(Translated by https://www.hiragana.jp/)
障害学会第12回大会(2015年度)報告要旨 | 阿地知 進
 

障害しょうがい学会がっかいHOME

障害しょうがい学会がっかいだい12かい大会たいかい(2015年度ねんど報告ほうこく要旨ようし


ここをクリックするとひらがなのルビがつきます。
ルビは自動的じどうてきにふられるため、人名じんめいとう一部いちぶ変換へんかんミスがしょうじることがあります。あらかじめご了承りょうしょうください。


おもね すすむ (あぢち すすむ) 金沢大学かなざわだいがく大学院だいがくいん

報告ほうこく題目だいもく

割当わりあて雇用こよう制度せいど限界げんかい──あたらしい障害しょうがいしゃ雇用こようへの模索もさく

報告ほうこくキーワード

障害しょうがいしゃ雇用こよう / 割当わりあて雇用こよう制度せいど / ディスアビリティ

報告ほうこく要旨ようし

 日本にっぽんにとって、従来じゅうらい割当わりあて雇用こよう制度せいど雇用こようたいする差別さべつ禁止きんし法的ほうてきアプローチのかたは、これから、おおくの議論ぎろん必要ひつようだろう。日本にっぽん場合ばあい福祉ふくしてき雇用こよう一般いっぱん雇用こようとの問題もんだいも、雇用こよう差別さべつ禁止きんし法的ほうてきには考慮こうりょ必要ひつようがあり、これから、たくさん問題もんだいをはらんでいる。
 
 割当わりあて雇用こよう制度せいど義務ぎむ雇用こよう制度せいど)の法的ほうてき根拠こんきょは、「障害しょうがいしゃ雇用こよう促進そくしんとうかんする法律ほうりつ昭和しょうわさんじゅうねんなながつじゅうにち法律ほうりつだいひゃくじゅうさんごう)」である。
 
 この法律ほうりつ改正かいせいあんは、平成へいせい25ねん6がつ19にち交付こうふされており、障害しょうがいしゃ権利けんりかんする条約じょうやく批准ひじゅん平成へいせい26ねん2がつ19にちより日本にっぽんにおいて効力こうりょくしょうずる)との関係かんけいで、これから議論ぎろんすすめられることになろう。
 
 障害しょうがいしゃ雇用こよう推進すいしん制度せいどは,世界せかいてきには,割当わりあて雇用こよう制度せいどからはじまる。だいいち世界せかい大戦たいせん傷痍軍人しょういぐんじんへの対策たいさく障害しょうがいしゃ対象たいしょうへと拡大かくだいしてったものである。
 
 現在げんざい各国かっこく制度せいどは、割当わりあて雇用こよう制度せいどのみ、割当わりあて雇用こよう制度せいど廃止はいしして差別さべつ禁止きんしほうのみ、両者りょうしゃ併用へいよう多様たようであるが、全体ぜんたいながれは割当わりあて雇用こようから差別さべつ禁止きんしほうによる制度せいどへとうごいている。
 
 理念りねんでみると、りょう制度せいどには、事業じぎょうぬしに、割当わりあて雇用こよう制度せいどは、割当わりあてすうたっするまでは求人きゅうじんじょうきょうおよびその内容ないようにかかわりなく障害しょうがいしゃった仕事しごとつくす、という課題かだいすことになり、差別さべつ禁止きんしほうは、求人きゅうじん内容ないよう合致がっちする障害しょうがいしゃであれば就業しゅうぎょう保障ほしょうす、という相違そういたしかにある。しかし障害しょうがいしゃ合理ごうりてき配慮はいりょをして就労しゅうろう保障ほしょうすることは同様どうようである。したがって理念りねんじょうは、割当わりあて雇用こよう制度せいどのもとでは「雇用こようりつ達成たっせいしているから障害しょうがいしゃのぞいて雇用こようする」(差別さべつ禁止きんしほう有効ゆうこう)、あるいは差別さべつ禁止きんしほうのもとでは「この求職きゅうしょく内容ないようだけはどうしても障害しょうがいしゃには無理むりでできません」(割当わりあて雇用こよう制度せいど有効ゆうこう)という事態じたいしょうじないかぎりょう制度せいど相違そういやメリット・デメリットは顕在けんざいしないことになる。
 
 しかし、障害しょうがいしゃ視角しかくからは、どちらの制度せいどにしても、結局けっきょく健常けんじょうしゃ恩恵おんけい同情どうじょう背景はいけいに、障害しょうがいしゃ雇用こよう促進そくしんほうもとづく、経営けいえいしゃ不利益ふりえき解消かいしょうすることを眼目がんもくとしているということにならない。職能しょくのうではなく割当わりあてられたかず雇用こようすることになる割当わりあて雇用こよう制度せいど職能しょくのうたいしては平等びょうどうになるような制度せいどであるが、雇用こよう絶対ぜったいすうで、おおくの障害しょうがいしゃ雇用こようすることに、やはり、健常けんじょうしゃ恩恵おんけい同情どうじょう背景はいけいに、障害しょうがいしゃ雇用こよう促進そくしんほうもとづく、経営けいえいしゃ不利益ふりえき解消かいしょうすることを眼目がんもくとすることになるであろう差別さべつ禁止きんしほうである。
 
 つぎに、割当わりあて雇用こよう制度せいどの、日本にっぽんでの歴史れきしであるが、しょ外国がいこく制度せいどさきなかで、(数値すうちとうの)十分じゅうぶん検討けんとうがなされないまま法制ほうせいがされ、国民こくみんレベルでの障害しょうがいしゃ理解りかい発達はったつなために、障害しょうがいしゃ雇用こよう低迷ていめいしていたことがわかる。また、強制きょうせい雇用こようという議論ぎろんにまでなったてん興味深きょうみぶかい。
 
 ただ、ここでになることは、障害しょうがいしゃおおやとっていることが、経済けいざい競争きょうそうじょう不利ふりになるという“不公平ふこうへいかん”が、当然とうぜんのこととして制度せいど反映はんえいしているてんである。ここに、障害しょうがいしゃは「デキナイ労働ろうどうしゃ」とうことが、暗黙あんもく理解りかいとなり、このてんがディスアビリティをもたらすとかんがえる。
 
 日本にっぽん障害しょうがいしゃ雇用こよう施策しさくは、割当わりあて雇用こよう制度せいどによって事業じぎょうぬし一定いってい割合わりあい障害しょうがいしゃ雇用こようすることを義務ぎむづけ、 障害しょうがいしゃ雇用こようできない事業じぎょうぬしから納付のうふきん徴収ちょうしゅうし、 それを財源ざいげん障害しょうがいしゃ雇用こよう積極せっきょくてきすすめる事業じぎょうぬしたいし、調整ちょうせいきん助成じょせいきん支給しきゅうするというものである。割当わりあて雇用こよう制度せいどおよび障害しょうがいしゃ雇用こよう納付のうふきん制度せいど中心ちゅうしんとしつつ、重度じゅうど障害しょうがいしゃ雇用こよう促進そくしんのためのダブルカウント制度せいどや、 だい企業きぎょうにおける障害しょうがいしゃ雇用こよう促進そくしんのための特例とくれい子会社こがいしゃ制度せいどなどをわせた制度せいどとなっているのである。しかし、このような、障害しょうがいしゃためおこなわれている制度せいどが“特別とくべつ意味いみった雇用こよう”をみ、障害しょうがいしゃ雇用こように、いくつものディスアビリティを形成けいせいしているとえる。
 
 前回ぜんかいは、中小ちゅうしょう企業きぎょう同友会どうゆうかいという、おそらくほとんどが障害しょうがいしゃ雇用こよう促進そくしんほうにはかかわってこない企業きぎょう団体だんたいで、障害しょうがいしゃ雇用こよう増加ぞうかけての活動かつどうられ、その本質ほんしつはどこにあるのかをさぐっている報告ほうこくをした。根本こんぽんてき費用ひようたい効果こうかなどと価値かちかん雇用こよううものをかんがえていない、その活動かつどう内容ないよう成果せいか現状げんじょうなどを、こん調査ちょうさしている。
 
 今回こんかいは、障害しょうがいしゃにとっては、行政ぎょうせい施策しさくたよれない状況じょうきょうで、NPO法人ほうじんおこなっている活動かつどう紹介しょうかいする。この活動かつどうでは、障害しょうがいしゃ雇用こようぬしとなる、あるいは、おおくの発言はつげんけん経営けいえいたいが、費用ひようたい効果こうか概念がいねんでは、効率こうりつてきではないという障害しょうがいしゃ雇用こようれ、経済けいざい単位たんいとしてってゆくかをさぐっている。障害しょうがいしゃばかりの集団しゅうだんを、シェルタードなものとしてつくっていくのではなく、健常けんじょうしゃ適当てきとう割合わりあい障害しょうがいしゃ存在そんざいし、職員しょくいん障害しょうがいしゃのお世話せわをするという福祉ふくしてき就労しゅうろうではなく、インクルーシブな集団しゅうだん目指めざしている。


 なお、ほん研究けんきゅう発表はっぴょうおこなうにあたり、ご本人ほんにん(ご家族かぞく)に口頭こうとうにて確認かくにんをし、ほん研究けんきゅう発表はっぴょう以外いがいでは使用しようしないこと、それにより不利益ふりえきこうむることはないことを説明せつめいし、回答かいとうをもって同意どういたこととした。



>TOP


障害しょうがい学会がっかいだい12かい大会たいかい(2015年度ねんど