舞楽ぶがくにあたり初はじめに奏そうされます。振ふ鉾ほこは古代こだい中国ちゅうごくの故事こじに由来ゆらいし、左ひだり方かたさほうと右みぎ方かたうほうの舞まい人じんまいにんが鉾ほこほこを振ふり天地てんちを鎮しずめ安やすんじて、天下てんか泰平たいへいを言祝ことほぐめでたい舞楽ぶがくです。鉾ほこで天地てんちをはらうことから舞台ぶたいを祓はらい清きよめる舞楽ぶがくともされます。

舞まい人じんは襲かさね装束しょうぞくかさねしょうぞくで左ひだり方かたは赤あかの袍ほうほうに金色きんいろの鉾ほこ、右みぎ方かたは緑みどりの袍ほうに銀色ぎんいろの鉾ほこを執とって舞まいます。

平安へいあん時代じだい中頃なかごろ、宇多うたうだ上皇じょうこうが童わらわ相撲すもうわらべすもうをご覧らんになる際さい、藤原ふじわら忠ちゅう房ぼうただふさが曲きょくを、敦あつし実みあつみ親王しんのうが舞まいを作つくられました。左ひだり方かたの舞楽ぶがく「迦陵頻しきかりょうびん」と共ともに、童子どうじどうじの舞まいとして名高なだかい曲きょくです。

装束しょうぞくは彩いろどりの様々さまざまな蝶ちょうの刺繍ししゅうが施ほどこされた萌黄色もえぎいろの袍ほうを着つけ、背せには極彩色ごくさいしょくの大おおきな蝶ちょうの羽はねを負おい、蝶ちょうが花はなから花はなへと飛とび、舞まい遊あそぶ情景じょうけいを思おもわせます。

極楽ごくらくに住すんでいるという鳥とり、迦陵頻伽かりょうびんがかりょうびんがの舞まい遊あそぶ様ようを現あらわしたもので、起源きげんはインドといわれ、日本にっぽんには奈良なら時代じだいに伝つたえられたといわれます。

舞まい人じんは赤色あかいろの装束しょうぞくで、背せには鳥とりの羽はねを背負せおい、桜さくらの花はなを挿さした天てん冠かんむりてんかんをつけます。手てに持もつ銅どう拍手はくしゅどうびょうしの音色ねいろは迦陵頻伽かりょうびんがの鳴なき声ごえを表現ひょうげんしていると伝つたえられます。

平安へいあん時代じだい中期ちゅうきの雅楽ががくの名手めいしゅ、源みなもと博雅ひろまさみなもとのひろまさの作曲さっきょくと伝つたえられます。よく整ととのった格式かくしきの高たかい曲きょくとされ、舞まいを伴ともなわないものの舞楽ぶがく曲きょくに分類ぶんるいされる特殊とくしゅ曲きょくで、舞楽ぶがく終了しゅうりょうの際さいには、退出たいしゅつをもよおす退出たいしゅつ音声おんせいまかでおんじょうとして奏そうされます。

舞まいを伴ともなう雅楽ががくの形態けいたいを舞楽ぶがくといい、演奏えんそう法ほうは管絃かんげんよりも力強ちからづよく歯切はぎれの良よいのが特徴とくちょうです。
舞楽ぶがくには唐楽とうがくとうがくの伴奏ばんそうで舞まう左ひだり舞まいさまい、おもに高麗こうらい楽らくこまがくの伴奏ばんそうで舞まう右みぎ舞まいうまい、声楽せいがくせいがくに伴ともなって舞まう日本にっぽん古来こらいの国風くにぶり歌舞かぶくにぶりのうたまいがあります。

神宮じんぐう観月かんげつ会かいは、明治めいじ31年ねん、藤原ふじわら定家さだいえていかの流ながれをくむ和歌わかの師範しはんの家柄いえがらである当時とうじの神宮じんぐう大宮おおみや司つかさ・冷泉れいせん為ため紀きれいぜいためもとが伝つたえた冷泉れいせん流りゅうの作法さほうに基もとづき、神宮じんぐう皇すめらぎ學がく館かん学友がくゆう会かいが倉田くらた山さんで催もよおしていた｢観月みづき歌会うたかい｣に始はじまります。戦後せんごの昭和しょうわ23年ねんからは神かみ宮司ぐうじ庁ちょうが主催しゅさいする行事ぎょうじとなり、短歌たんかと俳句はいくの秀作しゅうさくを外宮げくうまがたま池ちのほとりで披講ひこうし、併あわせて管絃かんげんと舞楽ぶがくを奉たてまつ奏そうする雅みやびやかな行事ぎょうじとなり、現在げんざいに至いたります。