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「日本にっぽんのベーブ・ルース」メジャー進出しんしゅつ

二刀流にとうりゅう大谷おおやの 誕生たんじょう

大谷おおや翔しょう平たいらは岩手いわて県けん奥州おうしゅう市しで生うまれ育そだった。父ちち・徹とおるはセミプロの野球やきゅう選手せんしゅだった。大谷おおやは父親ちちおやから「懸命けんめいにプレーすること」を学まなんだ。

大谷おおやが選えらんだ花巻はなまき東ひがし高校こうこうでは、佐々木ささき洋ひろし監督かんとくが厳格げんかくな規則きそくと哲学てつがくを持もち込こんだプログラムを作つくり上あげていた。入学にゅうがくした野球やきゅう部員ぶいんは、どのような目標もくひょうを達成たっせいしたいか、具体ぐたい的てきに書かき出だすことを求もとめられる。

入学にゅうがく当初とうしょの「日本にっぽんのプロ野球やきゅうでドラフト1位い指名しめい」という大谷おおやの目標もくひょうは、「NPB(日本にっぽん野球やきゅう機構きこう)を飛とばして渡米とべい」に飛躍ひやくした。高校こうこうの最終さいしゅう学年がくねんまでに身長しんちょうは190cmを超こえ、マウンドでの速球そっきゅうは160キロに達たっした。

18歳さいの大谷おおやは記者きしゃ会見かいけんを開ひらき、アメリカでプロ生活せいかつを始はじめたい意向いこうを明あきらかにした。しかし日本にっぽんハムファイターズは大谷おおやを指名しめいした。説得せっとくは1カ月かげつ近ちかく続つづいた。

ファイターズは「投手とうしゅと打者だしゃの二刀流にとうりゅうを容認ようにんする」と断言だんげんした。大谷おおやは納得なっとくし、メジャー進出しんしゅつはしばらくお預あづけとなった。

日本にっぽんのベーブ・ルースの目覚めざましい活躍かつやく

randytate/gettyimages

人ひとは大谷おおやを「日本にっぽんのベーブ・ルース」と呼よんだ。およそ100年ねん前まえ、ベーブ・ルースはボストン・レッドソックスで同おなじことをやっていたが、二人ふたりの道みちは大おおきく異ことなる。

大谷おおやは二刀流にとうりゅうの道みちにこだわり続つづけているが、ルースは強打者きょうだしゃとしての地位ちいを確立かくりつしてから投手とうしゅへの興味きょうみをほとんど失うしなった。

大谷おおやは2014年ねんシーズンに投手とうしゅと打者だしゃを同時どうじにこなせることを証明しょうめいした。日本にっぽんプロ野球やきゅう史上しじょう、同おなじシーズンのうちに本塁打ほんるいだ10本ほんと、投手とうしゅとしての10勝しょうを挙あげた選手せんしゅは大谷おおやの他ほかに一人ひとりもいなかった。日本にっぽんのベーブ・ルースは多おおくのメジャー球団きゅうだんから注目ちゅうもくを集あつめた。

大谷おおやは2016年ねんシーズン終了しゅうりょう後ご、もう1年ねん日本にっぽんに残のこると決きめた。ケガに悩なやまされ、シーズンを通つうじての登板とうばんは5試合しあいにとどまった。防御ぼうぎょ率りつは3・20だった。ただ、打撃だげきは目覚めざましく、65試合しあいで202打数だすう、打率だりつ・332を記録きろく。MLB(メジャーリーグベースボール)のスカウト陣じんにはこの数字すうじで十分じゅうぶんだった。

獲得かくとく競争きょうそうと決断けつだんの裏側うらがわ

2017年ねん11月、大谷おおやはメジャー移籍いせきのため、球団きゅうだんに契約けいやく解除かいじょを申もうし出でた。新しん規約きやくにより海外かいがい選手せんしゅ獲得かくとくの費用ひようが劇的げきてきに下さがり、25歳さいに満みたない選手せんしゅのポスティング価格かかくは最大さいだい2000万まんドルになっていたため、メジャー27球団きゅうだんの熾烈しれつな獲得かくとく競争きょうそうが始はじまった。

大谷おおやを呼よび込こむために選手せんしゅを動員どういんする球団きゅうだんもあった。エンゼルスはスター選手せんしゅマイク・トラウトが、帰省きせい中ちゅうで週末しゅうまつに結婚式けっこんしきを控ひかえる多忙たぼうの中なか、フェイスタイムを通つうじてエンゼルスでプレーすることの素晴すばらしさを説といた。

大谷おおやはエンゼルスを選えらんだ。全米ぜんべい各地かくちのエンゼルスの選手せんしゅたちも喜よろこびの声こえをあげた。ちょうどトラウトの結婚式けっこんしきに集あつまるところだったため、喜よろこびがさらに増ました。

大谷おおやは「エンゼルスとの間あいだに感かんじた絆きずな」を理由りゆうにこの球団きゅうだんを選えらんだ。大谷おおやが高校生こうこうせいの頃ころからずっと追おっていたエンゼルスのGM、ビリー・エップラーの功績こうせきも大おおきかった。

期待きたいと落胆らくたん

「オオタニ」を無駄むだにするな

2017年ねん12月、大谷おおやはメジャーリーガーとしての記者きしゃ会見かいけんで、「投手とうしゅとしての初はつ勝利しょうりと打者だしゃとしての初はつホームラン、どちらに期待きたいしているか」と問とわれ、「最高さいこうなのはどちらも一緒いっしょの試合しあいでできること」と答こたえた。大谷おおやらしいコメントだ。マイク・ソーシア監督かんとくは「われわれは間違まちがいなく二刀流にとうりゅうを認みとめるつもりだ」と断言だんげんし、聴衆ちょうしゅうは大だい歓声かんせいをあげた。

ソーシア監督かんとくは1999年ねんシーズン終了しゅうりょう以降いこう、球団きゅうだん史上しじょう最大さいだいの栄光えいこうをもたらした。ソーシア体制たいせい3年ねん目めには初はつのワールドシリーズ制覇せいはを果はたし、エンゼルスを5度どにわたりプレーオフへ導みちびいた。

しかし2009年ねん以降いこうは黄金おうごん時代じだいに陰かげりが見みえ始はじめた。スター選手せんしゅマイク・トラウトが歴史れきしに残のこる実績じっせきを残のこし続つづけたが、援護えんごがなく、トラウトを浪費ろうひしていた。

エンゼルスに必要ひつようなのはトラウトを支援しえんできる強力きょうりょくな打者だしゃと、エース投手とうしゅだった。ファンは、この両方りょうほうを一人ひとりの選手せんしゅが満みたしてくれるのではないかと夢想むそうした。

大谷おおやとの契約けいやく以降いこう、トラウトの無駄遣むだづかい論ろんは静しずかになり、「大谷おおや翔しょう平たいらを無駄むだにするな」が話題わだいとなった。

必要ひつような時間じかん

Nigel Stripe/gettyimages

2018年ねん、大谷おおや初はつのメジャーのスプリングトレーニング。さっそく問題もんだいが多発たはつした。

まず公式こうしき球だまに悩なやまされた。左ひだり投手とうしゅの大おおきく曲まがる変化球へんかきゅうには手てこずった。打撃だげき練習れんしゅうでの慣習かんしゅうにも戸惑とまどいを見みせた。さらに、新あたらしい言語げんごの習得しゅうとくは不可欠ふかけつだった。

同僚どうりょうとのシミュレーションゲームで、大谷おおやはカーブに対たいしてヘルメットを飛とばすほど、激はげしく空振からぶりした。スポーツライターらは大谷おおやの状況じょうきょうを懸念けねんした。

ただ、エンゼルスには反論はんろんの余地よちが大おおいにあった。大谷おおやとバッテリーを組くむベテラン捕手ほしゅのレネ・リベラは、「ファンがいないこの場面ばめんではアドレナリンも出でないだろう。『プレーボール!』の声こえがかかれば、もっと球速きゅうそくが上あがるし、変化球へんかきゅうの曲まがりもよくなる。それが本物ほんもののオオタニだよ」と語かたった。