Evolution News & Views

Ｍ・ビーヒー『The Edge of Evolution（進化しんかの境界きょうかい線せん）』への的外まとはずれな批判ひはん

Michael Behe
November 19, 2010

［BioLogos連続れんぞく掲載けいさいの］次つぎの掲載けいさい分ぶんでDave Ussery教授きょうじゅは、私わたしの本ほんの一章いっしょう“What Darwinism Can Do”（ダーウィニズムになし得えること）で私わたしがあまり一生懸命いっしょうけんめいでないと不服ふふくを唱となえている。共通きょうつう 祖先そせんの一いち例れいとして、私わたしはパンのイいースト菌すときんが、過去かこのどこかでゲノムを重複じゅうふくさせた十分じゅうぶんな証拠しょうこがあると指摘してきした。しかしまた、重複じゅうふくされないゲノムをもつ他ほかのイいースト菌すときんもそれなりにうまくやってきたとも言いった。要ようは、遺伝子いでんしあるいは全体ぜんたい的てき重複じゅうふくゲノムでさえ、ダーウィニストが主張しゅちょうするような強力きょうりょくな道具どうぐではないということである。その点てんがデイヴの念頭ねんとうにはまったくない。この章しょうについての彼かれの主しゅたるコメントは、cilium （繊毛せんもう）や進化しんか（evolution）という言葉ことばをPubMed(医学いがく文献ぶんけんデータベース)で探さがしてみよ、と読者どくしゃに呼よびかけることである。これらの言葉ことばを共ともに含ふくむ論文ろんぶんはいくらでもあると彼かれは保証ほしょうする。彼かれは単純たんじゅんにも、その事実じじつこそ、繊毛せんもうがダーウィンのメカニズムによって生しょうじた可能かのう性せいの研究けんきゅうが進すすんでいる証拠しょうこだと考かんがえている。アッサリ―は全まったく間違まちがっている。これらの論文ろんぶんの大だい部分ぶぶんは、どのように繊毛せんもうが進化しんかしたかなどに関係かんけいがない。中なかには、曖昧あいまいな空想くうそう的てきシナリオに交まじって、繊毛せんもうのタンパク質たんぱくしつのどれが他たのタンパク質たんぱくしつのどれに似にているか（これはせいぜい共通きょうつう 祖先そせんの問題もんだいに関係かんけいするだけ）についての面白おもしろい研究けんきゅうもあるが、論文ろんぶんのどれひとつとして、繊毛せんもうのような構造こうぞう物ぶつが、いかにダーウィン的てきメカニズムによって徐々じょじょに生しょうじ得えたかを、検証けんしょうできるように詳細しょうさいに説明せつめいしたものはない。デイヴの議論ぎろんは「個人こじん的てき軽信けいしん性せいからの議論ぎろん」と名付なづけることができよう。つまり、彼かれや他たのある者ものたちが、繊毛せんもうはダーウィン方式ほうしきで生しょうじ得えたと信しんじている以上いじょう、それが起おこったに違ちがいなく、またそれが起おこったと同意どういするいかなる論文ろんぶんも、それが現げんに起おこった強力きょうりょくな証拠しょうこをもっているに違ちがいない――ということだ。しかし軽信けいしん性せいは通つう 常つね、科学かがく者しゃの美徳びとくとは考かんがえられていない。

ひとつ考かんがえてみてほしい――Eugene Kooninが言いうように、「２ふたつかそこらの変異へんいを要ようするだけのタンパク質たんぱくしつの複雑ふくざつな特徴とくちょう」でさえ、どうやって進化しんかすることができたか長年ながねんの謎なぞなのに、いったいどうして何なん百ひゃくもの異ことなったタンパク質たんぱくしつをもつ、繊毛せんもうのような構造こうぞう物ぶつが、ダーウィン方式ほうしきで進化しんかできたのか、見当けんとうがつけられるだろうか？　これこそ、「ブヨにはこだわるがラクダなら呑のみ込こめる」（マタイ23：24）という言葉ことばそのものだ。答こたえは簡単かんたんで、デイヴ（や他たのダーウィニスト）の想像そうぞう力りょくが、確たしかなデータや実験じっけんに取とって代かわる雲くもか霞かすみのようなものを考かんがえるからである。

４よっつ目めの掲載けいさい分ぶんでアッサリ―教授きょうじゅはThe Edge of Evolutionの６、７章しょう（“Benchmarks”と“The Two Binding Site Rule”）を論ろんじている。６章しょうについて彼かれが言いっていることはただ一ひとつ、なんと、リチャード・ドーキンズが著書ちょしょClimbing Mount Improbableで、首尾しゅび一貫いっかんした、多層たそう的てきな進化しんかのステップの問題もんだいを解決かいけつしたということだ。ダーウィン的てきプロセスが繊毛せんもうのような複雑ふくざつで相互そうご作用さようする機械きかいを作つくるために、しなければならないことは、ただ「考かんがえられない山やま」の切きり立たった崖がけの面めん でなく、なだらかなスロープの面めんを選えらぶことだけである。デイヴはこれを信頼しんらいしきっているから、我々われわれは崖がけを見みているが、なだらかな山道さんどうは、ただドーキンズの想像そうぞう力りょくに現あらわれるだけだということに思おもい至いたらないのである。The Edge of Evolutionのポイントは、実験じっけんによる証拠しょうこはドーキンズの比喩ひゆを支持しじしないということなのである。私わたしの論証ろんしょうに対たいする反証はんしょうが、それ以来いらいテーブルに載のせられたことはない。

７章しょうについてのコメントでもデイヴは、変異へんいの利点りてんについて非常ひじょうに変かわった理解りかいを示しめしている。私わたしの勘かんぐりでは、彼かれはCenter for Biological Sequence Analysisに所属しょぞくして、生活せいかつのために変異へんいを研究けんきゅうしているから、どうやら彼かれは、変異へんいが多おおければ多おおいほど、分析ぶんせきの仕事しごとが多おおくなり、彼かれにとってもこの機関きかんにとってもよいことだと思おもっているらしい。彼かれが、Lenskiのバクテリアの系統けいとうの1つが変異へんい株かぶに変かわったのは、何なんとよいことだと論ろんじている理由りゆうを説明せつめいしようとすると、思おもいつくのはそんなことしかない。（この変異へんい株かぶでは、ＤＮＡポリメラーゼの修復しゅうふく機能きのうが壊こわれて、このバクテリアは通つう 常つねよりも桁外けたはずれに多量たりょうの変異へんいを蓄積ちくせきする。）もしより高たかい変異へんい率りつをもつことが有利ゆうりだとしたら、なぜ自然しぜん状態じょうたいのE.coli(大腸菌だいちょうきん）が、はるかにより低ひくい変異へんい率りつを保たもっているのか、彼かれは不思議ふしぎでないらしい。この最後さいごの点てんについては、彼かれは異ことなったE.coli株かぶのゲノムを比較ひかくする図ずを示しめし、それらの多おおくは、他たのあるものに見みつかるＤＮＡの大おおきな部分ぶぶんを欠損けっそんしているとコメントし、その部分ぶぶんが分子ぶんし機械きかいをコードしているのだと考かんがえる。そうかもしれない。しかし、それらがもともと存在そんざいしていて、その後ご、それらを欠かく株かぶから失うしなわれたのでないという、どんな証拠しょうこがあるのか？　そして分子ぶんし機械きかいのどれでも、ダーウィンのメカニズムによって生しょうじたという、どんな証拠しょうこがあるのか？　ともにそれは全まったくない。

不幸ふこうなことに、多おおくの（全部ぜんぶではない）有神論ゆうしんろんダーウィニストを含ふくめ、多おおくの（全部ぜんぶではない）ダーウィニストと同様どうよう、アッサリ―教授きょうじゅは単純たんじゅんに論争ろんそう点てんそのものを当然とうぜんのこととし、自分じぶんの前提ぜんていから一いち歩ほ下さがってみることが全まったくできないでいる。