編集委員 吉田清久
2025年は昭和が始まって100年目にあたる。
「昭和レトロ」で人気の色鮮やかなクリームソーダと花柄の電化製品 いまや若者には「昭和レトロ」が新鮮に映り、はやり言葉で言えば「エモい」(「心に響く」の意)そうだ。新聞・雑誌、テレビ、ユーチューブまで、多くのメディアが昭和特集を組んでいる。昭和の時代に社会に出た身としては少し複雑な気分である。もっともテレビで若いタレントさんが昭和の街並み、雑貨、ファッションなどに「へーっ」と目を輝かせるのを見ると悪い気はしない。
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これに対し、「いまだに昭和を続けているのか」といぶかられているのが永田町ではないか。
石破首相が3月、自民党の新人衆院議員15人に1人10万円の商品券を配ったことが明らかになった。
石破首相 「ねぎらいたいという思いで届けたが、国民感覚からは、かけ離れていた」
石破氏はそう釈明したが、世間の常識とのズレは明らかだ。とりわけ石破氏は「政治とカネ」の問題からは縁遠いと見られていた。失望は大きい。
商品券について石破氏は、ポケットマネーでまかなったとし、以前にも同様の会合で渡したことがあるという。騒ぎは石破氏だけで収まらず、第2次安倍政権でも、当時の安倍晋三首相と新人議員との会食で「商品券的なものを受け取った」との証言も飛び出した。自民党政権で長年の慣例だったとの指摘がある。
確かに私が政治取材の現場にいた平成初頭でも「高級店のワイシャツ仕立券や靴券を配った」「議員の外国視察の
餞別
にポンと100万円を渡した」などの話を耳にした。ただ当時は「あくまで昭和政治の
残滓
であり、政党助成金制度の導入(1995年)や衆院への小選挙区制の導入(96年)を機に
悪
しき慣習はなくなる」との見方があった。
ところが、いまだに続いていたわけだ。
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どうして政治にカネがかかるのか。ベテランの自民党議員秘書に聞いた。
「選挙活動や秘書の人件費にカネがかかるのはもちろんですが、他の議員や支持者との飲食代もばかにならない。政治資金収支報告書に公開したくないのもあり、自腹で支払うことも。領収書が不要で、すぐ換金できる商品券をいただけると大変助かります」
国会議員は連夜の宴席をこなす人が少なくない。前述のベテラン秘書は、派閥の政治資金パーティー券を巡る問題で、派閥からのキックバック分を議員側が報告書に記載しなかったのも、背景にそんな心理が働いていると見る。
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