「動物病院の先生」だけではない 公務員獣医師の意義知って
あすを探る 打越綾子さん
獣医師とはどんな職業かと問われたら、犬猫を治療する動物病院の先生を思い浮かべる人がほとんどであろう。しかし、獣医師という職業は、(我が家も含めて)ペットの飼い主がお世話になるだけでなく、社会全体がお世話になっている存在である。
6人の論壇委員が交代で執筆するコラム「あすを探る」。新しい体制で迎える今月の筆者は行政・公共政策担当の打越綾子・成城大学教授です。
獣医師とは、もともと肉食文化を持つ欧米諸国で発展してきた職業である。家畜の健康を守り、かつ家畜由来の病原体(ウイルスや細菌など)を制御して、人間の生活環境と食品の安全を守る役割を担ってきた。それゆえに、社会的に高い地位を得てきたという。
比べて日本では、明治以降に獣医学が輸入され、また戦後も畜産業が小規模であったため、獣医師の育成に十分な条件が整っていなかった。他方で、高度経済成長期からバブル期にかけて、ペットを飼養する家族が増え、獣医師と言えば犬や猫の病気を治療する職業としてイメージされるようになった。
とはいえ、元来の獣医学の知…
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