5Gの本命ほんめいは「エンタメ」？　実現じつげんには課題かだいも　ソフトバンクが「ヤフオクドーム」でアバター付つき多た視点してんVRの実証じっしょう実験じっけん（1/2 ページ）

[井上いのうえ翔しょう，ITmedia]

　ソフトバンクと福岡ふくおかソフトバンクホークスは3月がつ20日はつか、5G（第だい5世代せだい移動いどう体たい通信つうしんシステム）を活用かつようした多た視点してん3DパノラマVRに関かんする実証じっしょう実験じっけんに成功せいこうしたことを発表はっぴょうした。今回こんかいの実験じっけんは、福岡ふくおかヤフオク！ドーム（ヤフオクドーム）に実在じつざいする「スーパーボックス」を模もしたVR（仮想かそう現実げんじつルーム）の中なかで、ナビゲーターを含ふくめて最大さいだい5人にんが一緒いっしょに野球やきゅう観戦かんせんを楽たのしめるという趣向しゅこうとなっている。

　3月22日にち、ソフトバンクホークス対たい広島東洋ひろしまとうようカープのオープン戦せんの開催かいさいに合あわせて、Webメディア関係かんけい者しゃに実証じっしょう実験じっけんの模様もようが公開こうかいされた。

実験じっけんの概要がいよう

　今回こんかいの実験じっけんでは、バックネット、一塁いちるい側がわ、三塁さんるい側がわ、ライトスタンドの4カ所かしょにミラーレス一いち眼めカメラ（パナソニックの「LUMIX GH5」）を設置せっち。各かく箇所かしょともに「左目ひだりめ」「右目みぎめ」の2台だい構成こうせい（計けい8台だい）で、「両目りょうめ」を用意よういすることで高こう精細せいさいなパノラマ映像えいぞうを楽たのしめるようにしている。映像えいぞうの解像度かいぞうどは4K（3840×2160ピクセル）で、2017年ねんに行いった実証じっしょう実験じっけんと比較ひかくすると5倍ばいの範囲はんいを映うつせるようになったそうだ。

　撮影さつえいした映像えいぞうは、球場きゅうじょう内ないに設置せっちした光ひかり回線かいせんを介かいしてエンコーダー（映像えいぞうの処理しょりを行おこなうコンピュータ）に送おくられ、コンテンツサーバに蓄積ちくせきされる。

　コンテンツサーバの映像えいぞうは、球場きゅうじょう内ないの5Gコア設備せつびを介かいして球場きゅうじょうのスタンドに設置せっちされた試験しけん用よう基地きち局きょくから無線むせん伝送でんそうされる。今回こんかいの実証じっしょう実験じっけんでは3.7GHz帯たいと27GHz帯たいの2波はで通信つうしん。商用しょうよう利用りようではないこともあり、受信じゅしん端末たんまつの方向ほうこうに“ピンポイント”で電波でんぱを向むけるチューニングを施ほどこしている。

　試験しけん端末たんまつは、ヤフオクドームの「スーパーボックス」の1室しつのバルコニーに設置せっち。そこからWi-Fiルーターを介かいしてスタンドアロンVRヘッドセット（Oculus Go）5台だい（ナビゲーター用よう1台だい＋ユーザー用よう4台だい）に伝送でんそうされる。

　今回こんかいの実証じっしょう実験じっけんでは、アバターによるコミュニケーションを重視じゅうししている。VR空間くうかんには実験じっけん会場かいじょうとなるスーパーボックスの室内しつない“そのもの”が再現さいげんされていて、そこにナビゲーターを含ふくむ5人にんが並ならんで試合しあいを楽たのしめる、という趣向しゅこうだ。

　ユーザーは4カ所かしょに設置せっちされたカメラを自由じゆうに切きり替かえつつ「普段ふだんは見みられない視点してん」（担当たんとう者しゃ）で試合しあいを観戦かんせんできる。切きり替かえに掛かかる時間じかんはおおむね1秒びょう程度ていどで、あまりタイムラグはない。

　首くびを上下じょうげ左右さゆうに振ふると、アバターの顔かおの向むきが変かわり、右手みぎてに持もったコントローラーを振ふり上あげたり振ふったりするとそれに合あわせてアバターの右手みぎても動うごく。ヘッドセットのマイクを使つかってボイスチャット（会話かいわ）をすると、それに合あわせてアバターの口くちも動うごく。

　まさしく、仮想かそうのスーパーボックスで一緒いっしょにわいわいと楽たのしめるようになっている。

5Gは「エンタメ」から始はじまる

　今回こんかいの実証じっしょう実験じっけんは、5Gが持もつ特性とくせい（参考さんこう記事きじ）のうち、特とくに「高速こうそく・大だい容量ようりょう」を生いかすためのものとなる。

　高こう解像度かいぞうどの映像えいぞうを伝送でんそうしつつ、VR空間くうかんでコミュニケーションを取とるとなると、現行げんこうのLTE（4G）では若干じゃっかん厳きびしい面めんがある。ソフトバンクでは2019年度ねんど内ないに5Gのプレサービスを開始かいしし、2020年度ねんどには商用しょうよう規格きかくである「5G NR（New Radio）」に準拠じゅんきょしたサービスを開始かいしする予定よてい。

　同社どうしゃではサービス開始かいし当初とうしょは「最初さいしょは5Gの高速こうそく・大だい容量ようりょうを生いかしたエンターテインメント用途ようとで活用かつようされる」（野田のだ真しん モバイルネットワーク本部ほんぶ本部ほんぶ長ちょう）と見みて、この実験じっけんに取とり組くんだという。

　5Gの伝送でんそう速度そくどを生いかして、高こう解像度かいぞうど映像えいぞうとリアルタイムなコミュニケーションで臨場りんじょう感かんと離はなれた場所ばしょでも一体いったい感かんのあるスポーツ観戦かんせんができる――こんな未来みらいを描えがいているようだ。