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西田にしだ 玲子れいこ (にしだ れいこ) 筑波大学つくばだいがく大学院だいがくいん

■報告ほうこく題目だいもく

合理ごうり的てき配慮はいりょと休職きゅうしょく期間きかん──休職きゅうしょく期間きかん終了しゅうりょうによる退職たいしょく扱あつかいの有効ゆうこう性せい

■報告ほうこくキーワード

合理ごうり的てき配慮はいりょ / 休職きゅうしょく期間きかんの定さだめ / 健康けんこう配慮はいりょ義務ぎむ

■報告ほうこく要旨ようし

　本ほん報告ほうこくは、既すでに公表こうひょうされている判例はんれいや論文ろんぶんに基もとづき、内容ないようを構成こうせいしているため、特定とくていの個人こじんや団体だんたいへ不利益ふりえきをもたらすことはない。著作ちょさく権けんに配慮はいりょし、出典しゅってんを明確めいかくにする。

　精神せいしん障害しょうがいによる労災ろうさい請求せいきゅう件数けんすう、支給しきゅう決定けってい件数けんすうともに年々ねんねん増加ぞうかしており (*1)、仕事しごとによる強つよいストレスなどが原因げんいんで発病はつびょうした精神せいしん障害しょうがいを理由りゆうに休職きゅうしょくする人ひとも多おおい。そのような中なか、就業しゅうぎょう規則きそく等とうに定さだめられた休職きゅうしょく期間きかんを過すぎた時点じてんで、就業しゅうぎょう規則きそくに基もとづき退職たいしょく扱あつかい（もしくは解雇かいこ）とすることの可否かひについて、裁判さいばんで争あらそわれてきた (*2)。
　精神せいしん障害しょうがいを発症はっしょうした労働ろうどう者しゃは、療養りょうようのために休職きゅうしょくすることができる。休職きゅうしょく期間きかんに関かんしては、期間きかんの定さだめのない雇用こよう（いわゆる正規せいき雇用こよう）と有期ゆうき雇用こよう（いわゆる非ひ正規せいき雇用こよう）で一般いっぱんには異ことなる就業しゅうぎょう規則きそくが適用てきようされるため、取得しゅとくできる期間きかんには違ちがいがある。ただし、正規せいき雇用こよう、非ひ正規せいき雇用こようを問とわず、休職きゅうしょく期間きかん満了まんりょうの時点じてんで相当そうとう期間きかん内ないに休職きゅうしょく事由じゆうが消滅しょうめつすることが見込みこめる場合ばあいには、雇用こよう維持いじのための手段しゅだんを講こうじることが信義しんぎ則そく上じょう使用しよう者しゃに求もとめられる (*3)。
　業務ぎょうむ上じょう疾病しっぺいの療養りょうようのために休職きゅうしょくしている期間きかんには、解雇かいこ制限せいげんがある (*4)。他方たほう、症状しょうじょうが固定こていされた場合ばあい、あるいは、私傷ししょう病びょうによる休職きゅうしょくの場合ばあいは、休職きゅうしょく期間きかん満了まんりょうによる退職たいしょく扱あつかいが認みとめられてきた (*5)。
　改正かいせい促進そくしん法ほうにより、今後こんごは私傷ししょう病びょうでも業務ぎょうむ上じょう疾病しっぺいでも障害しょうがいを理由りゆうとする休職きゅうしょくは、合理ごうり的てき配慮はいりょとして認みとめられることになる。また、復職ふくしょくに際さいして、労働ろうどう者しゃが合理ごうり的てき配慮はいりょを希望きぼうする場合ばあいには、短時間たんじかん勤務きんむを認みとめるなど、各種かくしゅ配慮はいりょを提供ていきょうする必要ひつようがある。
　本ほん報告ほうこくでは、これまで行おこなわれてきた復職ふくしょくの際さいの配慮はいりょ、すなわち、軽けい作業さぎょうを割当わりあてたり、短時間たんじかん勤務きんむを認みとめたりすること以外いがいにも、合理ごうり的てき配慮はいりょとして何なにが求もとめられるのかを検討けんとうし、報告ほうこくしたい。さらに、中途ちゅうと障害しょうがい者しゃで主要しゅような業務ぎょうむを遂行すいこうできなくなった者ものに対たいして、配転はいてん等とうを含ふくめ合理ごうり的てき配慮はいりょにより雇用こようを維持いじする努力どりょくが求もとめられるため、休職きゅうしょく期間きかん満了まんりょうによる自然しぜん退職たいしょくが今後こんごどのように変かわる必要ひつようがあるのかについても報告ほうこくする予定よていである。

注ちゅう
(*1) 厚労省こうろうしょう平成へいせい27年ねん6月がつ25日にち報道ほうどう発表はっぴょう資料しりょう「平成へいせい26年度ねんど『過労かろう死し等とうの労災ろうさい補償ほしょう状じょう況きょう』を公表こうひょう」
(*2) 東芝とうしば（うつ病びょう・解雇かいこ）事件じけん・最さい２小判こばん平ひらめ26年ねん３月がつ24日にち（労ろう判ばん1094号ごう22頁ぺーじ）、東京とうきょう高だか判ばん平たいら23年ねん２月がつ23日にち（労ろう判ばん1022号ごう５頁ぺーじ）休職きゅうしょく期間きかん満了まんりょうによる解雇かいこを無効むこうと判断はんだんした高裁こうさい判決はんけつが確定かくてい。
(*3) 全日本ぜんにほん空輸くうゆ（退職たいしょく強要きょうよう）事件じけん・大阪おおさか地ち判ばん平たいら11年ねん10月がつ18日にち（労ろう判ばん772号ごう9頁ぺーじ）
(*4) 労基法ろうきほう19条じょう1項こう。使用しよう者しゃは、労働ろうどう者しゃが業務ぎょうむ上じょう負傷ふしょうし、又または疾病しっぺいにかかり療養りょうようのために休業きゅうぎょうする期間きかん及およびその後ご30日間にちかん並ならびに産前さんぜん産後さんごの女性じょせいが第だい65条じょうの規定きていによつて休業きゅうぎょうする期間きかん及およびその後ご30日間にちかんは、解雇かいこしてはならない。ただし、使用しよう者しゃが、第だい81条じょうの規定きていによつて打切うちきり補償ほしょうを支払しはらう場合ばあい又または天災てんさい事変じへんその他たやむを得えない事由じゆうのために事業じぎょうの継続けいぞくが不可能ふかのうとなつた場合ばあいにおいては、この限かぎりでない。
(*5) エールフランス事件じけん・東京とうきょう地ち判ばん昭あきら59年ねん1月がつ27日にち（労ろう判ばん423号ごう23頁ぺーじ）期間きかん満了まんりょうの翌日よくじつなど一定いっていの日ひに労働ろうどう契約けいやくが自動じどう終了しゅうりょうすることを就業しゅうぎょう規則きそくに定さだめて明示めいじする自然しぜん退職たいしょくの規定きていについて、休職きゅうしょく期間きかん満了まんりょう日びになお休職きゅうしょく事由じゆうが消滅しょうめつしていない場合ばあいに、期間きかん満了まんりょうによって当然とうぜんに復職ふくしょくとなったと解かいした上うえで改あらためて使用しよう者しゃが当該とうがい従業じゅうぎょう員いんを解雇かいこするという迂遠うえんな手続てつづきを回避かいひするものとして合理ごうり性せいを有ゆうする。

障害しょうがい学会がっかい第だい12回かい大会たいかい（2015年度ねんど）