5月4日のウエスタン・くふうハヤテ戦(甲子園)。ファームゲームながら、8773人が詰めかけた。2022年ドラフト1位右腕の阪神・森木大智投手(20)は〝本拠地〟のマウンドで、持ち味を存分に発揮した。
「1人目、1球目になんかちょっと、きょう余裕あるなと。久々にちゃんと力が伝わっている感じはちょっとありました」
8点リードの九回に登板。先頭を外角への直球で見逃し三振に取ると、次打者も直球で遊ゴロ。最後も二ゴロに打ち取り、三者凡退で試合を締めた。わずか7球。オールストレートでねじ伏せ、付け入る隙を与えなかった。
聖地での好投の裏に、ある言葉があった。甲子園3連戦の前日の全体練習日、森木は福原忍2軍投手コーチ(47)に話しかけられた。
「重い球をどうやって投げる?」
森木にとって新しい視点だった。重たいものを扱うには、体幹を固めて全身を使うことが重要。それは投球にも共通していた。「自分の考え方とは違うアプローチで示してくれた。いい感覚で投げられました」。2日後の圧巻のパフォーマンスにつながった。
1年目の2022年7月2日にも上がっていたマウンド。オリックスを相手に6回無失点9奪三振と好投した。高知高時代こそ縁がなかった土ではあるが、聖地との相性の良さを自覚している。
「多分ああいう大舞台とかの方が意外と冷静になれるタイプで、パフォーマンスも出しやすいのかなと。自分で高ぶることを抑制するので、ガチガチにならずに、落ち着いて自分のやることをやろうぐらいのイメージで行けました」
無駄な力を抜いて腕を振り、ネット裏で直球の最速は153キロを計測した。プレッシャーがかかる場面でも力を発揮する強さが、将来へ大きな期待を抱かせる。1年目は1軍で2試合に登板しながらも、昨季は1度も1軍に上がることはできなかった。勝負の3年目は一歩ずつ一歩ずつ―。虎のホープが1軍のマウンドを目指して汗を流している。(中屋友那)
■森木 大智(もりき・だいち) 2003(平成15)年4月17日生まれ、21歳。高知県出身。蓮池小3で高岡第二イーグルスで軟式野球を始める。高知中では3年春夏に全国優勝。中3夏の四国大会決勝で150キロを計測。高知高では1年夏からエースも甲子園出場はなし。最速155キロ、高校通算13本塁打。22年D1位で阪神入団。同年8月28日の中日戦(バンテリンドーム)にプロ初登板で先発し、敗戦投手にはなったものの6回3失点と好投した。通算2試合登板、0勝2敗、防御率6・23。今季はウエスタン・リーグ8試合に登板し、0勝0敗、防御率8・44(22日終了時)。184センチ、93キロ。右投げ右打ち。年俸1100万円。背番号「20」。