昔むかしから日本人にっぽんじんは、生活せいかつに欠かかすことのできない、大切たいせつな場所ばしょに神かみさまをおまつりしてきました。家いえの中なかでおまつりするために設もうけられたのが神棚かみだなです。棚たなにおまつりすることは、神聖しんせいで尊とうといものを他たから区別くべつするという意味いみがあります。
家いえの門口かどぐちや台所だいどころなどにお神かみ札さつふだを飾かざり、竃かまどかまどの荒神こうじんこうじんさまには荒神こうじん棚だなをしつらえ、井戸いどには水神すいじんみずがみさまを、季き節ぶしの節目ふしめに家いえに訪おとずれる年とし神かみさまやお盆ぼんさま（祖先そせんの霊れい）には臨時りんじの棚たなを設もうけておまつりし、神かみさまの存在そんざいを家族かぞくと同おなじように感かんじてきました。そして日々ひびのおまつりを通とおして、神かみさまの恵めぐみに感謝かんしゃするこころを養やしなうとともに、優やさしさや思おもいやりの心しんを育はぐくんできました。
神かみさまを棚たなにおまつりすることは、奈良なら時代じだいに編纂へんさんされた『古事記こじき』に、皇室こうしつのご祖先そせんにあたる天照大御神あまてらすおおみかみが、お父とうさまである伊い邪よこしま那な岐命から玉たまをいただき、これを神聖しんせいなものとして棚たなにおまつりしたことに由来ゆらいしているといわれています。
また天照大御神あまてらすおおみかみをおまつりしている伊勢いせの神宮じんぐうでは、かつて御ご師しおんしと呼よばれる人々ひとびとによって神宮じんぐう大麻たいまじんぐうたいまが全国ぜんこくに頒布はんぷはんぷされていました。このお神かみ札さつをおまつりするために、各かく家庭かていで特別とくべつに設もうけられたのが、大神宮だいじんぐう棚だなだいじんぐうだなと呼よばれるもので、これが今日きょうの神棚かみだなの起源きげんとも言いわれています。
神棚かみだなを通とおして毎日まいにち、家庭かていでのおまつりを行おこなうとともに、私わたしたちは古ふるくから人生じんせいの節目ふしめごとに、さまざまな儀礼ぎれい・行事ぎょうじを行おこなってきました。地域ちいきの神社じんじゃを氏神うじがみさまと仰あおぎ、入学にゅうがく・結婚けっこん・子供こどもの誕生たんじょうなど、人生じんせいの節目ふしめごとに家庭かていや地域ちいきを挙あげておいしてきました。 そうした家庭かていでのおまつりや身近みぢかな人生じんせいのおまつりを通とおして、私わたしたちは知しらず知しらずのうちに神かみさまの存在そんざいを感かんじてきたのではないでしょうか。
（「氏子うじこのしおり」45号ごう『神様かみさまと暮くらす』参照さんしょう）
