パプアニューギニアにとっての日本にっぽん（Sylvester ROKUMANさん - 第だい2回かい）～JICA長期ちょうき研修けんしゅう員いんへのインタビュー～

今回こんかいはJICA研修けんしゅう員いんとして、名古屋工業大学なごやこうぎょうだいがく大学院だいがくいん工学こうがく研究けんきゅう科かに留学りゅうがくしているSylvester ROKUMAN（シル）さんに4回かいシリーズでお話はなしを伺うかがいます。　（き手きて：JICA中部ちゅうぶ　研修けんしゅう業務ぎょうむ課か）

日本にっぽんに留学りゅうがくしようと思おもったきっかけを教おしえてくださいますか？

1999年ねん、私わたしがコミュニティスクールの6年生ねんせいだった時ときのことです。まだ12歳さいだった私わたしに、父ちちが日本にっぽんへ留学りゅうがくするようにと、応募おうぼ書類しょるいをくれたのが始はじまりでした。その留学りゅうがくコースは、理系りけいから文系ぶんけいまで、すべての分野ぶんやが網羅もうらされたものでした。私わたしはこどもだったので、当時とうじはあまり真剣しんけんにはとらえていなかったのですが、長年ながねん父ちちは、お前まえは日本にっぽんで教育きょういくを受うけるべきだとい張いはっていました。

第だい二に次じ世界せかい大戦たいせん時じ、父ちちの両親りょうしん（つまり、私わたしの祖父母そふぼ）はまだこどもでしたが、日本にっぽんの軍人ぐんじんたちが、私わたしたちの地域ちいきを占領せんりょうし、基地きちを構かまえました。そのため、今日きょうに至いたるまで、日本人にっぽんじんの存在そんざいはずっと大おおきな影響えいきょうをパプアニューギニア(PNG）に残のこしています。また、日本にっぽん軍ぐんは私わたしたちに初はじめてお米こめを教おしえてくれた人ひとたちでもありましたし、私わたしたち世代せだいにとっては、日本人にっぽんじんはヒーローです。

2006年ねんにパプアニューギニア工科こうか大学だいがくを卒業そつぎょうしましたが、当時とうじのオリエンテーションで、（パプアニューギニア人じんの）指導しどう教授きょうじゅから、アジア太平洋たいへいよう地域ちいきでは、日本にっぽんが最高峰さいこうほうの土木どぼく技術ぎじゅつ者しゃを輩出はいしゅつしていることを教おしえられました。若わかい学部がくぶ生せいでしたし、そもそも周まわりは皆みな日本人にっぽんじんびいきの地域ちいき出身しゅっしんでしたし、指導しどう教授きょうじゅのこのような話はなしには、本当ほんとうに刺激しげきを受うけました。

2013年ねんに土木どぼく工学こうがくを修おさめて大学だいがくを卒業そつぎょうし、運輸省うんゆしょうで働はたらくようになってからは、JICAパプアニューギニア事務所じむしょを通つうじて、日本にっぽん政府せいふとのジョイントプロジェクトに関かかわるようになりました。このプロジェクトのおかげで、一般いっぱん財団ざいだん法人ほうじん国際こくさい臨海りんかい開発かいはつ研究けんきゅうセンター(OCDI)に所属しょぞくする日本にっぽんの専門せんもん家かチームとも、一緒いっしょに働はたらくことができました。日本にっぽんの人ひとたちと親したしいつながりを持もったのは、これが初はじめてでした。この関かかわりのおかげで、正式せいしきに自身じしんの実務じつむ経験けいけんにおいても、日本人にっぽんじん専門せんもん家かたちから、大おおいに影響えいきょうを受うけました。日本にっぽんから影響えいきょうを受うけた家族かぞくを持もつ私わたしにとって、日本にっぽんの専門せんもん家かとの関かかわりは、個人こじん的てきにも特別とくべつな出逢であいでした。父ちちのように、私わたしも日本人にっぽんじんの生いき方かたやライフスタイルへの憧あこがれを強つよくしていきました。現場げんばで専門せんもん家からとのやり取とりをするにつれ、自身じしんの海岸かいがん・海洋かいよう工学こうがくへの興味きょうみ・関心かんしんも次第しだいに強つよくなっていきました。

2017年ねんの11月に、JICAプロジェクトが終おわりを迎むかえた後のちも、私わたしは、PNGの4カ所かしょの湾岸わんがん開発かいはつの実行じっこう可能かのう性せい調査ちょうさを行おこなっていた、日本にっぽんの専門せんもん家かから学まなんで身みに着つけたスキルを活用かつようしつつ、地元じもとのプロジェクトに関かかわっていましたが、その後ご、2018～2019年ねんにかけて、それらのプロジェクトが採択さいたくされたのです。そして、（我々われわれ運輸省うんゆしょうとしても本ほんプロジェクトを推進すいしんしていく立場たちばにあるため）、日本にっぽんで修士しゅうし号ごうを取得しゅとくできるというJICA奨学しょうがく金きんの話はなしが出でたときに、JICAパプアニューギニア事務所じむしょより職場しょくばに連絡れんらくがあり、上司じょうしが私わたしを推薦すいせんしてくれたため、私わたしはこのJICA長期ちょうき研修けんしゅう員いんプログラム（SDGsグローバルリーダーコース2019）への応募おうぼに至いたり、今いまの私わたしがいるのです。

というわけで、質問しつもんに対たいする答こたえを短みじかくまとめると、日本にっぽんに留学りゅうがくするということは、私わたしにとって人生じんせいをかけた願ねがいでした。これを実現じつげんさせることは、私わたしだけでなく、PNGの人々ひとびと、特とくに両親りょうしんの夢ゆめでもあったのです。（夢ゆめが叶かなって）私わたしの父ちちは現在げんざい、一番いちばん幸しあわせな人ひとだと思おもいますよ。このようなチャンスが自分じぶんに与あたえられたのは、日本にっぽんのすべての皆様みなさまのおかげなので、本当ほんとうに感謝かんしゃをしています。帰国きこくしたときには、国くににいる人々ひとびとに話はなすことは本当ほんとうにたくさんあることでしょう。

シルさんは以前いぜん、ご自身じしんが小ちいさい頃ころ、おじいさま・おばあさまが、日本にっぽんの歌うたを歌うたってくれたと教おしえてくださいましたよね。それについてもう少すこし教おしえてもらえますか？

残念ざんねんながら、祖父母そふぼは私わたしが5歳さいになる前まえに他界たかいしてしまったので、実際じっさいに歌うたってくれた曲きょくは、覚おぼえていないですし、その歌うたを教おしえてもらう時間じかんもなかったのですが、私わたしの祖母そぼを知しる者ものは皆みな、口くちをそろえて、祖母そぼは日本語にほんごがとても上手じょうずだったと教おしえてくれました。

私わたし自身じしんは、PNGの東ひがしセピック州しゅうの州都しゅうと、ウェワクの海岸かいがんからすぐの「マスチュー」と呼よばれる島しま（ニューギニア島とうの北岸ほくがんに位置いちするウェワクからは、約やく12kmのところ）の出身しゅっしんです。第だい二に次じ世界せかい大戦たいせん時じには、この島しま全体ぜんたいは日本にっぽん軍ぐんが支配しはい権けんを握にぎっていました。実じつは、島しまは戦争せんそう捕虜ほりょの収容しゅうよう所しょとして使つかわれていたのです。沿岸えんがん部ぶには、戦争せんそうや補給ほきゅう船せんの積つみ降おろしに使用しようするための飛行場ひこうじょうや軍事ぐんじ施設しせつ、学校がっこうや埠頭ふとうなどを建設けんせつしました。私わたしの祖父母そふぼは当時とうじ子こどもで、戦時せんじ下かで捕とらえられもしましたが、やがて日本にっぽんの学校がっこうに通かようようになりました。

この世代せだいの人ひとたちは、ほとんど他界たかいしてはいますが、今いまもなお、当時とうじの経験けいけんを話はなせる人ひとも、一いち握にぎりいます。現在げんざいでも私わたしの村むらには、多おおくの戦争せんそう当時とうじの遺物いぶつがあり、観光かんこう名所めいしょにもなっています。当時とうじの不発ふはつ弾だんも依然いぜん残のこっており、最近さいきんでは2016年ねんに地表ちひょうに埋うまっていた不発ふはつ弾だんを、誤あやまって掘ほり返かえしてしまい、爆発ばくはつしたという事故じこもありました。

とは言いうものの、私わたしの地域ちいきでは日常にちじょうの中なかに、戦争せんそうの痕跡こんせきが根付ねついていることもあり、地元じもとの人々ひとびとにとっては、今いまもなお、日本人にっぽんじんとのつながりがあると感かんじているのです。そのため、過去かこの歴史れきしの一部いちぶとして、地元じもとの集あつまりや家族かぞくが集あつまるところでは、率直そっちょくに会話かいわの中なかに、いつも上あがってきます。実際じっさい、2014年ねんには、安倍晋三あべしんぞう元もと首相しゅしょうが昭恵あきえ夫人ふじんと、私わたしの地元じもとの戦争せんそう記念きねん施設しせつを訪おとずれたのですが、盛大せいだいに迎むかえられ、日本人にっぽんじんとの関係かんけい史しに、歴史れきし的てきかつ伝統でんとう的てきな軌跡きせきを残のこしていきました。

私わたしの祖母そぼは、日本にっぽんの教育きょういくを受うけ、影響えいきょうを受うけた多おおくの人ひとたちの中なかの一人ひとりにしかすぎませんが、日本にっぽんは、私わたしを含ふくむこどもたちの世代せだいにまで、影響えいきょうを及およぼしています。（次回じかいに続つづく）

※次回じかいは、シルさんの研究けんきゅう内容ないようや日本にっぽんのPNGへの開発かいはつ援助えんじょについて伺うかがいます。お楽たのしみに！