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共同で会見したJSRのジョンソン氏(左)とJICキャピタルの池内氏(写真:日経クロステック)
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政府系ファンドの産業革新投資機構(JIC)グループで企業再編を担うJICキャピタルと同社傘下で化学大手のJSRは2024年6月27日、共同会見を開いた。JICキャピタルの池内省五社長は、JSRが強みを持つフォトレジスト(感光材)など「半導体の前工程材料は業界が細分化されており、再編による規模拡大で競争力を高めたい」と話した。
JSRは2022年11月、業界再編を念頭にJICに協業を持ち掛け、2023年6月にJICによる買収受け入れを発表した。2024年4月に約1兆円でのTOB(株式公開買い付け)が成立し、6月25日付でJSRは上場廃止となった。非上場化により、他社との事業統合や買収を進めやすくする。「短期的な業績にとらわれず、ロールアップ(連続的な企業買収)と研究開発に継続的に投資したい」(池内氏)
半導体材料分野で生き残りを懸ける(出所:日経クロステック)
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JSR社長のEric Johnson(エリック・ジョンソン)氏は「JSRにとって新しい時代の始まりだ。半導体分野で競争力を高め、5~7年以内をめどに再上場したい」と話した。6月27日に定時株主総会を開催し、JICキャピタルの池内氏のほか、元・富士フイルムホールディングスの石川隆利氏など4人の新任取締役を選出した。
池内氏は、JSRをはじめとする日本の半導体材料メーカーについて「それぞれの製品は強いが、欧米企業と比べ規模で劣るリスクがある」と指摘した。JSRは半導体用フォトレジストで25%前後の世界トップシェアを握り、EUV(極端紫外線)露光を使うような最先端半導体向けに強い。フォトレジストはフォトマスク上の集積回路パターンを半導体ウエハーに転写する工程(露光)に使う感光材である。
JSRは今後、フォトレジストを半導体ウエハーに塗布する工程の「前後の工程などに着目し業界再編を進める」(池内氏)考え。成膜や現像、洗浄、研磨といった前工程向けの材料を幅広くそろえることで、台湾積体電路製造(TSMC)など大手半導体メーカーへの製品提案力を高める。競合のフォトレジストメーカーの買収は、現時点では独占禁止法などの観点から難しいと見ている。