［プレイレポ］書かいて，読よんで，暴あばけ！　名めい探偵たんてい・金田一きんだいち耕こう助すけと挑いどむ密室みっしつの謎なぞ――覚書おぼえがきから真実しんじつを紐解ひもとき，「本陣ほんじん殺人さつじん事件じけん」を完成かんせいさせよう

　colyの新作しんさくゲーム「金田一きんだいち耕こう助じょシリーズ 本陣ほんじん殺人さつじん事件じけん」（PC / Nintendo Switch）が，2025年ねん4月がつ24日にちにリリースされる。


　本ほん作さくは，探偵たんてい作家さっかの横溝よこみぞ正史せいし氏しによる「本陣ほんじん殺人さつじん事件じけん　金田一きんだいち耕こう助じょファイル2」（角川かどかわ文庫ぶんこ）を原作げんさくとした作品さくひんで，名めい探偵たんてい・金田一きんだいち耕こう助すけが挑いどんだ密室みっしつ殺人さつじん事件じけんの真相しんそうに迫せまっていく，ミステリーパズルノベルゲームだ。


　本稿ほんこうでは，原作げんさくファンも思おもわずニヤリとしてしまうような仕掛しかけが用意よういされた，本ほん作さくの先行せんこうプレイレポートをお届とどけする。事件じけんの真相しんそうに関かんするネタバレはもちろん含ふくまれていないが，物語ものがたりに関かんする記述きじゅつや画面がめん写真しゃしんを多おおく掲載けいさいしているため，予備よび知識ちしきなしで楽たのしみたい人じんは注意ちゅういしてほしい。


※記事きじ内ないのゲーム画面がめんはPC（Steam）版ばんのものです

結婚式けっこんしきを終おえた新郎しんろう・新婦しんぷに起おこった悲劇ひげき

　金田一きんだいち耕こう助すけは，作家さっかの横溝よこみぞ正史せいし氏しが生うみ出だした名めい探偵たんていだ。彼かれを主人公しゅじんこうにした「金田一きんだいち耕こう助すけ」シリーズには，長編ちょうへん・短編たんぺんあわせて多おおくの作品さくひんがあり，「八やっつ墓はか村むら」や「犬いぬ神家じんかの一族いちぞく」など，何なに作さくも映画えいがやドラマ化かされてきた。


　また，名めい探偵たんていの代名詞だいめいしとして，マンガやゲームに登場とうじょうする探偵たんてい役やくのモチーフになることも多おおく，ミステリー小説しょうせつに馴染なじみがない人ひとでも，その名前なまえを耳みみにしたことがあるのではないだろうか。

　そんな金田一きんだいち耕こう助すけが最初さいしょに登場とうじょうした作品さくひんが，本ほん作さくの原作げんさくとなっている「本陣ほんじん殺人さつじん事件じけん」だ。

▼物語ものがたりのはじまり（公式こうしきサイトより）
　1937年ねん11月26日にち午前ごぜん4時じ頃ごろ，岡山おかやま県けんにある旧きゅう本陣ほんじんの末裔まつえい・一柳いちりゅう家かの屋敷やしきの離はなれ家かで，結婚式けっこんしきを終おえたばかりの新郎しんろう新婦しんぷ・一柳いちりゅう賢けん蔵ぞうと久保くぼ克子かつこが，布団ふとんの上うえで血ちまみれになって死しんでいた。

　事件じけん当夜とうや，離はなれ家かの中なかには死亡しぼうした夫婦ふうふ以外いがい，誰だれの姿すがたもなく，降ふり積つもった雪ゆきの上うえにも足跡あしあとひとつ残のこされていなかった――まさに，『密室みっしつの殺人さつじん』だった。

　事件じけんの知しらせを受うけて駆かけつけた探偵たんてい・金田一きんだいち耕こう助すけは，証言しょうげんを集あつめながら，この謎なぞに迫せまっていくが……。

　金田一きんだいち耕こう助すけのパトロン（出資しゅっし者しゃ）である久保くぼ銀ぎん造づくりは，姪めいである久保くぼ克子かつこの結婚式けっこんしきに出席しゅっせきするため，旧きゅう・本陣ほんじん（身分みぶんの高たかい人ひとが宿泊しゅくはくする施設しせつ）の名家めいか「一柳いちりゅう家か」を訪おとずれていた。

　しかしそこで銀ぎん造づくりは，奇妙きみょうな殺人さつじん事件じけんにより姪めいを亡なくし，探偵たんていとして活躍かつやくしていた金田一きんだいち耕こう助すけを呼よび寄よせることとなる。

　金田一きんだいち耕こう助すけは，すでに警察けいさつからも信頼しんらいを得えており，警部けいぶの磯いそ川がわ常次郎つねじろうの協力きょうりょくのもと，関係かんけい者しゃから情報じょうほうを集あつめていく。


　事件じけんを追おうなかで，怪あやしい三さん本ほん指ゆびの男おとこの存在そんざいや，一柳いちりゅう家かと刀かたなにまつわる因縁いんねんなど，さまざまな疑惑ぎわくが浮うかび上あがってくる。

　舞台ぶたいは1930年代ねんだい，およそ100年ねん前まえ。スマートフォンのような便利べんりな機器ききは存在そんざいせず，価値かち観かんも現代げんだいとは大おおきく異ことなり，祟たたりや迷信めいしんといった思想しそうが信しんじられていた時代じだいだ。

　そんな，どこか不気味ぶきみでありながらもどこか懐なつかしい昭和しょうわ中期ちゅうきの空気くうきが，美麗びれいなグラフィックスと音楽おんがくによって描えがき出だされている。

探偵たんてい作家さっかと小説しょうせつを完成かんせいさせよう

　金田一きんだいち耕こう助すけの事件じけんは，ある探偵たんてい作家さっかがその活動かつどうを記録きろくし，小説しょうせつとしてまとめたものという形式けいしきで描えがかれている。

　本ほん作さくでは，その探偵たんてい作家さっかが関係かんけい者しゃから得えた情報じょうほうを覚書おぼえがき（メモ）として記録きろくし，金田一きんだいちとともに内容ないようを整理せいりしながら，物語ものがたりが進すすんでいく。


　画面がめんには事件じけん関係かんけい者しゃが登場とうじょうし，その供述きょうじゅつがテキストで表示ひょうじされる。文中ぶんちゅうに水色みずいろで示しめされた単語たんごは事件じけんの要点ようてんであり，選択せんたくすることで新あらたな供述きょうじゅつを引ひき出だせる。


　供述きょうじゅつは，関係かんけい者しゃごとに整理せいりされている。同おなじ単語たんごでも，相手あいてによって知しっている内容ないようが異ことなり，さまざまな人物じんぶつの話はなしを聞きくことで，事件じけんの全容ぜんようが少すこしずつ明あきらかになっていく仕掛しかけだ。

水色みずいろの単語たんごの位置いちは，画面がめん右みぎ下かの図ずで全員ぜんいん分ぶんを確認かくにんできる

　紫色むらさきいろの単語たんごも事件じけんに関かんする要点ようてんだが，その時点じてんでは情報じょうほうが足たりず，新あらたな供述きょうじゅつを得えられない。推理すいりが進すすむことで水色みずいろに変化へんかするため，ひとまずはスルーしておいても問題もんだいない。


　関係かんけい者しゃの供述きょうじゅつは，発言はつげんごとにテキストブロックとして分わけられているが，時じ系列けいれつを整理せいりすることでつながりが生うまれ，事件じけんの正ただしい流ながれを把握はあくできるようになる。

テキストブロック左ひだりのアイコンで上下じょうげに動うごかして，時じ系列けいれつを整ととのえよう

　また，要点ようてんをもとに供述きょうじゅつがつながっていく仕組しくみのため，ときには証言しょうげん者しゃと内容ないようが一致いっちしないこともある。

　一人称いちにんしょうや口調くちょう，その人物じんぶつの立場たちばなどに注目ちゅうもくし，誰だれの発言はつげんかを推理すいりすることが重要じゅうようだ。正ただしい証言しょうげん者しゃを見みつけ，テキストブロックが連結れんけつされた瞬間しゅんかんの爽快そうかい感かんは格別かくべつである。


　また，赤あかいブロックが発生はっせいすることがある。このブロックを開放かいほうするには，特定とくていの人物じんぶつを選えらんだり，記述きじゅつのなかから条件じょうけんに合あう情報じょうほうを探さがし出だしたりと，事件じけんに対たいする推理すいりが求もとめられる。

　奇きをてらったような意地悪いじわるな仕掛しかけはなく，供述きょうじゅつを手てがかりに正解せいかいへたどり着つける構成こうせいとなっており，まさに探偵たんていになったようなワクワク感かんを味あじわえた。


　事件じけんの始はじまりから丁寧ていねいに描えがかれており，相関そうかん図ずなども用意よういされているため，「金田一きんだいち耕こう助すけ」シリーズを初はじめて知しるという人ひとでも楽たのしめる作品さくひんになっている。殺人さつじん事件じけんが題材だいざいのため，血ちや残酷ざんこくな表現ひょうげんも一部いちぶ含ふくまれるが過度かどではない。安心あんしんしてプレイできるだろう。


　筆者ひっしゃはミステリー小説しょうせつが好すきで，「本陣ほんじん殺人さつじん事件じけん」ももちろん読よんだことがある。事件じけんの怪あやしさや人間にんげんの切せつなさが感かんじられる演出えんしゅつが随所ずいしょに用意よういされており，読書どくしょ時じの記憶きおくを補完ほかんしながら，新鮮しんせんな気持きもちでプレイできて楽たのしかった。

　また，“覚書おぼえがきを整理せいりして，一遍いっぺんの小説しょうせつにする”という過程かていが物語ものがたりの大おおきなポイントになっているのも興味深きょうみぶかい。犯人はんにんを知しっていても知しらなくても，ニヤリとできる結末けつまつが用意よういされているので，ぜひ期待きたいしてほしい。

「金田一きんだいち耕こう助じょシリーズ 本陣ほんじん殺人さつじん事件じけん」Steamページ