講師に教わりながらメイクを楽しむ「いきいき美容教室」の参加者(横浜市役所で) メイクやスキンケアをすることで、健康維持や生活の質向上につなげる取り組みに注目が集まっている。自治体にとっては高齢者の外出を促し、介護予防を図るといった狙いもある。化粧品会社ではメイクが患者の気持ちを前向きにする効果を生かし、「化粧療法」に力を入れている。(川崎大輝)
■男性にも効果的
「明るい笑顔で交流することで、健康寿命が長くなります」
3月26日、横浜市役所で行われた資生堂の「いきいき美容教室」。参加した高齢の男女7人は講師の説明を受け、体をほぐすストレッチとともに、簡単に続けられるメイク・スキンケアに挑戦した。南区の女性(81)は「普段は1人でするメイクも、仲間と一緒に教わることで脳が活性化した気がする」と笑顔を見せる。
化粧で健康寿命を延ばそうと、資生堂は2013年から高齢者対象の同教室を全国で開催している。これまで25万6000人が受講した。同社によると、受講者は非受講者に比べ、3か月後の外出率が2倍に増える傾向があるという。同社みらい開発研究所の池山和幸主任研究員は「メイクは続けるハードルが低い。不慣れな男性にも非日常の体験は効果的です」と語る。
横浜市健康福祉局によると、要介護認定を受ける高齢者は今年1月で約19万人いるが、40年には25万人近くまで増加すると見込まれている。
市は介護予防にメイクを活用しようと、資生堂と連携協定を締結。今月から年間60回程度、老人ホームなどで同教室の開催を予定している。山中竹春市長は「化粧というアプローチで、高齢者が前向きに毎日を過ごせるようになれば」と期待する。
■患者支援サイト
メイクによる患者支援の動きもある。ファンケル(横浜市中区)は1月から、がん患者向けにメイクや服装をアドバイスするサイトを立ち上げた。同社によると、放射線治療で肌に特有の色素沈着が起きるなど、外見の変化に落ち込み、外出や治療に意欲がわかない患者は少なくないという。
同社では視覚障害者向けのメイクセミナーなどにも力を入れている。顔の半分を講師がサポートしながらメイクし、もう半分は自分で。「見えなくなってからメイクはあきらめていたが、お出かけしようという気持ちになれる」と好評だという。担当者は「全ての人が健やかに、自分らしく輝ける社会を目指して活動していく」と意気込んでいる。