牛乳アレルギーの子どもは骨が弱い?(shutterstock.com)
昨年、元オセロの松嶋尚美さんが、「牛乳は有害だから子どもに飲ませていない」とテレビ番組で発言し、ネット上で波紋を広げた。松嶋さんは、保育所や幼稚園でも子どもに飲ませないよう伝えていたという。
その根拠は、人づてに聞いた「牛乳を飲むとカルシウムが尿と一緒に排泄される」「乳製品を多く摂る欧米人は骨粗鬆症になりやすい」というもの。
番組内で医師にあっさり否定されたが、匿名掲示板では松嶋さんの発言に否定的なコメントが多く寄せられた。
牛乳は「体に悪い」? それとも「完全栄養食品」?
「牛乳は体に悪い」という説は、これまでもあった。しかし、骨粗鬆症の国内外の学会で「牛乳や乳製品が骨粗鬆症の原因になる」という報告はない。
逆に「牛乳をたくさん飲むと骨粗鬆症予防になる」という研究結果は、世界中の多くの研究者や医師から寄せられている(公益財団法人骨粗鬆症財団より)。
「体に悪い」と言う人がいる一方で、「牛乳は完全栄養食品」と褒めちぎる人もいる。カルシウムはもちろん、タンパク質、脂質、炭水化物、ミネラル、ビタミンがバランスよく含まれているからだ。
鉄分やビタミンC、D、食物繊維が充分ではないので「完全栄養食品」と言うには無理があるものの、少ないエネルギーで効率よく栄養素を摂ることができる食品であることはたしかだ。
“お腹ゴロゴロ”はアレルギーではない
牛乳を飲むとお腹がゴロゴロして下痢をしてしまう人がいる。ヨーグルトやケーキなど乳製品を使った食品で症状が出る敏感な人もいる。これはアレルギーではなく、牛乳に含まれる「乳糖」を分解する酵素ラクターゼが少ない、または分泌されないことで起こる「乳糖不耐症」だ。
乳糖不耐症は人種によって発生頻度が違い、おおざっぱに言うと、白人は低く、黒人や黄色人種が高いとのこと。日本を含むアジア系の割合は80%以上とも95%とも言われる。
しかし、牛乳1本で下痢をしてしまう過敏な人は少数派で、そういう人でも牛乳を温めて少しずつ飲めば大丈夫なケースが多いとのこと。
牛乳を飲んだら症状が現れることからアレルギーと間違われやすいが、本当の牛乳アレルギーは、下痢や嘔吐など消化器をはじめ、皮膚炎、じんましん、ぜんそく、鼻炎、口内の腫れなどさまざまな症状を引き起こす。
ひどい場合は「アナフィラキシーショック」となり命にかかわることもある。
牛乳アレルギーの原因は、牛乳に含まれるタンパク質に反応してしまうためで、免疫力が未熟な乳幼児には少なくない。アレルギーを持つ子どもには、アレルゲンとなる乳製品を与えず、発症させないことが第一だ。