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菊池きくち 尚人なおと (きくち なおと) 慶應義塾大学けいおうぎじゅくだいがく大学院だいがくいんメディアデザイン研究けんきゅう科か

■報告ほうこく題目だいもく

フランス、アメリカの障害しょうがい者しゃ向むけ電子でんし図書としょサービスとデジタルライブラリーのモデル考察こうさつ

■報告ほうこくキーワード

電子でんし図書としょサービス / 法ほう制度せいど / デジタルライブラリー

■報告ほうこく要旨ようし

1. フランス国立こくりつ図書館としょかんの電子でんし図書としょサービスと音声おんせい合成ごうせい読よみ上あげ
・フランス国立こくりつ図書館としょかんはフランス国内こくないの他ほかの図書館としょかんと共同きょうどうで1997年ねんから電子でんし図書としょサービス：Gallica http://gallica.bnf.fr/ を運用うんよう。
・200万まんを超こえる電子でんしファイルがアクセス可能かのう。毎週まいしゅう数すう千せんのコンテンツが増加ぞうか。
・過去かこの新聞しんぶんや雑誌ざっしも電子でんし化か。例たとえば、日刊にっかん新聞しんぶんのLe Figaroでは1854年ねんから1942年ねんまでの約やく29,000日にち分ぶんの紙面しめんが特段とくだんの認証にんしょうなしに日本にっぽんからも閲覧えつらん可能かのう。
・2013年ねんからはタブレットやスマートフォン向むけの専用せんようアプリも提供ていきょう。
・Gallicaには音声おんせい合成ごうせい読よみ上あげ機能きのうが実装じっそう。ブラウザにおけるOCR認識にんしきからのText To Speechではあるが、アルファベット表記ひょうきであるため、ほとんど誤あやまりなく音声おんせい読よみ上あげが可能かのう。

2. フランスの障害しょうがい者しゃ向むけ電子でんし図書としょサービスと関連かんれん法ほう制度せいど
・2009年ねん以前いぜんは、障害しょうがい者しゃ団体だんたいはBrailleNet等とうの電子でんし図書館としょかんサービスに関かんして、それぞれの権利けんり者しゃ団体だんたいと個別こべつに包括ほうかつ契約けいやくを締結ていけつして、権利けんりを処理しょり。
・2010年ねんからは、DADVSI法ほう関連かんれん政令せいれいの施行しこうにより、国くにから認定にんていされた障害しょうがい者しゃ団体だんたい等とうは次つぎのプロセスでフランス国立こくりつ図書館としょかんのPLATONから電子でんしファイルを入手にゅうしゅ可能かのう。
１）認定にんてい団体だんたいがフランス国立こくりつ図書館としょかんに必要ひつような電子でんしファイルを連絡れんらく
２）フランス国立こくりつ図書館としょかんが出版しゅっぱん社しゃに要求ようきゅう
３）出版しゅっぱん社しゃがフランス国立こくりつ図書館としょかん経由けいゆで電子でんしファイルを提供ていきょう
・フランスは、2001年ねんのEUによる情報じょうほう社会しゃかい指令しれいに基もとづき、障害しょうがい者しゃの著作ちょさく物ぶつ利用りようの例外れいがい規定きていを2006年ねんに初はじめて法制ほうせい化か。フランス国内こくないの出版しゅっぱん社しゃ等とうに電子でんしファイルの提供ていきょうを義務付ぎむづけるなど、障害しょうがい者しゃ団体だんたい等とうにとって利便りべん性せいが高たかい内容ないよう。
・2009年ねんからフランス国立こくりつ図書館としょかんは出版しゅっぱん社しゃ等とうから提供ていきょうされた電子でんしファイルの唯一ゆいいつ義務ぎむ的てきなアーカイブ。その機関きかんであるPLATONは法定ほうていの窓口まどぐちとして、政令せいれいで認定にんていされた障害しょうがい者しゃ団体だんたいのリクエストを出版しゅっぱん社しゃ等とうに伝つたえ、その電子でんしファイルを入手にゅうしゅし、障害しょうがい者しゃ団体だんたいに提供ていきょう。

3. アメリカの障害しょうがい者しゃ向むけ電子でんし図書としょサービス
・アメリカにおける視覚しかく障害しょうがい者しゃ向むけ電子でんし図書としょサービスでは、Bookshare https://www.bookshare.org/ が代表だいひょう的てき。30万まん近ちかくのコンテンツを提供ていきょう。
・Bookshare組織そしき内ないでスキャンして、コンテンツをアップロードするだけでなく、ボランティアがスキャンし、それをアップロードしたり、大学だいがく等とう教育きょういく機関きかんがスキャンしたデータを提供ていきょうしたりするなど、多様たような主体しゅたいとの協同きょうどうが特徴とくちょう。
・American Printing House for the Blindが運営うんえいするNational Instructional Materials Access Centerが保存ほぞんする教科書きょうかしょ・教材きょうざいファイルをアクセシブルなフォーマットに変更へんこうして、各州かくしゅうと出版しゅっぱん社しゃとの契約けいやくを踏ふまえて個別こべつ障害しょうがい者しゃ教育きょういく法ほう（IDEA）の対象たいしょうとする生徒せいとに提供ていきょうするなど、特別とくべつ支援しえん教育きょういくのインフラ機能きのうも提供ていきょう。

4. デジタルライブラリーのモデル考察こうさつ
・フランス国立こくりつ図書館としょかんは、Europeana http://europeana.eu/ というヨーロッパの図書館としょかん博物館はくぶつかん等とうのポータルサイトの中心ちゅうしん的てきな施設しせつ。Europeanaにはヨーロッパの大だい規模きぼ施設しせつから小規模しょうきぼ施設しせつまで、2,000を超こえる図書館としょかん、博物館はくぶつかん等とうが参加さんか。
・アメリカ発はつのGoogleブックス http://books.google.co.jp/ は数すう百ひゃく万まん冊さつのスキャンを行おこない、パブリックドメインのコンテンツであれば、全文ぜんぶんが閲覧えつらん可能かのう。また、各国かっこくの大学だいがく図書館としょかんとの連携れんけいも推進すいしん。
・電子でんし書籍しょせきの拡大かくだいとともに読書どくしょアクセシビリティは、新しん刊本かんぽんに限かぎれば向上こうじょう。しかしながら、膨大ぼうだいな過去かこの書籍しょせきをアクセシブルなものにするには
①ネットワーク化かして、所蔵しょぞう先さきを明あきらかにすること
②スキャン等とうによりデジタルデータを作成さくせいすること
③デジタルデータを共有きょうゆうすること
の三さん点てんが必要ひつよう。Europeanaは①に関かんしての、Googleブックスは②に関かんしての先進せんしん事例じれい。
・視覚しかく障害しょうがい者しゃ等とうに係かかる複製ふくせい等とうについては、日本にっぽんの著作ちょさく権けん法ほうでも著作ちょさく権けんが制限せいげんされており、障害しょうがい者しゃ向むけに包括ほうかつ的てきなデジタルライブラリーを構築こうちくすることは、一般いっぱんのデジタルライブラリーを構築こうちくするよりも権利けんり処理しょりは簡便かんべん。
・「障害しょうがい者しゃの権利けんりに関かんする条約じょうやく」の締結ていけつに向むけた国内こくない法ほう制度せいどの整備せいびの一環いっかんとして、「障害しょうがいを理由りゆうとする差別さべつの解消かいしょうの推進すいしんに関かんする法律ほうりつ」が2016年ねん4月がつから施行しこう。このような状況じょうきょうを踏ふまえて、視覚しかく障害しょうがい者しゃ向むけ電子でんし図書としょサービスを拡大かくだいするために、国立こくりつ国会図書館こっかいとしょかん、視覚しかく障害しょうがい者しゃ情報じょうほう提供ていきょう施設しせつ、公立こうりつ図書館としょかん、大学だいがく図書館としょかんなどがネットワーク化かを推進すいしんして、それぞれが作成さくせいしたデジタルデータを共有きょうゆうする横断おうだん的てきなシステムを構築こうちくするべき。

　なお、本ほん調査ちょうさ研究けんきゅうにおいては、機微きび情報じょうほう等とうの倫理りんり的てき配慮はいりょを特段とくだん要ようするものは扱あつかっていない。

障害しょうがい学会がっかい第だい12回かい大会たいかい（2015年度ねんど）