国くに生うみ

遠とおい昔むかし、日本にっぽんの国くにができる前まえのことです。

高たかく澄すみ渡わたった空そらの上うえに、高天原たかまがはら(たかまのはら)という神かみ々のお住すまいになっているところがありました。

ある時とき、高天原たかまがはらの神かみ々は下界げかいに新あたらしい国くにを造つくることをご相談そうだんになられました。そこで伊い邪よこしま那な岐命(いざなぎのみこと)・伊い邪よこしま那な美び命いのち(いざなみのみこと)の2柱はしらの神かみさまに「このただよっているものを国くにとしてあるべきすがたに整ととのえ固がためよ」と国くに作づくりを命めいじられ、天沼あまぬま矛ほこ(あめのぬほこ)という矛ほこを授さづけられました。

2柱はしらの神かみさまは、天てん浮橋うきはし(あめのうきはし)という天てんに浮うかぶ橋はしに立たち、神かみ々より授さづけられた矛ほこを指さしおろし、コーロ、コーロと音おとを立たてながらかき回まわしました。

しばらくして矛ほこを引ひき上あげてみると、どうでしょう、矛ほこの先さきより滴したたり落おちる塩しおが、積つもり重かさなって於能碁ご呂りょ島とう(おのごろじま)という島しまができあがりました。

2柱はしらの神かみさまはその島しまに降おりたつと、天てん之の御ご柱はしら(あめのみはしら)という大変たいへん大おおきな柱はしらと八尋やひろ殿どの(やひろどの)という大変たいへん立派りっぱな建物たてものを見みつけました。そして、大おおきな柱はしらの回まわりを伊い邪よこしま那な岐命は左ひだりから、伊い邪よこしま那な美び命いのちは右みぎから廻まわり、出会であうと「ああなんと、愛あいおしい女性じょせいだろう」、「ああなんと、愛あいおしい男性だんせいでしょう」と呼よび合あい、2人ふたりで多おおくの島々しまじまを生うみました。

はじめに淡路島あわじしま、つぎに四国しこく、隠岐おき島とう、九州きゅうしゅう、壱岐島いきしま、対島つしま、佐渡さど島とうをつぎつぎと生うみ、最後さいごに本州ほんしゅうを生うみました。

8つの島しまがまず生うまれたことから、これらの島々しまじまを大だい八はち島国しまぐにとよぶようになりました。 これが日本にっぽんの国土こくどのはじまりです。

神話しんわ　国くに生うみについて

天地てんちの始はじめ、高天原たかまがはらに天てん之の御中おんちゅう主神しゅしん(あめのみなかぬしのかみ)、高こう御産おさん巣す日び神しん(たかみむすびのかみ)、神かみ産さん巣す日び神しん(かみむすびのかみ)の3柱はしらの神かみさまが御ご出現しゅつげんになりました。

日本にっぽんの国土こくどはまだ稚いとけなく、水みずに浮ういた油あぶらのようにフワフワと海面かいめんを漂ただよっていて、ちょうどクラゲが海面かいめんを泳およいでいるようであったといわれます。

そうした中なか、葦あしが芽吹めぶくような勢いきおいで伸のびいずるものからなった神かみさまをはじめ、次々つぎつぎと神かみさまが現あらわれます。そして、それらの神かみ々から国土こくどをしっかりと作つくり固がためよとの仰おおせを受うけたのが伊い邪よこしま那な岐命・伊い邪よこしま那な美び命いのちです。

日本にっぽんの国くにはこうした多おおくの神かみ々の力ちからによって形成けいせいされ、今日きょうの基礎きそが打うち立たてられたことをこの話はなしは語かたり伝つたえています。