｢反抗はんこう期きの息子むすこ、進路しんろの話はなしができない…｣　受験生じゅけんせいの親おやができることは？

子こどもが高校生こうこうせいになると、大学だいがくで何なにを学まなびたいのか、将来しょうらいどんな方向ほうこうを目指めざすのか、親おやとしては進路しんろが気きになります。しかし、多感たかんな時期じきにいる子こどもとは意思いしの疎通そつうがうまくいかないことも。そんなときの対処たいしょ法ほうをサイエンスライターの竹内たけうち薫かおるさんに聞ききました。（写真しゃしん＝本人ほんにん提供ていきょう）

【質問しつもん】
息子むすこが反抗はんこう期きを迎むかえています。進路しんろをどうするつもりなのか気きになっているのですが、あまり話ばなしをしてくれません。どうしたらいいのでしょうか。（高校こうこう２年ねん男子だんしの母はは）

【回答かいとう】
私わたしにも思春期ししゅんきの子こどもがいるので、ご心配しんぱいは十分じゅうぶん理解りかいできます。高校こうこう２年生ねんせいは大人おとなから見みると、まだまだ子こどもですよね。社会しゃかいで働はたらいた経験けいけんがなく、世間せけんの厳きびしさにも遭遇そうぐうしていないことが多おおい。進路しんろは、これからの人生じんせいをどうしていくのかという大事だいじな話はなしですから、親おやが心配しんぱいになるのも当然とうぜんです。ただ、自分じぶんでいろいろなことを決きめていく年齢ねんれいでもあります。結局けっきょく、自分じぶんの将来しょうらいを決きめるのは子こども自身じしんです。一番いちばんいいのは、無理むりに話はなしかけてき出きだそうとしないで、見守みまもってあげることではないでしょうか。

仮かりにお子こさんの受験じゅけんの準備じゅんびが遅おくれて大学だいがくに合格ごうかくできなかったとしても、翌年よくねんこそは大学だいがくに合格ごうかくしたいと思おもって勉強べんきょうを始はじめるかもしれないし、自分じぶんのやりたいことにはスキルが必要ひつようなことに気きづいて専門せんもん学校がっこうを選えらぶかもしれません。その選択せんたくをお子こさん自身じしんがすることが大切たいせつです。

反抗はんこう期きは、独ひとり立だちの準備じゅんびの時期じきでもあります。親おやが先回さきまわりして何なにでもやってあげると、それが一生いっしょう続つづくことになってしまいます。自分じぶんで人生じんせいを切きり開ひらくには、一いち度どや二に度どの失敗しっぱいは必要ひつようです。それも含ふくめて見守みまもってあげてほしいと思おもいます。

親おやは過去かこに自分じぶんが何なん度ども失敗しっぱいしてきているし、他人たにんが失敗しっぱいした事例じれいも見みてきているので、子こどもにはその苦労くろうを味あじわわせたくないと考かんがえるのは自然しぜんなことです。しかし、やはり失敗しっぱいさせて、それを乗のり越こえていく力ちからをつけさせるのが正解せいかいだと思おもいます。困難こんなんを克服こくふくする経験けいけんを積つみ重かさねていくことで、社会しゃかいに出でてからも、小ちいさな失敗しっぱいにはめげずに頑張がんばれるようになるからです。失敗しっぱいのない、きれいなルートを親おやが整備せいびしてあげていると、親おやがいなくなったときに困こまってしまいます。

その代かわり、子こどもが受験じゅけんすると決きめたら、親おやはできる限かぎりのサポートをしてあげてください。応援おうえんは無限むげん大だいでいいと思おもいます。戦たたかうと決きめたからには勝かたなくてはなりません。家族かぞくが一丸いちがんとなって応援おうえんする態勢たいせいを作つくりましょう。

親おやにできることはいろいろあります。相談そうだんされたときに的確てきかくなアドバイスができるように、大学だいがくや入試にゅうしの情報じょうほうを収集しゅうしゅうする、夜食やしょくを作つくる、試験しけん会場かいじょうまで車くるまで送おくる、試験しけん会場かいじょうの近ちかくのホテルに待機たいきする……など、万全ばんぜんの態勢たいせいで受験じゅけんに集中しゅうちゅうできるようにサポートしてください。受験じゅけんは金銭きんせん的てきな負担ふたんも大おおきいですが、子こどもの将来しょうらいへの投資とうしだと思おもってほしいですね。

振ふり返かえれば私わたしにも反抗はんこう期きはありましたし、不ふ登校とうこうになった時期じきもありました。親おやは放任ほうにん主義しゅぎだったので、「勉強べんきょうしなさい」と言いわれたことは一いち度どもなく、「学校がっこうに行いきなさい」とも言いわれませんでした。不ふ登校とうこうの時期じきには先生せんせいが会あいに来きてくれたり、周まわりの人ひとが少すこしずつ手てを差さし伸のべてくれたりしましたが、最後さいごは自分じぶんで「そろそろ、また学校がっこうに行いってみよう」と考かんがえたのがよかったと思おもっています。

親おやは子こどもを見守みまもり、自分じぶんで答こたえを見みつけられるようにサポートすることが最もっとも大事だいじではないでしょうか。

【回答かいとう者しゃ】

竹内たけうち薫かおる（たけうち・かおる）／サイエンスライター。1960年ねん、東京とうきょう生うまれ。筑波大学つくばだいがく附属ふぞく高校こうこう、東京大学とうきょうだいがく教養きょうよう学部がくぶ教養きょうよう学科がっか（科学かがく史し・科学かがく哲学てつがく）、東京大学とうきょうだいがく理学部りがくぶ物理ぶつり学科がっか卒業そつぎょう。マギル大学だいがく大学院だいがくいん博士はかせ課程かてい修了しゅうりょう（高こうエネルギー物理ぶつり学理がくり論ろん）。理学りがく博士はかせ。NHK Eテレ「サイエンスZERO」のナビゲーターを務つとめた。『ゼロから学まなぶ量子力学りょうしりきがく』『中高生ちゅうこうせいの悩なやみを「理系りけいセンス」で解決かいけつする40のヒント』など著書ちょしょ多数たすう。

（文ぶん＝仲なか宇佐うさゆり）