレイヤーがおおいとのはなしであった。

講演こうえん途中とちゅうで,「せっかくすれちが通信つうしんはなしたので……」と,登壇とうだんしゃたちがおもむろにニンテンドーDSを一幕ひとまくも。来場らいじょうしゃたちが,嬉々ききとしてすれちが通信つうしんをやりはじめた
画像集#017のサムネイル/[CEDEC 2009]「ドラクエは国民的ゲームでもなんでもなかった」堀井雄二氏の基調講演を完全レポート!


これからのゲームはどうなっていく?


 突如とつじょおこなわれた“すれちが通信つうしん大会たいかい”に会場かいじょういたのちに,いよいよ「これからのゲームはどうなっていく?」という話題わだいうつっていった。それについて堀井ほりいは,


 「ぼくは,ゲームはくならないとおもう。これはたとえば漫画まんがたとえると,むかし学生がくせいだけが漫画まんがんでいる時代じだいがあったんだけど,その当時とうじ人達ひとたちも,いまやもう60さいとかになっている。そうした人達ひとたちというのはいま普通ふつうに60さいになっても漫画まんがんでいるんですよね。
 それとおなじように,こんゲームをあそんでいる人達ひとたち老人ろうじんになったとき,かれらがいきなり盆栽ぼんさいをやりはじめるとはぼくおもわない。やっぱり,自然しぜんにゲームというものをあそんでいるとおもう。産業さんぎょうとしてはのこるとおもいます。
 ただ,これからは携帯けいたいであったりであったり,いろんなパターンのものがてくるんじゃないかなと。ゲームというか,“コンピュータを使つかった表現ひょうげん”だとおもうんだけどね,かみとかとおなじで。そのなかでいろいろなジャンルがまれていくとおもいます」

 「ハードウェアが進歩しんぽしてきて,ゲームでやれることはえてきたとおもいます。しかし,面白おもしろさの本質ほんしつってそんなにわらないとおもうんですよね。最近さいきんのゲームにしても,やってみたら面白おもしろいゲームって結構けっこうあるとおもうんです。けど,むかしいまでは“時間じかん”のとらかたちがう。いまひとっていうのは,携帯けいたいでメールをたり,Webサイトをたり,ひまつぶしの手段しゅだんやまほどある。
 そうしたなかで,あえて『このゲームをやってみたい!』とおもわせるなにか。なんていうのかな,『あ,やってみたい』『これは面白おもしろそう』とおもえるかりやすさというか,そういうのがあってはじめて,ワクワクしたり,この作品さくひんにはなにかありそうだとおもってもらえたりするとおもう。人間にんげんって能動のうどうてきにならないと,面白おもしろいものも面白おもしろいとおもえないので。
 あとは,たまたまにとってみたおきゃくさんが『どうやればいいんだ』ってならないように,親切しんせつに。そうしたおきゃくさんをがさないようにしなくちゃいけないとおもう。そのうえで,能動のうどうてきにこっちから仕掛しかけていく。それが大事だいじだとおもいます。
 あとは,つねにアンテナをって,なかうごきをとらつづけること。最近さいきんは,携帯けいたい漫画まんがひとえてるらしいけど,こんなしょうっちゃい画面がめんるもんなんだな,面白おもしろいなぁとかおもったりもしますね」

画像集#018のサムネイル/[CEDEC 2009]「ドラクエは国民的ゲームでもなんでもなかった」堀井雄二氏の基調講演を完全レポート!
 「ぼくはわりと,デジタルをファジーにするのがきなんだよね。VIIIから実装じっそうされた“テンション”システムについても,あれは内部ないぶ計算けいさんしきでは,2ばいとか3ばいちょっとかな? くらいのかたちになっているんだけど,表示ひょうじじょう数値すうちでは,5,20,50,100ってがっていくのね。あれは,完全かんぜんぼく感覚かんかくなんだよね。あれだと,なんか加速度かそくどてき上昇じょうしょうしている気分きぶんになれるでしょ。あの数値すうち根拠こんきょがないんだけど,いままでみがはいったことはない(笑)。やっぱり,みんなファジーがきなんだとおもうんだよね。コンピュータゲームでも,デジタルで論理ろんりてきなんだけど,どっかファジーにすることで,たのしいかんじ,ワクワクするかんじ,そういう感覚かんかくられる」

 など,堀井ほりいかんがえがふんだんに披露ひろうされた。ちなみに,筆者ひっしゃとしては,市川いちかわ何気なにげなくった「最近さいきんすごいなとおもうものってなにかありますか?」との質問しつもんに,堀井ほりいが「トモダチコレクション」のげていたのが印象いんしょうてきであった。「シムピープル」などとの比較ひかくはなしおよぶと,


 「シムピープルとトモダチコレクションのちがいは,てくるキャラクターがっているひとかどうか。シムピープルは,だれだかからないやつてくるんだけど,トモダチコレクションは,それが友達ともだちだったり芸能人げいのうじんだったりするところが面白おもしろい。その人物じんぶつたいするプレイヤーの興味きょうみかたちがう。より身近みぢかかんじられるというのかな」


発言はつげんするなど,ゲームデザイナーらしいするど指摘してきも。近年きんねん,プレイ時間じかん拘束こうそくされない“ゆるいゲーム”も人気にんきのジャンルのひとつになりつつあるが,こののジャンルを堀井ほりい雄二ゆうじなりに解釈かいしゃくした作品さくひんてみたいものだ。


 ともあれ,そうしたゲーム談義だんぎのあと,最後さいごのテーマである「国民こくみんてきなゲームとはなんぞや」にはなしすすむ。 
 このいかけに最初さいしょこたえたのは,ディレクターの藤澤ふじさわだ。は,「いまのゲーム業界ぎょうかい世界せかいてき市場いちばシェアでると,日本にっぽん市場いちばぜん世界せかいの8%ほどしかありません。そうした状況じょうきょうもあって,海外かいがい市場いちばけたみがさかんにおこなわれています。それをまえたうえで“ドラゴンクエストの将来しょうらい”をかんがえたとき,ドラクエが海外かいがい市場いちばにどういうスタンスでいるべきか。わたし堀井ほりいさんをふくめ,みんなでなやんだ時期じきがありました」とかたりながら,「けれど,ドラクエというのは,日本人にっぽんじん日本人にっぽんじんのためにつくるゲーム。自分じぶんたち面白おもしろいとしんるものをつくるゲーム。それでいいんじゃないか,と最近さいきんおもうようになりました。ただそうである以上いじょうは,日本にっぽん国民こくみんみんながすべからくたのしめるゲームでないといけない。国民こくみんてきゲームとは,そのみんながあそべるという義務ぎむ責任せきにんをもったゲームだとおもう」と結論けつろんづけた。

 堀井ほりいは,それにたいして以下いかのように返答へんとうし,講演こうえんめくくった。

 「国民こくみんてきゲームは,つくるんだといってつくれるものじゃないとおもいます。最初さいしょぼくがドラゴンクエストIをつくったとき,ドラクエは国民こくみんてきゲームでもなんでもなかった。けれど,23ねんという歴史れきしが,プレイヤーのみなさんのさまざまなおも……,頑張がんばってレベルげをしたとか,アイテムがつからなかったとか,そういうみんなのおもいがあつまっていった結果けっかだとおもいます。
 そうやってむかしあそんでくれた人達ひとたち今度こんど大人おとなになって,そのおも子供こどもはなして,家族かぞく一緒いっしょあそんでくれて,ひとつのゲームのことをみんなで話題わだいにできる。そうやってだんだんと国民こくみんてきゲームになっていった。そういう持続じぞくひろがりなんだとおもいます。おや子供こどもおなじゲームであそべるってのは素晴すばらしいことですよね」

 ―――あと最後さいごに,ちょっとおもったなということがあったんで,このわせてもらいたいんですけど,漫画まんが世界せかいでいうと,手塚てづか治虫おさむさんになるのか,藤子とうこ不二雄ふじおさんになるのかっていうのがあって,ようするに,産業さんぎょうはおきゃく(プレイヤー)ととも成長せいちょうしていくのか,それともつね初心者しょしんしゃにアプローチしつづけるのかというのがある。ドラゴンクエストっていうのはやっぱり,藤子とうこ不二雄ふじおさんになれたらいいなっておもいます」



 さて,一部いちぶ割愛かつあいした箇所かしょもあるものの,ドラゴンクエストの歴史れきしやゲームデザインのアプローチをからめながら,堀井ほりい雄二ゆうじかんがかた思想しそう存分ぞんぶんけた今回こんかい基調きちょう講演こうえん会場かいじょうけつけたおおくの業界ぎょうかい関係かんけいしゃ,そして学生がくせいたちに,これからさきつながる“なにか”をあたえたにちがいない。そうおもえる内容ないようだったようにかんじられた。
 今後こんご堀井ほりいあらたな作品さくひん,そしてドラゴンクエストシリーズのさらなる発展はってん期待きたいしたいところだ。


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