テーブルトークRPGと
聞いて
思い
浮かべる
風景は,
一昔前なら
大きめの
机を
囲んでキャラクターシートを
広げ,ダイスを
転がして
遊ぶというのが
普通だった。しかし,
今は
自宅のPCと
向き
合い,ブラウザの
向こうの
世界に
思いをはせるのが
一般的かもしれない。テキストまたはボイスによるチャットと,ダイスbotなどを
駆使して
遊ぶオンラインセッションの
普及が,その
有り
様を
一変させてしまったからだ。
そうしたムーブメントに
一役買っているのが,
無料で
手軽に
扱うことができ,
凝った
演出も
可能なオンラインセッションツール
「ココフォリア」だ。ファンベースの
開発からスタートし,
今は
法人も
設立され,
株式会社ココフォリアが
窓口となって
開発続けられている
同ツールだが,その
法人代表にはテーブルトークRPG
業界を
古くから
知る,
冒険企画局の
近藤功司氏も
名を
連ねている。
今回4Gamerでは,ココフォリアをゼロから
作り
上げた
開発者である
鳥頭めう氏に
加え,その
近藤氏にも
同席していただき,ココフォリアの
成り
立ちについてインタビューを
行った。その
歴史と
展望を
手がかりに,テーブルトークRPGの
今と
未来を
見ていこう。
「ココフォリア」のプレイ風景
|
「ココフォリア」の誕生と,その設計思想
4Gamer:
本日はお
時間をいただきありがとうございます。まずは
自己紹介も
兼ねて,お
二人の「ココフォリア」への
関わり
方から
聞かせてください。ココフォリアはめうさんが
始められたプロジェクトと
聞いていますが,
制作のきっかけはなんだったのでしょうか。
鳥頭めう氏。「ココフォリア」の開発者であり,株式会社ココフォリア代表でもある。本人曰く「ネットの人なので」とのことで,今回はイラストでの紹介とさせていただいた
|
鳥頭めう氏(以下,めう氏):
今から5〜6
年前,
友達に
誘われてテーブルトークRPGを
始めたんですが,これがすごく
面白かったんですよね。ちょうどリプレイ
動画から
入ったファン
層が
増えていた
時期で,すごく
盛り
上がっていたと
思います。
一方,
自分自身は
長らくソフトウェアエンジニアとして
働いて,そのスキルを
活かして
何か
作ってみたいと
考えていました。それらが
組み
合わさってできたのが,ココフォリアというプロダクトです。
4Gamer:
めうさんご
自身も,
動画を
観てテーブルトークRPGを
始められたんですね。では
近藤さんはいかがでしょう。ココフォリアに
関わることになったのは,どんな
経緯からだったのでしょうか。
近藤功司氏(以下,近藤氏):
私は
冒険企画局というレーベルで,テーブルトークRPGの
開発や
普及に
長く
携わり,このジャンルの
趨勢をずっと
見ていました。オンラインで
遊ぶ
仕組みが
生まれてからも,こうしたサービスが
商業出版とどう
向かい
合っていくのか,
興味を
持って
観察していたんです。
4Gamer:
興味というのは,どういったことに
対してでしょう。
新しい
遊び
方にワクワクするような?
近藤氏:
それもありますが,ハラハラというのが
正直なところですね。
既存の
権利との
衝突による
混乱や
炎上が,
熱意のある
人を
萎縮させてしまったら,この
文化が
終わってしまいかねないと。
そんな
中,
優れたサービスであるココフォリアの
規模が
大きくなってきて,
最初はアドバイザー
的な
立ち
位置で
関わるようになりました。
4Gamer:
ココフォリアを
応援することが,
業界全体にプラスになると?
近藤功司氏。老舗のテーブルトークRPG制作プロダクション・冒険企画局代表。また株式会社ココフォリアでも代表を務める
|
近藤氏:
テーブルトークRPG
界の
基盤を
支えるソフトウェアになってほしいなと。あと,トラブルなく
前に
進んでほしいとの
思いからですね。
新しいことをやるには,オンラインとオフライン,
双方の
感覚を
理解できる
人間が
道を
作る
必要があるかな,と。いったん
拓けさえすれば,あとは
皆が
通っていけるようになりますから。
4Gamer:
めうさんとしては,
近藤さんの
申し
出を
聞いて,どう
思われたのでしょうか。
めう氏:
そうですね……
対面で
遊ぶのが
普通だったこれまでのテーブルトークRPGファンと,
動画から
入ってきてオンラインで
遊ぶのが
中心の
新しいファン
層って,
当時はけっこう
距離感があると
感じていました。だから
古参のファンの
皆さんから,
僕らがどう
見えているかというのは,
気になっていたことの
一つだったんです。
そうしたタイミングで
近藤さんからアプローチをいただけたので,ありがたく
頼らせてもらったという
感じです。
4Gamer:
近藤さんとしては,どうしてココフォリアを
選ばれたのでしょう。
候補となるオンラインセッションツールは,ほかにもいくつかあったと
思うのですが。
近藤氏:
これ
説明が
難しいんですけど,めうさんはいわゆる“プロシューマー”
的な
感覚を
持っている
人だと,
私からは
見えたんですよね。
恐らく,
経歴にひもづいたものだと
思うんですけど。
私も
趣味でプログラムを
書きますが,めうさんから
職業エンジニアとしてのプロ
意識のようなものを
感じたんです。
めう氏:
恐縮です。ただファンベースやボランティアベースのプロダクトの
危うさみたいなものは,
僕自身ずっと
感じていたことなんです。
例えばすごく
優秀なエンジニアが1
人いて,プロダクトがその
人の
熱量によって
支えられたいたとしたら,
批判なども
含めたものすごい
負荷が,
個人にかかることになります。そこに
依存していたら,ある
日すべてがガラガラと
崩れかねない。
4Gamer:
よく
分かるお
話です。
めう氏:
なのでココフォリアがある
程度軌道に
乗ったとき,そうならないよう
自分以外の
開発メンバーを
探すことにしたんです。
僕がいなくなってもココフォリアのコードに
触れる
人が
必要だと
感じたので。ソフトウェアというのは
家なんかと
一緒で,
手を
入れる
人がいないと,いずれダメになってしまいます。
コストというのも
単なるサーバーの
維持費だけを
指しているのではなく,そういう
営みを
含めたリソース
全体の
話なんです。それがシステムの
一部として
組み
込まれていないと,プロダクトは
長く
続かない。そういう
考えが
最初からありました。
近藤氏:
こういう
感覚が
大事で,かつ
難しいことなんですよね。
4Gamer:
なるほど……そうした
経緯を
経て,
今は
法人(
株式会社ココフォリア)を
設立して
開発を
進められているとのことですが,なぜ
法人を
立てられたのでしょうか。
めう氏:
ボランティアベースだったココフォリアが
大きくなって,
扱う
金額も
大きくなり,
社会的な
責任も
重くなってきました。サーバーが
落ちたら
困る
人がいっぱいいるわけです。なので
法人格があったほうが
皆も
安心できるという
考えは,ずっと
持っていました。ただ……。
4Gamer:
ただ?
めう氏:
ただ,ココフォリアというプロダクトは,
僕の
中では“
街”のようなイメージなんですよ。
最初期からボランティアで
開発を
手伝ってくれた
開発コントリビューターが
家としてあって,ちょっと
離れたところには
翻訳をやってくれる
人達が
住んでいる。もちろん
熱心に
応援してくれるユーザーの
皆さんもいて,そういうものをひっくるめた
街がココフォリアだと。だから
株式会社というのはそのごく
一部,
街の
役場みたいなものに
過ぎないと
思っています。
4Gamer:
総体としてのココフォリアは,
法人ができても
変わりないと。その
役場――
法人の
代表をめうさんと
近藤さんのお
二人が
務めるわけですね。
近藤氏:
私の
代表権はめうさんを
補佐するために
持っているようなものなので,
私が
会社をどうこうすることはありませんけどね。もし
意見が
対立することがあったら,
優先されるべきはめうさんの
意見です。
4Gamer:
会社としてのココフォリアには,
今は
何人くらいのメンバーが
在籍されているのでしょうか。
めう氏:
僕のほか,フルタイムの
人がもう
2人。アルバイトさんや
業務委託で
関わってもらっている
人を
含めても,
全体で10
人いかないくらいの
規模です。
4Gamer:
開発自体は,
今も
社外のボランティアによって
行われているという
理解でいいですか?
めう氏:
元々はそうでしたが,
現在はある
程度,
法人側の
開発チームに
引き
継いでいます。
元の
開発チームのメンバーにはそれぞれ
本業もあるので,
無理のない
範囲で
関わってもらっている
形です。
皆テーブルトークRPG
好きなので,「こういう
機能を
作ろうと
思うんだけど,どう
思う?」って
相談すると,
忌憚のない
意見をくれます(笑)。
4Gamer:
先ほどの,“
街”のメンバーの
皆さんですね。……
少し
下世話な
話になりますが,
現状は
採算が
取れている
状況なんでしょうか。
めう氏:
どのレベルになれば「
採算が
取れている」と
言っていいのか
分かりませんが,とりあえずココフォリアのためにフルタイムで
働く
人が
何人かいるという
状態ではあります。「オンラインセッションツールでは
採算がとれない」という
空気のところから
始めて,
今ここまで
来ることができたので,
階段の
一段目は
登れたんじゃないかと
思っています。
現状と課題――より豊かなサービスを目指して
4Gamer:
では
少し
切り
口を
変えて,どんな
人がココフォリアを
利用しているのか,ユーザー
属性的な
部分を
聞いてみたいです。
例えば
性別や,プラットフォームの
分布に
特徴はありますか。
めう氏:
あくまで
分析ツール
上の
推定値ではありますが,
男女比は4:6くらいで
女性が
若干多め。
年齢層は10代から30
代半ばまでで9
割といった
状況です。プラットフォーム
別で
見ると,
今どきのWebサービスとしては
珍しく,デスクトップPCからのアクセスが6
割を
占めています。オンラインセッションはゲームマスターが
資料を
用意したり,
盛り
上げるために
画像や
音楽を
用意することが
多いので,これはその
影響かと
思います。
4Gamer:
ユーザー
数ではいかがでしょうか。
めう氏:
M
AU(Monthly Active User)で35
万ほど。
同じ
端末から
複数回アクセスしても
1人と
数えるので,これはほぼユニークユーザーに
近い
値です。
概ね1
万人ほどが
毎晩オンラインセッションに
参加している
計算になります。これがリアルのコンベンションだったら,ものすごい
規模になりますね(笑)。
4Gamer:
それはすごい。
近藤さんに
伺ってみたいのですが,テーブルトークRPGのプレイ
人口について,これまで
参考になる
数値ってあったのでしょうか。
近藤氏:
計りようがないですよね。
何をもってプレイ
人口とするのかにもよりますし。
例えば
関連雑誌の
発行部数や,イベントへの
応募者/
参加者数あたりで
類推するしかないですが,これでは
昔遊んだけど
今は
離れている
人や,ルールブックや
関連書籍を
買って
読むだけの
人は
含まれないことになってしまいます。
4Gamer:
確かにテーブルトークRPGは,そういうファンが
多そうなイメージがあります。
近藤氏:
かつて「ソード・ワールドRPG」
華やかなりし
頃は,
累計200
万部とか
売れていたわけですから,
人口はかなり
多かったはずです。
私が
知るうちで
一番リアクションが
大きかった
事例で
言うなら,
女性向け
漫画誌でコンベンションの
応募をかけたとき,10
万単位の
反応があったと
聞いています。ただこの
辺になると,もはや
考古学みたいな
話ですから(笑)。
4Gamer:
なるほど……。
近藤氏:
そこへ
行くと,
今めうさんが
出された
数字は,
実際に
今遊んでいる
人をカウントしているわけだから,すごいですよね。それにココフォリア
以外のツールで
遊んでいる
人もいるわけですし,
興味はあるけど
手を
出せずにいるといった
潜在的な
層まで
考えると,ジャンル
自体の
伸びを
感じます。
4Gamer:
遊ばれているタイトルで
言うと,やはり
「クトゥルフ神話TRPG」が
多いのでしょうか。
めう氏:
そうですね。ココフォリアは
基本的にシーン
制で
遊ぶことを
想定しているので,そうではないタイトルの
数値は,ココフォリア
内では
実際のよりも
低く
出ているかと
思います。
4Gamer:
マーダーミステリーはいかがですか。
めう氏:
ゲームシステムはプレイにあたって
選択されたダイスbotでカウントしているので,ダイスbotを
使わないマーダーミステリーの
数値は
正確には
分かりません。ですがボリュームとしてインパクトのある
数値ではないと
思います。
4Gamer:
となると,やはり「クトゥルフ
神話TRPG」の
強さを
感じますね。
めう氏:
これは
肌感でしかありませんが,
最近は
皆さん,サブとして
遊ぶゲームシステムを
持ってる
人が
増えているように
感じています。「クトゥルフ
神話TRPG」がメインの
人が
多いのは
確かですが,それ
以外を
遊ぶこともある。
一見して「クトゥルフ
神話TRPG」に
偏っているように
見えるのは,サブに
選ばれるシステムが
割れているせいなんじゃないかと。
4Gamer:
ちなみに,めうさんご
自身はいかがですか。
めう氏:
僕も「クトゥルフ
神話TRPG」からテーブルトークRPGの
世界に
入りましたが,
色々な
人と
関わりができたこともあって,ほかのシステムを
遊ぶ
機会も
機会も
多くなりました。
新作のテストプレイに
呼ばれることもありますし……
最近だと「
人鬼血盟RPGブラッドパス」「ロストレコード」「パラノイア」の
新版なんかが
面白かったです。
最近やってみたいと
思っているのは「サイバーパンクRED」ですね。アニメがすごく
面白かったので。
近藤氏:
私としては,あるタイミングで
一つのシステムが
支配的になるのは,そういうものなんじゃないかと
思っています。
好みのシステムはいろいろあれど,
共通項が
一つあればそれだけで,
一緒に
卓を
囲めるわけですから。
例えば「D&D」を
長く
遊んでいる
人と,
「シノビガミ」や
「インセイン」「エモクロアTRPG」が
好きな
人,マーダーミステリーからテーブルトークRPGを
知った
人が,「クトゥルフ
神話TRPG」を
介して
交流できるんだから,いいことなんじゃないですか。
「CCFOLIA PRO」がなぜ必要なのか
4Gamer:
ココフォリアの
現状は
分かってきました。では
今後に
向けた
取り
組みとして,
現在発表されている
「2.0」および
「CCFOLIA PRO」について,
詳細を
聞かせてください。
めう氏:
「2.0」は,
当初「1.x」をリニューアルするものとして
進めていましたが,
現在は「1.x」の
計画に
一部統合されています。プレビュー
版の
段階で,
一度に
大きく
変更するよりは,
地道に「1.x」をアップグレードしていくほうが,ユーザーさんも
喜ぶだろうなという
感触があって,
時間をかけてやっていくことになりました。
4Gamer:
えっ,そうなんですか。
当初の
予定より
遅れるとは
聞いていましたが,
開発自体は
続いているものかと
思っていました。
めう氏:
「2.0」の
構想は,
実はまだ
表に
出していないことのほうが
多くて,
開発自体は
別軸で
続けていくつもりです。ただ,
今はそれよりもユーザーさんからの
支援――つまりは
寄付によって
成り
立っている
現状からの
脱却をしなければならないなと
思っています。
成り
立っているとは
言いましたが,
今後を
考えるとシンプルに
収益が
足りていないということもまた
事実です。
将来的にずっと
続けていくためには,さらにステップアップする
必要があります。
4Gamer:
おっしゃるとおりだと
思います。それが「CCFOLIA PRO」ということですか。
めう氏:
はい。3月20
日にスタートした「CCFOLIA PRO」は,1.xにおけるプラスアルファの
機能を
月額500
円(
税込)で
提供するサブスクリプションプランです。
現状ではもともと
支援者向けの
隠し
機能だったルーム
複製などの
便利機能と,Audiostockさんとの
提携によるサウンドライブラリ
機能,
告知枠のスキップ
機能が
利用できます。
4Gamer:
では,
当面は1.x
系列のまま
続いて
行くわけですね。「CCFOLIA PRO」を
利用しない
場合は,これまでどおりですか?
めう氏:
そうなります。
課金率を
考えると,
無料版にもう
少し
制限をつけたほうがいいんでしょうけど……テーブルトークRPGは
始めるまでのハードルがそこそこ
高い
遊びだと
思うので,
遊ぶ
場所にお
金を
払わないとスタートラインに
立てないというのは,あまりいい
気持にはなれないと
思うんですよ。なるべく
皆が
不自由なく
遊べる
環境を
維持しながら,お
金も
回る
構造を
作っていきたいと
思っています。
4Gamer:
例えばなんですが,ココフォリアの
広告枠をパブリッシャに
販売するようなモデルは
考えていないのでしょうか。
めう氏:
そういう
事例もなくはないのですが……
僕が
業界のことがよく
分かってないことが
前提の
話ですけど,それって
健全なのかな? っていう
疑問がずっとありまして。
4Gamer:
健全とは?
めう氏:
僕が
聞いている
限りですけど,テーブルトークRPGって
正直そうそうお
金になるものではないと
思うんですよね。
一冊の
書籍で,ヘタしたら
一生遊べてしまう
遊びなわけですし。そこに
僕らが
積極的に「
広告費ください」って
言うのって,
果たしてどうなんだろうと。
業界全体のお
金の
流れを
考えたとき,むしろ
楽しませてもらっている
僕らが,クリエイターに
還元するべきなんじゃないか。
今はそんな
風に
考えています。
シナリオ投稿サイト「TALTO」が生まれたワケ
4Gamer:
ココフォリアのもう
一つのサービスである,シナリオ
投稿/
販売サイト
「TALTO」についても
聞いてみたいです。そもそもですが,これはどういった
経緯でスタートしたものなのでしょうか。
めう氏:
「TALTO」は,
僕らが
会社組織を
立ち
上げるにあたってのチャレンジとしてスタートしたサービスなんです。ココフォリアというメインのプロダクトを
走らせる
前に,
自分達に
何ができるのかを
確かめておきたかった。それに
組織としても
複数のサービスを
持っていたほうが
健全ですし,ノウハウも
溜まりやすいですから。
4Gamer:
ということは,
採算性はあまり
考えていないんでしょうか。
設定されている
料率などを
見ていると,
正直あまり
儲かるようには
思えないのですが……。
めう氏:
いえ,サービスを
続けていくためには,
採算はやはり
取らなくてはなりません。ただ……これは
例え
話ですけど,パン
屋が
一軒もない
街にパン
屋を
作るのは,これは
意味のあることじゃないですか。でもこの
場合の
意味って,そのパン
屋が
儲かることではないと
思うんですよ。
4Gamer:
というと?
めう氏:
大事なのはパンが
供給されて
皆が
豊かになることであって,
儲かるかどうかではない。でもパンを
供給し
続けるためには,
収益がなくてはならない。
僕としては,そういう
考えなんです。だから「TALTO」についても,
継続できる
最低限の
収益が
確保できていれば,
今のところはそれでよし,というのが
今の
状況ですね。
4Gamer:
ああ,
面白いですね。
近藤さんの
言うプロシューマー
的な
部分というのが,
少し
分かってきたような
気がします。では,
利用状況としてはうまく
回っているんですね。
めう氏:
そうですね。ココフォリアのシステム
利用率と
比べると,「クトゥルフ
神話TRPG」がそこまで
支配的ではないのも
特徴だと
思います。
新作に
人気が
集まりやすくて,
幅広いファンがついていると
感じます。
4Gamer:
いわゆるランキングの
機能がありませんが,これは
意図したものですか。
めう氏:
そうですね。
好きでやっていることに
順番をつけられたらイヤな
気持ちになることもあるでしょうし。でも
一方で,「
順位が
上がってうれしい」と
感じる
人もいますし,
難しいところです。
例えば
期間限定のコンテスト
形式にするとかで,
住み
分けができればいいんじゃないかって
考えています。
4Gamer:
今後の
機能強化について,ほかに
何か
考えていることはあるでしょうか。
めう氏:
現在は,
基本的にシナリオのみ
投稿を
受け
付けていますが,
将来的にはもっといろいろなものを
販売できるようにしたいですね。
例えば
自作のゲームシステムであったりとか。あと,いわゆる「このシナリオを
買った
人は,このシナリオも
遊んでいます」みたいな,レコメンド
機能もいいと
思っています。
4Gamer:
個人的にはココフォリア
用ルームデータそのものが
販売できるようになると,ゲームマスターが
準備する
手間が
省けて
助かるのですけど。アカウント
連携で,ココフォリアに
準備済みのルームが
即生成されるみたいな。
めう氏:
そういう
連携機能は,もちろん
強化していきたいですね。それにココフォリアのノウハウを
活かした
何かというのは,「TALTO」
以外にもチャレンジしたいと
考えています。
4Gamer:
「TALTO」
以外の
何か?
めう氏:
あくまで
僕の
視点でですが,テーブルトークRPGは
今,それなりに
流行していると
思うんです。でも10
年後20
年後を
考えると,どうなっているか
分からない。それでもココフォリアの
提供を
続けて
行くには,
第二第三のサービスは
用意しておくべきなんじゃないかって
思うんです。
4Gamer:
具体的には,
何かプランがあるのでしょうか。
めう氏:
今考えているのはココフォリア
内のゲームストアですね。
今のココフォリアは
遊ぶものを
外から
持って
来てもらう
形ですが,
理想を
言えば,ココフォリアにアクセスしたらゲームがズラッと
並んでいて,すぐに
新しいゲームを
始められるほうがいいじゃないですか。
テーブルトークRPGだけじゃなく,ボードゲームや
謎解きゲームなんかもすぐに
買えて,すぐに
遊べる。そのためのコミュニティも
用意されている。そんなアナログゲーム
版のSteamみたいなものができたら,きっと
面白いんじゃないかと。
4Gamer:
ああ,それはいいですね! あるいは
日本版「ボードゲームアリーナ」みたいな。
めう氏:
ただコミュニティの
面は,
今はDiscordやTwitterがハブの
役割を
担っていますし,とくに
新しいものは
必要ないのかもしれません。むしろそのほうが,
外の
世界とつながった
開かれたコミュニティになりそうですし。
4Gamer:
確かに,そのほうが
今風かもしれないですね。もっとも,そのTwitterもいつまであるか,
少々怪しくなってますけど。
めう氏:
本当にTwitterがダメになったら,
代わりを
作るかもしれないですね(笑)。
ココフォリアを使った2人用対戦カードゲーム「OVERROID」のプレイ風景(リンクは外部サイト)
|
オンラインセッションがもたらす未来
4Gamer:
ここからは
現状のプロダクトとしてのココフォリアからは
少し
離れて,お
二人が
理想とするオンラインセッションの
形について
伺ってみたいのですが,その
前に。さまざまなオンラインセッションツールがあるなかで,ココフォリアの
強みは
何だとお
考えですか。
めう氏:
うーん……
強いて
言えばハードルの
低さでしょうか。
優れたツールがいくつもある
中で,ココフォリアが
飛び
抜けて
機能的に
優れているワケではないと
思うんですよ。それでもここまで
大きくなれたのは,
普段からココフォリアを
使って
遊び,
応援してくれたユーザーの
皆さんと
一緒に
歩んできたからじゃないかと。むしろ,そうしたコミュニティとの
結びつきの
強さが,
強みなのかもしれません。
近藤氏:
私としては,
安定したサービスをここまで
維持し
続けているのが,すごいことだと
思っていますけどね。365
日24
時間,オンラインサービスを
維持し
続けるのって,
地味だけど
大変なことなんですよ。
個人的に
尊敬の
念さえ
覚えます。
めう氏:
ありがとうございます。こういうインフラ
的なもので
大事なのは,
革新性や
利便性よりも,
明日も
必ずそこにある
安心感だと
強く
思います。
都市開発と
同じで,
一度ひいた
道路は,あまり
利用されないからといって
簡単には
潰すわけにはいかないんです。なので10
年後を
見据えて
設計する
必要があります。
4Gamer:
やっぱりサーバートラブルで
夜中にたたき
起こされたりとか,あったりしますか?
めう氏:
ありますあります。あと
利用者がいる
時間には
更新をかけられないから,
皆が
寝静まるまでずっと
待ってたりですね。ただ
一つ
言っておかなくてはならいのは,ココフォリアのサービスがここまで
安定しているのは,ユーザーの
皆さんの
協力あってのことだと
思います。「
共用のサーバーだから,
負荷をかけないように」と,こまめにデータを
削除したりしてくれて,とても
助かっていますから。
近藤氏:
テーブルトークRPGはプレイヤー
同士が
協力して
進行していくゲームだからか,コミュニティも
互助の
精神が
強い
傾向にありますね。
4Gamer:
なるほど。では
別の
質問になりますが,オンラインセッションツールには,ツールそのものによって
遊び
方が
規定される
側面があると
思います。
例えばココフォリアなら,
立ち
絵を
使ったシーン
制による
進行になりがちであるとか。その
点はどうお
考えですか。
めう氏:
「ココフォリアがあるから,こういう
遊び
方が
流行している」と
言われることは,
確かにあります。それは
批判的な
意味でも,
肯定的な
意味でも。
……
自分としては,
例えばミニチュアゲーム
的な
遊び
方をするシステムには,それに
適した
優れたツールがほかにあるので,
住み
分ければいいと
思うんですよね。さっき
例えで
言うなら,すでにパン
屋があるのに,
隣に
違うパン
屋を
建てなくてもいいかな,と。
4Gamer:
分かります。ただテーブルトークRPGの
楽しさって……
本来もっと
多様なんじゃないかと
思うんです。
例えば,ただ,たくさんのダイスを
振るのが
楽しかったりとか,カードの
手触りであったりとか。インタフェースの
多様性って,アナログゲームの
強みの
一つだと
思うので。
国産のオンラインセッションツールは,とくにそうした
側面を
追求していないような
気がするんです。
めう氏:
……そうかもしれません。ただ
画面越しに
遊ぶ
場合には,そういった
手触りを
感じることは
難しいと
思うんです。じゃあ
何が
楽しいのかというと,“しゃべる”ことなんですよね。
4Gamer:
しゃべること,ですか。
めう氏:
これは
皆がそうではないと
思いますが,「なるべくたくさんしゃべりたいから,ゲーム
時間は
長ければ
長いほうがいい」みたいな
話もよく
聞くんです。テーブルトークRPGというのは,
普段とは
違うシチュエーションや
話題を
提供してくれて,
普段とは
違うしゃべり
方ができる,
一種のコミュニケーションツールなのだと。
近藤氏:
ゲームシステムの
流行り
廃りがあるように,
遊び
方も
常に
変わっていくものですからね。ココフォリアがユーザーの
要望を
反映したものであり
続けるなら,
新しい
遊び
方が
現れたときには,また
変わっていくんじゃないでしょうか。
4Gamer:
クリエイター
側の
冒険企画局としては,ココフォリアに
望むことは
何かあったりしますか。
近藤氏:
私としては,ココフォリアにこういうことをやってほしいとは,これまであまり
言わないようにしてきました。それはオンラインセッションが
対面でのセッションを
単に
代替するものではなく,まった
新しい
遊びなんじゃないかと
思っているからなんです。なので,
自分が
何か
言ってもピントがズレてしまうかもしれませんし,
今後も
自由にやってほしいなと
思っています。
4Gamer:
反対に,ツールの
開発側としてテーブルトークRPGのパブリッシャやクリエイターに
望むことはあるでしょうか。
めう氏:
何か
一緒にやりたいですね。テーブルトークRPG
全体を,
今よりもっと
良くできるんじゃないかって,ぼんやりした
思いがあります。やっぱり,ツールだけでは
変えられないので。……
抽象的な
答えで
恐縮ですけど。
4Gamer:
では,そういうパブリッシャやクリエイターさんがいらしたら,ぜひ contact@ccfolia.com までご
連絡を,ということで(笑)。
めう氏:
それは,ぜひお
願いします。
連絡くださいって
言うのも,なんか
申し
訳ないですけど。お
前が
来いよって
感じですよね。「TALTO」ではパブリッシャさんと
一緒に
投稿イベントをやったりもしましたが,もっと
色々なコラボができたらいいなと。
4Gamer:
冒険企画局としては,オンラインセッションの
普及による
業界の
変化というのは,
肌感として
何か
感じていますか。
例えば,ゲームの
作り
方が
変わるような。
近藤氏:
新しい
大陸が
見つかったのは
確かですね。
新大陸では
新しい
才能がどんどん
出てくるでしょうし,
彼らの
描く
未来像がビジネスの
在り
方も
変えていくことも,
間違いないと
思います。とはいえ
移住するかどうかは
人それぞれですし,
変わらないものもあると
思います。
4Gamer:
ビジネスというと,
具体的には?
近藤氏:
当面は
紙媒体を
中心に
回っていたビジネスが,デジタル
化によってどう
変わるのか。
電子書籍なのか,なんらかのサービスになるのかとか,その
辺りの
模索が
続くと
思います。あとはVRやAIといった
技術と,どう
融合していくかでしょうね。とくに
海外のインディーズ
作品なんかでは,その
辺りも
研究されてるみたいです。ただ……オンラインに
特化して
先鋭化していくと,
結局デジタルゲームになっちゃうんですけどね。
4Gamer:
確かに,
境界が
分からなくなりますね。それはそれで
見てみたいですけど。
では
最後の
質問になりますが,お
二人は10
年後,20
年後のテーブルトークRPGは,どうなっていると
思いますか。
めう氏:
……
難しいですね。
利用する
技術は
変わっても,
本質的には
変わらない……むしろ,
変わらずにいてほしいかな。
僕がテーブルトークRPGを
好きな
理由の
一つが
普遍性なので。
情報をやりとりする
方法が
変わったとしても,
本質はいい
意味で
同じように,そこにあり
続けてほしい。そして
歳をとった
僕も,そこに
混ぜてほしいです(笑)。
近藤氏:
人が
集まって
語って
聞いて,
思いを
積み
上げるRPGの
構造が
生まれてから50
年。
私が
関わるようになってからでも30
年ですからね。その
間に
変化はあれど,コアの
部分は
変わっていません。だからあと30
年経っても,やっぱり
変わらないかもしれないですね。
4Gamer:
ココフォリアが
作る,テーブルトークRPGの
新たな
時代に
期待しています。
本日はありがとうございました。