5Gに過度かどな期待きたいは禁物きんもつ／eSIMはMVNOにとってチャンス：モバイルフォーラム2019（1/2 ページ）

[房ぼう野の麻子あさこ，ITmedia]

　テレコムサービス協会きょうかいのMVNO委員いいん会かいが3月8日にちに開催かいさいした「モバイルフォーラム2019　〜2030年ねんを見据みすえた新あらたな競争きょうそうルールとMVNOの果はたすべき役割やくわり〜」。「激動げきどうのモバイル業界ぎょうかい　MVNOの発展はってんに必要ひつような競争きょうそう環境かんきょうとは？」と題だいしたパネルディスカッションの前編ぜんぺんでは、分離ぶんりプランや接続せつぞく料りょうの話はなしを取とり上あげた。後編こうへんでは、中古ちゅうこ市場いちばや5Gについての議論ぎろんをお届とどけする。

　モデレーターはITmedia Mobile編集へんしゅう長ちょうの田中たなか聡さとしが担当たんとう。パネリストはジャーナリストの石川いしかわ温あつし氏し、野村のむら総合そうごう研究所けんきゅうじょ パートナーの北きた俊一しゅんいち氏し、MVNO委員いいん会かい副ふく委員いいん長ちょうでケイ・オプティコム 執行しっこう役員やくいんの浜田はまだ誠一郎せいいちろう氏しの3人にんだ。

• →分離ぶんりプランで“端末たんまつ割引わりびき”はどうなる？／接続せつぞく料りょうによらない仕組しくみとは？

中古ちゅうこ市場いちばは盛もり上あがるか

　まずは分離ぶんりプランに関連かんれんした中古ちゅうこ市場いちばについて。

　石川いしかわ氏しは、中古ちゅうこ品ひんだけでなく「リファービッシュ品ひんをもっと流通りゅうつうさせるべき」という考かんがえ。リファービッシュ品ひんは、分解ぶんかいしてバッテリーが交換こうかんされ、新品しんぴんに近ちかい状態じょうたいで使つかえるようになっている。きれいで安心あんしんして使つかえ、しかも安やすい。「日本にっぽんで分解ぶんかいして作つくれるくらいの業者ぎょうしゃが出でてくれば中古ちゅうこ市場いちばが活性かっせい化かする」（石川いしかわ氏し）と期待きたいする。

　浜田はまだ氏しは、「mineoでもiPhoneのリファービッシュ品ひんを調達ちょうたつし、それなりに支持しじされている」と紹介しょうかい。業界ぎょうかい団体だんたいが周知しゅうち活動かつどうを行おこなうことで「世界せかいのエコシステムの中なかで日本にっぽんの市場いちばも同おなじように行いくのではないか。安やすい端末たんまつを希望きぼうするユーザーもいるので歓迎かんげいしている」とリファービッシュ品ひんの広ひろがりに期待きたいした。

　また、ドコモが中古ちゅうこ端末たんまつでもSIMロックを解除かいじょできるようになったことに対たいして、浜田はまだ氏しは「選択せんたくの自由じゆう度どが上あがるのでいいこと」と回答かいとうした。mineoは3キャリアの回線かいせんを借かりているトリプルキャリアだが、「例たとえばソフトバンク用ようの端末たんまつを持もっていてドコモの回線かいせんを契約けいやくしたいというユーザーも一定いってい数すういる」そうだ。

　ただ、中古ちゅうこ端末たんまつは当然とうぜん、5Gの通信つうしんには対応たいおうしない。ユーザーにとっては安やすく買かえていいが、一方いっぽうで、新あたらしい技術ぎじゅつの普及ふきゅうを阻害そがいするという見方みかたもある。

　北きた氏しは「議論ぎろんが極端きょくたんに振ふれすぎている」とコメント。iPhoneのような高額こうがく端はし末まつが“一括いっかつ0円えんキャッシュバック”で買かえる日本にっぽんで、中古ちゅうこ端はし末まつが大量たいりょうに流通りゅうつうすることはありえないという。「中古ちゅうこ端末たんまつのシェアはアメリカでも10％ちょっとくらいしかない。日本にっぽんで今いま、4〜5％。それが20％とか30％になるのかといったらそんなことはなくて、せいぜい10〜15％くらいになればいい」（北きた氏し）

　そうなると現在げんざいのハイエンド端末たんまつ偏重へんちょうのマーケットから、ミドルレンジの端末たんまつに若干じゃっかんシフトすると北きた氏しは予想よそう。買かい換かえの際さいに自分じぶんの求もとめる端はし末まつが広ひろい選択肢せんたくしから選えらべる世界せかいになるという。

　新あたらしい技術ぎじゅつの普及ふきゅうを阻害そがいするのではという懸念けねんに対たいして、北きた氏しは「これから5Gだが、ギリギリ良よかったかなと。もうちょっと遅おそかったら確たしかにまずかった」と話はなす。

　5G端はし末まつが発売はつばいされたとしても非常ひじょうに高額こうがくで、一般いっぱんユーザーで購入こうにゅうする人ひとは少すくないだろう。広ひろく普及ふきゅうするのに2年ねんくらいかかり、その頃ころには5G対応たいおう端末たんまつでも5万まん〜6万まん円えん前後ぜんこうのミドルレンジ端はし末まつが出でてくると北きた氏しは予想よそうする。「その頃ころには今いままでの異常いじょうな世界せかいから普通ふつうの世界せかいなり、それぞれのユーザーのお財布さいふやITリテラシーに合あわせた選択せんたくが行おこなわれていく。そうなってくれることを期待きたいしている」（北きた氏し）

　なお、MNOが下取したどりした端末たんまつを再ふたたび自分じぶんで売うるような流ながれはないのかという質問しつもんに対たいし、石川いしかわ氏しは「自分じぶんたちで中古ちゅうこ端末たんまつを売うることはない」というキャリアの社長しゃちょうたちの考かんがえを紹介しょうかい。米国べいこくのキャリアには整備せいび済ずみ端末たんまつを売うっているところもあるが、日本にっぽんでは「イノベーションの足あしを引ひっ張ぱる要因よういんになるので売うる方向ほうこうには行いかないと思おもう」と石川いしかわ氏しは語かたった。

5Gに過度かどな期待きたいは禁物きんもつ

　最後さいごのテーマは「MVNOと新しん技術ぎじゅつの関係かんけい」。これから日本にっぽんでも5Gが始はじまり、今後こんご10年ねんくらいを担になっていくはずだ。5GとMVNOはどう関係かんけいしていくのだろうか。

　浜田はまだ氏しは「5Gには結構けっこう早はやいタイミングで接続せつぞくをさせていただけるのでは」と期待きたい感かんを語かたった。「MVNOも新あたらしい領域りょういきに挑戦ちょうせんしなくてはいけない。IoTが大おおきなチャンス。5Gになると柔軟じゅうなんな接続せつぞくの形態けいたいが考かんがえられるので、MNOに負まけないように多様たようなサービスを考かんがえ、自分じぶんたちで汗あせをかいて努力どりょくする。そういう役割やくわりを果はたしていきたい」（同氏どうし）

　必要ひつようとなる「柔軟じゅうなんな接続せつぞくの形態けいたい」は、「われわれ自身じしんが標準ひょうじゅん化か動向どうこうなどを勉強べんきょうして規制きせい当局とうきょくに働はたらきかけたり、情報じょうほう発信はっしんしたりしていきたい」（浜田はまだ氏し）とした。

　一方いっぽう、石川いしかわ氏しは「申もうし訳わけないが」と前置まえおきした上うえで、「5Gにそんなに期待きたいしてはいけないと最近さいきんは思おもっている」と語かたった。

　「5Gの特徴とくちょうは高速こうそく大だい容量ようりょう、低てい遅延ちえん、多た接続せつぞくの3つだが、多た接続せつぞくに関かんしては現状げんじょうのLPWAで大抵たいていのことはできるので、今いまのネットワークでいいという感かんじになっている。2019年ねんに大だい容量ようりょうの方向ほうこう性せいが見みえていて、2020〜2021年ねん以降いこうに低てい遅延ちえんという方向ほうこう。キャリアはさまざまなユースケースや実験じっけんを紹介しょうかいしているが、それも2020年ねんまでだという気きがしていて、その先さき、キャリアが5Gに本腰ほんごしを入いれるか疑問ぎもんだと思おもっている」（石川いしかわ氏し）

　特とくに28GHz帯たいなどのミリ波はの扱あつかいはかなり難むずかしく、実用じつよう化かに疑問ぎもんを感かんじるところがあるという。「あまり5Gに期待きたいしないで、現実げんじつ的てきなところで地道じみちにやっていくのがいいのでは」（石川いしかわ氏し）と冷静れいせいな判断はんだんを促うながした。

　北きた氏しも「5Gはバブル。ちょっと危険きけんな状態じょうたいになってきている」と警鐘けいしょうを鳴ならした。

　「自動じどう運転うんてんにしても、日本にっぽん中ちゅうの道路どうろを5Gでカバーするのは相当そうとうな時間じかんがかかる。ただ、2025〜6年ねんになれば5Gエリアは全国ぜんこくに広ひろがっていて、われわれも4G、5Gを意識いしきせずに使つかえる。いったん5Gに慣なれてしまったら戻もどれない。でも今いまはまだ2019年ねんで、ちょっと期待きたいが高たかまりすぎている」（北きた氏し）

　一方いっぽうで、キャリアと各種かくしゅ企業きぎょうが5Gに向むけて新あたらしいサービスを生うみ出だそうとしている取とり組くみは歓迎かんげいしている。「そのうち、これは5Gじゃなきゃできないというものが出でてくると思おもう」（北きた氏し）

　浜田はまだ氏しは「自動じどう運転うんてんは疑問ぎもんを持もつこともあるが、トラフィックの伸のび依然いぜんとして強つよい。とにかくずっと伸のび続つづけいて止とまりそうにない。その収容しゅうようを考かんがえた際さい、正常せいじょう進化しんかとしては5G、小しょうセル化かはやらざるを得えないので、5Gは当然とうぜん入はいっていくのは間違まちがいない」と通信つうしん事業じぎょう者しゃとしての意見いけんを語かたった。

　なお、接続せつぞく料りょうや契約けいやくの形かたちは5Gで変かわる可能かのう性せいはあるのかという問といに対たいし、北きた氏しは「それをまさに総務そうむ省しょうのモバイル研究けんきゅう会かいで、これからしっかり議論ぎろんしようとしているところ」と今後こんご、検討けんとうされることを明あきらかにした。

　「ネットワークが仮想かそう化かされて、今いままでの4Gまでとは違ちがってきてスライシングされていく。そのときにどういう形態けいたいでの契約けいやくになるか。セキュリティや遅延ちえん、帯域たいいきの太ふとさのパラメータをMVNOが自由じゆうにいじれるようになったとしたら、今いままでとは全まったく違ちがう自由じゆう度どの高たかい世界せかいになる。それがバーチャルMNO（vMNO）というものかもしれない」（北きた氏し）