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平 直子「精神医療保健福祉サービスへの精神科医療ユーザーの参加」
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たいら 直子なおこ精神せいしん医療いりょう保健ほけん福祉ふくしサービスへの精神せいしん医療いりょうユーザーの参加さんか

障害しょうがい学会がっかいだいかい大会たいかい報告ほうこく要旨ようし 於:立命館大学りつめいかんだいがく
20090927


報告ほうこく要旨ようし

 たいら 直子なおこ西南学院大学せいなんがくいんだいがく社会しゃかい福祉ふくし学科がっか
 「精神せいしん医療いりょう保健ほけん福祉ふくしサービスへの精神せいしん医療いりょうユーザーの参加さんか

 イギリスのユーザーの体験たいけんイギリスでは、近年きんねん利用りようしゃ参加さんか(user involvement)が、医療いりょうおよ社会しゃかいてきケアサービスにおける重要じゅうよう概念がいねんとなっている。公的こうてきサービスへの消費しょうひしゃ主義しゅぎ導入どうにゅう利用りようしゃ主体しゅたいのサービスをもとめる障害しょうがいしゃ運動うんどう発展はってんともない、利用りようしゃのサービスへの参加さんかすすめられてきた(Glasby et al., 2003)。2001ねん健康けんこうおよ社会しゃかいケアほう(Health and Social Care Act)で、国民こくみん保健ほけんサービスにおける精神せいしん医療いりょうユーザー(以下いか、ユーザーとりゃくす)の参加さんか義務付ぎむづけられたことなどから、精神せいしん医療いりょう保健ほけん福祉ふくしサービス(以下いか、サービスとりゃくす)でのユーザーの雇用こようすすめられている。しかし、参加さんかは、かならずしも結果けっかをもたらしてはおらず、利用りようしゃ無視むしされたり、表面ひょうめんてき参加さんかわったりもしている(Beresford, 2003)。日本にっぽんでも、ユーザーを雇用こようする地域ちいき活動かつどう支援しえんセンターなどがてきており、今後こんご、ユーザー主体しゅたいのサービスにしていくためには、ユーザーの参加さんか促進そくしんともに、ユーザーのちからかす仕組しくみを早急そうきゅうつくることが必要ひつようである。
 ユーザーのサービスへの参加さんか意義いぎ参加さんかにおけるバリアなどを把握はあくし、ユーザーのちからをサービスにかす方法ほうほうさぐることを目的もくてきとして、2008ねん6〜7がつにサービスにかかわっているユーザーにたいして個別こべつインタビューと自記じきしき調査ちょうさおこなった。
 ユーザーの参加さんかが、組織そしきのシステムをえるには限界げんかいがあるものの、専門せんもん価値かちかん態度たいどかんがかたなどに変化へんかこし、ユーザーの視点してんがサービスにかされたとかんじていた。そして、ユーザーのちからかすためには、ユーザーのちから認知にんち基盤きばんとして、組織そしき構造こうぞう変化へんか財源ざいげん確保かくほなどが必要ひつようだとかんがえていた。イギリスでおこなった小規模しょうきぼ調査ちょうさであるが、その結果けっかから、今後こんご日本にっぽんでユーザーのちからをサービスにかすには、どのような仕組しくみ、支援しえん必要ひつようなのかをかんがえる。

Beresford, P. (2003) 'Fully engaged', Community Care, 13-19 November, pp.38-41
Glasby, J. et.al. (2003) Cases for change: user involvement. London: Department of Health/ National Institute for Mental Health.

報告ほうこく原稿げんこうひょうなしばん

精神せいしん医療いりょう保健ほけん福祉ふくしサービスへの精神せいしん医療いりょうユーザーの参加さんか:イギリスのユーザーの体験たいけん
西南学院大学せいなんがくいんだいがく 社会しゃかい福祉ふくし学科がっか たいら 直子なおこ


1.はじめに
 イギリスでは、近年きんねん利用りようしゃ参加さんか(user involvement)が、医療いりょうおよ社会しゃかいてきケアサービスにおける重要じゅうよう概念がいねんとなっている。本稿ほんこうでは、精神せいしん医療いりょう保健ほけん福祉ふくしサービス(以下いか、サービスとりゃくす)に参加さんかしている精神せいしん医療いりょうユーザー(以下いか、ユーザーとりゃくす)にたいして、イギリスでおこなった小規模しょうきぼ調査ちょうさ結果けっか報告ほうこくし、今後こんご日本にっぽんでユーザーのちからをサービスにかすには、どのような仕組しくみ、支援しえん必要ひつようなのかをかんがえる。

2.ユーザーのサービスへの参加さんか背景はいけい
1)背景はいけい
 1980年代ねんだい、1990年代ねんだいのはじめに、イギリスでは、消費しょうひしゃ主義しゅぎ概念がいねんが、公的こうてきサービスにおおきな影響えいきょうあたえ、サービス利用りようしゃは、ケアサービスの利用りようかんして選択せんたく権利けんり消費しょうひしゃだとられるようになった。それとおなじくして障害しょうがいしゃ運動うんどう発展はってんし、利用りようしゃ主体しゅたいのサービスをもとめるうごきが活発かっぱつになった。このふたつの要因よういんにより、イギリスでは利用りようしゃのサービスへの参加さんかすすめられた(Glasby et al., 2003)。

2)関係かんけいする施策しさく
 1990ねん国民こくみん保健ほけんサービスとコミュニティケアほう(NHS and Community Care Act)で、地域ちいきケア計画けいかく策定さくていへの利用りようしゃ参加さんかほう位置いちづけられたことを皮切かわきりに、ユーザーの参加さんかすすめる施策しさくさだめられてきた。2001ねん健康けんこうおよ社会しゃかいケアほう(Health and Social Care Act)では、国民こくみん保健ほけんサービスにおけるユーザーの参加さんか義務付ぎむづけられ、サービス提供ていきょう組織そしきでのユーザーの雇用こようすすめられた。

3. 調査ちょうさ概要がいよう
 つぎ調査ちょうさ概要がいようについて報告ほうこくする。

1)目的もくてき
 この調査ちょうさ目的もくてきは、「ユーザーのサービスへの参加さんか意義いぎ参加さんかにおけるバリアなどの実情じつじょう把握はあくし、ユーザーのちからをサービスにかす方法ほうほうさぐること」である。

2)調査ちょうさ方法ほうほう
 サービスにかかわっているユーザーにたいして、平成へいせい20ねんの6-8がつ個別こべつインタビューと自記じきしき調査ちょうさおこなった。

3) 調査ちょうさ参加さんかしゃ
 調査ちょうさ参加さんかしゃ基準きじゅんとして、(1)精神せいしん医療いりょう利用りよう経験けいけんがあること、(2)ユーザーの体験たいけんかして職員しょくいんとしてサービスではたらいているひと、という2つの条件じょうけん設定せっていした。
 調査ちょうさ参加さんかしゃは、男性だんせいめい女性じょせいめいけいめいで、20だい〜60だいである。全員ぜんいんが、統合とうごう失調しっちょうしょう神経症しんけいしょうなどの診断しんだんけたことがあり、精神せいしん医療いりょうサービスの利用りよう期間きかんは、8カ月かげつから15 ねん、うち入院にゅういん経験けいけんがあるひとは3めいで、入院にゅういん期間きかん合計ごうけいは、3ヵ月かげつから8カ月かげつである。なお、可能かのう資源しげんなかでの意図いとてき標本ひょうほん抽出ちゅうしゅつ(purposive sample)である。

4) 仕事しごと概要がいよう
 参加さんかしゃ職場しょくばは、医療いりょう機関きかんにん営利えいり団体だんたいにん、また、フリーランスではたらひと1人ひとりとなっており、おも仕事しごと内容ないようは、地域ちいき生活せいかつ支援しえんサービスや調査ちょうさ研究けんきゅうにユーザーの視点してんかすことである。フリーランスではたら1人ひとり、そしてはたらきながら大学だいがくかよ1人ひとりのぞいた4にん常勤じょうきんで、給料きゅうりょう税込ぜいこみで17000〜25000ポンド(=やく370〜540まんえん)である。

4.結果けっか
 では、つぎ自記じきしき調査ちょうさ結果けっか一部いちぶ報告ほうこくする。

1)ユーザーの参加さんかによる変化へんか達成たっせいされたこと
(1) ユーザーの参加さんかによりもたらされた影響えいきょう変化へんか
 ユーザーの参加さんかが、現在げんざい、もしくは過去かこはたらいた組織そしき、サービスとうにもたらした変化へんかたずねたところ、回答かいとうは、「組織そしき構造こうぞう運営うんえい方法ほうほう」「スタッフのかんがかた」「サービスの理念りねん視点してん内容ないよう」のみっつに分類ぶんるいできた。
 「組織そしき構造こうぞう運営うんえい方法ほうほう」にかんしては、営利えいり団体だんたいでは、理事りじかい事業じぎょう運営うんえいにユーザーが参加さんかできる組織そしき構造こうぞうつくられていた。また、医療いりょう機関きかんでも、利用りようしゃへのかかわりだけでなく、サービスの評価ひょうか職員しょくいん採用さいよう面接めんせつなどにユーザーがかかわっていた。
 「サービスの理念りねん視点してん内容ないよう」について、参加さんかしゃは、ユーザーの参加さんかがユーザーのゆめ希望きぼう実現じつげんなどを目指めざすリカバリー・アプローチなどを促進そくしんしたとかんじていた。また、ユーザーが医療いりょう機関きかんでスタッフとしてはたらくことは、ピアサポートをとおして共感きょうかんをもたらすだけでなく、その存在そんざい自体じたいが、ロールモデルとして希望きぼう提供ていきょうしているとかんがえていた。
「スタッフのかんがかた」については、ユーザーがチームメンバーにはいり、ユーザーの立場たちばから意見いけんったり、アドバイスをしたりすることで、スタッフの言葉ことばづかい、かんがかた、そしてかかわりがわったとかんじていた。

(2) ユーザーが、サービスにもたらせること 
 つぎに、実際じっさい変化へんかきたかかにかかわらず、ユーザーがサービスにもたらせるとおもうことをたずねたところ、「サービスのしつ向上こうじょう」「いままでとことなる視点してんかんがかた、アプローチ」のてんげられた。
 「サービスのしつ向上こうじょう」にかんしては、ユーザーがサービスにかかわることにより、ユーザーのもとめるサービスをることができ、その結果けっか効果こうかてき効率こうりつてき創造そうぞうてきなサービスの提供ていきょうができるとかんがえていた。また、「いままでとことなる視点してんかんがかた、アプローチ」については、いままでのサービスは、医学いがくモデルに基礎きそをおいた専門せんもん主導しゅどうであったが、ユーザーの参加さんかが、ユーザーのちからすアプローチ、社会しゃかい包括ほうかつ市民しみんけんなどからユーザーのかれている状況じょうきょうとらえることなどを促進そくしんするとかんがえていた。

(3) ユーザーへの影響えいきょう
 サービス参加さんかが、ユーザー自身じしんにもたらした影響えいきょうたずねた。プラスてんとしては、社会しゃかいなか自分じぶん体験たいけんかつかせる役割やくわりたこと、経済けいざいりょくあらたなアイデンティティ、自信じしんなどをられたことなどがげられており、それが満足まんぞくかんをもたらしていた。一方いっぽう、マイナスのてんとして、仕事しごとのストレスにより、体調たいちょうこわし、カウンセリング、服薬ふくやく必要ひつようになったことなどがげられた。

3)バリア
 ユーザーの参加さんかにおけるバリアについてたずねた。回答かいとうは、おおきくけて「組織そしき・システム」「専門せんもん・スタッフ」「ユーザー」「支援しえん」のよっつに分類ぶんるいできた。まず、「組織そしき・システム」では、政治せいじ専門せんもんが、ちから利権りけんつづける柔軟じゅうなんせいけるシステム、ユーザーの視点してんもとめず、なに実現じつげんしないせかけだけの参加さんかなどがげられた。つぎに、「専門せんもん・スタッフ」では、医学いがくモデルにつよ影響えいきょうされた専門せんもん、ユーザーの視点してん重要じゅうようせい認識にんしき理解りかいしていない上司じょうし差別さべつてき態度たいどげられた。そして、「ユーザー」のもつバリアとして、自信じしんがないこと、集中しゅうちゅうりょくつづかないことなどがげられるとともに、ユーザーへの支援しえんかぎられていることが、げられた。

4)ユーザーの専門せんもんせいかす方法ほうほう
(1)組織そしきおこなったことでたすけになったこと、組織そしきもとめること、期待きたいすること
ユーザーの参加さんかにあたり、組織そしきおこなったことでたすけになったこと、およ組織そしきもとめること、期待きたいすることをたずねたところ、回答かいとうは、「組織そしき」「専門せんもん・スタッフ」「支援しえん」「予算よさん事務じむのシステム」のよっつに分類ぶんるいできた。
 組織そしきかんしては、ユーザーの参加さんかかんする明確めいかく方針ほうしん組織そしき構造こうぞうなかへのユーザーの位置いちづけ、組織そしき運営うんえいへのユーザーの参加さんかなどが、げられた。「専門せんもん・スタッフ」にかんしては、実際じっさいたすけになったこととして、上司じょうしがユーザーの参加さんか重要じゅうようせい認識にんしきしていたこと、ユーザーを信頼しんらいし、敬意けいいはらい、支援しえん提供ていきょうしたことが、また、たすけになった「支援しえん」として、柔軟じゅうなん勤務きんむ時間じかん、スーパービジョンなどがげられた。「予算よさん事務じむのシステム」としては、給料きゅうりょう保障ほしょう必要ひつよう経費けいひ当日とうじつ支払しはらいのシステムなどがげられた。

(2)ユーザーのサービスへの参加さんか重要じゅうようなこと 
 ユーザーのサービスへの参加さんかにおいて重要じゅうようだとおもうことについてたずねたところ、回答かいとうは、おおきくけて「システム」「専門せんもん・スタッフ」「支援しえん配慮はいりょ」「ユーザー」に分類ぶんるいできた。

 ユーザーの参加さんかかんする根本こんぽんてき問題もんだいとして、組織そしきとユーザーのちから関係かんけいかんするてんげられた。ここでは、そのてん焦点しょうてんしぼり、回答かいとう引用いんようしながらかんがえていくこととする。12ねん医療いりょう機関きかんはたらき、現在げんざい、シニア・マネージャー会議かいぎにも参加さんかするPさんは、当事とうじしゃ参加さんかひそ矛盾むじゅん本来ほんらい目的もくてきはんする側面そくめん指摘してきする。

 実際じっさいには、ユーザーの参加さんかは、必要ひつようとされている革新かくしんてき変化へんかのための刺激しげきというよりも、現在げんざい状況じょうきょう温存おんぞんする方法ほうほうとして使つかわれることがおおい。「ユーザーの参加さんか」をおこなっているという過程かていしめしさえすれば、サービスをえるために実際じっさいなにもしなくてもよいのです!(P)

 組織そしきが、ユーザーを「参加さんか」させたい場合ばあい、ユーザーではなく組織そしきさだめる条件じょうけんでユーザーとしてはたらくことを意味いみする。そこには、サービス組織そしきが、すべてのちからとコントロールをつづけるといううごかない前提ぜんていがある(P)

 公的こうてき機関きかんとうで20ねんわたりユーザー研究けんきゅうしゃとしてはたらいたが、ユーザーとしてのちから発揮はっきできないことを理由りゆうに1ねんほどまえ研究けんきゅう機関きかん退職たいしょくしたJさんは、こうべている。

 ユーザーの参加さんかのぞんでいるとうけれど、じつは、ただよくえるようにしたいだけの組織そしきが、実際じっさいには、ほとんどなにえないまま当事とうじしゃ参加さんかさせる。そういう組織そしきは、ユーザーがおこなうすべてのことをコントロールしたがる(りゃく)(J)

 そのようななかで、ユーザーの参加さんか意味いみは、どこにあるのだろうか。

 理想りそうは、専門せんもんでなくユーザーが完全かんぜんにコントロールするあたらしいサービスの創造そうぞうですが、それはもちろんこりません(りゃく)。いつもある程度ていど表面ひょうめんてきです。しかし、なるだけ効果こうかをもたらすために、専門せんもん態度たいど前提ぜんてい挑戦ちょうせんできる役割やくわりにユーザーが雇用こようされる必要ひつようがあるとわたしおもっています(P)。

 ユーザーのサービス参加さんか経験けいけんなかで、もっと重要じゅうよう側面そくめんだとおもうのは、共感きょうかんする精神せいしん保健ほけん専門せんもんとのパートナーシップによりおこなわれたときもっと効果こうかてきだということです。ともはたらきかけると、システムにチャレンジし、えていくことが、より可能かのうになります(それでもまだ非常ひじょうむずかしいのですが)(P)。

5.まとめと提言ていげん: 日本にっぽんでユーザーのサービス参加さんかすすめていくために
ユーザーのサービスへの参加さんかが、サービスのしつ向上こうじょうだけでなく、精神せいしん医療いりょうなかでリカバリー・アプローチなどを促進そくしんし、専門せんもんかんがかたかかわりに変化へんかこしていた。一方いっぽうで、組織そしき構造こうぞう問題もんだい職員しょくいんからの差別さべつてき態度たいどなどのバリアが存在そんざいし、ユーザーの視点してんが、サービスに反映はんえいされずに、せかけのユーザーの参加さんかわる場合ばあいもあることが報告ほうこくされた。
 日本にっぽんでも、ユーザーを雇用こようする地域ちいき活動かつどう支援しえんセンターなどがえている。この調査ちょうさへの参加さんかしゃは6めいかぎられており、ユーザー参加さんか実情じつじょう傾向けいこうのごく一部いちぶしめしているにぎないが、ほん調査ちょうさ結果けっかをもとに、今後こんご、ユーザーの精神せいしん保健ほけんサービスへの参加さんかすすめ、そのちからをサービスにかすために必要ひつようかんがえられることをべる。
 まず、ユーザーがサービスに参加さんかすることの重要じゅうようせい認知にんちすることである。イギリスとことなり、日本にっぽんではその重要じゅうようせい認識にんしきされていない。そこで、くに、サービス提供ていきょう機関きかん専門せんもんに、ユーザー参加さんか重要じゅうようせいやユーザーのもつりょくについて、調査ちょうさ研究けんきゅう実践じっせんなどをとおしてつたえていくことが重要じゅうようである。そのうえで、大事だいじなのが、ユーザーが組織そしき運営上うんえいじょう決定けっていかかわることができるシステムをつくり、組織そしき構造こうぞうなかにユーザーのしょく位置付いちづけることである。そのさい常勤じょうきんしょく給料きゅうりょう保障ほしょうをするとともに、柔軟じゅうなん勤務きんむ条件じょうけんなどの配慮はいりょ、スーパービジョンの保障ほしょうなどの支援しえんかせない。また、ユーザーがちから発揮はっきできるようになるために、サービスへの参加さんか必要ひつよう知識ちしき技術ぎじゅつるための研修けんしゅう実施じっしなども必要ひつようである。なお、今後こんご、ユーザーの精神せいしん保健ほけんサービスへの参加さんかすすめていくにあたっては、よりくわしい調査ちょうさ日本にっぽんでのユーザー参加さんか実態じったい調査ちょうさなどをおこな必要ひつようがある。

6.むす
 Pさんがべたように、サービスを、完全かんぜんにユーザー主導しゅどう提供ていきょうすることは不可能ふかのうであろう。しかし、参加さんかしゃ報告ほうこくしているように、ユーザーによるサービスへの参加さんかが、組織そしき運営うんえい、サービス、専門せんもんなどに、様々さまざま変化へんかをもたらしている。そのながれを確実かくじつにしていくこと、共感きょうかんする専門せんもんやし、パートナーシップをちながら、ユーザーのちからかしたサービス、ユーザーがのぞむサービスになるように、既存きそんのサービスに変化へんかをもたらしていくことが重要じゅうようだとかんがえる。

*このりて、調査ちょうさ参加さんかしゃの6めいしんから感謝かんしゃべる

ちゅう)‘精神せいしん疾患しっかん’の診断しんだんけたひとかたには、「患者かんじゃ」「精神せいしん障害しょうがいしゃ」「当事とうじしゃ」「ユーザー」「利用りようしゃ」「コンシューマー」「サバイバー」などが存在そんざいし、それぞれの言葉ことばには、かんがかた立場たちば関係かんけいしている。‘障害しょうがいしゃ施策しさく’においては、「精神せいしん障害しょうがいしゃ」がもちいられるが、「精神せいしん障害しょうがいしゃ」では、社会しゃかいが「障害しょうがい」(ディスアビィリティ)をつくしているとかんがえる社会しゃかいモデルの視点してんけてしまうとおもわれる。そこで、それぞれの言葉ことばについて検討けんとうした結果けっか本稿ほんこうでは、精神せいしん医療いりょう使つかっているひとという意味いみで、「精神せいしん医療いりょうユーザー」をもちいることにした。

Glasby, J. et.al. (2003) Cases for change: user involvement. London: Department of Health/ National Institute for Mental Health.

報告ほうこく原稿げんこうひょうありばん

精神せいしん医療いりょう保健ほけん福祉ふくしサービスへの精神せいしん医療いりょうユーザーの参加さんか:イギリスのユーザーの体験たいけん 西南学院大学せいなんがくいんだいがく 社会しゃかい福祉ふくし学科がっか たいら 直子なおこ

1.はじめに
 イギリスでは、近年きんねん利用りようしゃ参加さんか(user involvement)が、医療いりょうおよ社会しゃかいてきケアサービスにおける重要じゅうよう概念がいねんとなっている。本稿ほんこうでは、精神せいしん医療いりょう保健ほけん福祉ふくしサービス(以下いか、サービスとりゃくす)に参加さんかしている精神せいしん医療いりょうユーザー(以下いか、ユーザーとりゃくす)にたいして、イギリスでおこなった小規模しょうきぼ調査ちょうさ結果けっか報告ほうこくし、今後こんご日本にっぽんでユーザーのちからをサービスにかすには、どのような仕組しくみ、支援しえん必要ひつようなのかをかんがえる。

2.ユーザーのサービスへの参加さんか背景はいけい
1)背景はいけい
 1980年代ねんだい、1990年代ねんだいのはじめに、イギリスでは、消費しょうひしゃ主義しゅぎ概念がいねんが、公的こうてきサービスにおおきな影響えいきょうあたえ、サービス利用りようしゃは、ケアサービスの利用りようかんして選択せんたく権利けんり消費しょうひしゃだとられるようになった。それとおなじくして障害しょうがいしゃ運動うんどう発展はってんし、利用りようしゃ主体しゅたいのサービスをもとめるうごきが活発かっぱつになった。このふたつの要因よういんにより、イギリスでは利用りようしゃのサービスへの参加さんかすすめられた(Glasby et al., 2003)。

2)関係かんけいする施策しさく 
 ユーザーのサービスへの参加さんか関係かんけいするおも施策しさくひょう1にしめす。
 1990ねん国民こくみん保健ほけんサービスとコミュニティケアほう(NHS and Community Care Act)で、地域ちいきケア計画けいかく策定さくていへの利用りようしゃ参加さんかほう位置いちづけられたことを皮切かわきりに、ユーザーの参加さんかすすめる施策しさくさだめられてきた。2001ねん健康けんこうおよ社会しゃかいケアほう(Health and Social Care Act)では、国民こくみん保健ほけんサービスにおけるユーザーの参加さんか義務付ぎむづけられ、サービス提供ていきょう組織そしきでのユーザーの雇用こようすすめられた。


ひょう 1 ユーザーのサービスへの参加さんか関係かんけいするおも施策しさく
1990ねん 国民こくみん保健ほけんサービス(NHS)とコミュニティケアほう
       −地域ちいきケア計画けいかく策定さくていへの利用りようしゃ参加さんかさだめる
1999ねん 精神せいしん保健ほけんのナショナル・サービス・フレームワーク 〔精神せいしん保健ほけん基準きじゅん基本きほん戦略せんりゃく、10ねん計画けいかく
       ―基本きほん理念りねんとして「精神せいしん保健ほけんケア計画けいかく提供ていきょうへの当事とうじしゃ参加さんか
2000ねん  NHS計画けいかく医療いりょう計画けいかく
医療いりょうサービスへの患者かんじゃ参加さんかさだめる
2001ねん  健康けんこうおよ社会しゃかいケアほう 
―サービス利用りようしゃ参加さんかさだめる   

3. 調査ちょうさ概要がいよう
 つぎ調査ちょうさ概要がいようについて報告ほうこくする。

1)目的もくてき
 この調査ちょうさ目的もくてきは、「ユーザーのサービスへの参加さんか意義いぎ参加さんかにおけるバリアなどの実情じつじょう把握はあくし、ユーザーのちからをサービスにかす方法ほうほうさぐること」である。

2)調査ちょうさ方法ほうほう
 サービスにかかわっているユーザーにたいして、平成へいせい20ねんの6-8がつ個別こべつインタビューと自記じきしき調査ちょうさおこなった。詳細しょうさいひょう2のとおりである。


ひょう2: 調査ちょうさ概要がいよう
(1)個別こべつインタビュー (平成へいせい20ねん6-8月実施じっし
仕事しごと概要がいよう仕事しごとはじめた経緯けいい給料きゅうりょう仕事しごとでの困難こんなんたのしみなどについて1たい1ではなしいた
(2)自記じきしき調査ちょうさ電子でんしメール調査ちょうさ) (平成へいせい20ねん8がつ実施じっし
 ユーザーの参加さんかがもたらしたサービスの変化へんか仕事しごとじょうでのバリア、ユーザーの専門せんもんせいかす方法ほうほうなどについてたずねる調査ちょうさひょう電子でんしメールでおくり、返送へんそうをおねがいした

3) 調査ちょうさ参加さんかしゃ
 調査ちょうさ参加さんかしゃ基準きじゅんとして、(1)精神せいしん医療いりょう利用りよう経験けいけんがあること、(2)ユーザーの体験たいけんかして職員しょくいんとしてサービスではたらいているひと、という2つの条件じょうけん設定せっていした。
 調査ちょうさ参加さんかしゃ概要がいようひょう3にしめす。調査ちょうさ参加さんかしゃは、男性だんせいめい女性じょせいめいけいめいで、20だい〜60だいである。全員ぜんいんが、統合とうごう失調しっちょうしょう神経症しんけいしょうなどの診断しんだんけたことがあり、精神せいしん医療いりょうサービスの利用りよう期間きかんは、8カ月かげつから15 ねん、うち入院にゅういん経験けいけんがあるひとは3めいで、入院にゅういん期間きかん合計ごうけいは、3ヵ月かげつから8カ月かげつである。なお、可能かのう資源しげんなかでの意図いとてき標本ひょうほん抽出ちゅうしゅつ(purposive sample)である。


ひょう3 調査ちょうさ参加さんかしゃ概要がいよう
参加さんかしゃすう性別せいべつ: 6 めい (男性だんせいめい 女性じょせいめい) 
年齢ねんれい:  20だい(2めい)、50だい (3めい) 、60だい (1めい)
精神せいしん医療いりょう利用りよう期間きかん: 1ねん未満みまん(1めい) 1−3ねん(1めい) 3−5ねん(1めい) 5−10ねん(2めい) 15ねん(1めい
入院にゅういん期間きかん合計ごうけいちゅう): 3 ヵ月かげつ (1めい) / 7-8カ月かげつ (2めい)
サービス参加さんか期間きかん合計ごうけい:1ねん(1めい) 2ねん(2めい) 7ねん(1めい) 12ねん(1めい) 20ねん(1めい)  
ちゅう)イギリスでは地域ちいき医療いりょう中心ちゅうしんであることを考慮こうりょすべきである。イギリスの平均へいきん在院ざいいん日数にっすうは、18-19にち保健ほけんしょう、2004)で、日本にっぽんの338にち厚生こうせい労働省ろうどうしょう、2004)のやく18ぶんの1である。

4) 仕事しごと概要がいよう
 参加さんかしゃ仕事しごと概要がいようひょう4にしめす。職場しょくばは、医療いりょう機関きかんにん営利えいり団体だんたいにん、また、フリーランスではたらひと1人ひとりとなっており、おも仕事しごと内容ないようは、地域ちいき生活せいかつ支援しえんサービスや調査ちょうさ研究けんきゅうにユーザーの視点してんかすことである。フリーランスではたら1人ひとり、そしてはたらきながら大学だいがくかよ1人ひとりのぞいた4にん常勤じょうきんで、給料きゅうりょう税込ぜいこみで17000〜25000ポンド(=やく370〜540まんえん)である。


ひょう4 仕事しごと概要がいよう
職場しょくば(人数にんずう) 医療いりょう機関きかん(3) 営利えいり団体だんたい(2) フリーランス(1)
仕事しごと内容ないよう 地域ちいき生活せいかつ支援しえん早期そうき介入かいにゅうサービス・危機きき介入かいにゅうサービス)にユーザーの視点してんかすこと 精神せいしん保健ほけん関係かんけい会議かいぎ参加さんかするユーザーへの支援しえん提供ていきょう
情報じょうほう提供ていきょうサービス
ユーザーの視点してんかした研究けんきゅう調査ちょうさ実施じっし
雇用こよう形態けいたいちゅう1) 常勤じょうきん(2)・非常勤ひじょうきん(1) 常勤じょうきん(2)
年収ねんしゅう(税込ぜいこみ)(ちゅう2) 常勤じょうきんやく370〜500まんえん
非常勤ひじょうきんやく240まんえん
やく410-500まんえん やく540まんえん

4.結果けっか
 では、つぎ自記じきしき調査ちょうさ結果けっか一部いちぶ報告ほうこくする。

1)ユーザーの参加さんかによる変化へんか達成たっせいされたこと
(1) ユーザーの参加さんかによりもたらされた影響えいきょう変化へんか
 ユーザーの参加さんかが、現在げんざい、もしくは過去かこはたらいた組織そしき、サービスとうにもたらした変化へんかしめしたのが、ひょう5である。回答かいとうは、「組織そしき構造こうぞう運営うんえい方法ほうほう」「スタッフのかんがかた」「サービスの理念りねん視点してん内容ないよう」のみっつに分類ぶんるいできた。
 「組織そしき構造こうぞう運営うんえい方法ほうほう」にかんしては、営利えいり団体だんたいでは、理事りじかい事業じぎょう運営うんえいにユーザーが参加さんかできる組織そしき構造こうぞうつくられていた。また、医療いりょう機関きかんでも、利用りようしゃへのかかわりだけでなく、サービスの評価ひょうか職員しょくいん採用さいよう面接めんせつなどにユーザーがかかわっていた。
 「サービスの理念りねん視点してん内容ないよう」について、参加さんかしゃは、ユーザーの参加さんかがユーザーのゆめ希望きぼう実現じつげんなどを目指めざすリカバリー・アプローチなどを促進そくしんしたとかんじていた。また、ユーザーが医療いりょう機関きかんでスタッフとしてはたらくことは、ピアサポートをとおして共感きょうかんをもたらすだけでなく、その存在そんざい自体じたいが、ロールモデルとして希望きぼう提供ていきょうしているとかんがえていた。
 「スタッフのかんがかた」については、ユーザーがチームメンバーにはいり、ユーザーの立場たちばから意見いけんったり、アドバイスをしたりすることで、スタッフの言葉ことばづかい、かんがかた、そしてかかわりがわったとかんじていた。


ひょう5 ユーザーの参加さんかによりもたらされた影響えいきょう変化へんか
組織そしき構造こうぞう運営うんえい方法ほうほう
 ・理事りじかいへのユーザー職員しょくいん参加さんか営利えいり団体だんたい
・ほとんどすべての事業じぎょう運営うんえいにユーザーが参加さんかする(営利えいり団体だんたい
・ユーザーによるサービス評価ひょうか (医療いりょう機関きかん
採用さいよう試験しけん面接めんせつかんとしてユーザーがはいること (医療いりょう機関きかん) など
〔サービスの理念りねん視点してん内容ないよう
・リカバリーアプローチの導入どうにゅう促進そくしん ((医療いりょう機関きかん営利えいり団体だんたい
・「精神せいしんてき苦痛くつう」にたいしての医学いがくてきでない見方みかた導入どうにゅう (医療いりょう機関きかん) など
・ピア・サポートの提供ていきょう (医療いりょう機関きかん)・
・ユーザーの視点してん反映はんえい (医療いりょう機関きかん営利えいり団体だんたい
・ユーザーの視点してんった適切てきせつ有意義ゆういぎ調査ちょうさ研究けんきゅう実施じっし (調査ちょうさ機関きかん) など
〔スタッフのかんがかた
言葉ことばづかい (医療いりょう機関きかん
・リスクのかんがかた (医療いりょう機関きかん) など
ちゅう:カッコないは、回答かいとうしゃ所属しょぞく機関きかん

(2) ユーザーが、サービスにもたらせること 
 つぎに、実際じっさい変化へんかきたかかにかかわらず、ユーザーがサービスにもたらせるとおもうことをたずねた。ひょう6にしめすように、「サービスのしつ向上こうじょう」「いままでとことなる視点してんかんがかた、アプローチ」のてんげられた。
「サービスのしつ向上こうじょう」にかんしては、ユーザーがサービスにかかわることにより、ユーザーのもとめるサービスをることができ、その結果けっか効果こうかてき効率こうりつてき創造そうぞうてきなサービスの提供ていきょうができるとかんがえていた。また、「いままでとことなる視点してんかんがかた、アプローチ」については、いままでのサービスは、医学いがくモデルに基礎きそをおいた専門せんもん主導しゅどうであったが、ユーザーの参加さんかが、ユーザーのちからすアプローチ、社会しゃかい包括ほうかつ市民しみんけんなどからユーザーのかれている状況じょうきょうとらえることなどを促進そくしんするとかんがえていた。


ひょう6 ユーザーが、サービスにもたらせること
〔サービスのしつ向上こうじょう
 ・ユーザーがもとめるサービスの提供ていきょう
 ・効果こうかてき/効率こうりつてき/創造そうぞうてきなサービスの提供ていきょう
いままでとことなる視点してんかんがかた・アプローチ〕
医学いがくモデルとはことなる視点してんかんがかたによる「精神せいしん疾患しっかん」「精神せいしん障害しょうがい」のとらかた
社会しゃかい包括ほうかつ市民しみんけんという視点してんとおしての「ユーザーのかれた状況じょうきょう」の理解りかい
・リカバリーアプローチ
・エンパワメントアプローチ
専門せんもん主導しゅどうのサービスがいかに抑圧よくあつてきかの理解りかいとユーザー主導しゅどうのサービスの重要じゅうようせい認識にんしき
・ユーザーが、病人びょうにん無責任むせきにん存在そんざいではなく、生活せいかつ精神せいしん保健ほけん問題もんだい主体しゅたいてきめるちからをもつ存在そんざいであることをしめすこと

(3) ユーザーへの影響えいきょう
 サービス参加さんかが、ユーザー自身じしんにもたらした影響えいきょうたずねた。ひょう7にしめすように、プラスてんとしては、社会しゃかいなか自分じぶん体験たいけんかつかせる役割やくわりたこと、経済けいざいりょくあらたなアイデンティティ、自信じしんなどをられたことなどがげられており、それが満足まんぞくかんをもたらしていた。一方いっぽう、マイナスのてんとして、仕事しごとのストレスにより、体調たいちょうこわし、カウンセリング、服薬ふくやく必要ひつようになったことなどがげられた。


ひょう7 ユーザーへの影響えいきょう
〔プラスてん
社会しゃかいなか体験たいけんかつかせる役割やくわりたこと
人生じんせい意味いみ獲得かくとく
・エンパワーされる
・やりがいがある
経済けいざいりょくあらたなアイデンティティ、自信じしんられたこと
回復かいふく
・ありのままの自分じぶんでいられ、ほこりをてる仕事しごとたこと
国内外こくないがいのユーザー、専門せんもんしょくしゃとの出会であい など

〔マイナスてん
・ストレス
・フラストレーション、いかり、とき絶望ぜつぼう

3)バリア
 ユーザーの参加さんかにおけるバリアについてたずねた結果けっかしめしたのが、ひょう8である。その回答かいとうは、おおきくけて「組織そしき・システム」「専門せんもん・スタッフ」「ユーザー」「支援しえん」のよっつに分類ぶんるいできた。まず、「組織そしき・システム」では、政治せいじ専門せんもんが、ちから利権りけんつづける柔軟じゅうなんせいけるシステム、ユーザーの視点してんもとめず、なに実現じつげんしないせかけだけの参加さんかなどがげられた。つぎに、「専門せんもん・スタッフ」では、医学いがくモデルにつよ影響えいきょうされた専門せんもん、ユーザーの視点してん重要じゅうようせい認識にんしき理解りかいしていない上司じょうし差別さべつてき態度たいどげられた。そして、「ユーザー」のもつバリアとして、自信じしんがないこと、集中しゅうちゅうりょくつづかないことなどがげられるとともに、ユーザーへの支援しえんかぎられていることが、げられた。


ひょう8 バリア
〔〔組織そしき・システム〕
政治せいじ専門せんもん利権りけんつづける柔軟じゅうなんせいけるシステム
・ユーザーの視点してんもとめず、なに実現じつげんしないせかけだけの参加さんか
組織そしきなかひく優先ゆうせん順位じゅんいにあるユーザーの参加さんか
予算よさんがない など
専門せんもん・スタッフ〕
医学いがくモデルにつよ影響えいきょうされた専門せんもん職場しょくば文化ぶんか
・ユーザーの視点してん重要じゅうようせい認識にんしき理解りかいしていないシニアマネージャー(上司じょうし
強固きょうこな、差別さべつてき態度たいど。ユーザーのかんがえに敬意けいいはらわない態度たいど
管理かんりてき専門せんもん用語ようご など
〔ユーザー〕
自信じしんがない
集中しゅうちゅうりょくける など
〔その
・ユーザーのための実践じっせんてき支援しえんかぎられていること
・ユーザーがサービスに参加さんかするにあたり、十分じゅうぶん情報じょうほう研修けんしゅうがない など

4)ユーザーの専門せんもんせいかす方法ほうほう
(1)組織そしきおこなったことでたすけになったこと、組織そしきもとめること、期待きたいすること
ユーザーの参加さんかにあたり、組織そしきおこなったことでたすけになったこと、およ組織そしきもとめること、期待きたいすることをたずねた結果けっかひょう9にしめす。その回答かいとうは、「組織そしき」「専門せんもん・スタッフ」「支援しえん」「予算よさん事務じむのシステム」のよっつに分類ぶんるいできた。
 組織そしきかんしては、ユーザーの参加さんかかんする明確めいかく方針ほうしん組織そしき構造こうぞうなかへのユーザーの位置いちづけ、組織そしき運営うんえいへのユーザーの参加さんかなどが、げられた。「専門せんもん・スタッフ」にかんしては、実際じっさいたすけになったこととして、上司じょうしがユーザーの参加さんか重要じゅうようせい認識にんしきしていたこと、ユーザーを信頼しんらいし、敬意けいいはらい、支援しえん提供ていきょうしたことが、また、たすけになった「支援しえん」として、柔軟じゅうなん勤務きんむ時間じかん、スーパービジョンなどがげられた。「予算よさん事務じむのシステム」としては、給料きゅうりょう保障ほしょう必要ひつよう経費けいひ当日とうじつ支払しはらいのシステムなどがげられた。


ひょう9 ユーザーの専門せんもんせいかす方法ほうほう
組織そしき位置いちづけ・方針ほうしん構造こうぞう
・ユーザーの参加さんかかんする明確めいかく方針ほうしん
組織そしき構造こうぞうにおけるユーザーの参加さんかかんする明確めいかく位置いちづけ
・ユーザーの運営うんえいへの参加さんか
・ユーザーの役割やくわり明確めいかくにすること など
専門せんもん・スタッフ〕
・マネージャー(上司じょうし)がユーザーの参加さんか重要じゅうようせいかんして理解りかいしていること
尊重そんちょう敬意けいい信頼しんらい
・ユーザーの参加さんかかんしてまなぶユーザーがおこな研修けんしゅう など
支援しえん
・スーパービジョン ・はげまし ・柔軟じゅうなん対応たいおう ・評価ひょうか
・ユーザーにたいする研修けんしゅう
十分じゅうぶん時間じかん提供ていきょう など
予算よさん事務じむのシステム〕
給料きゅうりょう保障ほしょう
必要ひつよう経費けいひ当日とうじつ支払しはらいのシステム
問題もんだい把握はあく、サービス評価ひょうかのために研究けんきゅう調査ちょうさをつけること など

(2)ユーザーのサービスへの参加さんか重要じゅうようなこと 
 ユーザーのサービスへの参加さんかにおいて重要じゅうようだとおもうことについてたずねた結果けっかひょう10にしめした。回答かいとうは、おおきくけて「システム」「専門せんもん・スタッフ」「支援しえん配慮はいりょ」「ユーザー」に分類ぶんるいできた。


ひょう10 ユーザーのサービスへの参加さんか重要じゅうようなこと
〔システム〕
専門せんもんとユーザーのちから関係かんけい 
決定けってい過程かてい透明とうめいせい責任せきにん明確めいかく決定けってい過程かていへのユーザーの参加さんか
・ユーザーのための有給ゆうきゅうしょく(ポスト)
・すべての領域りょういき医療いりょう事務じむ手続てつづき・雇用こよう研修けんしゅうなど)へのユーザーの介入かいにゅう
代表だいひょうせい:ユーザーにひろ意見いけんくメカニズム
待遇たいぐう給料きゅうりょう柔軟じゅうなん雇用こよう形態けいたい適切てきせつ支援しえん提供ていきょう
研究けんきゅう調査ちょうさ:ユーザーがのぞむテーマで研究けんきゅうおこない、あらたなサービスやアプローチを発展はってんさせること(れい医療いりょうではないクライシスハウス、くすり減量げんりょう支援しえん
専門せんもん・スタッフ〕
共感きょうかんてき専門せんもんとのパートナーシップ
専門せんもんが、ユーザーのちからしんじ、おな人間にんげん価値かちある人間にんげんとしてること
・ユーザーの参加さんか重要じゅうようせいつたえるための研修けんしゅう実施じっし
支援しえん配慮はいりょ
参加さんかするユーザーへの支援しえん提供ていきょう会議かいぎまえ説明せつめいなど)
〔ユーザー〕
・サービスへの参加さんかかんする情報じょうほう提供ていきょう研修けんしゅう実施じっし

 ユーザーの参加さんかかんする根本こんぽんてき問題もんだいとして、組織そしきとユーザーのちから関係かんけいかんするてんげられた。ここでは、そのてん焦点しょうてんしぼり、回答かいとう引用いんようしながらかんがえていくこととする。12ねん医療いりょう機関きかんはたらき、現在げんざい、シニア・マネージャー会議かいぎにも参加さんかするPさんは、当事とうじしゃ参加さんかひそ矛盾むじゅん本来ほんらい目的もくてきはんする側面そくめん指摘してきする。

 実際じっさいには、ユーザーの参加さんかは、必要ひつようとされている革新かくしんてき変化へんかのための刺激しげきというよりも、現在げんざい状況じょうきょう温存おんぞんする方法ほうほうとして使つかわれることがおおい。「ユーザーの参加さんか」をおこなっているという過程かていしめしさえすれば、サービスをえるために実際じっさいなにもしなくてもよいのです!(P)

 組織そしきが、ユーザーを「参加さんか」させたい場合ばあい、ユーザーではなく組織そしきさだめる条件じょうけんでユーザーとしてはたらくことを意味いみする。そこには、サービス組織そしきが、すべてのちからとコントロールをつづけるといううごかない前提ぜんていがある(P)

 公的こうてき機関きかんとうで20ねんわたりユーザー研究けんきゅうしゃとしてはたらいたが、ユーザーとしてのちから発揮はっきできないことを理由りゆうに1ねんほどまえ研究けんきゅう機関きかん退職たいしょくしたJさんは、こうべている。

 ユーザーの参加さんかのぞんでいるとうけれど、じつは、ただよくえるようにしたいだけの組織そしきが、実際じっさいには、ほとんどなにえないまま当事とうじしゃ参加さんかさせる。そういう組織そしきは、ユーザーがおこなうすべてのことをコントロールしたがる(りゃく)(J)

 そのようななかで、ユーザーの参加さんか意味いみは、どこにあるのだろうか。

 理想りそうは、専門せんもんでなくユーザーが完全かんぜんにコントロールするあたらしいサービスの創造そうぞうですが、それはもちろんこりません(りゃく)。いつもある程度ていど表面ひょうめんてきです。しかし、なるだけ効果こうかをもたらすために、専門せんもん態度たいど前提ぜんてい挑戦ちょうせんできる役割やくわりにユーザーが雇用こようされる必要ひつようがあるとわたしおもっています(P)。

 ユーザーのサービス参加さんか経験けいけんなかで、もっと重要じゅうよう側面そくめんだとおもうのは、共感きょうかんする精神せいしん保健ほけん専門せんもんとのパートナーシップによりおこなわれたときもっと効果こうかてきだということです。ともはたらきかけると、システムにチャレンジし、えていくことが、より可能かのうになります(それでもまだ非常ひじょうむずかしいのですが)(P)。

5.まとめと提言ていげん: 日本にっぽんでユーザーのサービス参加さんかすすめていくために
 ユーザーのサービスへの参加さんかが、サービスのしつ向上こうじょうだけでなく、精神せいしん医療いりょうなかでリカバリー・アプローチなどを促進そくしんし、専門せんもんかんがかたかかわりに変化へんかこしていた。一方いっぽうで、組織そしき構造こうぞう問題もんだい職員しょくいんからの差別さべつてき態度たいどなどのバリアが存在そんざいし、ユーザーの視点してんが、サービスに反映はんえいされずに、せかけのユーザーの参加さんかわる場合ばあいもあることが報告ほうこくされた。
 日本にっぽんでも、ユーザーを雇用こようする地域ちいき活動かつどう支援しえんセンターなどがえている。この調査ちょうさへの参加さんかしゃは6めいかぎられており、ユーザー参加さんか実情じつじょう傾向けいこうのごく一部いちぶしめしているにぎないが、ほん調査ちょうさ結果けっかをもとに、今後こんご、ユーザーの精神せいしん保健ほけんサービスへの参加さんかすすめ、そのちからをサービスにかすために必要ひつようかんがえられることをひょう11にまとめた。
まず、ユーザーがサービスに参加さんかすることの重要じゅうようせい認知にんちすることである。イギリスとことなり、日本にっぽんではその重要じゅうようせい認識にんしきされていない。そこで、くに、サービス提供ていきょう機関きかん専門せんもんに、ユーザー参加さんか重要じゅうようせいやユーザーのもつりょくについて、調査ちょうさ研究けんきゅう実践じっせんなどをとおしてつたえていくことが重要じゅうようである。そのうえで、大事だいじなのが、ユーザーが組織そしき運営上うんえいじょう決定けっていかかわることができるシステムをつくり、組織そしき構造こうぞうなかにユーザーのしょく位置付いちづけることである。そのさい常勤じょうきんしょく給料きゅうりょう保障ほしょうをするとともに、柔軟じゅうなん勤務きんむ条件じょうけんなどの配慮はいりょ、スーパービジョンの保障ほしょうなどの支援しえんかせない。また、ユーザーがちから発揮はっきできるようになるために、サービスへの参加さんか必要ひつよう知識ちしき技術ぎじゅつるための研修けんしゅう実施じっしなども必要ひつようである。なお、今後こんご、ユーザーの精神せいしん保健ほけんサービスへの参加さんかすすめていくにあたっては、よりくわしい調査ちょうさ日本にっぽんでのユーザー参加さんか実態じったい調査ちょうさなどをおこな必要ひつようがある。


ひょう11 日本にっぽんでユーザーのサービス参加さんかすすめていくために必要ひつようなこと
認知にんち: くに専門せんもん職員しょくいん、ユーザーなどがサービスへのユーザーの参加さんか重要じゅうようせい、ユーザーのもつちから認識にんしきすること
ちから共有きょうゆう: ユーザーが、組織そしき運営うんえいにおける決定けっていかかわること
組織そしき構造こうぞう:ユーザーのしょく組織そしき構造こうぞうなか位置付いちづけるとともに、ユーザーの役割やくわり明確めいかくにすること
財源ざいげん確保かくほ: ユーザーの常勤じょうきんしょく生活せいかつできるがく給料きゅうりょう確保かくほなど
・ユーザーのちから支援しえん柔軟じゅうなん勤務きんむ条件じょうけんなどの配慮はいりょ、スーパービジョンなどの保障ほしょう研修けんしゅうなど 

6.むす
 Pさんがべたように、サービスを、完全かんぜんにユーザー主導しゅどう提供ていきょうすることは不可能ふかのうであろう。しかし、参加さんかしゃ報告ほうこくしているように、ユーザーによるサービスへの参加さんかが、組織そしき運営うんえい、サービス、専門せんもんなどに、様々さまざま変化へんかをもたらしている。そのながれを確実かくじつにしていくこと、共感きょうかんする専門せんもんやし、パートナーシップをちながら、ユーザーのちからかしたサービス、ユーザーがのぞむサービスになるように、既存きそんのサービスに変化へんかをもたらしていくことが重要じゅうようだとかんがえる。

*このりて、調査ちょうさ参加さんかしゃの6めいしんから感謝かんしゃべる

ちゅう)‘精神せいしん疾患しっかん’の診断しんだんけたひとかたには、「患者かんじゃ」「精神せいしん障害しょうがいしゃ」「当事とうじしゃ」「ユーザー」「利用りようしゃ」「コンシューマー」「サバイバー」などが存在そんざいし、それぞれの言葉ことばには、かんがかた立場たちば関係かんけいしている。‘障害しょうがいしゃ施策しさく’においては、「精神せいしん障害しょうがいしゃ」がもちいられるが、「精神せいしん障害しょうがいしゃ」では、社会しゃかいが「障害しょうがい」(ディスアビィリティ)をつくしているとかんがえる社会しゃかいモデルの視点してんけてしまうとおもわれる。そこで、それぞれの言葉ことばについて検討けんとうした結果けっか本稿ほんこうでは、精神せいしん医療いりょう使つかっているひとという意味いみで、「精神せいしん医療いりょうユーザー」をもちいることにした。

Glasby, J. et.al. (2003) Cases for change: user involvement. London: Department of Health/ National Institute for Mental Health.


作成さくせい
UP:20090904 REV:20090921
全文ぜんぶん掲載けいさい  ◇障害しょうがい学会がっかいだい6かい大会たいかい  ◇障害しょうがい学会がっかいだい6かい大会たいかい報告ほうこく要旨ようし
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