【PR】AI・データ解析で地雷除去活動を支援―年間死傷者5千人を超える残存地雷による民間人の犠牲を少しでも減らすために―　写真1枚　国際ニュース：AFPBB News

あまりにも非ひ人道的じんどうてきな「地雷じらい」の被害ひがい

　デジタル技術でじたるぎじゅつの発達はったつとともに、人道じんどう支援しえんの現場げんばに用もちいるツールも様変さまがわりしてきた。AIやデータ解析かいせきを使つかって地雷じらいなどの脅威きょういや人道じんどう上じょうの被害ひがいを予測よそくできるようになれば、民間みんかん人じんの被害ひがいを最小限さいしょうげんに抑おさえることができる―NECの最新さいしんテクノロジーを活用かつようし、「ICRC」（赤十字せきじゅうじ国際こくさい委員いいん会かい）との共きょう創そうで世界せかいに安全あんぜんと安心あんしんを届とどける取とり組くみがスタートしている。

　世界せかいでは、いまだに戦争せんそうや紛争ふんそうが絶たえない地域ちいきも少すくなくない。また、戦争せんそうや紛争ふんそうが終結しゅうけつしたからといって、その被害ひがいが収おさまるわけではない。現地げんちで暮くらす人々ひとびとのその後ごの生活せいかつは過酷かこくを極きわめる。

　最もっとも深刻しんこくな戦後せんごの被害ひがいの一ひとつが、いたるところに残のこったままの不発ふはつ弾だんや地雷じらいによる犠牲ぎせいである。

　一般いっぱん的てきに、クラスター爆ばく弾だん（空中くうちゅうで親おや爆ばく弾だんを破裂はれつさせると中なかから数すう百ひゃく個こ以上いじょうの子こ爆ばく弾だんが広範囲こうはんいに飛とび散ちるもの）や地雷じらいの不発ふはつ率りつは10〜40％とされている（*1）。戦争せんそう・紛争ふんそうが終結しゅうけつしても、かなりの割合わりあいで必かならずそうした危険きけん物ぶつが残のこっているのだ。対人たいじん地雷じらいの使用しようや貯蔵ちょぞうなどを禁きんじるオタワ条約じょうやくは、2025年ねんまでにすべての地雷じらいの除去じょきょを目標もくひょうに掲かかげる（*2）。だが、戦争せんそう時じの地雷じらいの使用しようは今いまも存在そんざいし、地雷じらい除去じょきょは困難こんなんを極きわめ、地雷じらいの被害ひがいはなくなっていない。

　地雷じらいは、できるだけ敵てきに見みつからないよう森林しんりんの中なかや砂漠さばくでは保護ほご色しょくのものが使つかわれ、かつ兵士へいしや戦車せんしゃといった車両しゃりょうが通とおる場所ばしょを選えらんで埋設まいせつされている。見みつけにくく人間にんげんが通とおる場所ばしょであるがゆえに、紛争ふんそうが終おわり人々ひとびとが生活せいかつ地ちに戻もどった後のちも、残存ざんそん地雷じらいによる危険きけんがあふれている。また、地雷じらいがあるかもしれない地域ちいきでは土地とちの開発かいはつができず、経済けいざい発展はってんが阻害そがいされる。

　地雷じらいの本来ほんらいの目的もくてきは、兵士へいしや戦車せんしゃの通行つうこうを阻害そがいしたり、戦闘せんとう能力のうりょくを下さげたりすることにある。敵てきの脚あしや腕うでなど身体しんたいの一部いちぶだけを負傷ふしょうさせる種類しゅるいのものがあるということも、地雷じらいの恐おそろしさの一ひとつだ（*3）。負傷ふしょうした兵士へいしを仲間なかまが手当てあてし、戦場せんじょうから運はこび出だすためには2、3人にんが必要ひつようとなるため、1人ひとりの兵士へいしの命いのちを奪うばうよりも兵力へいりょくを削そぐ上うえで効果こうかがあるという。

　また、戦争せんそう中ちゅうに犠牲ぎせいとなるのは兵士へいしだけではなく、地雷じらいは民間みんかん人じんにも牙きばをむく。地雷じらいがあるかもしれないという恐怖きょうふは避難ひなんしようとする民間みんかん人じんの行ゆく手てを阻はばみ、実際じっさいにそうした人ひとたちの命いのちを奪うばっていく。さらに戦争せんそうの終結しゅうけつ後ごにも、日常にちじょうの暮くらしを取とり戻もどそうとしている民間みんかんの人々ひとびとが犠牲ぎせいとなるのだ。

　本来ほんらい、負傷ふしょう兵へいや民間みんかん人じんは国際こくさい人道じんどう法ほうで守まもられているため、このような犠牲ぎせいを生うみ出だす地雷じらいの使用しようはあまりに非ひ人道的じんどうてき行為こういと言いわざるを得えない。そうした兵器へいきがいまも、人間にんげんの手てによって世界せかいのあちらこちらで繰くり返かえし使つかわれ続つづけているのである。

実際じっさいに除去じょきょされた地雷じらいの数々かずかず。信管しんかんを抜ぬいた地雷じらい。ICRCにてNECが撮影さつえい

　これらの危険きけんを一刻いっこくも早はやく、少すこしでも多おおく取とり除のぞく努力どりょくが、国際こくさい機関きかんや平和へいわ活動かつどう団体だんたいの支援しえんによって継続けいぞく的てきに行おこなわれてきた。そしていま、戦時せんじにおける中立ちゅうりつかつ人道的じんどうてきな活動かつどうを行おこなう国際こくさい機関きかん「ICRC」とNECがタッグを組くみ、ITの力ちからを活用かつようした取とり組くみが始はじまった。

ICRCとのパートナーシップ

ジュネーブのICRC本部ほんぶ。NECが撮影さつえい

　ICRCは「公平こうへいで中立ちゅうりつ、かつ独立どくりつした組織そしきで、武力ぶりょく紛争ふんそうおよびその他た暴力ぼうりょくの伴ともなう事態じたいによって犠牲ぎせいを強しいられる人々ひとびとの生命せいめいと尊厳そんげんを保護ほごし、必要ひつような援助えんじょを提供ていきょうすることをその人道的じんどうてき使命しめい」としている国際こくさい機関きかんで、スイスのジュネーブに本部ほんぶがある（*4）。

　NECはこのICRCとのパートナーシップで、さまざまな課題かだいに取とり組くんできた。たとえば、膨大ぼうだいな個人こじん情報じょうほうを取とり扱あつかう人道じんどう支援しえん活動かつどうにおいて、デジタル技術でじたるぎじゅつによって人々ひとびとがよりいっそうリスクにさらされることを防ふせぐため、日本にっぽんの企業きぎょうや団体だんたいがソリューションを模索もさくしている。これまでに複ふく数すう回かいのワークショップや、生体せいたい認証にんしょう技術ぎじゅつの検証けんしょうに関かんする意見いけん交換こうかんを実施じっししてきた。とりわけ画像がぞう認識にんしきやAIを駆使くしした地雷原じらいげん（地雷じらい敷設ふせつ場所ばしょ）予測よそくについてのワークショップなどは精力せいりょく的てきに行いってきた。

　そうした流ながれの中なかで2021年ねん6月がつ、共同きょうどうプロジェクト構築こうちくのためのフレームワークで合意ごうい。MOU（基本きほん合意ごうい書しょ）を締結ていけつし、本格ほんかく始動しどうした。

覚書おぼえがきを締結ていけつしたNEC の松木まつき俊哉としや執行しっこう役員やくいん常務じょうむ（左ひだり）とICRCのペーター・マウラー総裁そうさい（当時とうじ）

　MOUの目的もくてきは、ICTのソリューションを用もちいて人道じんどう支援しえん活動かつどうに貢献こうけんすることであるが、『地雷じらい検知けんち』を当面とうめんの注力ちゅうりょく分野ぶんやの一ひとつとすることも合意ごういされた。

　前述ぜんじゅつした通とおり、地雷じらいの埋設まいせつと残存ざんそんによる犠牲ぎせいは後ごを絶たたない。

　国際こくさいNGOが2019年度ねんどに発表はっぴょうしたデータによれば、クラスター爆ばく弾だんや地雷じらいなどいわゆる「ERW」（爆発ばくはつ性せい戦争せんそう残存ざんそん物ぶつ）による死傷ししょう者しゃは世界せかいで5554人にんで、その大半たいはんが民間みんかん人じんだという（*5）。さらに別べつのデータによれば、年間ねんかんの被害ひがい者しゃは約やく7000人にん、うち死者ししゃが3000人にんともいう。こうした犠牲ぎせい者しゃを一刻いっこくも早はやく減へらし、なおかつ地雷じらい除去じょきょ作業さぎょうそのものを安全あんぜん・迅速じんそく・効率こうりつ的てきに行おこなうべくプロジェクトは動うごき出だした。

　MOU締結ていけつの際さい、ICRCのペーター・マウラー総裁そうさい（当時とうじ）は大おおきな期待きたいを込こめて、「私わたしたちは紛争ふんそう下かで最もっとも弱よわい立場たちばにいる人々ひとびとに寄より添そう組織そしき」と前置まえおきしたうえで、「テクノロジーやビジネス、人道じんどうの分野ぶんやで連携れんけいして、多おおくの知恵ちえを結集けっしゅうさせ、新あたらしいソリューションを生うみ出だしたい」と抱負ほうふを述のべた。

机上きじょう検証けんしょうで87％の実効じっこう性せいが証明しょうめい

　プロジェクトの内容ないようを具体ぐたい的てきに見みていく。概要がいようは、こちらのチャート図ずを参照さんしょういただきたい。

　地雷じらい除去じょきょ活動かつどうでは、まず地雷じらい埋設まいせつ地域ちいきまたは箇所かしょを特定とくていするという物理ぶつり的てきな調査ちょうさが必要ひつようである。地雷じらい埋設まいせつに関かんする膨大ぼうだいな情報じょうほうを収集しゅうしゅう・分析ぶんせきし、限かぎりなく近ちかしい地域ちいきや箇所かしょ「Suspected Hazardous Areas（SHA）」が判明はんめいした後のちに、なお一層いっそうの情報じょうほう分析ぶんせきや現地げんち調査ちょうさを経へて「Confirmed Hazardous Areas（CHA）」という場所ばしょを特定とくていしていく。CHAの場所ばしょに物理ぶつり的てきに出向でむいて、例たとえば金属きんぞく探知たんち機きなどの地雷じらい探知たんち機きで地表ちひょうから丹念たんねんに地雷じらいを探索たんさくする「Technical　Survey（TS）」を経へて、特殊とくしゅな什器じゅうきや専用せんよう車両しゃりょうで掘ほり起おこしたり、時ときにその場ばで爆発ばくはつさせたりして地雷じらいを除去じょきょする。

　この活動かつどうの振ふり出だしとなる、地雷じらい埋設まいせつ地域ちいきや箇所かしょSHAを特定とくていするための調査ちょうさを実施じっしするには多大ただいなコストとリスクが生せいじる。そのため、調査ちょうさにおいて「Non-Technical Surveys＝NTS」（非ひ技術ぎじゅつ的てき調査ちょうさ）が極きわめて重要じゅうようとなる。だが、これまでのNTSは過去かこの資料しりょうや地域ちいき住民じゅうみんからの情報じょうほう提供ていきょうという、整理せいりされていない膨大ぼうだいかつさまざまな種類しゅるいの情報じょうほう収集しゅうしゅうをいわばアナログ的てきな作業さぎょうを経へて行いっていた。多大ただいなコストと時間じかんがかかる上うえに、地域ちいきや箇所かしょを正確せいかくに特定とくていしないと地雷じらい除去じょきょ部隊ぶたいの安全あんぜんな作業さぎょうはしっかりと保障ほしょうされず、地域ちいき住民じゅうみんへの危険きけん性せいも十分じゅうぶんに排除はいじょできない。

　このNTSにICTを活用かつようして貢献こうけんしようというのが、NECとICRCの協調きょうちょうによるプロジェクトだ。

　ICRCが河川かせん・山岳さんがく地帯ちたいなどの特徴とくちょう的てきな地形ちけい、工場こうじょうや重要じゅうよう建物たてものなどの土地とち活用かつよう情報じょうほうなどを、さまざまなオープンデータソースから収集しゅうしゅうする。NECがそれらのビッグデータを統合とうごう・整理せいりし、使つかえる形かたちに構築こうちくする。AIの学習がくしゅう機能きのうを活用かつようして情報じょうほう分析ぶんせきすることで、NTSにおけるコストとリスクが極力きょくりょく低減ていげんされ、地雷じらい埋設まいせつの可能かのう性せいが高たかい地域ちいきや箇所かしょの特定とくていが可能かのうとなり、地雷じらい除去じょきょ部隊ぶたいが安全あんぜんに実じつ作業さぎょうを行おこなうことができるようにしたのである。

　今後こんご、AIとドローンなどを使つかった「リモートセンシング」（遠隔えんかく探査たんさ）による精緻せいちな情報じょうほうを融合ゆうごうさせることで、「より迅速じんそくに」「より効率こうりつ的てきに」「より安価あんかに」「より低ていリスク（地雷じらい除去じょきょ部隊ぶたいの被害ひがい削減さくげん）で」という狙ねらいが実現じつげんできる。つまり、限かぎられた人的じんてきリソースでより多おおくの地域ちいき住民じゅうみんや撤去てっきょ作業さぎょうに従事じゅうじする人々ひとびとを救すくい、人道じんどう支援しえんに寄与きよする仕組しくみとなり得えるのだ。

　それらのデータ解析かいせきによって、果はたしてどれほどの精度せいどで地雷じらいが残存ざんそんしている地域ちいきを特定とくていできるのか―。その実証じっしょう実験じっけんが、実際じっさいの紛争ふんそう地ちのデータを元もとに行おこなわれた。

過去かこに紛争ふんそうがあったある地域ちいきの情報じょうほうを活用かつようして行おこなわれた実証じっしょう実験じっけんの結果けっかを示しめしたのが下したの2枚まいのイメージ地図ちずだ。まず赤あかい四角よつかどで囲かこったエリアを分析ぶんせきする。1枚まい目めは、AI解析かいせきによって予測よそくした地点ちてん（赤あかくにじんでいる地域ちいき）、2枚まい目めが、実際じっさいに地雷じらいが埋設まいせつされていた地点ちてん（黄き緑色みどりいろの図形ずけいが点在てんざいしているポイント）を示しめした地図ちずだ。四角よつかどで囲かこったエリアの右側みぎがわ3分ぶんの1ほどは地雷じらいのない地域ちいきであるとの予測よそくを含ふくめ、87％の合致がっち確かく率りつだった。

　実証じっしょう実験じっけんは地雷じらい埋設まいせつポイントがあらかじめ判明はんめいしていた地域ちいきについて実施じっししたものだが、AIデータ解析かいせきは、この実際じっさいの埋設まいせつポイント情報じょうほうは一切いっさい盛もり込こまずに行いった。

イメージ地図ちず1（赤あかくにじんでいる箇所かしょがAI解析かいせきによって予測よそくした地点ちてん）

イメージ地図ちず2（黄き緑色みどりいろの図形ずけいが実際じっさいに地雷じらいが埋設まいせつされていた地点ちてん）

　一方いっぽうで、データ解析かいせきには並々なみなみならぬ苦労くろうが伴ともない、莫大ばくだいな時間じかんを要ようした。

　こうした膨大ぼうだいな資料しりょうの整理せいり・関連かんれん付づけには困難こんなんさを伴ともなったという。現地げんちの安全あんぜん上じょうの制約せいやく等とう、人道じんどう支援しえん団体だんたいが自みずから収集しゅうしゅうできる情報じょうほうは限かぎられ、公開こうかいされている情報じょうほうにも限界げんかいがある。また情報じょうほうは整理せいりされておらず、さらに資料しりょう同士どうしの関連かんれん性せいも明確めいかくではなかった。それだけに、まずは個々ここの情報じょうほう、資料しりょうの意味いみや意義いぎなどの分析ぶんせきから始はじまった。さらには、地雷じらいそのものについての知識ちしき、および埋設まいせつ計画けいかくの背景はいけいなどについての知識ちしきも必要ひつようだった。

　まさに、時間じかんと英知えいちを結集けっしゅうさせた上うえでのAI技術ぎじゅつを用もちいた解析かいせきだったのだ。

紛争ふんそう後ごの地域ちいきにさらなる安全あんぜんと安心あんしんを

　NECは今後こんご、開発かいはつしたこのシステムを、安全あんぜん安心あんしんな地雷じらい探知たんち・除去じょきょを支援しえんする仕組しくみにすることを目指めざす。資料しりょうをより迅速じんそくに分析ぶんせきし、AI解析かいせきの精度せいどを高たかめることで、地雷原じらいげん探知たんちの効率こうりつ化か、ひいては除去じょきょ作業さぎょうの迅速じんそく化か、安全あんぜん性せいの向上こうじょうを図はかり、残存ざんそん地雷じらいによる犠牲ぎせい者しゃを一人ひとりでも多おおく減へらす―

　これこそが、ICRCのマウラー総裁そうさい（当時とうじ）が言いう「紛争ふんそう下かで最もっとも弱よわい立場たちばにいる人々ひとびとに寄より添」い、「テクノロジーやビジネス、人道じんどうの分野ぶんやで連携れんけいして、多おおくの知恵ちえを結集けっしゅうさせ、新あたらしいソリューションを生うみ出だす」という目的もくてきに向むかって進すすむことに繋つながるだろう。

　本ほんプロジェクトは、NECのPurposeである"Orchestrating a brighter world"を体現たいげんする活動かつどうである。NECは、安全あんぜん・安心あんしん・公平こうへい・効率こうりつという社会しゃかい価値かちを創造そうぞうし、誰だれもが人間にんげん性せいを十分じゅうぶんに発揮はっきできる持続じぞく可能かのうな社会しゃかいの実現じつげんを目指めざしている。