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デジタル化した世界で、人の嗜好はアナログ化する――『東のエデン』に学ぶ、単館上映ビジネス(前編)(1/5 ページ) - ITmedia ビジネスオンライン

デジタルした世界せかいで、ひと嗜好しこうはアナログする――『ひがしのエデン』にまなぶ、たんかん上映じょうえいビジネス(前編ぜんぺん(1/5 ページ)

» 2010ねん04がつ08にち 0800ふん 公開こうかい
[堀内ほりうち彰宏あきひろBusiness Media まこと]

 ここすうねん、テレビアニメの放映ほうえいすう減少げんしょう傾向けいこうにあるなか劇場げきじょうアニメが注目ちゅうもくされている。2009ねんには、『サマーウォーズ』や『ONE PIECE』といった劇場げきじょうアニメがだい規模きぼ展開てんかいしてヒットした。一方いっぽうかずかんからすうじゅうかん小規模しょうきぼ劇場げきじょう公開こうかいでもおおきく注目ちゅうもくされるような作品さくひん次々つぎつぎまれており、あらたなトレンドとなっている。その代表だいひょうがテレビシリーズからはじまり、劇場げきじょうばん2さく公開こうかいした『ひがしのエデン』だ。

 『ひがしのエデン』はフジテレビ系列けいれつのノイタミナ※わくで2009ねん4〜6がつ放映ほうえいされたアニメで、深夜しんやとしては異例いれいの5%前後ぜんこう視聴しちょうりつ毎回まいかい記録きろく東京とうきょうアニメアワードではテレビ部門ぶもん優秀ゆうしゅう作品さくひんしょう受賞じゅしょうした。そしてその続編ぞくへんとして2009ねん11月28にち公開こうかいされた『ひがしのエデン 劇場げきじょうばんI The King of Eden(劇場げきじょうばんパート1)』、2010ねん3がつ13にち公開こうかいされた『ひがしのエデン 劇場げきじょうばんII Paradise Lost(劇場げきじょうばんパート2)』も好調こうちょう推移すいいしている。

※ノイタミナわく……フジテレビの深夜しんやアニメわく木曜もくよう深夜しんや045ふんから放映ほうえい。ノイタミナの名前なまえは、アニメーションのスペル(Animation)をぎゃくみしたもので、「アニメの常識じょうしきをくつがえしたい」というスタッフのおもいに由来ゆらいしている。

 3月26にち東京とうきょう国際こくさいアニメフェアでおこなわれたシンポジウム「劇場げきじょうアニメビジネス 2010ねんあらたな潮流ちょうりゅう」(主催しゅさいアニメアニメジャパン)では、『ひがしのエデン』プロデューサーの石井いしい朋彦ともひこ(プロダクション・アイジー)、アニメ評論ひょうろん氷川ひかわ竜介りゅうすけ映画えいがジャーナリストの斉藤さいとう守彦もりひこがアニメアニメジャパンのすう直志ただし司会しかいとして、『ひがしのエデン』を代表だいひょうとする小規模しょうきぼ展開てんかい劇場げきじょうアニメビジネスについてかたった。

映画えいがひがしのエデン 劇場げきじょうばん II Paradise Lost』予告編よこくへん

アニメビジネスの変遷へんせん

かず 日本にっぽんのアニメ業界ぎょうかいでは近年きんねん上映じょうえいかんすうかずかんからすうじゅうかんという小規模しょうきぼ劇場げきじょうアニメからヒットにるようになっています。そのなかでも、「映画えいが前提ぜんていとして、テレビアニメを放映ほうえいする」というめずらしいこころみをした『ひがしのエデン』についてげたいとおもいます。まず、氷川ひかわさんと斉藤さいとうさん、劇場げきじょうアニメの動向どうこうについてひとこといただけますか。

アニメ評論ひょうろん氷川ひかわ竜介りゅうすけ

氷川ひかわ わたし今年ことしで52さいになるのですが、30ふんテレビアニメシリーズの『鉄腕てつわんアトム』が日本にっぽんはじめてオンエアされた1963ねんときに5さいで、テレビアニメだいいち世代せだいともわれています。

 以来いらい、テレビアニメにせっしてきて、今日きょういたるわけですが、その40すう年間ねんかんのアニメの編成へんせいていくと、商業しょうぎょうアニメである以上いじょう媒体ばいたい変遷へんせんとそのなかでとられてきたコマーシャリズムの影響えいきょうけていることがかります。たとえば、初期しょきはナショナルクライアントがテレビアニメのスポンサーになっていましたが、つぎにおもちゃ会社かいしゃがスポンサーになって、そしてビデオグラムを販売はんばいするビジネスになる、という3だん変化へんかおおきくけてありました。

※ビデオグラム……映画えいがやテレビ番組ばんぐみなどの映像えいぞう作品さくひんを、VHSテープやDVD、Blu-ray Discなどの媒体ばいたい記録きろくしたもの。

 わたしは40だいのころまでは、「アニメそのものがビデオグラムとして商品しょうひんになればゴールではないか」とかんがえていたのですが、それがあるしゅ限界げんかいにきていて、またさらにつぎのステージにかいつつあるという問題もんだい意識いしきをここすうねんつよいだくようになっています。

 「テレビアニメは1963ねんからはじまった」といましたが、今年ことしで47ねんということは、景気けいき循環じゅんかんの1つであるコンドラチェフのなみ技術ぎじゅつ革新かくしんによって50ねん周期しゅうき景気けいき循環じゅんかんするという理論りろん)でいう物事ものごと変化へんかする節目ふしめときたります。なおかつ、2011ねん7がつ地上波ちじょうはデジタルに完全かんぜん移行いこうして、テレビそのものの存在そんざいわってしまうというときに、せずしてか、同期どうきしてかはからないのですが、テレビアニメ以前いぜん東映動画とうえいどうががやっていたような、小規模しょうきぼのおきゃくさんとせっする興行こうぎょうもどっているということは、かなら意味いみがあるとおもっていて、興味きょうみっています。

映画えいがジャーナリストの斉藤さいとう守彦もりひこ

斉藤さいとう わたし今年ことしで49さいになりましたが、1987ねん〜1996ねんいまはない映画えいが業界ぎょうかい興行こうぎょう通信つうしん』ではたらいていました。そこでいろんな取材しゅざい編集へんしゅうをしていたのですが、映画えいが業界ぎょうかいは(映画えいが内容ないようより)映画えいがのビジネスをあつかうのが主流しゅりゅうなので、制作せいさく発表はっぴょうとき以外いがい制作せいさく現場げんばなどにはかなかったのですが、配給はいきゅう興行こうぎょう現場げんばには毎日まいにちきました。配給はいきゅう会社かいしゃを1にちに4〜5しゃくらいまわったり、映画えいがかん支配人しはいにんはなしいたりしていたので、わたしにとっては「映画えいが=ビジネス」という感覚かんかくです。

 わたしまれた1961ねんは、映画えいが産業さんぎょう斜陽しゃようになり、映画えいが人口じんこうはじめた最初さいしょとしです。だから、わたしの49年間ねんかん人生じんせいで、日本にっぽん映画えいが産業さんぎょう斜陽しゃようでなかった時期じきはないんです。「わるいのがたりまえ」みたいなかんじなのですが、「じゃあ、斜陽しゃようしか経験けいけんしていないぼくたちが、これからの映画えいが業界ぎょうかいをどうやってげていくのか」といろいろかんがえます。

 いま映画えいが興行こうぎょうとくに1990年代ねんだい以降いこう映画えいが業界ぎょうかいていくと、アニメ映画えいが存在そんざいおおきくなる一方いっぽうです。みなさんごぞんじのスタジオジブリ作品さくひん、ファミリーアニメでは『ドラえもん』と『ポケットモンスター』というりょう横綱よこづながいますので、1990年代ねんだい日本にっぽん映画えいががホントにダメになったときにそれをささえたのはアニメ映画えいがなんですね。ここすうねんテレビ局てれびきょく主導しゅどう制作せいさく委員いいんかい方式ほうしきつく実写じっしゃ映画えいがおおくありましたが、それも若干じゃっかんってきています。

 「またこれからアニメ映画えいが日本にっぽん映画えいがささえないといけないのか。実写じっしゃ映画えいがひとたちはなにをやっているんだ」という気持きもちもあるのですが、そこでいろんな数字すうじてみると、アニメ映画えいがはアンダー200(200スクリーン以下いか公開こうかいする作品さくひん)とぼく勝手かって名付なづけているのですが、小規模しょうきぼ展開てんかい作品さくひんがたくさんあります。いま全国ぜんこく映画えいがかんのスクリーンすうは3396(2009ねんで、『アバター』(2009ねん)のような勝負しょうぶさくだと830スクリーンで公開こうかい、『カールじいさんのそらいえ』(2009ねん)だと560スクリーンで公開こうかいしています。アニメ映画えいがでも『ドラえもん』などは500スクリーンくらいとるのですが、マーケットの大小だいしょうがはっきりかれていて面白おもしろいですね。

 『ひがしのエデン』の劇場げきじょうばんパート2はいま、15スクリーンでの公開こうかいなのですが、それくらい小規模しょうきぼ公開こうかいしても、1スクリーンたりのげは『ドラえもん』にけないくらいの数字すうじています。今日きょうはいろいろデータをってきたので、そういうところをおはなししていきたいとおもっています。

映画えいがかんスクリーンすう出典しゅってん日本にっぽん映画えいが製作せいさくしゃ連盟れんめい
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