シャープに聞きく「AQUOS R8 pro」「AQUOS R8」　2モデルに分わけた意義いぎ、画期的かっきてきな進化しんか点てん（1/3 ページ）

[金子かねこ麟太郎りんたろう，ITmedia]

　ドコモとソフトバンクが7月がつ中旬ちゅうじゅん以降いこうに発売はつばいを予定よていしている、シャープ製せいのスマートフォン「AQUOS R8 pro」「AQUOS R8」。ハイエンドのRシリーズとして、初はじめて2モデルに分わかれた。

　AQUOS R8 proはライカ監修かんしゅうのズミクロンレンズや1型がたセンサーを採用さいようし、600種類しゅるい以上いじょうの光源こうげんを判定はんていするという14chスペクトルセンサーを搭載とうさい。肉眼にくがんで見みたときに近ちかい仕上しあがりになるという。カメラリングから熱ねつを逃のがす放熱ほうねつ設計せっけいとしたのも進化しんか点てんだ。

　AQUOS R8はハイエンドモデルながらR8 proよりも性能せいのうを抑おさえたのが特徴とくちょう。メインメモリはR8 proが12GBに対たいし、R8では8GBとなっている。2022年ねん発売はつばいの「AQUOS R7」と比くらべて52％軽量けいりょう化かを果はたし、米国べいこく国防省こくぼうしょうが定さだめるMIL規格きかく（MIL-STD-810G）の耐たい衝撃しょうげき性能せいのうも確保かくほしている。

　そんな2モデルの違ちがいや開発かいはつ意図いと、カメラ、ディスプレイについて、シャープで商品しょうひん企画きかくやソフトウェア開発かいはつ、機構きこう設計せっけいに関かかわった方々かたがたにインタビューした。

• 通信つうしん事業じぎょう本部ほんぶ パーソナル通信つうしん事業じぎょう部ぶ 商品しょうひん企画きかく部ぶ 主任しゅにん 平嶋ひらしま侑也氏し
• 通信つうしん事業じぎょう本部ほんぶ パーソナル通信つうしん事業じぎょう部ぶ 商品しょうひん企画きかく部ぶ 主任しゅにん 石川いしかわ暁あきら人じん氏し
• 通信つうしん事業じぎょう本部ほんぶ パーソナル通信つうしん事業じぎょう部ぶ 回路かいろ開発かいはつ部ぶ 技師ぎし 宮原みやはら健けん氏し
• 通信つうしん事業じぎょう本部ほんぶ パーソナル通信つうしん事業じぎょう部ぶ 第だい一いちソフト開発かいはつ部ぶ 技師ぎし 内田うちだ夏なつ綺あやぎぬ氏し

AQUOS R8 proとAQUOS R8で、二に極きょく化かしたニーズに応こたえる

――　「AQUOS R8 pro」と「AQUOS R8」に分わけた理由りゆうを教おしえてください。

平嶋ひらしま氏し　これまで（3〜4年ねん前まえ）は何なんとなくハイエンドモデルが選えらばれる傾向けいこうにありましたが、最近さいきんではニーズが二に極きょく化かしていると考かんがえています。1つは最先端さいせんたん技術ぎじゅつや真新まあたらしいモデルを衝動しょうどう的てきに買かうプレミアムゾーンのニーズです。もう1つは効率こうりつ的てきに使つかいたいが、そこまで先進せんしん性せいを求もとめない。とはいえ高性能こうせいのうなモデルが必要ひつようというニーズです。

　ハイエンドモデルの選択肢せんたくしを増ふやすことで、そうしたニーズにシャープとして応こたえられるのではないか。そう考かんがえた結果けっか、AQUOS R8 proとAQUOS R8の2モデルに分わけました。

――　価格かかく高騰こうとうの影響えいきょうもあり、ハイエンド一択いったくでは不十分ふじゅうぶんという結論けつろんに達たっしたのでしょうか？

平嶋ひらしま氏し　そうですね。「AQUOS R6」「AQUOS R7」ではこのようなニーズに1モデルでお応こたえできていたと自負じふしていましたが、R6やR7の発売はつばい後ごにTwitterに投稿とうこうされた意見いけんを客観きゃっかん的てきに見みていると、ドンピシャで刺ささる人ひとと、「自分じぶんが求もとめているモデルと少すこし違ちがうなあ」と感かんじる人ひとがいるようです。

　もちろん価格かかく高騰こうとうの影響えいきょうもあります。20万まん円えん以上いじょうのハイエンドモデルのポジションは必要ひつようです。フォルダブルスマートフォンなどの登場とうじょうで、ARやXRなどのコンテンツがリッチ化かしているからこそ、そのトレンドを追おいかけていきたい人ひともいます。一方いっぽうで、そこまで求もとめずとも普段ふだん使づかいで十分じゅうぶんな性能せいのうを備そなえる実用じつよう的てきなハイエンドモデルが欲ほしいという人ひともいる。シャープとしてハイエンド1モデルでは二に極きょく化かしたニーズに応こたえきれない、というもどかしさを感かんじていました。それがようやくそれが形かたちになったということです。

――　となるとsenseシリーズも継続けいぞく予定よていでしょうか。

平嶋ひらしま氏し　はい。ハイエンドモデルではなく、ミッドレンジのニーズもありますので、われわれとしては継続けいぞくしていく意向いこうです。

――　購入こうにゅうを検討けんとうする人ひとはそれぞれをどう見分みわけて選えらべばいいのか教おしえてください。

平嶋ひらしま氏し　カメラの性能せいのうやそれによる体験たいけんを求もとめる人ひとや、大だい画面がめんで動画どうがコンテンツを視聴しちょうしたい人ひとにはR8 proがお勧すすめです。価格かかくを抑おさえたモデルを求もとめる人ひと、持もちやすさやサイズ感かんを重視じゅうしする人ひと、耐久たいきゅう性せいを求もとめる人ひとにはR8が向むくと考かんがえています。

　せっかく買かうなら高性能こうせいのうやコストパフォーマンスが優すぐれたモデルを選えらびたい、という人ひとにはハイエンドのR8 proとR8。もう少すこし価格かかくを抑おさえたモデルでも十分じゅうぶんという人ひとならミッドレンジのsenseシリーズをプッシュしていきたいです。迷まよってもらえるとうれしい、というのが正直しょうじきなところです。

――　プロセッサに「Snapdragon 8 Gen2」を採用さいようした理由りゆうを教おしえてください。

平嶋ひらしま氏し　まず大前提だいぜんていとして、最新さいしんだからという理由りゆうだけで、決きまったものしか使つかわない、ということではありません。各かくモデルで必要ひつような性能せいのうや用途ようとによってもどのプロセッサにするのかを見定みさだめます。ゲーム性能せいのう、カメラのAIに関かんする性能せいのう、コンピューティング処理しょりの性能せいのうなど、どのような処理しょりに適てきした性能せいのうなのかを判断はんだんしなければなりません。あらゆる面めんを総合そうごう的てきに見みて、ハイエンドモデルとしての使つかい方かたに適てきしていたのがSnapdragon 8 Gen2でした。

――　プロセッサの安定あんていした供給きょうきゅうも理由りゆうの1つですか。

平嶋ひらしま氏し　安定あんてい供給きょうきゅうも理由りゆうの1つではありますが、われわれとして歴代れきだいモデルでQualcommとの付つき合あいがあり、その中なかでもどのモデルに適てきしたプロセッサにするかを決きめています。もう少すこし具体ぐたい的てきに説明せつめいすると、Qualcommなどが発表はっぴょうした定量ていりょう的てきな指標しひょうを参考さんこうにしながら、CPU、GPU、ベンチマークスコアなどを含ふくめ、試算しさんするなどして決きめていくということです。パフォーマンス面めんを見みているというのが本筋ほんすじとなります。

石川いしかわ氏し　補足ほそくすると、他たのメーカーのプロセッサをハイエンドを使つかわない、という意図いとではありません。

適切てきせつな色味いろみにするのは難むずかしい――見みたままを表現ひょうげんするための工夫くふう

――　R8 proのメモリがR8より多おおい12GBとなった理由りゆうを教おしえてください。

平嶋ひらしま氏し　理由りゆうは2つあります。1つはR8 proがR7の後継こうけい的てきな役割やくわりを果はたすことから、12GBと据すえ置おいています。もう1つはR8 proのカメラとしての用途ようとです。1型がたイメージセンサーで取とり込こんだ光量ひかりりょうや、HDRの合成ごうせいなどを処理しょりする過程かていで、メモリに退避たいひさせるためには、ある程度ていどの容量ようりょうを確保かくほしておく必要ひつようがあります。

　それに比くらべて、1/1.55型がたのイメージセンサーを搭載とうさいするR8では、R8 proよりも軽かるい処理しょりを行おこなうため、8GBでも実用じつよう的てきであると判断はんだんしました。とはいえ、読よみ込こみ／書かき込こみ速度そくどは2モデルともに同一どういつですから、実際じっさいの利用りようシーンで差さを感かんじることはほぼないと考かんがえています。

――　HDR時じに秒びょう間あいだ20コマでの撮影さつえいは難むずかしいのでしょうか。

内田うちだ氏し　結論けつろんからいうと、技術ぎじゅつ的てきにはできます。数かず十じゅう枚まい撮とった中なかから使つかえるものをアルゴリズムを用もちいて処理しょりを行おこなっています。いわば内部ないぶで取捨選択しゅしゃせんたくを行おこなっているということです。

――　R8 proで14chスペクトルセンサーを採用さいようした理由りゆうを教おしえてください。

内田うちだ氏し　写真しゃしんを撮影さつえいした場合ばあいにそれぞれの仕上しあがりの色味いろみに大差たいさが表あらわれないようにするためです。RGBの色いろ情報じょうほうだけで見みると、どのような環境かんきょうか分わからない場合ばあいがあります。RGBの情報じょうほうと14chスペクトルセンサーから得えた情報じょうほうを組くみ合あわせることで、実際じっさいの環境かんきょう（肉眼にくがんで見みた色味いろみ）に近ちかい色味いろみになるようにしています。

――　色味いろみの調整ちょうせいは難むずかしいということですか？

内田うちだ氏し　例たとえば、茶色ちゃいろの木きの机つくえがある屋内おくないで、光源こうげんが暖色だんしょく系けいなのか白色はくしょく系けいなのかによって、色いろ温度おんどを変かえる必要ひつようがあります。茶色ちゃいろの机つくえがある屋内おくないの光源こうげんが白色はくしょく系けいですと、カメラが暖色だんしょく系けいの光源こうげんと勘違かんちがいをしてしまい、結果けっかとして青あおが強つよい仕上しあがりとなってしまいます。青あおの強つよい仕上しあがりですと、特とくに料理りょうりはまずそうに見みえてしまいますから、適切てきせつな色味いろみとは言いいがたいです。

　ライティングやディスプレイの光ひかり、窓まどから取とり入いれられた光ひかり、ガラスに反射はんしゃした光ひかりというのも、色味いろみに反映はんえいされてしまう要素ようそとなっています。SNSにアップしたいカフェや、おしゃれな居酒屋いざかやに限かぎって、ユーザーが意図いとする色味いろみとは異ことなってしまいます。不適切ふてきせつな色味いろみにならないように、光ひかりの強つよさや色味いろみを測定そくていし補正ほせいする14chスペクトルセンサーを採用さいようしました。動画どうがにおいても原理げんり的てきには静止せいし画がと同おなじ処理しょりを行おこなっています。

――　AFや追従ついしょう性せいの速度そくどは改善かいぜんされましたか？

内田うちだ氏し　R7ではソフトウェア側がわでどこにフォーカスを合あわせるかを計算けいさんしていましたが、R8ではソフトウェアに加くわえてセンサー側がわも用もちいるため、フォーカスが合あうまでの速度そくどは向上こうじょうしています。R8は2つのカメラでズームをスムーズに行おこないますので、処理しょりにかかる負荷ふかはR8の方ほうが高たかいですが、R8 proとR8とで体感たいかん差さはほぼないと思おもいます。

――　他ほかにもカメラで進化しんかした点てんがあれば教おしえてください。

内田うちだ氏し　「料理りょうりぼかし調整ちょうせい」という項目こうもくを設もうけました。デフォルトではオフになっていますが、オンにして料理りょうりを撮影さつえいすると、オフにして撮影さつえいした画像がぞうと比くらべて、ぼかしを少すこし軽減けいげんします。手前てまえにフォーカスが合あった画像がぞうと、奥おくにフォーカスが合あった画像がぞうを合成ごうせいすることで、どちらにもフォーカスが合あった画像がぞうとなります。

　もう少すこし分わかりやすく説明せつめいしますと、これまでは1つのお盆ぼんの上うえに置おかれたすしにはフォーカスが合あっているのに、同おなじお盆ぼんの筑前ちくぜん煮ににはフォーカスが合あっていない……ということがありました。これを料理りょうりぼかし調整ちょうせいで解決かいけつし、すしと筑前ちくぜん煮にの両方りょうほうにフォーカスが合あうようにしました。

　ただ、注意ちゅうい点てんもあります。この料理りょうりぼかし調整ちょうせいはAIがオンになっていないと機能きのうしませんので、AIがオフの場合ばあいはAIマークをタップしてオンに切きり替かえてから利用りようしてください。

　また、撮影さつえい時じにウオーターマークを付加ふかできるようにしました。SNSでも「欲ほしい」という声こえが多おおかったので、どの画像がぞうをどの機種きしゅでいつ撮とったかが分わかるようにしました。こちらもデフォルトではオフになっていますので、必要ひつように応おうじてオンにしてお使つかいください。ウオーターマークを付加ふかできるのは画像がぞうのみで、動画どうがには付加ふかできません。

　他ほかにもインカメラで撮影さつえいする時ときにプレビューで見みたままの状態じょうたい、つまり反転はんてんせずに保存ほぞんできるようになりました。反転はんてんできる設定せってい項目こうもくも用意よういしています。文字もじが反転はんてんしてしまうことを防ふせぎたい人ひとと、プレビューと同おなじ状態じょうたいで保存ほぞんしたい人ひとに向むくと思おもいます。