「こんなの無理むり」勉強べんきょうしながら思おもわず涙なみだ　医学部いがくぶマンガ「Dr.Eggs」が描えがく世界せかいはリアル？【後編こうへん】

医大いだい生せいの日常にちじょうを描えがいたマンガ『Dr.Eggs』（集英社しゅうえいしゃ）の作者さくしゃ・三田みた紀おさむ房ぼうさんと研修けんしゅう医い1年ねん目めのKさん、国立こくりつ大学だいがく医学部いがくぶ3年ねんのSさんに、朝日新聞あさひしんぶん「Thinkキャンパス」平岡ひらおか妙子たえこ編集へんしゅう長ちょうがインタビューしました。医学部いがくぶの授業じゅぎょうは膨大ぼうだいな量りょうの課題かだいと試験しけんがあり、とても厳きびしいそうです。ハードな毎日まいにちを乗のり切きるために、なくてはならない意外いがいなものとは何なにでしょうか。（イラスト＝三田みた紀おさむ房ぼう『Dr.Eggs』／集英社しゅうえいしゃ）

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膨大ぼうだいな学習がくしゅう量りょう　勉強べんきょうしながら泣ないていたことも

――『Dr.Eggs』の連載れんさいはいま、主人公しゅじんこうの円えん千せん森もり（まどか・ちもり）くんが3年ねんに進級しんきゅうしたところですが、医学部いがくぶは2年ねん次じの授業じゅぎょうが特とくにハードですね。

Kさん：いつも「こんなの無理むり」と思おもいながら、膨大ぼうだいな量りょうの課題かだいや試験しけん範囲はんいと格闘かくとうしていました（笑）。

Sさん：僕ぼくが座ざ学がくの中なかで特とくに苦労くろうしたのは、人間にんげんの正常せいじょうな機能きのうや構造こうぞうを学まなぶ2年ねん次じの「生理学せいりがく」という授業じゅぎょうです。覚おぼえる量りょうがとてつもなく多おおいうえに、1単位たんいでも落おとしたら留年りゅうねんというプレッシャーもしんどくて、自宅じたくで勉強べんきょうしながらいつの間まにか泣ないていたことがあるくらい。医学部いがくぶの2年ねんは二度にどとやりたくないです（笑）。

三田みた先生せんせい：医学いがくはどんどん進歩しんぽしていますから、教科書きょうかしょの中身なかみもどんどんアップデートしていくわけです。医学部いがくぶの教授きょうじゅをしている友人ゆうじんも、「自分じぶんの学生がくせい時代じだいと比くらべてすごい勉強べんきょう量りょうだな」と思おもうみたいですよ。

縦たてと横よこのつながりに助たすけられる日々ひび

――泣ないてしまうほどの勉強べんきょう量りょうを乗のり越こえるコツはあるのでしょうか。

Kさん：乗のり越こえていくためになくてはならないのが、友達ともだちやサークルの存在そんざいです。もっとストレートに言いうと、試験しけんの過去かこ問といなどを分わかち合あう仲間なかまが必要ひつようです。

Sさん：一人ひとりでいると情報じょうほうも入はいってこないから、縦たてにも横よこにもつながりが不可欠ふかけつですよね。僕ぼくが所属しょぞくしていたバドミントン部ぶでは、生理学せいりがくの試験しけんのときに、1つ上うえの先輩せんぱいからまとめノートをもらう慣習かんしゅうがありました。そのノートを自分じぶんなりにまとめ直なおして勉強べんきょうするのですが、つらかった生理学せいりがくを乗のり越こえられたのも、このつながりがあったおかげだとすごく感謝かんしゃしています。

Kさん：僕ぼくは研修けんしゅう医いになって半年はんとしくらい働はたらく中なかで、医師いしは一人ひとりでは仕事しごとができないことを痛感つうかんしています。ほかの医師いしや看護かんご師しらと協力きょうりょくしあってこそ、やっていけるのです。そのことを意図いとしているのかはわかりませんが、医学部いがくぶ時代じだいに4人にん1組くみで実習じっしゅうを行おこなったり、仲間なかまと助たすけ合あって試験しけんに臨のぞんだりしたことが、今いまに役立やくだっているようにも思おもいます。

――となると、人ひとづきあいが苦手にがてな人ひとは医学部いがくぶに向むいていないですか。

Kさん：そんなことはないですよ。医学部いがくぶって、受験じゅけんで苦労くろうして斜はすに構かまえたような学生がくせいばかりというイメージがありましたが、入はいってみたら明あかるくていい人じんがいっぱいいました。だから少すこしくらい人ひとづきあいが苦手にがてだとしても、周まわりの人ひとたちが「みんなでやろうよ」とちゃんと巻まき込こんで引ひっ張ぱってくれるので、なんとかなるものです。

Sさん：つらい試験しけんを乗のり越こえて、最終さいしゅう的てきに医師いし免許めんきょを取とるという利害りがいが一致いっちしているので、仲間なかま意識いしきも強つよいのかもしれません。1年ねんより2年ねん、2年ねんより3年ねんと、実習じっしゅうや試験しけんを乗のり越こえるたびに、結束けっそく力りょくが高たかまっていくのを感かんじます。

人ひとと接せっする医師いしとして技術ぎじゅつ以外いがいに必要ひつようなものは？

――マンガでは、アルバイトも大事だいじ、それも飲食いんしょく店てんがいいというシーンが出でてきます。

三田みた先生せんせい：医師いしになるには知識ちしきや技術ぎじゅつだけでなく、人間にんげん性せいも磨みがかなければいけません。そのためには飲食いんしょくのアルバイトがおすすめだとKさんに聞きいて、モデルとして使つかわせてもらいました。

Kさん：僕ぼくはイタリア料理りょうり店てんで6年間ねんかん、接客せっきゃくのアルバイトをしていたのですが、お店みせに来きた方ほうに礼儀れいぎ正ただしくあいさつをして、料理りょうりの説明せつめいをしてコミュニケーションを取とるというのは、初対面しょたいめんの患者かんじゃさんと短時間たんじかんで信頼しんらい関係かんけいを築きずき、話はなしを聞きくことにつながる気きがしています。当あたり前まえにできることのようですが、医学部いがくぶにこもっているだけでは培つちかわれないスキルかもしれません。

Sさん：医学部いがくぶは少すこし閉鎖へいさ的てきな面めんがあるので、仲間なかまとの助たすけ合あいが欠かかせない半面はんめん、意識いしきしないと、いつも同おなじ仲間なかまで固かたまりがちです。僕ぼくは単発たんぱつでイベントスタッフのバイトをしていますが、医学部いがくぶ以外いがいの人ひとと会あうと、考かんがえ方かたや常識じょうしきに「へえ」と思おもうことがあって、外そととの関かかわりを持もつことが重要じゅうようだと思おもっています。

――医学部いがくぶの生活せいかつは、勉強べんきょうにサークルにアルバイトにと濃密のうみつですね。

Kさん：だからこそ楽たのしいんです。真面目まじめに勉強べんきょうばかりしているイメージがあるかもしれませんが、そこは大学生だいがくせいなので、「レポート面倒めんどうだね」という話はなしもするし、遊あそびや恋愛れんあいにも一生懸命いっしょうけんめいだったりします。膨大ぼうだいな量りょうの試験しけん範囲はんいや課題かだいと闘たたかい、終おわったらわずかな時間じかんで思おもい切きり遊あそぶ。それが医学部いがくぶの生活せいかつです。

Sさん：僕ぼくは部活ぶかつがオンオフのいい切きり替かえになっています。3年ねんになった今いまは部活ぶかつの運営うんえいも任まかされて忙いそがしいものの、その忙いそがしさがまた充実じゅうじつ感かんにつながっていたりもします。

勉強べんきょう量りょうの多おおさに関かんしても、山やまを乗のり越こえるたびに医学いがくに興味きょうみがわいたり、「どうしたらいい医師いしになれるんだろう」と考かんがえるようになったりと、この2年間ねんかんでひと皮かわもふた皮かわもむけた気きがしています。最近さいきんでは、医学部いがくぶの大変たいへんさって、医師いしとしてやっていけるかどうかを試ためされているんじゃないかとすら思おもうようになって、意外いがいと医学部いがくぶが合あっていたのかも、なんて思おもいますよ（笑）。

やりたいことがない？　だったら医学部いがくぶへ

――最後さいごに、医学部いがくぶに興味きょうみがある高校生こうこうせいにメッセージをお願ねがいします。

Kさん：高校こうこう時代じだいに悩なやんでいた自分じぶんを思おもい出だすと、思おもいがあふれますが……。一言ひとことで言いうと、医学部いがくぶって面白おもしろい。それに、学問がくもん領域りょういきがとても広ひろいです。病気びょうきを治療ちりょうするということだけでなく、どうしたら苦くるしまずに最期さいごを迎むかえられるかを考かんがえることも、経済けいざい的てきに医療いりょうを維持いじする仕組しくみを考かんがえることも、ロボットのような最先端さいせんたんのことや災害さいがい時じの医療いりょうに関かかわるものも全すべて医学いがくです。だから、「何なんとなく」で医学部いがくぶを選えらぶことは決けっして間違まちがいではないし、むしろはっきり決きまっていない人ひとにこそおすすめです。

Sさん：6年間ねんかんみっちり医学いがくに向むき合あう中なかで、考かんがえ方かたは変かわるし、やりたいこともどんどん見みえてくるはずです。だから、どんな理由りゆうでも「医学部いがくぶに行いこう」と思おもった時点じてんで、スタートラインに立たっていると思おもいます。

ただ、皆みなさんは受験生じゅけんせいである前まえに高校生こうこうせいです。医師いしになって向むき合あうのは人間にんげんなので、部活ぶかつや遊あそびにも全力ぜんりょくで取とり組くむなどいろいろな経験けいけんを積つんで、コミュニケーションの幅はばを広ひろげて、最後さいごに合格ごうかくを勝かち取とってほしいと思おもいます。

三田みた先生せんせい：受験じゅけんってチャレンジですからね。自分じぶんの今いまの成績せいせきで決きめるのと、「あの大学だいがくに行いきたい」と思おもって頑張がんばるのとでは、結果けっかも違ちがってくると思おもいます。「何なんとなく」でもいいじゃないですか。入学にゅうがく後ごに興味きょうみが広ひろがることもあると思おもうので、医学部いがくぶに限かぎらず、まずは可能かのう性せいにかけて頑張がんばってくださいね。

＞＞「勉強べんきょうができるから医学部いがくぶを目指めざす」ってあり？　医学部いがくぶマンガ『Dr.Eggs』の描えがくリアル【前編ぜんぺん】

『Dr.Eggs』第だい7話わ（一部いちぶ抜粋ばっすい）

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プロフィール

三田みた 紀おさむ房ぼう（みた・のりふさ）／一般いっぱん企業きぎょうに就職しゅうしょくしたのち、漫画まんが家かへ転身てんしん。代表だいひょう作さくに『ドラゴン桜さくら』（講談社こうだんしゃ）など。ドラマ化かもされている同どう作品さくひんでは、第だい29回かい講談社こうだんしゃ漫画まんが賞しょう、平成へいせい17年度ねんど文化庁ぶんかちょうメディア芸術げいじゅつ祭さいマンガ部門ぶもん優秀ゆうしゅう賞しょうなどを受賞じゅしょうしている。

（文ぶん＝竹倉たけくら玲子れいこ、協力きょうりょく＝コルク）