｢将来しょうらいの夢ゆめがなくて学部がくぶが選えらべない…｣　悩なやむ高校生こうこうせいへのアドバイス

大学だいがく受験じゅけんのためには、志望しぼう大学だいがくや学部がくぶを決きめなくてはなりません。しかし、高校生こうこうせいの段階だんかいで、将来しょうらいの夢ゆめや目標もくひょうが定さだまっていない場合ばあいは…？　サイエンスライターの竹内たけうち薫かおるさんがアドバイスします。（写真しゃしん＝本人ほんにん提供ていきょう）

【質問しつもん】
将来しょうらい、就つきたい職業しょくぎょうがまだわかりません。とくにこれといって得意とくいなものも、よくわかりません。大学だいがくには進学しんがくしたいと思おもっていますが、どのように学部がくぶを選えらんだらいいでしょうか。（高校こうこう1年ねん・男子だんし）

【回答かいとう】
最初さいしょに考かんがえてみてほしいのは、「自分じぶんは本当ほんとうに大学だいがくに行いくべきか」ということです。高校こうこうを卒業そつぎょうしてすぐに大学だいがくへ進学しんがくするのは、必かならずしも一般いっぱん的てきなことではありません。例たとえば海外かいがいでは、一度いちど社会しゃかいに出でて働はたらいてみてから、やはり勉強べんきょうしようと大学だいがくに入はいる人ひとは少すくなくありません。自分じぶんの中なかでやりたいことや学まなびたいことが決きまってから、大学だいがくに通かようわけです。

今いまは学まなびの形態けいたいが多様たよう化かしていて、選択肢せんたくしもいろいろあります。それでも大学だいがくに行いくべきかどうか、どのくらいのお金かねをかけるのか、行おこなって何なにがやりたいのかを考かんがえてみてください。高校こうこう卒業そつぎょう後ご、起業きぎょうしたり、YouTuberを目指めざしたりする道みちもあるかもしれません。周まわりに流ながされるのではなく、一度いちど立たち止どまって自分じぶんの頭あたまで考かんがえてみると、「とりあえず大学だいがくに行いく」以外いがいにも、実じつはいろいろな可能かのう性せいがあることが見みえてきます。

考かんがえた末すえに大学だいがく進学しんがくを決きめたのならば、学部がくぶや学科がっかを選えらんで受験じゅけんするわけですが、質問しつもん者しゃのように、自分じぶんが将来しょうらい何なにになりたいのか、何なにに向むいているのか、まだわからない人ひともいるでしょう。

私わたしの経験けいけんを紹介しょうかいすると、東京大学とうきょうだいがくの文科ぶんか一類いちるいという法学部ほうがくぶに進学しんがくする人ひとが多おおい科か類るいに入学にゅうがくしました。多おおくの大学だいがくでは学部がくぶや学科がっかごとに学生がくせいを募集ぼしゅうしますが、東京とうきょう大学だいがくでは最初さいしょの2年間ねんかんは全員ぜんいんが教養きょうよう学部がくぶに所属しょぞくして前期ぜんき課程かていの学修がくしゅうをし、2年ねんのときに3年ねん次じからの学部がくぶ・学科がっかを選えらびます。

私わたしは2年ねんまでに法律ほうりつの授業じゅぎょうを何なん回かいか受うけてみて、自分じぶんには法学ほうがくが向むいていないことに気きづきました。法学ほうがくの勉強べんきょう自体じたいは面白おもしろかったのですが、自然しぜん科学かがくの法則ほうそくや論理ろんりなどの学まなびに惹ひかれたのです。そのため、3年ねん次つぎに法学部ほうがくぶには進すすまずに教養きょうよう学部がくぶ教養きょうよう学科がっかに入はいり、文化ぶんか人類じんるい学がくや実験じっけん心理しんり学がく、古典こてんギリシャ語ごなど、さまざまなものを勉強べんきょうしました。その結果けっか、サイエンスを突つき詰つめて研究けんきゅうしたいと思おもい至いたり、教養きょうよう学部がくぶ教養きょうよう学科がっかを卒業そつぎょうしてから理学部りがくぶ物理ぶつり学科がっかに学士がくし入学にゅうがくしました。

このように、入学にゅうがくしてから専門せんもん分野ぶんやを選えらべる大学だいがくもあります。学部がくぶや学科がっかが決きめられない人ひとは、そういった学まなびの間口まぐちの広ひろい大学だいがくへ進学しんがくするのも一ひとつの方法ほうほうです。いろいろな授業じゅぎょうを受うけてみて、そのうえで選択せんたくしていきましょう。ただ、どの方向ほうこうに進すすむにしても、「好すきじゃないと続つづかない」ということを覚おぼえておいてください。「将来しょうらい、役やくに立たちそうだから」という理由りゆうで、何なんとなくマクロ経済けいざい学がくを勉強べんきょうしたとしても、面白おもしろさを感かんじられなければ続つづけることは難むずかしいものです。何なにでもいいので、自分じぶんの好すきなことを思おもい出だしてみてください。例たとえばゲームが好すきならば、それらの技術ぎじゅつに関連かんれんした学まなびに注目ちゅうもくするといった具合ぐあいで、好すきなものに関連かんれんづけながら選えらんでいく方法ほうほうもあると思おもいます。

さらに言いうと、海外かいがい大学だいがくに進学しんがくする道みちもあります。日本にっぽんの大学だいがく受験じゅけんは偏差へんさ値ちが主おもな基準きじゅんになっていますが、実じつは偏差へんさ値ちは一部いちぶの国くにでしか使つかわれていません。日本にっぽん独特どくとくの制度せいどに振ふり回まわされることなく、さまざまな世界せかいがあることを知しって、選択肢せんたくしを広ひろく考かんがえてほしいですね。

試行錯誤しこうさくごするのは、決けっして悪わるいことではありません。そのときは回まわり道みちに見みえても、それが自分じぶんのやりたいことをするための近道ちかみちになることもあります。私わたしの場合ばあいは、回まわり道みちのおかげで物理ぶつり学がくへのモチベーションが高たかまりました。同級生どうきゅうせいから2年ねん遅おくれて大学だいがくを卒業そつぎょうしましたが、10年ねん、20年ねん経たてば、その差さはまったく気きにならないものです。高校生こうこうせいの皆みなさんも、自分じぶんなりの選択せんたくを一ひとつずつ積つみ重かさね、納得なっとくのいく進路しんろを見みいだしてください。

【回答かいとう者しゃ】
竹内たけうち薫かおる（たけうち・かおる）／サイエンスライター。1960年ねん、東京とうきょう生うまれ。筑波大学つくばだいがく附属ふぞく高校こうこう卒業そつぎょう、東京大学とうきょうだいがく教養きょうよう学部がくぶ教養きょうよう学科がっか（科学かがく史し・科学かがく哲学てつがく）、東京大学とうきょうだいがく理学部りがくぶ物理ぶつり学科がっかをともに卒業そつぎょう。マギル大学だいがく大学院だいがくいん博士はかせ課程かてい修了しゅうりょう（高こうエネルギー物理ぶつり学理がくり論ろん）。理学りがく博士はかせ。NHK Eテレ「サイエンスZERO」のナビゲーターを務つとめた。『ゼロから学まなぶ量子力学りょうしりきがく』『中高生ちゅうこうせいの悩なやみを「理系りけいセンス」で解決かいけつする40のヒント』など著書ちょしょ多数たすう。

（文ぶん＝仲なか宇佐うさゆり）