クアルコムが日本にっぽんの携帯けいたい電話でんわ市場いちばで果はたしてきた役割やくわりとは──山田やまだ純じゅん社長しゃちょうに聞きく（前編ぜんぺん）：日本にっぽんでのCDMAサービス開始かいし10周年しゅうねん（1/2 ページ）

米べいQUALCOMMを中心ちゅうしんに実用じつよう化かを果はたしたCDMA技術ぎじゅつを採用さいようする通信つうしん方式ほうしき、cdmaOneが日本にっぽん市場いちばに導入どうにゅうされて10年ねん。日本にっぽんが世界せかい有数ゆうすうの携帯けいたい先進せんしん国こくにまで発展はってんした影かげには、QUALCOMMとクアルコム ジャパンの全力ぜんりょくのサポートがあった。

　NTTドコモ、KDDI（au）、ソフトバンクモバイル、そしてイー・モバイルと、携帯けいたい電話でんわ事業じぎょうを手てがけるキャリアのすべての新しん製品せいひんラインアップが3G携帯けいたい電話でんわになっている昨今さっこん、かなりの割合わりあいで端末たんまつのボディのどこかに「QUALCOMM 3G CDMA」という刻印こくいんやシールがあるのにお気きづきだろうか。QUALCOMMは、携帯けいたい電話でんわ向むけのチップセットを開発かいはつ、供給きょうきゅうしているだけでなく、3G携帯けいたい電話でんわの主要しゅような技術ぎじゅつの特許とっきょを持もち、端末たんまつメーカーにさまざまな技術ぎじゅつを供与きょうよしている米国べいこくの技術ぎじゅつ開発かいはつ集団しゅうだんである。

　一般いっぱん的てきには“QUALCOMM＝CDMA2000”というイメージが強つよいが、W-CDMA端末たんまつにおいても、同社どうしゃの技術ぎじゅつが使つかわれている。実じつは、CDMA（Code Division Multiple Access／符号ふごう分割ぶんかつ多重たじゅう接続せつぞく）という技術ぎじゅつは、QUALCOMMが世界せかいで初はじめて携帯けいたい電話でんわに応用おうようしたもので、CDMAに関連かんれんする多数たすうの特許とっきょ技術ぎじゅつを保有ほゆうしているのだ。

　2008年ねん7月がつ14日にち、そんなCDMA技術ぎじゅつが日本にっぽんに初はじめて導入どうにゅうされてから10周年しゅうねんを迎むかえる。今いまからさかのぼること約やく10年ねん。1998年ねん7月がつ14日にちに関西かんさいセルラーと九州きゅうしゅうセルラー（いずれも現げんKDDI）、そして沖縄おきなわセルラーが初はじめてcdmaOneのサービスを開始かいしした。この日ひが、日本にっぽんで初はじめてCDMA技術ぎじゅつの商用しょうようサービスが始はじまった日ひなのだ。

　はたして、この10年ねんでCDMA技術ぎじゅつとQUALCOMMにはどんな歴史れきしがあったのか。クアルコム ジャパンの山田やまだ純じゅん社長しゃちょうに聞きいた話はなしを交まじえつつ、同社どうしゃが日本にっぽんで果はたしてきた役割やくわりを探さぐった。

クアルコム ジャパン 代表だいひょう取締役とりしまりやく社長しゃちょうの山田やまだ純じゅん氏し

混乱こんらんの中なかでスタートしたcdmaOne

　10年ねん前まえの1998年ねんといえば、日本にっぽんではADSLサービスも始はじまっておらず、iモードやEZwebのような本格ほんかく的てきな携帯けいたい電話でんわでのインターネットサービスなどもなかった時代じだい。メールも電話でんわ番号ばんごうを使つかったショートメールが一般いっぱん的てきだった。携帯けいたい電話でんわは“電話でんわ”として使つかわれ、携帯けいたい電話でんわキャリアはサービスエリアや品質ひんしつを競きそっていた。そんななか、当時とうじのDDIとIDO（いずれも現げんKDDI）は、それまで一般いっぱん的てきだったPDC方式ほうしきから、通話つうわ品質ひんしつに優すぐれるといわれたcdmaOne方式ほうしきに移行いこうする決断けつだんをする。そこで、全国ぜんこくに先駆さきがけてサービスを導入どうにゅうしたのがDDIセルラーの地域ちいき会社かいしゃ、関西かんさいセルラー、九州きゅうしゅうセルラー、沖縄おきなわセルラーだったのだ。

　10年ねん前まえのサービス導入どうにゅう時じは、かなりの混乱こんらんぶりであったと、山田やまだ氏しは振ふり返かえる。

　「当時とうじのQUALCOMMには、売うり物ものはCDMAという技術ぎじゅつしかなかった。それが先進せんしん市場いちばである日本にっぽんで使つかってもらえるということで、とてもエキサイトしていたことを覚おぼえています。とにかく、なんとしてでも成功せいこうさせたいという思おもいでした。cdmaOneのサービスは、当時とうじ香港ほんこんや韓国かんこく、米国べいこくの一部いちぶで始はじまったばかりで、日本にっぽんでの導入どうにゅうは、世界せかいでも早はやいほうでしたので、業界ぎょうかいからの注目ちゅうもくも高たかく、やれることはなんでもやって成功せいこうさせようと意気込いきごんでいました」（山田やまだ氏し）

　しかし、「電波でんぱは生いき物もの」とはよく言いったもので、cdmaOneはサービス開始かいし直後ちょくごに大おおきなトラブルを抱かかえることになる。

　「関西かんさいなどでのcdmaOne導入どうにゅう直後ちょくごに、『バッテリーの寿命じゅみょうが一いち日にちも持もたない』というトラブルがありました」（山田やまだ氏し）

　CDMAという無線むせん技術ぎじゅつは、同時どうじにたくさんの基地きち局きょくからの電波でんぱをつかむ点てんが、技術ぎじゅつ的てきな優位ゆうい性せいの1つだった。同時どうじに複数ふくすうの基地きち局きょくと通信つうしんを行おこなうため、通話つうわがとぎれることなく安定あんていして会話かいわができる。またクルマなどで移動いどうしながら通話つうわしても、常つねにもっとも通信つうしん状態じょうたいのいい基地きち局きょくと通信つうしんしているので、切きれることがないという点てんが評価ひょうかされていた。

　しかし、当時とうじはフィールド実験じっけんが未熟みじゅくだったため、端末たんまつから基地きち局きょくが見みえすぎてしまい、つねに端末たんまつと基地きち局きょくがつながった状態じょうたいに陥おちいってしまった。待受まちうけに戻もどれず、常時じょうじハンドオーバーをし続つづける状態じょうたいになり、バッテリーを消耗しょうもうしてしまったのだ。

　山田やまだ氏しは、当時とうじクアルコム ジャパンに入社にゅうしゃしてまだ数カ月すうかげつしか経たっていない状態じょうたいで、そのトラブルのまっただ中なかにいた。その山田やまだ氏しにとって、当時とうじのQUALCOMM本社ほんしゃの対応たいおうは鮮明せんめいに記憶きおくに残のこるものだったという。

クアルコム ジャパンに入社にゅうしゃして間まもなくcdmaOneの立たち上あげに関かかわったという山田やまだ氏し

　「QUALCOMMは米国べいこくの技術ぎじゅつ開発かいはつ会社かいしゃでしたから、一度いちど端末たんまつメーカーやインフラメーカーにライセンスを供与きょうよしてしまえば関係かんけいはおしまい、もうあとはサービスがどういう性能せいのうになろうと、どういうトラブルに見舞みまわれようと、距離きょりを置おいて冷ひややかな対応たいおうするのではないかと思おもっていました。当時とうじ、トラブルのまっただ中なかにいた自分じぶんは、QUALCOMM本社ほんしゃがそんな対応たいおうをする会社かいしゃなら、辞やめようかと思おもっていたんです。そんな会社かいしゃだったら、まともに付つき合あえません」（山田やまだ氏し）

　だが実際じっさいのQUALCOMM本社ほんしゃの対応たいおうはまったく異ことなるものだった。

　「幸さいわいなことに、何なんの心配しんぱいをすることもなく、San Diego（QUALCOMM本社ほんしゃの所在地しょざいち）は24時じ間あいだ体制たいせいのチームを作つくり、情報じょうほうを受うけ付つける組織そしきを整ととのえました。日本にっぽんにもフィールドでデータを測定そくていするチームをつくり、彼かれらが大阪おおさか地域ちいきのネットワークデータを収集しゅうしゅうしていきました。そして日本にっぽんでデータを解析かいせきするだけでなく、本社ほんしゃにもデータを送おくって解析かいせきさせるなどして、ほんの数日すうじつの間あいだに問題もんだい点てんを見極みきわめていきました。

　その後ご6〜7の改善かいぜんポイントが判明はんめいし、それを実装じっそうするためのソフトウェア変更へんこうのアイデアを出だし、端末たんまつメーカーや通信つうしん事業じぎょう者しゃとの協議きょうぎに入はいりました。不眠ふみん不休ふきゅうの体制たいせいで、1週間しゅうかんで関係かんけい各社かくしゃと改善かいぜん策さくを共有きょうゆうすることができ、最初さいしょの評判ひょうばんの悪わるさをぬぐい去さることができました。こういう対応たいおうができる会社かいしゃであれば、技術ぎじゅつを売うる会社かいしゃとしては“極きわめてまともである”と実感じっかんしたのです」（山田やまだ氏し）

　QUALCOMMの日本にっぽんでの船出ふなでは決けっして安泰あんたいではなかった。しかし、このようなトラブルに全力ぜんりょくで対処たいしょしたからこそ、日本にっぽんのキャリアやメーカーからの信頼しんらいを得えられるようになったのだ。

提供ていきょう：クアルコムジャパン株式会社かぶしきがいしゃ
企画きかく：アイティメディア営業えいぎょう本部ほんぶ／制作せいさく：ITmedia ＋D 編集へんしゅう部ぶ／掲載けいさい内容ないよう有効ゆうこう期限きげん：2008年ねん7月がつ19日にち