就活しゅうかつのために大学だいがくが「保護ほご者しゃの個人こじん面談めんだん」を開催かいさい　親おやの意識いしき改革かいかくが重要じゅうよう

■特集とくしゅう：令れい和わのキャリア教育きょういく・シューカツ事情じじょう

企業きぎょうの採用さいよう活動かつどうの早期そうき化かに伴ともない、学生がくせいの就職しゅうしょく活動かつどうのスタートも早はやまってきています。本格ほんかく的てきに就職しゅうしょく活動かつどうが始はじまるのは大学だいがく3年ねんですが、1年ねんのうちから保護ほご者しゃも巻まき込こみながら、就活しゅうかつに向むけての働はたらきかけをする大学だいがくもあります。一方いっぽうの企業きぎょうも、内定ないていを出だした学生がくせいの親おやに、企業きぎょうが確認かくにんをとる「オヤカク」が必要ひつような時代じだいです。大学だいがくが「保護ほご者しゃの就活しゅうかつ相談そうだん」に力ちからを入いれる動うごきも見みられます。（写真しゃしん＝父母ちちはは懇談こんだん会かいの様子ようす、中央大学ちゅうおうだいがく提供ていきょう）

「情報じょうほう貧乏びんぼう」の学生がくせいは

現在げんざいの就職しゅうしょく活動かつどうは売うり手て市場いちばです。就活しゅうかつをスタートしてすぐに内定ないていがとれる学生がくせいが多おおいものの、「実じつはなかなか決きまらない学生がくせいもいて、二に極きょく化かが目立めだちます」と中央大学ちゅうおうだいがくの理工りこうキャリア支援しえん課長かちょうの五十嵐いがらし星ほし汝なんじ（せいな）さんは言いいます。

「就活しゅうかつがうまくいく学生がくせいは、早はやい段階だんかいからさまざまな就活しゅうかつサイトなどに登録とうろくし、積極せっきょく的てきに情報じょうほうを取とりに行いったり、周まわりに相談そうだんしたりしています。うまくいかない学生がくせいはその逆ぎゃくで、動うごき出だしが遅おそく、だれにも相談そうだんしない傾向けいこうがあります。また、大だい企業きぎょうや名なの知しれた企業きぎょうにこだわることも、うまくいかない要因よういんになりがちです。日本にっぽんの企業きぎょうは9割わり以上いじょうが中小ちゅうしょう企業きぎょう。新卒しんそつの定期ていき採用さいようをしている企業きぎょうのうち大手おおては4分ぶんの１で、最大手さいおおてといわれる企業きぎょうとなると７％しかありません。そこに大量たいりょうの学生がくせいが殺到さっとうすれば倍率ばいりつが上あがり、内定ないていに至いたる人ひとはごくわずかとなります。でも、大手おおてに限かぎらずとも優良ゆうりょう企業きぎょうはたくさん存在そんざいするし、そもそも新卒しんそつの求人きゅうじん倍率ばいりつは1.7倍ばい以上いじょうで、全員ぜんいんが収おさまるだけの求人きゅうじんはあるわけです。そういう実態じったいを知しらない『情報じょうほう貧乏びんぼう』の学生がくせいが、大手おおてばかり受うけて失敗しっぱいしている印象いんしょうがあります」

親おやのための就活しゅうかつスケジュール表ひょう

学生がくせいに早はやくからキャリアに関かんする意識いしきや知識ちしきを持もってもらうために、キャリアセンターではいくつかの対策たいさくを行おこなっています。

例たとえば、中央ちゅうおう大学だいがくでは全ぜん学生がくせいを対象たいしょうに、さまざまな就活しゅうかつ関連かんれんセミナーやイベントを年間ねんかん300回かい以上いじょう実施じっししています。しかし、求人きゅうじん情報じょうほうサイトなどが多様たよう化かしている今いまは、参加さんかする学生がくせいは減少げんしょう傾向けいこうです。

そこで行おこなっているのが、保護ほご者しゃを巻まき込こんだ働はたらきかけです。その一ひとつが、大学だいがく側がわと保護ほご者しゃを結むすぶ「父母ちちはは連絡れんらく会かい」の機関きかん誌しでのキャリア・就活しゅうかつ情報じょうほうの提供ていきょうです（年とし6回かい）。随時ずいじ、就活しゅうかつの情報じょうほうを提供ていきょうし、卒業生そつぎょうせいの就職しゅうしょく状じょう況きょうや就活しゅうかつの傾向けいこう、重視じゅうしするポイントなどを保護ほご者しゃにも知しってもらうことで、わが子この状況じょうきょうを把握はあくし、就職しゅうしょく活動かつどうが進すすんでいない学生がくせいに声こえ掛かけをしてもらう狙ねらいがあります。学年がくねん別べつに、就職しゅうしょく支援しえんの年間ねんかんスケジュール表ひょうを掲載けいさいし、いつ、どんなセミナーに参加さんかすれば良よいのかを、保護ほご者しゃに理解りかいしてもらったりもしています。

また、2024年度ねんどは全国ぜんこく49カ所かしょで、父母ちちはは懇談こんだん会かいを開催かいさいします。各地かくちのホテルなどを会場かいじょうにして、就職しゅうしょくに関かんする説明せつめいをするとともに、保護ほご者しゃの個人こじん面談めんだんを実施じっしし、個々ここの成績せいせきや就活しゅうかつの相談そうだんにも応おうじています。

「特とくに学生がくせいが親元おやもとを離はなれている場合ばあいは、わが子こがどのような生活せいかつを送おくっているのかがわかりづらいものです。個人こじん面談めんだんでは勉学べんがくへの取とり組くみ具合ぐあいを知しってもらうために成績せいせき表ひょうを示しめすほか、就活しゅうかつ期きの子こにどのようなサポートをすべきか、アドバイスもしています。父母ちちはは懇談こんだん会かいを親子おやこで会話かいわするきっかけにしてほしいと考かんがえています」（五十嵐いがらしさん）

そして「保護ほご者しゃも時代じだいが変かわっていることを認識にんしきし、意識いしきを変かえる必要ひつようがある」と強調きょうちょうします。
「例たとえば、保護ほご者しゃは昔むかしの情報じょうほうのまま、公務員こうむいんや銀行ぎんこうといった、いわゆる『堅かたい職業しょくぎょう』ばかりを勧すすめようとする傾向けいこうがあります。今いまはベンチャーや情報じょうほう系けいにも優良ゆうりょう企業きぎょうがあるし、学生がくせいが意欲いよく満々まんまんで受うけようとしているのに、保護ほご者しゃが『危あぶなっかしい』とか『いつ首しゅになるかわからない』とダメ出だしをして、可能かのう性せいをつぶしてしまうことも少すくなくありません。そのため、就活しゅうかつの現状げんじょうを理解りかいしてもらえるよう、努力どりょくしています」

内定ないてい先さきの企業きぎょうが、親おやに確認かくにんを取とる「オヤカク」をすることが増ふえてきています。内定ないていしたにもかかわらず、親おやがだめ出だしをしたことが理由りゆうで、内定ないてい辞退じたいをするケースが後こうを絶たたないためです。

カギは手持てもちのエピソード

なかなか内定ないていがとれない学生がくせいは、情報じょうほうが足たりていなかったり、こだわりが強つよかったりと、何なんらかの問題もんだいがあります。キャリアセンターでは、内定ないていが出でる時期じきになっても進路しんろ決定けってい報告ほうこくがない学生がくせいには直接ちょくせつ、電話でんわやメールで連絡れんらくして面接めんせつし、軌道きどう修正しゅうせいできるように個別こべつに細ささやかな指導しどうをしています。

就職しゅうしょく活動かつどうで企業きぎょうは就活しゅうかつ生せいのどんなところを重視じゅうししているのでしょうか。
「面接めんせつ担当たんとう者しゃの質問しつもんの意図いとを理解りかいして、自みずからを表現ひょうげんする的確てきかくな答こたえを正ただしい日本語にほんごで返かえせるかどうかが重要じゅうようです」と五十嵐いがらしさんは言いいます。答こたえを丸まる暗記あんきしているだけでは、面接めんせつで深ふか掘ほりされたときに答こたえに窮きゅうしてしまうかもしれません。アルバイトにしろ、サークル活動かつどうにしろ、経験けいけんに基もとづいたり学業がくぎょうと結むすびつけたりしながら話はなせる学生がくせいは顔かおつきが違ちがうし、話はなし方かたも変かわってきます。また「正ただしい日本語にほんごで返かえす」というのは意外いがいと難むずかしく、ちょっとした会話かいわで、その学生がくせいの言語げんご力りょくや基礎きそ的てき読解どっかい力りょくが垣間見かいまみえてしまいます。企業きぎょうが最もっとも必要ひつようとする人材じんざいは、各種かくしゅ調査ちょうさの中なかでも「コミュニケーション能力のうりょく」が長年ながねんにわたって首位しゅいを占しめています。

「内定ないていを得えやすい学生がくせいに共通きょうつうするのは、手持てもちのエピソードが多おおい、つまり学生がくせい時代じだいにいろいろな経験けいけんを積つんでいることです。就活しゅうかつの時期じきになってあわてるのではなく、早はやい時期じきから積つみ上あげていくことが大事だいじです」

「充実じゅうじつした学生がくせい生活せいかつ」が一番いちばんの対策たいさく

キャリアセンターでは、自分じぶんの強つよみと弱よわみ、学生がくせい生活せいかつの振ふり返かえり、どんな目標もくひょうを立たてていけばいいのかといったことを書かき込こみ、自分じぶん自身じしんのキャリアデザインを確認かくにんするツールとして、「キャリアデザイン・ノート」を用意ようい。1年生ねんせいのオリエンテーションで使つかい方かたを説明せつめいし、早はやい時期じきから活用かつようすることも呼よびかけています。

「学生がくせい時代じだいに何なにをしたかは、学生がくせい生活せいかつを楽たのしんでいないと答こたえられません。『就活しゅうかつは1年生ねんせいから』などというと息苦いきぐるしく感かんじるでしょうが、要ようは入学にゅうがくしたら勉強べんきょう、部活ぶかつ、アルバイト、ボランティアなど、さまざまなことに打うち込こんで学生がくせい生活せいかつを楽たのしむことが大事だいじです。充実じゅうじつした学生がくせい生活せいかつが、いい就職しゅうしょくにつながっていきます。保護ほご者しゃの方ほうも、大学だいがく時代じだいにお子こさんがフィールドを広ひろげて多おおくの経験けいけんを積つめるよう、ぜひ背中せなかを押おしてあげてください」（五十嵐いがらしさん）

保護ほご者しゃ向むけの就活しゅうかつサポートが手厚てあつい大学だいがくが増ふえています。例たとえば、東北大学とうほくだいがくではキャリア支援しえんセンターが「保護ほご者しゃのための就活しゅうかつ講座こうざ」として動画どうがを作成さくせいしました。インターンシップの変更へんこう点てんや、学生がくせいの事例じれい、保護ほご者しゃが何なにを支援しえんしたらよいかなどを解説かいせつしていて、保護ほご者しゃ向むけに限定げんてい公開こうかいしています。また、保護ほご者しゃ向むけの個別こべつ相談そうだんも予約よやく制せいで行おこなっています。対面たいめんのほか、オンラインでの相談そうだんも実施じっししています。

青山学院大学あおやまがくいんだいがくでも、「保護ほご者しゃのための就活しゅうかつガイドブック」を作成さくせいし、「就活しゅうかつ中ちゅうに親おやに言いわれてつらかったこと」「親おやにしてもらって嬉うれしかったこと」など学生がくせいの具体ぐたい的てきな声こえを紹介しょうかいしています。「私わたしは総合そうごう職しょくで頑張がんばりたいと思おもっていたが、親おやはプライベート（婚こん活かつなど）を優先ゆうせんするために一般いっぱん職しょくを強つよく勧すすめてきた」「『～ちゃんはもう就活しゅうかつ終おわってる』など他たの人ひとと比較ひかくする言葉ことば」がつらかったという意見いけんや、「なるようになるので、期待きたいしすぎず、子供こどもが幸しあわせに生いきてくれることに感謝かんしゃしてください」という学生がくせいからの親おやへのメッセージなども載のせています。

大学だいがく側がわも、保護ほご者しゃのサポートの重要じゅうよう性せいを伝つたえつつ、時代じだいが変かわっていることを理解りかいしてもらいたいと考かんがえているようです。子こどもとの距離きょりを上手じょうずに保たもちながらも、大変たいへんな就活しゅうかつを支ささえていくことが、親おやに求もとめられている時代じだいです。

★朝日新聞社あさひしんぶんしゃでは、「オヤカク」についてご意見いけんを募集ぼしゅうしています。
いまどきの「オヤカク」について、どう思おもいますか？下記かきをクリックしてアンケートにお答こたえください。

就活しゅうかつで「オヤカク」どう思おもう？ – フォーラム：朝日新聞あさひしんぶんデジタル (asahi.com)

>>【特集とくしゅう】令れい和わのキャリア教育きょういく・シューカツ事情じじょう

（文ぶん＝熊谷くまがいわこ、写真しゃしん＝中央大学ちゅうおうだいがく提供ていきょう）