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鎌田かまた 一雄かずお (かまた かずお) 宇都宮大学うつのみやだいがく名誉めいよ教授きょうじゅ
米村よねむら 俊一しゅんいち (よねむら しゅんいち) 芝浦工業大学しばうらこうぎょうだいがく

■報告ほうこく題目だいもく

視覚しかく障さわがい者しゃの在宅ざいたく勤務きんむに関かんする実験じっけん的てき検討けんとう

■報告ほうこくキーワード

視覚しかく障さわがい者しゃ / 障さわがい者しゃ雇用こよう / 在宅ざいたく勤務きんむ

■報告ほうこく要旨ようし

1. まえがき
　テレワークの一いちである在宅ざいたく勤務きんむは、障害しょうがいがある人達ひとたちの就労しゅうろう形態けいたいとして注目ちゅうもくされている．本ほん報告ほうこくでは、視覚しかくに障害しょうがいがある人ひとを対象たいしょうとした実験じっけん的てきな在宅ざいたく勤務きんむの観察かんさつに基もとづいて在宅ざいたく勤務きんむの状況じょうきょうをコミュニケーションのメディア、状況じょうきょうなどの視点してんから検討けんとうした課題かだいを述のべる．

2. 在宅ざいたく勤務きんむの観察かんさつ実験じっけん
　対象たいしょう者しゃ(HI)は、ソフトウエア関連かんれんの業務ぎょうむを行おこなっているが、ほとんど視力しりょくがなく白しろ杖つえを用もちいた単独たんどく歩行ほこうで通勤つうきんしている．家族かぞく(WI．専業せんぎょう主婦しゅふ)は、中途ちゅうと失明しつめい(全盲ぜんもう)であり、二人ふたりで生活せいかつしている．在宅ざいたく勤務きんむ実験じっけんは、2010年ねん6月がつから2011年ねん1月がつまでの期間きかん（20ヶ月かげつ）に、1日にちのみ、および3週間しゅうかん、8週間しゅうかんのわせて3回かい実施じっしした．なお、関係かんけい者しゃの同意どういのもとに、ビデオによる映像えいぞう記録きろく、インタビュー（音声おんせい記録きろく）、および関係かんけい者しゃの自己じこ報告ほうこく（音声おんせい記録きろく）を観察かんさつ資料しりょうとした．

3. コミュニケーションの形態けいたい
　職場しょくばと在宅ざいたく勤務きんむでのコミュニケーション環境かんきょう(コミュニケーションのメディアと利用りよう状じょう況きょう、役割やくわり)は大おおきく異ことなった．職場しょくばでは音声おんせい・聴覚ちょうかくを用もちいたフォーマル、インフォーマルなコミュニケーションが行おこなわれていた．また、他者たしゃ間あいだのコミュニケーションの漏もれ（他人たにんのコミュニケーション状況じょうきょうから知覚ちかくできるの）も、職場しょくばコミュニケーションの重要じゅうような要因よういんであった．在宅ざいたく勤務きんむ環境かんきょうでは、情報じょうほう通信つうしんサービスを使用しようした音声おんせい、文字もじ通話つうわに制約せいやくされ、コミュニケーションの漏もれがない環境かんきょうであった．なお、家庭かてい内ないでのコミュニケーション・メディアは、変かわりなく音声おんせいであった．

4. コミュニケーションと行動こうどうの変化へんか
　在宅ざいたく勤務きんむでのコミュニケーション・メディアの変化へんかに伴ともなう行動こうどうについて述のべる．
(1) 仕事しごと上じょうの意図いと的てきなコミュニケーションのみが存在そんざいする環境かんきょうとなったため、明示めいじ的てき、体系たいけい的てきな作業さぎょう形態けいたいに変化へんかした．職場しょくばでのインフォーマルなコミュニケーションを通とおした作業さぎょう調整ちょうせいなどが、仕事しごと上じょうのフォーマル（意図いと的てき、明示めいじ的てき）なコミュニケーションによる処理しょりへと変化へんかした．一いち日にちの作業さぎょうスケジュール調整ちょうせいや進捗しんちょく状じょう況きょうの確認かくにんなどがすべて体系たいけい的てきに処理しょりされるように変化へんかした．
(2) 偶発ぐうはつ的てきなインフォーマルコミュニケーションの機会きかいがなくなった結果けっか、「職場しょくばの不可視ふかし化か」の影響えいきょうで、孤立こりつ感かんと作業さぎょう評価ひょうかへの不安ふあんが生しょうじた．特とくに作業さぎょうの進捗しんちょく状じょう況きょうと（短期たんき的てきな）評価ひょうかが気きになり、息抜いきぬきの時間じかんが全まったくない勤務きんむ状じょう況きょうに陥おちいったりした．
(3) 勤務きんむ時間じかんの意識いしきが強つよく、家いえにいるにもかかわらず家庭かてい内ないコミュニケーションが希薄きはくとなった．空間くうかんの共有きょうゆうとコミュニケーションの制約せいやくから、WIにはストレスとなることもあった．

5. 検討けんとう課題かだい
　コミュニケーションという切きり口くちから、いくつかの課題かだいを述のべる．
(1) 在宅ざいたく勤務きんむでは、フォーマルなコミュニケーションのみに制限せいげんされてしまう傾向けいこうが非常ひじょうに強つよかった． 職場しょくばでのインフォーマルなコミュニケーションの代替だいたいに関かんする検討けんとうが必要ひつようである．
(2) 家族かぞく関係かんけいの調整ちょうせいは．個人こじん的てきな要因よういんが多おおいかもしれないが、雇用こよう者しゃ（組織そしき）の就労しゅうろうに対たいする柔軟じゅうなんな対応たいおうが必要ひつようである．さらに、在宅ざいたく勤務きんむに関かんする知識ちしきと対応たいおうスキルの醸成じょうせいも課題かだいである．
(3) 組織そしきのコミュニケーションは重要じゅうような課題かだいである．在宅ざいたく勤務きんむでのコミュニケーション形態けいたいの変化へんかは、すべての勤務きんむ者しゃを対象たいしょうとした組織そしきコミュニケーションの視点してんから検討けんとうすべき課題かだいである．

6. まとめ
　今回こんかいの検討けんとうから、在宅ざいたく勤務きんむの議論ぎろんには多様たようで複雑ふくざつな要因よういんを考慮こうりょしなければならないことがわかった．特とくに、職場しょくばの組織そしき的てきな対応たいおう（在宅ざいたく勤務きんむへの理解りかいと対応たいおうスキル）と家庭かてい内ない関係かんけいの調整ちょうせいが重要じゅうようである．

謝辞しゃじ
　検討けんとうの機会きかいを頂いただいた日本電信電話にほんでんしんでんわ株式会社かぶしきがいしゃ(NTT)、NTTクラルティ株式会社かぶしきがいしゃ、および有益ゆうえきなご意見いけんを頂いただいた関係かんけい各位かくいに感謝かんしゃする．

障害しょうがい学会がっかい第だい12回かい大会たいかい（2015年度ねんど）