衆院が14日に解散され、事実上の選挙戦がスタートした。衆院選(19日公示―31日投開票)に向け、読者と調査報道に取り組む「みなぶん特報班」は10月上旬、無料通信アプリ「LINE」を使って通信員(フォロワー)に対し、今回の衆院選の争点は何だと思うかを尋ねた(複数回答)。「新型コロナウイルス対応」や「経済・雇用」が全体の約6割を占め、「政治とカネ」問題には厳しい意見が目立った。(報道センター 佐藤大吾、川崎学)
アンケートは10
月6~10
日の4
日間行い、333
件の
回答があった。
全回答の約3分の2が争点に上げ、最多だったのが新型コロナウイルス対応だ。官邸主導の対策は後手後手の批判がつきまとい、今年夏以降の感染「第5波」が収束した今も、不満は道民に根強く残る。札幌市中央区の50代主婦は「コロナでの対応が後手に回り、いろいろと弊害が出た」と手厳しい。留萌管内苫前町の20代男性会社員も「新型コロナに対する対応が遅いという声を聞くので、どのように変えていくのか気になる」と候補者の主張に耳を傾けるつもりだ。
道内では3度の緊急事態宣言が出され、経済も大きなダメージを受けた。札幌市北区の50代女性公務員は「緊急事態宣言も、まん延防止等重点措置も乱発すればいいってものではない」と憤りを隠さない。帯広市の60代主婦は「この2年間お粗末だったコロナ対策を先手を打ってやってほしい」と注文した。
回答者全体のうち2番目に多い、6割弱で争点に上げられ、自由記述では現役世代からの回答が目立った。新型コロナウイルス感染拡大で冷え込んだ経済の正常化にはまだ時間がかかりそうで、札幌市中央区の30代男性会社員は「政策により生活や経済状況が大きく変わることをこの2年で感じた。経済の回復が国民を安心させる一番の方法だと思う」と答えた。オホーツク管内大空町の50代団体職員も「冷え込んだ経済や経済格差をどうするのか、政策を聞きたい」と各党、候補者の訴えに注目する。
コロナ禍で給料が下がった人も多く、その一方で食料品などの値上げは続いている。札幌市手稲区の50代男性会社員は「賃金が下がり、いろいろと切り詰めているがそろそろ限界」と苦しい状況を吐露した。
高齢化の進行で、国民が利用した医療、介護などの社会保障給付費は過去最高を更新している。高齢者にとって医療費負担などの問題は切実な問題で、十勝管内音更町の70代無職女性は「年を重ねると一番は医療問題」と訴える。札幌市の80代男性も「年金で生活しているので、医療費が高くなると困る」とこちらも不安を口にする。
公的年金制度の維持は高齢者だけでなく、その下の世代にとっても切実で、札幌市豊平区の40代男性会社員は「医療・社会保障問題は待ったなしの急務。年金問題などは早く決断をし、かじを取るべきだと思う」と改革を求めた。三笠市の40代女性パートは「どの党も生活困窮者を減らすようなことを言っているが、財源をどうするのか気になる。今後、コロナで仕事がなくなるなどして生活が苦しくなるかもしれないと思うと不安しかない」と回答した。
アンケート回答者の怒りが最も伝わってきたのが、政治とカネの問題だ。安倍政権下では森友・加計学園問題や桜を見る会の疑惑などがあり、菅政権下では首相の長男が勤める東北新社による総務省幹部への高額接待もあった。札幌市南区の40代男性会社員は「前政権までうやむやにしていた政治とカネの問題はうみを出し切ってほしい」と話し、宗谷管内枝幸町の50代自営業女性は「疑惑を解明せず、逃げてごまかす政府はもういらない」と説明責任を果たさない政府に疑問を呈した。
安倍・菅政権で拡大した格差について、札幌市白石区の50代男性会社員は「給与所得の格差を是正すること。もうけている人がさらにもうけるような課税システムの改革が必要」と提案する。
周辺各国との外交について、オホーツク管内湧別町の40代男性公務員は「柔軟かつ効果的な外交政策で日韓問題を早急に解決してほしい」と指摘し、札幌市白石区の60代男性会社経営者は「中国とロシアとの関係は微妙ではあるが、毅然(きぜん)とした交渉を行うのが理想的だ」と北方領土問題の進展などに期待する。
ジェンダー平等も大きな関心だ。渡島管内七飯町の50代女性公務員は「子供ができた途端、女性は母として軸足を置くことを強いられている。子育てしながら働くことが、男女ともに自然になってほしい」と、出産後も同じように働ける職場環境を望んだ。
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