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松下幸之助の教えが原点、パナソニックの企業市民活動 - オルタナ

松下まつした幸之助こうのすけおしえが原点げんてん、パナソニックの企業きぎょう市民しみん活動かつどう

よるくらいとどもが勉強べんきょうできない。あんたがみがいているのは電球でんきゅうやない。どものゆめや」――。かつて、かない表情ひょうじょう電球でんきゅうみがいている社員しゃいん松下まつした幸之助こうのすけはこうさとした。パナソニックにはこの「おしえ」からまれた企業きぎょう市民しみん活動かつどうがある。電化でんか地域ちいきにソーラーランタンなどの「あかり」を提供ていきょうすることで、貧困ひんこん連鎖れんさることをねらう。(オルタナS編集へんしゅうちょう池田いけだ しんたかし

電化でんか地域ちいきでソーラーランタンを寄贈きぞうする            ©World Vision

電気でんきがないことが貧困ひんこん連鎖れんさ

ケニア首都しゅとナイロビからくるまで5あいだ場所ばしょにあるナロクけんエンクトト地区ちくはタンザニアとの国境こっきょう付近ふきん位置いちする。

はん乾燥かんそう地帯ちたいにある農村のうそん地域ちいきにはマサイぞくおおく、みなうし山羊やぎなど家畜かちく飼育しいくしている。ケニア全体ぜんたい電気でんき使つかえるひと割合わりあいは36%だが、この農村のうそん地域ちいきではわずか12%の住民じゅうみんしか電気でんき使つかえない。

マサイぞくいええだ骨組ほねぐみで、そこにどろ牛糞ぎゅうふんってがためたものだ。リビングや寝室しんしつなどかく部屋へや仕切しきりはなく、ひとつのおおきな部屋へや家族かぞくらす。そこに「まど」はない。

そのため室内しつないつねくらく、唯一ゆいいつあかりとして灯油とうゆランプがおお使つかわれている。だが、灯油とうゆ使つかうことで健康けんこう被害ひがいにつながったり、灯油とうゆだい(1回分かいぶんやく1ドル)で家計かけい圧迫あっぱくされる。かれらのおおくは、世界銀行せかいぎんこうさだめた国際こくさい貧困ひんこんライン(一人ひとりたりいちにち1.9ドル)未満みまん経済けいざい水準すいじゅん生活せいかつしている人々ひとびとだ。

部屋へやに「あかりがない」ことは、貧困ひんこん連鎖れんさす。学習がくしゅう機会きかいかぎられ、大人おとなでも「き」ができないひとすくなくない。識字しきじりつひくいことでける仕事しごとかぎられ、貧困ひんこんからせない。

電気でんきがあることで夜間やかん学習がくしゅうもできるようになった        ©World Vision

電気でんきがないことは健康けんこうにも多大ただい影響えいきょうおよぼす。むら唯一ゆいいつある診療しんりょうしょでは冷蔵庫れいぞうこ使用しようできないため、ワクチンの保存ほぞんができなかった。看護かんご毎週まいしゅうやく23キロはなれたまちにワクチンをりにき、人々ひとびとはワクチンがとどいたタイミングでしか接種せっしゅができなかった。

産業さんぎょうこそうにも、電気でんきがないとほぼなにもできない。当然とうぜん、このエンクトト地区ちくには「産業さんぎょう」とよべるものはない。かく世帯せたい家畜かちく農業のうぎょう生計せいけいてている。これが電化でんか地域ちいき実情じつじょうだ。そして、ここが、パナソニックがおこな企業きぎょう市民しみん活動かつどう拠点きょてんひとつだ。

ソーラーランタンで教育きょういく健康けんこう収入しゅうにゅう向上こうじょう

同社どうしゃでは2018ねん10がつから2021ねん9がつまでの3年間ねんかん、この地域ちいき電気でんきとどけ、生活せいかつ改善かいぜん支援しえんしてきた。健康けんこう被害ひがい危惧きぐされた灯油とうゆランプのわりとして、ソーラーランタンをとく支援しえん必要ひつような150世帯せたい寄贈きぞうした。

緊急きんきゅうたか世帯せたい優先ゆうせんしてソーラーランタンを配布はいふした     ©World Vision

学校がっこう診療しんりょうしょなどの公共こうきょう施設しせつ安定あんていして電気でんき使つかえるように太陽光たいようこう発電はつでん蓄電ちくでんシステムやソーラーポンプなどを設置せっちした。

電気でんきがあることで、かれらの生活せいかつわりだした。まず学校がっこういえ勉強べんきょうする時間じかんえた。しゅう5にち早朝そうちょう夜間やかんに2あいだ学習がくしゅう機会きかいした。その結果けっか近隣きんりんこう実施じっしした共通きょうつうテストでは、この地域ちいき学校がっこうが1かがやいた。

ふた変化へんか農業のうぎょうだ。ソーラーポンプを活用かつようして、ちかくの小川おがわからみずをくみり、学校がっこう敷地しきち教員きょういん保護ほごしゃによる農園のうえんはじめた。やく2.8トンのトマトとやく2トンのトウモロコシを収穫しゅうかくした。トマトの売上うりあげだかは20まんえんおよび、その収益しゅうえきとトウモロコシによって学校がっこう給食きゅうしょく実現じつげんした。

学校がっこう給食きゅうしょくべるどもたち                  ©World Vision

健康けんこう衛生えいせいめん向上こうじょうした。診療しんりょうしょではワクチンの保存ほぞんができるようになり、接種せっしゅりつ電気でんきがない時期じきくらべると2ばい以上いじょうえた。夜間やかん診療しんりょう可能かのうになったことで、診療しんりょうしょかよいやすくなった。産前さんぜん検診けんしんかよにんは2ばいになった。灯油とうゆランプやたきぎによって気管支きかんし病気びょうきになるひと半年はんとしやく4000にんいたが、ソーラーランタンによってそのかずは1600にんった。

もともとパナソニックはこの地域ちいきくわしいわけではなかった。そこで、この地域ちいき活動かつどうする国際こくさいNGO ワールド・ビジョン・ジャパンとんだ。ただ、機材きざい提供ていきょうするだけでなく、住民じゅうみんに「電気でんき利用りよう」にかんする意識いしき啓発けいはつおこない、効果こうかてき使つかかた追求ついきゅうしてきた。

これが、パナソニックの企業きぎょう市民しみん活動かつどう「LIGHT UP THE FUTURE」である。電化でんか地域ちいきに「あかり」をとどけ、貧困ひんこん連鎖れんさからすことを支援しえんするみだ。

活動かつどう場所ばしょはケニアだけでなく、インドネシアとミャンマーでも展開てんかいした。かく地域ちいき根付ねつき、くさ活動かつどうするNGOときょうはたらかし、貧困ひんこんからの脱却だっきゃくにつながる電気でんき活用かつよう方法ほうほうかんがえた。社会しゃかい課題かだい解決かいけつするために、複数ふくすう組織そしき連携れんけいする「コレクティブインパクト」とばれる手法しゅほうだ。

きっかけは大臣だいじんからの「手紙てがみ

「LIGHT UP THE FUTURE」は2018ねんがったが、その背景はいけいにはいちつう手紙てがみがある。おくぬしはウガンダ共和きょうわこくふく大臣だいじん。パナソニックの工場こうじょう製品せいひん見学けんがくおとずれたのち手紙てがみでこううったえた。

電化でんか地域ちいきらす人々ひとびとは、灯油とうゆランプがはなくろけむりによる健康けんこう被害ひがいなやまされています。パナソニックの太陽たいよう電池でんちはその解決かいけつ手段しゅだんとなります。ぜひちからしてください」

ときは2013ねん。5ねんの2018ねんむかえる創業そうぎょう100周年しゅうねん直前ちょくぜん出来事できごとだった。ウガンダなど電化でんか地域ちいき課題かだい調しらべ、社内しゃない貢献こうけんできることを模索もさくした結果けっか、2018ねんまでにそれらのくににソーラーランタンを10まんだい寄贈きぞうすることにめた。ミャンマーからスタートし、これまでにアジアやアフリカ諸国しょこくなど寄贈きぞうしたくには30カ国かこくおよぶ。

ミャンマーでは灯油とうゆランプの使用しようりつが37.7%り(同社どうしゃ調査ちょうさ)、電気でんきとおったなか安全あんぜん出産しゅっさんしたどもは2434にん小学校しょうがっこうから中学校ちゅうがっこうがるさい進級しんきゅうテストの合格ごうかくりつは57%から100%にがった。

この5年間ねんかんでの成果せいかまえて、活動かつどう拠点きょてんしぼって、いちんだ支援しえん進化しんかさせたのが、「LIGHT UP THE FUTURE」だ。上述じょうじゅつしたケニア、インドネシア、ミャンマーの3カ国かこく電化でんか地域ちいきで2018ねんから活動かつどうつづけている。

パワーサプライステーションの除幕じょまくしき              ©World Vision

COP26で日本にっぽん政府せいふ注目ちゅうもく

貧困ひんこん解決かいけつ目指めざした活動かつどうだが、自然しぜんエネルギーを活用かつようした環境かんきょうせい日本にっぽん政府せいふから評価ひょうかされた。11月に閉幕へいまくしたCOP26 (国連こくれん気候きこう変動へんどうわくぐみ条約じょうやくだい26かい締約ていやくこく会議かいぎ)にわせて、政府せいふ国内外こくないがいにアピールする国内こくない企業きぎょうみのひとつとして、「LIGHT UP THE FUTURE」をえらんだ。欧州おうしゅう大手おおてメディア「ユーロニュース」でも特集とくしゅうまれた。

貧困ひんこん環境かんきょう同時どうじ解決かいけつげるこの活動かつどうについて、ケニアで2018ねんから活動かつどうつづける国際こくさいNGO ワールド・ビジョン・ジャパンの望月もちづきあきら一郎いちろう支援しえん事業じぎょう開発かいはつ事業じぎょうだい3課長かちょうはこう評価ひょうかする。

電化でんか地域ちいきんでいるひと電気でんきがないことがたりまえ生活せいかつをしている。電気でんき健康けんこう経済けいざい教育きょういく発展はってんにはかせない。この活動かつどうとおして、電気でんきがあることで生活せいかつ改善かいぜんすることを住民じゅうみん体感たいかんしてもらったことはおおきな成果せいかだ」

ケニアでのパナソニックとの活動かつどうは2021ねんえたが、今後こんごかく地域ちいき設置せっちした装置そうち地域ちいき住民じゅうみんによってそうさせることを目指めざす。望月もちづきは、「住民じゅうみん主導しゅどうのオーナーシップで電気でんき継続けいぞくてき使つかわれるように政府せいふ交渉こうしょうしている」とはなす。

かつて、松下まつした幸之助こうのすけは「清貧せいひんといえども貧困ひんこん罪悪ざいあくである」とった。そして、企業きぎょう社会しゃかいてき責任せきにんを、「社会しゃかい公器こうきとして貧困ひんこんをなくすことだ」とった。

パナソニックの企業きぎょう市民しみん活動かつどうはこのかんがえが源流げんりゅうにある。日本にっぽんでは電気でんきがあって当然とうぜんというかんがえだが、電化でんか地域ちいきらすひとかず世界せかいやく7.7おくにんだ。10にん1人ひとり電気でんき使つかえない。

「LIGHT UP THE FUTURE」を担当たんとうするパナソニックの多田ただ直之なおゆき企業きぎょう市民しみん活動かつどう推進すいしん電化でんかまなびユニット ユニットリーダー)は、「世界せかいには貧困ひんこん環境かんきょうだけでなく、ジェンダーや教育きょういく格差かくさなど様々さまざま課題かだいがある。このみがきっかけになり、ソーシャルアクションのひろげたい。社会しゃかい課題かだいむことの大切たいせつさを理解りかいするひと実行じっこうするひとえ、ソーシャルのうねりができれば、なかわっていくはず」とちからめた。<PR>

M.Ikeda

池田いけだ しんたかし (オルタナS編集へんしゅうちょう

株式会社かぶしきがいしゃオルタナ取締役とりしまりやく、オルタナS編集へんしゅうちょう 1989ねん東京とうきょうまれ。立教大学りっきょうだいがく文学部ぶんがくぶ卒業そつぎょう環境省かんきょうしょう中小ちゅうしょう企業きぎょう環境かんきょう経営けいえいのありかた検討けんとうかい委員いいん農林水産省のうりんすいさんしょう「2027ねん国際こくさい園芸えんげい博覧はくらんかい政府せいふ出展しゅってん検討けんとうかい委員いいん、「エコアクション21」オブザイヤー審査しんさいん社会しゃかい福祉ふくしHERO’S TOKYO 最終さいしゅう審査しんさいん、Jリーグ「シャレン!」審査しんさ委員いいんなど。

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